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【2010年革新に関するRD&Eマネジメント課題実態調査】

調査の概要

調査結果

  1. 製品の変化について

  2. 技術の変化について

  3. 技術と事業の関係について

  4. 組織・体制の変化について

  5. 研究開発費の変化について

  6. 技術部門のグローバル化の進展について

  7. 技術者の雇用環境の変化について

  8. 技術者人事制度の変化について

  9. 法規制が与える影響について

  10. 技術部門における情報化の進展について

  11. 今後5〜10年先でのRD&E部門における主要なマネジメント課題


調査の概要

 1.調査の目的
  21世紀に向けた技術部門を取り巻く環境の変化と、マネジメント課題を明らかにすることを目的として、今回の調査を企画、実施した。

 2.調査の方法
  本調査は、製造業を中心とした企業の技術部門(研究・開発・設計・生産技術)における管理職750名を対象として、1997年3月に質問票を郵送し、4月10日までに回答のあった178(回答率:23.7%)の質問票について集計、分析を行ったものである。



調査結果

  1. 製品の変化について
  2. 技術の変化について
  3. 技術と事業の関係について
  4. 組織・体制の変化について
  5. 研究開発費の変化について
  6. 技術部門のグローバル化の進展について
  7. 技術者の雇用環境の変化について
  8. 技術者人事制度の変化について
  9. 法規制が与える影響について
  10. 技術部門における情報化の進展について
  11. 今後5〜10年先でのRD&E部門における主要なマネジメント課題

1.製品の変化について

『生き残りをかけた製品競争力の強化』が一番の大きな変化になるとみているところが過半数を占める。

市場は更に成熟化し、世界市場を狙った商品が増加することにより、国際的な寡占化が進む。

技術部門が開発する商品は激しい競争を勝ち抜いていかなければならず、そのような強い製品を絶え間なく開発していくことが、課題である。

製品の変化についてのグラフ


2.技術の変化について

『技術戦略の重要性の増大』を一番の大きな変化と認識している回答者が4割で、次いで『技術融合・複合化の促進』が2割という結果になった。

今後、市場の成熟化とボーダーレス化などにより競争が激化する中で、技術力の重要性がますます強く認識されていく。コア技術を育てるといった重点化志向の技術戦略の重要性が増していくと思われる。

技術の変化についてのグラフ


3.技術と事業の関係について

『技術力が事業競争に与える影響の増大』を一番の変化と認識している回答者が約6割を占めた。

今後、技術力が事業競争力にますます大きな影響を及ぼしていく流れの中で、基盤技術の交代などもあり、技術開発力・獲得力のさらなる強化、そのための技術戦略の重要性が増すと考えられる。

技術と事業の関係についてのグラフ


4.組織・体制の変化について

『技術部門の組織形態の柔軟性が増す』を一番の変化と認識している回答者が約半数を占めた。

競争力のある製品開発を、ハイスピードに進めて行くために組織の壁を取り払い、技術者の専門性を機動的に融合できる組織運用へ向かう。

組織・体制の変化についてのグラフ


5.研究開発費の変化について

研究開発費の変化に関しては、『売上高に占める開発費の割合が増加する』ことが一番大きな変化と認識している回答者が3割以上で、『先行研究の投資割合が増加する』、『外部委託研究開発の方が増加する』も、それぞれ2割程度あった。

将来に向かって,研究開発費は増大の傾向にあり、その内容には先行研究を強化、外部委託が増加していく流れになる。

研究開発費の変化についてのグラフ


6.技術部門のグローバル化の進展について

『海外技術部門と国内技術部門の連携が問題になる』を回答者の約3割、『海外の開発設計部門の増加』を2割強が、最も大きな変化であると認識している。

市場のおよび生産のグローバル化という世の中の流れの中で、技術部門のグローバル化の進展は避けられない。その中での課題は、海外技術部門との連携問題を解消していくことである。

技術部門のグローバル化の進展についてのグラフ


7.技術者の雇用環境の変化について

『中途採用技術者の採用と活用が活発になる』を一番の変化と認識している回答者が3割強、『契約技術者の活用が活発になる』については2割程度が一番の変化と認識しているという結果であった。

即戦力技術者の必要性が増大し、人材の流動化が進み、中途採用技術者・契約技術者が増大していく流れにある。

技術者の雇用環境の変化についてのグラフ


8.技術者人事制度の変化について

『技術者育成の重要性が増大する』ことが一番の変化という認識をもっている回答者が3割強であった。また、『技術者の業績評価が厳しくなる』および『技術者向けの人事考課システムが整備される』を一番の変化という認識をしているところは、合わせると4割になる。

課題は、重要性の高まる技術者育成に対する工夫をしていくことと、技術者の業務特性を考慮した評価方法をつくっていくことである。


9.法規制が与える影響について

『環境(ISO14000など)の対策が重要になる』ことが一番の変化という認識をもっている回答者が約半数、次いで4割弱が『品質・安全(PL法など)の対策が重要になる』との回答であり、この2つの選択肢に回答が集中した。

今後、これまで以上に環境対策・安全対策を求める法が整備されていく流れにあると認識されており、法整備の前からその対策を考えていくことが技術部門の課題である。

法規制が与える影響についてのグラフ


10.技術部門における情報化の進展について

『社内の技術共有化のためのシステム整備が進む』および『イントラネットの整備と活用が活発になる』を一番の変化と認識している回答者を合わせると6割にのぼる。  技術者の流動化、組織の柔軟性、企業活動のグローバル化などにより、情報システムの整備活用が進む。

技術課題の蓄積共有化、セキュリティー対策などが課題となる

技術部門における情報化の進展についてのグラフ


11.今後5〜10年先でのRD&E部門における主要なマネジメント課題

「今後5〜10年での主要なマネジメント課題は何か」について上位3つを選択する質問に対しては、一番に『技術と事業の関係』という回答が約3割あった。それに加えて、『製品の変化』、『技術の変化』を挙げるところが多く、この3つが技術部門の主要のマネジメント課題である。

市場成熟化、グローバル化、地球環境保護などへの対応のために製品・技術が変化し、技術と事業の関係がより深まる。経営的視点からの技術マネジメントの重要性が増大する

今後5?10年先でのRD&E部門における主要なマネジメント課題のグラフ


‡V.総括

今回初めての試みで、中長期的に見た企業のRD&Eマネジメント動向についての意識調査を実施した。
企業の技術部門を取り巻く環境の変化に対する認識と、その影響に対する技術部門としての対応の方向について、今回の回答集計から次のようなことが言える。
技術部門を取り巻く、あるいは影響の大きな環境の変化動向としては、
・ 生き残りをかけた製品競争
・ 主要製品の大幅な入れ替え
・ 技術力が事業競争に与える影響の増大
・ 地球環境問題の与える影響
・ 事業のグローバル化の進展
  などを、中長期的に見た大きなトレンドとして捉えている。

一方、それに対して技術部門の経営的な視点からの対応の方向としては、
・ 技術戦略の重要性の増大
・ 技術融合・複合化の促進
・ 外部委託研究開発の増加
・ 研究開発費の増加
・ 海外技術部門と国内技術部門間の連携問題
  などを、予測している。

さらに、それを受けて、技術部門内のマネジメントの対応の方向としては、
・ 組織形態の柔軟性の増大
・ 必要に応じた技術者の充当(中途採用の活発化、契約技術者の増大など)
・ 技術者育成の重要性の増大
・ 技術者の業績評価の厳正化
・ 技術共有化のための情報システムの整備と活用の強化
  などが、今後の中長期的な方向としてあげられている。

以上の調査結果をもとに、中長期的に見た企業のRD&Eマネジメント動向をまとめると、次頁のようになる。
2010年に向けたRD&Eマネジメントの動向


中長期的にみて、多くの産業分野において、事業のグローバル化が進展し、世界市場を狙った製品が増大する。業界によっては、主要製品の大幅な入れ替えや、事業の基盤となっている技術が交替する。その結果、生き残りをかけた製品競争が激化し、国際的な寡占化が進展する。
各企業は、製品競争力の強化のために、コスト競争力強化、差別化商品の開発などの指向を強め、技術力が事業競争に与える影響が増大する。
技術部門としては、デファクト・スタンダード化戦略、差別化商品の開発などのために、先行研究の投資が増加する。一方、異分野技術の融合・複合化を促進するために、積極的に社外の活用をはかり、外部委託研究開発が増加する。また、海外の現地ニーズに対応した製品開発、コスト競争力強化などのために、海外の開発設計部門が増加し、海外技術部門と国内技術部門間の連携が問題となる。
結果的に、企業の技術部門は中長期的に拡大し続け、研究開発費の売上高にしめる割合が増加する。
それに伴い、事業経営と技術経営の連携が経営上、大きな課題となり、投資対効果の面から、事業や製品にとっての新しいコア技術の獲得と、その革新をはかるための重点化指向の技術戦略が重要になる。
一方、技術部門の組織は、海外展開の進展や差別化商品の開発などを実現するために、今まで以上に部門横断的なプロジェクト組織など柔軟性をもった運営が必要になる。その結果、技術者を必要に応じて、機動的に充当するために、中途採用者や契約技術者の増大が増える。
また、技術部門としては、業務の効率化・スピードアップ・技術の共有化のために、イントラネットなどによる情報システムの整備と活用が、急速に進む。

以上、2010年に向けRD&Eマネジメント課題の動向について、まとめてみたが、結論的には、事業環境の変化により、技術部門の役割と業務が拡がり、経営陣と技術部門の間での協創的な連携を実現することが課題になると言える。


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