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現状分析技術

 IE(Industrial Engineering)で言う現状分析技術とは、問題と感ずる現状の実態や事実を定量的に明らかにし、その結果を分かりやすく図やグラフで表現することである。 そして現状の問題点や改善の方向・改善案を考えるヒントとし、改善後の予想効果などを明らかにして改善そのものを促進するための技術である。 ただ漠然と現場を見るだけでは問題の発見には結びつかないので、現状分析技術を繰り返し訓練することにより「ものの見方・考え方」が醸成され、その結果として問題発見のスキルが向上する。

 また、問題をどのような手順で解決していくのか、そのための改善組織など直ちに提案できる言わば"改善プロ"としての役割で経営に大きく貢献することができる人材育成が可能となる。
 具体的に現状分析技術を選択するには"ものつくり"の現場を観察したとき、①何を問題と感じたか?、②その問題を定量化するためにどのような現状分析技術が有効か? さらにどの様な情報をその分析技術に加味したほうが良いのか?、③そのためにどのような分析フォーマットを設計したほうがよいのか?、④週や季節の生産変動を考慮して適応する現状分析技術のタイミングや期間をどう考慮するか?、などを考えなければならない。また、現場観察後に関係者に対するインタビューも行い、問題や課題を確認し共有化することも改善活動を円滑に進めるために必要である。

 現状分析技術を行うとき何から着手していくのが一番効率的かを考える際、大きく全体を捉えた後、徐々に深堀をして詳細に現状の実態を捉えていく方法が一般的である。次に代表的な分析技術にはどのようなものがあり、改善の目的・対象に応じて正しい現状分析技法をどのように使い分けるのかを考えたい。

  1. 品種と生産量:数多くの製品を生産している品種の中から生産量の多い、または、人手(工数)が多くかかっている製品群を選択するために行うP-Q(Product & Quantity)分析やP-Mh(Product & Man-hour)分析を行い、全体生産量の約80%を網羅する製品郡を把握し分析対象の重点が示される。

  2.  工程分析:対象となる製品がどのような生産工程で生産されるかを知ることが重要で、物の流れを明らかにしていく工程分析が其れにあたる。また、生産プロセスは多くの場合類似の工程を通るが、異なる場合もあるので類似工程分析でプロセスの違いを見極めておくとプロセス改善後の影響度合いも推し量れる。

  3.  稼動分析:人や設備の働き度合いを全体的に捉える分析技術で、分類された人の各作業や設備の動きや停止内容ごとに総時間に対する発生比率を調査し、改善の方向や問題の重点、改善後の予想効果などを推し量れる。

  4.  作業分析:要素作業分析ではストップウォッチにより時間(秒)という単位で人の要素作業内容ごとの1サイクルの時間を10回測定し、1サイクルの時間や各サイクルの時間のバラツキなどを把握し改善する。連合作業分析では人と人・人と機械の要素作業ごとの時間経過と相互関係の把握し、各要素の時間値の低減と人と設備の待ちを把握し改善する。ライン作業分析ではライン作業を行っている人や設備の各工程の1サイクルの仕事量のバランスを把握し改善する。

  5.  動作分析:サーブリック分析があり、17の動作系列で左手・右手に分け調査し、現在の動作系列の改善と新しい動作の設計を行う。 次に動作の時間と手順の改善と標準時間の把握にはPTS法というものがありMTM・WF・MOSTなどの分析手法を使って動作の正しい時間と手順を把握し改善する。
     代表的な分析技術と改善の目的・対象に応じて正しい現状分析技法をどのように使い分けるのかを述べたが、全体把握から詳細へということが、失敗しない成功への近道ということができる。

(文責:牧野 芳明)