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株式会社グラビアジャパン
仕組みの変革と、人の成長で「収益改革」に挑む
~部分最適から全社最適へ 視点が変わって人が動き出した~

2015年6月25日

株式会社グラビアジャパンは、外部環境の変化を受け2011年から2期厳しい経営状況に立たされていた。2013年からJMACと共に目標設定型のコスト改善と、製造現場の抜本的改革に動き出した同社。最初は反発もあった現場だが、事務局の本気度が現場を動かしていく。活動の主旨が浸透し現場が自ら動き出した時、結果が見え改善が進んでいった。活動を通した気づきや変化、今後の活動についてお伺いした。

外部環境の変化が大きい市場

株式会社グラビアジャパン(以下グラビアジャパン)は、創業者である新酒 彦一氏が、gravure_shinzaka.jpg1948 年大阪の地に食品製造販売の松月パン株式会社を起こしたことに始まる。創業当初はパンの製造販売がメインだったが、1961 年から包装資材加工販売を開始し、現在は軟包装用グラビア印刷や包装資材の加工販売会社として、コンビニエンスストア(以下コンビニ)業界や、製パン業、生活協同組合などにパンやデザート等のパッケージを提供している。1981 年現在の社名に変更、140 名の社員が、デザインから生産までを担っている。

軟包装とは、フィルム包装・セロファン・成型品など、商品を美しく包み、優しく保護する軟包で、様々なデザインの印刷が施されおり、我々もコンビニ等でよく見かけているものだ。

現在、食品用途包装資材市場の市場規模は、2015 年予測で約4 兆円規模となり、その中でも軟包装資材業界は約2割を占める8 千億円市場である。成熟市場でもある食品用途包装資材市場では、この数年長期的な人口減少や、材料費の高騰など周辺環境の劇的な変化によって悪化傾向が続いている。一方で、コンビニ等の流通業向けには、中食化やデザート商品のヒットの要因から、この20 年くらい市場の拡大が続いている。

顧客優先の対応が経営を圧迫していく

同社では急激な環境変化の流れを受けて、事業の主軸のひとつであるコンビニへのパンやデザートのパッケージ提供が急伸していた。2007 年代表取締役社長に就いた新酒 健広氏は「この数年で今までメインだった商品群に加えて、デザートなどの新たなヒット商品が生まれ、その関連商品が急激に増えました。担当部署はメイン商品の対応で余力はありません。流通業界特有の商品改廃サイクルの早さやその対応など、しっかりとノウハウを指導しきれない中、他部門が担当する体制を組んで急増するオーダーに対応していきました」と環境の変化への対応を語る。

急増するオーダーに真面目に応えようとする同社だったが、商品改廃サイクルの早さによる資材ロスの発生や、納期を優先するあまり外注加工費の増加に繋がっていった。こうした外部環境の変化への対応は、次第に経営に大きく影響を与えていき、2011 年から2 期同社は厳しい経営状況に陥っていた。

新酒氏は「納期最優先の対応をとっていたため、材料のロスや外注費が膨らみ、年間数億のコスト増に繋がっていました。大きな原因はわかっていましたので、改善対策は打っていましたが、真因を捉えた根本的改善には至っていませんでした。そのような時にお付き合いのある金融機関から、抜本的な改革をしてはどうかとアドバイスをもらいました」という。金融機関からの紹介を受けて、コンサルティング会社数社が提案を行った。新酒氏はJMAC をパートナーに選び、2013 年9 月改革へと動き出した。

コスト改善に向けて全社の"見える化"から始まった 

JMAC を選んだ理由について新酒氏は「JMAC の提案は非常に現実的で、今回の特殊要因への対応だけでなく、gravure_masuhara.jpg全社視点での収益改善を主軸にした提案をしてくれました。製造現場の立て直しは大きな課題だと感じてはいましたが、ノウハウがなく、この機会に生産構造を抜本的に変えて筋肉質な体質にして行きたいという思いでお願いをしました」と当初の思いを語る。

JMAC からは、シニア・コンサルタントの中西 博紀が中心となり、シニア・コンサルタントの石山 真実、チーフ・コンサルタントの栗栖 智宏と有賀 真也が現場に赴き、診断からプロジェクトがスタートした。中西は「JMAC からは、短期速効型のコスト改善と、生産の体質そのものを変え、収益力を上げる提案をしました。現場の業務遂行力は非常に高いのですが、お客様に寄り添うがゆえのしわ寄せが出ていると感じました。また、分析に必要なデータなど現場それぞれの担当者は把握しているのですが、会社全体として管理する仕組みが整っていませんでした」と当時の状況を語る。

まずは課題の整理のため、全社レベルでの見える化が始まった。

gravure_iteguchi.jpg事務局の品質管理部 部長 益原 雅夫氏は「コンサルティングは初めての経験なので、最初は元データの抽出、整理、そこからの資料や指標の作成方法、考え方を理解するのに精一杯でした。実際に手を動かす中で、多岐にわたる考え方を吸収していきました」と語る。

事務局の経理部 課長代理 井手口 裕氏は「私はちょうど2011 年の経営が厳しい年に入社しました。初年度は経営判断のための素材をうまく提供できていなかったという反省がありました。他部署から数字や資料の提供が必須ですので、時間はかかりながらも集約する努力をしている時に、JMAC からの支援を受けることになりました。管理指標に対して様々なノウハウをいただいて、それは今も実践している学びになりました」と語る。

集約された情報を元に分析と検討を重ね、全社の「収益改善目標」を設定し、各部署、各部門の改善目標が立てられ、活動は本格的なスタートを切った。

現場の納得感が活動を確実に動かし始める

事務局の品質管理部 課長 吉野 孝氏は「最初は打ち出された施策の高さに面喰いましたし、現実とのギャップを埋めるには社員の意識gravure_yoshino.jpg改革なしに前に進むことができないと感じました。今まで自社になかった価値観や施策を取り入れて実行するのですから、最初は否定的な意見もあって、なかなか前に進まない焦りもありました。どうやって浸透させていけば良いのか非常に苦労しました」と語る。

中西は「それまで自社で改善に取り組まれていましたが、今回のような目標設定型のコスト改善は初めてだったと思います。オペレーションは皆さんプロですが、オペレーションをマネジメントする視点を課長クラスに持ってもらうことを最初の目標としました。また全社の見える化をすることで、各部門の改善が全社にどう影響するのか、そういう意識を根付かせたいと思いました」と語る。

徐々に活動の主旨、事務局の思いが浸透して行く中で、能動的な協力が得られるようになり、活動が動き出した。新酒氏は「今まで検討し続けてきた商品を切り替える段取り時間では、短時間でできる工場と同じように改善するように言い続けてきました。しかし、何も動かなかったのです。JMAC は両方の工場の同じ作業をビデオに撮って比べ、具体的な指導してくれました。現場が『今までどうして良いかがわからなかった、これなら非常にわかりやすい』と納得感を持って動き始め、リードタイムも短縮されて標準化が進んでいきました。これは非常に効果的だと感じた瞬間でした」と語る。

また「市場の急成長に対応してきたため、緊急対応力や単納期の製品をいかにミスなく納品するかという力は確実についていたと思います。そのベースがあったからこそ今回の活動で成果を出せると考えていました」(新酒氏)

自分事で考え始め議論ができるようになった

益原氏は「少しずつ改善結果が見えることで、社員の意識に変化が現れました。目標は正直『そこまでやるのか』と思う高いものでしたが、JMAC はまるで社員のように
現場に入って、現場目線で一緒に取り組んでくれました。事務局としては、メンバーが常識や先入観にとらわれずデータに基づいた生産性の議論ができるようになったことは大きな収穫でした」。そして次は、部門間の温度差への対処が課題だと語る。

吉野氏は「事務局としての苦労は目標達成のための大切なプロセスだったと思います。また、活動を通して、社員が一丸となって同じ方向へ進むことが大きな力になることを改めて感じました。JMAC は客観的な視点と豊富な知識、経験で施策とその実行に携わってくれました」と、JMAC は人間味溢れる集団だとも語る。改善が少しずつ結果となって現れ、活動はゆっくりとだが確実に動き出した。2期続いた厳しい経営状況は改善し、材料費の高騰という更なる波も乗り越える筋肉質なベースができていった。

井手口氏は「月次で現場の努力から出た成果を報告できるようになり、通期の結果としても大きな経営改善に繋がったことは社内のモチベーションにもなったと思います。今回の活動で見える化ができ、他部署とのコミュニケーションもとれるようになったことで、部門の枠を超えた議論ができるようになりました。これは大きな変化です。実は前職でコンサルティングを受けたことがありましたが、何も変化が感じられなかったこともあり最初は期待していなかったのです。今回の活動では、製造現場も自ら動いて結果を生産に相談する、そんな自分事として考え始めた動きも見られました」とメンバーの変化を感じている。

次は収益力の回復だ

当初一人ひとりは一所懸命に仕事に取り組んでいるが、チーム、組織、経営というベクトルを合わせた視点が弱かった同社だったが、中西は「今回の活動で皆さん全体最適という視点ができたと思います。これまでは、自部門しか見ていない傾向が強かった。今は全体を良くするにはという視点で議論をされているところが大きな変化だと感じます。全社としては見える化が進み生産性の向上が進みました。ただ、これを維持するのは人材です。更に人材の育成をすることが今後の課題でもあります」という。

JMAC は社員のように考え、動いて、実務にも関わってくれる。コンサルティングのイメージを180 度変えてくれたという新酒氏は「この10 年でベテランが定年退職を迎え、世代交代が進んで40 代が現場を引張っていくようになりましたが、"今までこうしていた"という固定概念が染みついていました。JMAC と活動をすることで、一気に殻が破れ、"なぜこうしているのか"といった問題発見型に変わりました。でも、まだ殻から出てきたところ、これから成虫になるための現場マネジメントの強化を更にお願いしているところです」という。

そして新酒氏、中西が共通して言うのは、活動を成果に結び付けた大きな要因は、しっかりと意見を言える事務局の存在とその成長、そして現場のミドルクラスの意識が徐々に変わってきたことだ。

新酒氏は「今回は主軸の製造現場に絞った活動としましたが、製造現場が成長し営業と両輪で対応していけるベースができました。次はこれを全社の活動とすること、そして未着手の経営課題にも取り組まなければなりません。更なるミドルクラスの意識改革、マネジメントレベルの向上、人材の成長がなければこれは達成できません」とこれからの方向性を語る。
同社は人材の成長を武器に、更なる飛躍に動き出している。

担当コンサルタントからの一言

二つの可視化による現場のやる気向上がカギ

今回のポイントは、二つの可視化に尽きます。ひとつは、会社の実態及び全社から見た課題と打ち手の可視化。もうひとつは、成果とその達成度の可視化。この二つの可視化が、高い目標設定を克服しなければならない状況で、早期かつ着実な収益改善を推し進める原動力になりました。
特に、後者の成果の可視化においては、どんなに小さな成果でも明確化、共有化することで、現場の「やればできる」という自信を創出し、活動の納得感を向上させていきました。そしてその達成感が、次第に改善活動の突破口となり、結果として個別最適ではなく、全社視点での高い目標の課題に挑戦する意識、やる気に繋がりました。

中西博紀(シニア・コンサルタント)

※本稿は2015年6月発行のBusiness Insights Vol.57 からの転載です。

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