ビジネスインサイツ57
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- 雪印メグミルク株式会社 スキー部監督
第 1 回
人間集団である組織を動かし成果を出す。それはスポーツの世界にも通じま す。天候や風向きなど自然の条件で競技するスキーのジャンプ競技。一見す ると派手な印象がありますが、メンタルの強さも求められるデリケートな競 技です。監督は選手の個性を尊重し、「技術と精神の両面の良き相談相 手」。選手はジャンプ台で「最高のパフォーマンス」を発揮するための努力 を求められます。今回の「顔」は選手としてオリンピックに出場し、現在は 雪印メグミルクスキー部監督である原田雅彦さんにフォーカスしました。
(はらだ・まさひこ)
原田 雅彦氏
1968年5月9日北海道生まれ。東海大学付属第四高等学校卒業後、雪印乳業 に入社。小学校3年からスキージャンプを始め、上川中学校時代に全国優勝。 1990年代以降日本を代表するスキージャンプ選手として活躍。1992年アル ベールビル、1994年リレハンメル、1998年長野、2002年ソルトレイクシ ティ、2006年トリノと5回の冬季オリンピックに出場。オリンピック、世界 選手権を通して9個のメダルを獲得。2006年の現役引退後は、雪印メグミル クスキー部コーチの傍ら、解説者としても活躍。2014年春監督に就任。
メンバーとのコミュニケーションが全ての原点
選手一人ひとりの個性を 引き出すことが指導者の役割
大石:原田監督は 2014 年に就任されて、 この 1 年監督としてどのようなことを大切 に指導されてきたのでしょうか。 原田:私が選手時代の全日本のコーチは、 枠にはめ込まず、選手それぞれの特長を活 かした指導をしてくれました。その指導方 法に共感していますので、私が指導する立 場になっても、選手が納得することを一番 大切にしています。何よりも選手の考えを 尊重し、個性を伸ばしてあげることが指導 者の役割だと考えています。 それには、まず選手が何を考えているの かを知らなければ適切な指導ができませ ん。コミュニケーションを密にとり、考え を引き出すことが大切です。特にスキー ジャンプは他の競技に比べて経験者にしか わからない感覚が多く、監督、選手共に共 感できる数少ない仲間と言えます。親子ほ どの世代間のギャップがあっても、共通の 目線と言語を持っていれば、相互理解も早 いですし、選手の考えを捉えることができ ると思います。私は雪印メグミルクの社員 でもあります。職場におけるマネジメント も、現場と同じ目線で伝える、感じとるコ ミュニケーションが重要だと思っています。 また私はシンプルに目標を捉えています。 原田:私が現役の頃は V字スタイルなど新 たな飛び方を創ってきた歴史の変わり目で もありました。 個性の強いメンバーが多く、 理論など指導者と意見を戦わせながら自分 たちのスタイルを創り出してきました。監 督になって今の選手を見ると、意見をぶつ けてくる選手も少ないですし、がむしゃら 最終目標はどの選手も「試合で結果を出す こと」 です。ただそこに辿り着く道は個人々 違います。遠回りをする選手もいれば、要 領良く結果を出す選手もいます。目標まで のギャップを埋めるためにコミュニケー ションをとって、少しでも道を近くしてあ げることが指導者の役割でもあります。 に勝ちたいという執念のようなものが希薄 だったり、失敗をしたがらず無難にこなす 選手が多いとも感じますね。失敗からの学 び、気づき、原因を自分で考えることを通 して得る多くの経験値は、試合の時、瞬時 にあらゆるケースを想定する引き出しを持 つことにも繋がります。 技術力では差がない選手たちばかりで す。最後は経験と、勝ちにこだわる気持ち が結果を大きく左右します。チームの練習 でも今まで理論や体の科学的な分析に力を 入れてきましたが、 昨年度から、 オリンピッ クで共に戦った岡部孝信コーチに指導にあ たってもらっています。理論にプラスして 岡部鬼コーチが 我 を持つことを植え付 け精神的に鍛えてくれたことで、気持ちが 強くなり良い結果に繋がってきています。 今 の ス ポ ー ツ 選 手 全 般 に 言 え ま す が、 もっと自己主張をする選手がどんどん出て きて欲しいと思っています。
もっともっと自分の
我
を出せ!
大石:指導者となって初めて見えたこと、 感じることはありますか。
大石誠 の ここが Point
個
性や目線を尊重するためには、競技場で選手と会話する時間が大切である ことを原田監督は強調されていました。例えば、風の向き、強さなど感覚
的な面は現地で場を共有することが重要とのこと。 「わかったつもり」ではなく、 選手が何を考えているのかを感じとることがコミュニケーションの原点とのコメ ントは、私たちのマネジメントにも参考になるのではないでしょうか。
Business Insights Vol.57 2015年 6月 発行
編集長:大石 誠 編集:石田 恵
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