ビジネスインサイツ57
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代サ 表ン 取ト 締リ 役ー 社プ 長ロ ダ ク ツ 株 式 会 社
06 BUSINESS ON VALUE
株式会社グラビアジャパン
垣 見 吉 彦
仕組みの変革と、人の成長で 「収益改革」に挑む
10 Human&Organization
ナガセケムテックス株式会社
〜 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と 価 値 観 共 有 で 現 場 力 を 引 き 出 す 〜
新 価 値 を 創 造 !
一 気 通 貫 の チ ー ム 力 で
TOP MESSAGE
GTM 活動が 改善成果と意識改革の両輪を動かし始めた
14 MANAGEMENT BASE
日本ペイントホールディングス株式会社
新たなペイント文化の創造に向けて
18 iik 塾 20 顔
-第1回雪印メグミルク株式会社 スキー部監督 原田 雅彦氏
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毎回、革新、成長を続けている企業のトップに 経営哲学や視点についてお話しを伺います。 インタビュアー:JMAC 代表取締役社長 鈴木 亨
〜コミュニケーションと価値観共有で現場力を引き出す〜
一気通貫のチーム力で新価値を創造!
サントリープロダクツ株式会社
入 社後2年 間で ものづくりの一気通貫を経 験
鈴木:垣見社長は、大学で発酵工学を専攻されてサント リーに入社されましたが、発酵工学を学ばれたきっかけ や、入社当時の思いなどをお聞かせください。 垣見:実は私は、「柳ヶ瀬ブルース」で有名な岐阜市柳ヶ 瀬の出身で、実家は酒屋を営んでいました。お酒に囲まれ た環境で育ちましたので、自然に自分でもお酒を造ってみ たいと思うようになり、大学で発酵工学を学びました。 当時のサントリーはトリスウイスキーから、角瓶、オー ルド、ローヤルと価格帯も特色も違うウイスキーがありま した。「うまい」「安い」のキャッチフレーズで人気のト リスウイスキーを飲みながら、いつかはローヤルを飲む ぞ、といった気概が日本の社会を元気づけていたように思 います。お酒にはそういう役割があると感じていましたの で、迷うことなくサントリーを選びました。 入社後配属されたのは品質保証のセクションで、1年目 は麦芽や果汁などすべての原材料の品質規格書作成に携わ り、実際にサプライヤーの工場を訪問して品質管理の確認 も行いました。2年目はお客様からの声を受けるセクショ
ンになり、お客様のお褒めの言葉やお叱りといった生の声 を聞く機会に恵まれました。 この最初の2年間で、ものづくりの始めである原材料の 調達と、お客様が飲まれる瞬間に至るまでを考えること で、ものごとを一気通貫で見ることと体系的に考える基礎 をしっかり学んだと思います。よりよい製品を提供するた めにはどうすべきなのかを徹底的に考えたこの経験は、 後々の仕事にも非常に活きてきたと思います。
技術と技能が融合してこそ 成果につながる
鈴木:一気通貫でものごとを見ることを学び、実際のも のづくりに携わられていかれる中で、技術者としてどの ような経験をされたのでしょうか。 垣見:入社3年目でビール工場に異動になり、そこから26 年間ビールの技師としてビール製造に携わってきまし た。最初に配属されたのは京都のビール工場で、サント リーの2つ目のビール工場でした。今でも印象深いの が、当時製造の最前線にいた班長から「醸造の仕事は、 技能と技術が融合してこそ成果につながるものだ。俺は
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設 立:2009年4月1日 (株) が純粋持ち株会社制への移行にともない設立) (サントリー 資 本 金:10億円(1684億円) 従業員数:1,058名(19,375名) 主な事業内容: 清 涼飲料水の製造
※( )内はサントリー食品インターナショナル株式会社
サントリープロダクツ株式会社は 2009 年、サントリー 株式会社の純粋持株会社制への移行に伴い、清涼飲料水 の製造会社として設立。国内に 9 工場を持つ国内最大規 模の清涼飲料製造会社である。ビール醸造技師として豊 富な現場経験を持つ代表取締役社長の垣見氏は、現場を 信頼し、大切にしてこそ強いものづくり企業へと成長で きるとの信念を持っている。垣見氏の、現場やマネジメ ントへの想いについてお聞きした。
垣見 吉彦
技能で一番になるから、お前は技術でトップになれ」と 言われたことです。双方が支え合って強くならなければ ならないと思いましたね。技術者と技能者のチームワー クでものづくり現場を支えて行こうと決意しました。そ の一つの事例が、製造現場の衛生管理です。雑味の無い クリーンな味のビールを造るための製造現場の徹底した 衛生管理は、それを熟練の技能にだけ頼るのではなく、 科学によって最適で合理的な技術として確立する必要が 有ると考えて、洗浄工学を現場のメンバーと一緒に勉強 し、ビール工場の洗浄技術体系を確立しました。これ は、その後に装置の大型化、自動化を進めるための必須 技術となりました。次の受け手のことを考えて技術と技 能が支え合い、ともに成長しながら一気通貫でものづく りをすることの大切さを実感したのです。私にとって、 この京都工場での原体験はとても大きなものでした。
代表取締役社長
垣見:自分が本当の意味でマネージャーとしての責任を 果たせたと思ったのは、ある工場に醸造技師長として赴 任したときです。 当時、その工場ではある日常管理のトラブルが発生し ていました。この工場のメンバーは高い固有技術を持っ ていることを知っていた私は、その技術をどう生かして いこうかと考えました。そこで、一人一人が力を最大限 発揮したいと思える工場にする必要がありましたので、 全員で「どういう工場にしていきたいのか」を徹底的に 話し合いました。 こうして、「まず、社内から一番信頼される工場を作 ろう」という話になり、そのためにはどうしたらよいの かを更に話し合い、「全員が自分たちのプロセスに責任 を持つものづくりをしよう、それで信頼を取り戻そう」 との結論に至り、約1年間にわたって工場全体で 自分 たちのものづくりとは? と自らに問いかけながら苦闘 をした結果、成果を出すことができました。ものづくり 現場は全員の力で作っていくわけですから、一人一人が 力を最大限発揮するためには、お互いの志の共有、即ち コミュニケーションが何よりも大切だと感じました。 私はこれまでの経験から、ものづくり企業にとって現 場は最も大切だと思っています。現在も国内の9工場は年 に3、4回ずつ回って、現場のメンバーと直接コミュニ
Yoshihiko Kakimi
ものづくりの現場では コミュニケーションがすべての要
鈴木:工場勤務には様々な出来事があったと拝察いたし ます。マネージャーの時代に、 いいビール をつくっ ていくためご苦労されたことをお聞かせください。
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ケーションをとるように心がけています。現場では特に 新入社員との接点を持つことを意識しています。言動や 動線を見て新入社員と会話することが楽しみですし、そ れによって、その職場のチーム力を推し量ることもでき ます。現場に行くたびに社員が成長し、生き生きと動い ている姿を見るとうれしいものです。社員の成長は、も のづくり企業の成長そのものです。工場の上長と共に、 より活発なコミュニケーションが交わせる職場づくりを 目指しています。
ル市場拡大に挑戦してきました。おいしい生ビールを安 定して製造する為には、お客様の要求するおいしさ品質 に徹底してこだわり、高度な品質管理が欠かせません。 そこで武蔵野工場の醸造技師時代には品質管理の最高賞 であるデミング賞への挑戦に関わりました。品質機能展 開法を開発して、技術スタッフと現場が一体となって全 工程を一気通貫で管理できるしくみの基礎をつくりあげ るなど、当時のしくみが現在の日常の品質管理の礎に なっています。 また、現在統括している清涼飲料水事業では、天然水 やトクホのお茶など事業拡大を見据え工場建設やライン
チーム一丸で現場力を高める
鈴木:サントリーと言えば やってみなはれ の精神が有名 ですが、垣見社長がこれまでチャレンジされたエピソードを お聞かせください。 垣見:私の入社数年後の1980年代当時は、当社の事業は ウイスキーが主流でビールはまだまだ利益が出ない時代 でしたが、これから伸ばすべき分野だと期待は大きく なっていました。そのような中で、効率的な生産と工場 のキャパシティー増強のため、設備の増設をしていきま した。他社のように毎年設備を増設し続けられる程の販 売の伸長はありませんでしたから、我々は、今作る設備 は5年先に最先端であるべきとの責任感に燃えて、5年先 の技術を推し量りながら新しい設備を作っていきまし た。「5年後に勝てる醸造設備や醸造技術を持つためには 今何をすべきか」ということを皆で議論し、知恵を出し 合いましたね。当時はアメリカの酒造メーカーから効率 のよさを学び、ヨーロッパの酒造メーカーから伝統的な 味作りを学び、それが意味することを技術的に解釈し て、その上に5年先を見据えた独自の技術を構築しまし た。ですから、ベンチマークするのは今でも世界ナン バーワンです。技術者の先輩からも「目標は高く世界レ ベルの あるべき姿 を描いて、そのギャップを解析し 全て埋めるんだ」と教えられました。 かつて日本市場ではビールは中味を容器に充填後に加 熱殺菌する方式が主流でしたが、サントリーは充填後に 加熱殺菌をしない「おいしい生ビール」にこだわりビー
改造を進めてきましたが、常に業界No.1や世界基準にな ることを目指した高い目標に挑戦する風土づくりを意識 しました。また、新製品開発や容器軽量化にともなう多 くの技術的に困難な課題も、安全・安心・美味・美装の 品質にこだわり、開発部門、技術部門、製造現場が常に 一気通貫で積極的にコミュニケーションが図れるよう配 置要員数なども配慮し、「やってみなはれ」が実戦でき る環境づくりを行い進めています。
ものづくり現場の 価値観を合わせる
鈴木:垣見社長のお話を伺っていると、常に現場目線を大切 にされていると感じます。現場のマネジメントで大切にされ ていることをお聞かせください。 垣見:やはり一番大切なのは、ものづくり現場で共通の 価値観を持つことだと思います。サントリーではTPM (Total Productive Management)を1990年始めから推進 しています。TPMはロス排除と保全を基本としたマネ ジメントの体系で、ものづくりに携わる全ての社員によ る活動です。巨大な装置産業であるビールや清涼飲料水 の製造現場では、多くの社員とコンピューターが共同 し、分担して仕事が成り立っています。こういった現場 では、皆が同じ目標、目的に向かって心を一つにするこ とが大切です。ビール、清涼飲料水づくりにとって欠か せないもの、それは 人の和 と 基盤となる技術 で す。こうした考えのもと、個人の強みを最大限に引き出
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垣見 吉彦
Yoshihiko Kakimi
1952年 1975年 2007年 2009年 2012年
岐阜県生まれ 広島大学工学部発酵工学科卒業 サントリー株式会社入社 常務取締役就任 サントリー食品インターナショナル(株) 専務取締役 サントリープロダクツ(株) 代表取締役社長 現任 サントリー食品インターナショナル(株) 取締役副社長 現任
しそれぞれが持場のプロになるためにも、TPMは有効 なマネジメントツールだと考えています。 さらに清涼飲料水の工場では、近年勤続5年未満の社員 が4割を占めるようになりましたが、ものづくりの共通の 価値観を浸透させる上でもTPMは有効と考えていま す。TPMを推進してからは、一人一人が工場全体を見 渡し、自分が何をすべきかを考えて取り組むようになっ てきました。 現在では、国内だけでなくフランスやベトナムなど海 外工場でもTPMの考え方の展開を進めており、ものづ くりの共通言語として発展させています。そして、これ からはグループ内の事業会社の壁を越えてサントリーグ ループのものづくりの共通の価値観に育てていきたいと 考えています。お客様に喜んでいただける価値創出のた めに、ものづくり全体でレベルを上げていくことが重要 だと考えています。
垣見:一つ目に、若い経営幹部の皆さんには日本のもの づくりの強さを一層磐石なものにするための議論を続け て欲しいと思います。日本の企業が海外で行うものづく りの形は、自社で海外に会社や工場を設立するケース と、M&AやJVなど既存の現場でものづくりをするケース が有ります。当然ながら、それぞれのケースで日本のも のづくりの適用と浸透のやり方も努力の焦点も違うはず です。 今後日本のものづくり企業がグローバル化を展開する 上で、是非「日本のものづくりの強さ」を海外で活かす ための道筋を研究して欲しいですね。そして、それを共 通の知見・財産として積極的に発信して頂きたいと思い ます。 また二つ目は、例えば日本の清涼飲料水の市場は、今 後の飛躍的な拡大は見込めませんが、そのような環境だ からこそ、新しい価値を創造してお客様に提案し、市場 そのものをもっと大きくしていく努力が必要です。その ためには、一人ひとりが高い視点を持ちこれまでにない 新たな価値を創造できる人材が必要です。こうした人材 育成のためにも新たな挑戦の場を設定し、やってみなは れを実戦させ、一気通貫のコミュニケーションを通して 一人一人の成長とチーム力を高めることに真剣に向き 合っていただきたいと思います。
「日本のものづくりの強さ」を 海外で展開するために
鈴木:最後に、垣見社長から次世代を担うトップ、経営 幹部の方へ向けたメッセージをお願いします。
対談を終えて
鈴 木 亨 の
ひ と こ と
ビ
ールの醸造に長い間関わられてきた垣見社長からは、ものづくりに対する熱 い思いが伝わってきました。ものづくり現場で技術と技能の融合が良いもの
を生み出していく、そのためには技術者と技能者のコミュニケーションが何より大切 であるという思想を貫いて、日常のマネジメントを実践されていることに感銘を受け ました。現場に対する温かいまなざし、それはまさに垣見社長のお人柄の現れである と感じました。
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〜部分最適から全社最適へ 視点が変わって人が動き出した〜
ビジネス成果に向けて JMACが支援した 企業事例をご紹介します。
仕組みの変革と、人の成長で 「収益改革」に挑む
株式会社グラビアジャパン
株式会社グラビアジャパンは、外部環境の変化を受け2011年から 2期厳しい経営状況に立たされていた。2013年からJMACと共に目 標設定型のコスト改善と、製造現場の抜本的改革に動き出した同 社。最初は反発もあった現場だが、事務局の本気度が現場を動か していく。活動の主旨が浸透し現場が自ら動き出した時、結果が 見え改善が進んでいった。活動を通した気づきや変化、今後の活 動についてお伺いした。
新酒 健広
代表取締役社長
Takehiro Shinzaka
外部環境の変化が 大きい市場
株式会社グラビアジャパン (以下グラビアジャパン) は、 創業者である新酒 彦一氏が、1948 年大阪の地に食品製造 販売の松月パン株式会社を起こしたことに始まる。創業 当初はパンの製造販売がメインだったが、1961 年から包 装資材加工販売を開始し、現在は軟包装用グラビア印刷 や包装資材の加工販売会社として、コンビニエンススト ア(以下コンビニ)業界や、製パン業、生活協同組合な どにパンやデザート等のパッケージを提供している。
1981 年現在の社名に変更、140 名の社員が、デザインか ら生産までを担っている。 軟包装とは、フィルム包装・セロファン・成型品など、 商品を美しく包み、優しく保護する軟包で、様々なデザ インの印刷が施されおり、我々もコンビニ等でよく見か けているものだ。 現在、食品用途包装資材市場の市場規模は、2015 年予 測で約 4 兆円規模となり、その中でも軟包装資材業界は 約2割を占める 8 千億円市場である。成熟市場でもある 食品用途包装資材市場では、この数年長期的な人口減少 や、材料費の高騰など周辺環境の劇的な変化によって悪 化傾向が続いている。一方で、コンビニ等の流通業向け
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には、中食化やデザート商品のヒットの要因から、この 20 年くらい市場の拡大が続いている。
全社視点での収益改善を主軸にした提案をしてくれまし た。製造現場の立て直しは大きな課題だと感じてはいま したが、ノウハウがなく、この機会に生産構造を抜本的 に変えて筋肉質な体質にして行きたいという思いでお願 いをしました」と当初の思いを語る。 JMAC からは、シニア・コンサルタントの中西 博紀が 中心となり、 シニア ・ コンサルタントの石山 真実、 チーフ・ コンサルタントの栗栖 智宏と有賀 真也が現場に赴き、診 断からプロジェクトがスタートした。中西は「JMAC か らは、短期速効型のコスト改善と、生産の体質そのもの を変え、収益力を上げる提案をしました。現場の業務遂 行力は非常に高いのですが、お客様に寄り添うがゆえの しわ寄せが出ていると感じました。また、分析に必要な データなど現場それぞれの担当者は把握しているのです が、会社全体として管理する仕組みが整っていませんで した」と当時の状況を語る。 まずは課題の整理のため、全社レベルでの見える化が 始まった。 事務局の品質管理部 部長 益原 雅夫氏は「コンサルティ ングは初めての経験なの で、最初は元データの抽 出、整理、そこからの資 料や指標の作成方法、考 え方を理解するのに精一 杯でした。実際に手を動 かす中で、多岐にわたる 考え方を吸収していきま した」と語る。 事務局の経理部 課長代理 井手口 裕氏は「私はちょう ど 2011 年の経営が厳し い年に入社しました。初 年度は経営判断のための 素材をうまく提供できて いなかったという反省が ありました。他部署から 数字や資料の提供が必須 ですので、時間はかかり
顧客優先の対応が 経営を圧迫していく
同社では急激な環境変化の流れを受けて、事業の主軸 のひとつであるコンビニへのパンやデザートのパッケー ジ提供が急伸していた。2007 年代表取締役社長に就いた 新酒 健広氏は「この数年で今までメインだった商品群に 加えて、デザートなどの新たなヒット商品が生まれ、そ の関連商品が急激に増えました。担当部署はメイン商品 の対応で余力はありません。流通業界特有の商品改廃サ イクルの早さやその対応など、しっかりとノウハウを指 導しきれない中、他部門が担当する体制を組んで急増す るオーダーに対応していきました」と環境の変化への対 応を語る。 急増するオーダーに真面目に応えようとする同社だっ たが、商品改廃サイクルの早さによる資材ロスの発生や、 納期を優先するあまり外注加工費の増加に繋がっていっ た。こうした外部環境の変化への対応は、次第に経営に 大きく影響を与えていき、2011 年から 2 期同社は厳しい 経営状況に陥っていた。 新酒氏は「納期最優先の対応をとっていたため、材料 のロスや外注費が膨らみ、年間数億のコスト増に繋がっ ていました。大きな原因はわかっていましたので、改善 対策は打っていましたが、真因を捉えた根本的改善には 至っていませんでした。そのような時にお付き合いのあ る金融機関から、抜本的な改革をしてはどうかとアドバ イスをもらいました」という。金融機関からの紹介を受 けて、コンサルティング会社数社が提案を行った。新酒 氏は JMAC をパートナーに選び、2013 年 9 月改革へと動 き出した。
▲益原 雅夫 氏
コスト改善に向けて全社の 見える化 から始まった
JMAC を選んだ理由について新酒氏は「JMAC の提案 は非常に現実的で、今回の特殊要因への対応だけでなく、
▲井手口 裕 氏
ながらも集約する努力をしている時に、JMAC からの支 援を受けることになりました。管理指標に対して様々な ノウハウをいただいて、それは今も実践している学びに なりました」と語る。
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集約された情報を元に分析と検討を重ね、全社の「収 益改善目標」を設定し、各部署、各部門の改善目標が立 てられ、活動は本格的なスタートを切った。
確実についていたと思います。そのベースがあったから こそ今回の活動で成果を出せると考えていました」 (新酒 氏)
現場の納得感が 活動を確実に動かし始める
事務局の品質管理部 課長 吉野 孝氏は「最初は打ち出 された施策の高さに面喰いましたし、現実とのギャップ を埋めるには社員の意識改革なしに前に進むことができ ないと感じました。今ま で自社になかった価値観 や施策を取り入れて実行 するのですから、最初は 否定的な意見もあって、 なかなか前に進まない焦 り も あ り ま し た。ど う やって浸透させていけば
自分事で考え始め 議論ができるようになった
益原氏は「少しずつ改善結果が見えることで、社員の 意識に変化が現れました。 目標は正直 『そこまでやるのか』 と思う高いものでしたが、JMAC はまるで社員のように 現場に入って、現場目線で一緒に取り組んでくれました。 事務局としては、メンバーが常識や先入観にとらわれず データに基づいた生産性の議論ができるようになったこ とは大きな収穫でした」 。そして次は、部門間の温度差へ の対処が課題だと語る。 吉野氏は「事務局としての苦労は目標達成のための大 切なプロセスだったと思います。また、活動を通して、 社員が一丸となって同じ方向へ進むことが大きな力にな ることを改めて感じました。JMAC は客観的な視点と豊 富な知識、経験で施策とその実行に携わってくれました」 と、JMAC は人間味溢れる集団だとも語る。 改善が少しずつ結果となって現れ、活動はゆっくりとだ が確実に動き出した。2期続いた厳しい経営状況は改善 し、材料費の高騰という更なる波も乗り越える筋肉質な ベースができていった。 井手口氏は「月次で現場の努力から出た成果を報告で きるようになり、通期の結果としても大きな経営改善に 繋がったことは社内のモチベーションにもなったと思い ます。今回の活動で見える化ができ、他部署とのコミュ ニケーションもとれるようになったことで、部門の枠を 超えた議論ができるようになりました。これは大きな変 化です。実は前職でコンサルティングを受けたことがあ りましたが、何も変化が感じられなかったこともあり最 初は期待していなかったのです。今回の活動では、製造 現場も自ら動いて結果を生産に相談する、そんな自分事 として考え始めた動きも見られました」とメンバーの変 化を感じている。
▲吉野 孝 氏
良いのか非常に苦労しました」と語る。 中西は「それまで自社で改善に取り組まれていました が、今回のような目標設定型のコスト改善は初めてだっ たと思います。オペレーションは皆さんプロですが、オ ペレーションをマネジメントする視点を課長クラスに 持ってもらうことを最初の目標としました。また全社の 見える化をすることで、各部門の改善が全社にどう影響 するのか、そういう意識を根付かせたいと思いました」 と語る。 徐々に活動の主旨、事務局の思いが浸透して行く中で、 能動的な協力が得られるようになり、活動が動き出した。 新酒氏は「今まで検討し続けてきた商品を切り替える段 取り時間では、短時間でできる工場と同じように改善す るように言い続けてきました。しかし、何も動かなかっ たのです。 JMAC は両方の工場の同じ作業をビデオに撮っ て比べ、具体的な指導してくれました。現場が『今まで どうして良いかがわからなかった、これなら非常にわか りやすい』と納得感を持って動き始め、リードタイムも 短縮されて標準化が進んでいきました。これは非常に効 果的だと感じた瞬間でした」と語る。 また「市場の急成長に対応してきたため、緊急対応力 や単納期の製品をいかにミスなく納品するかという力は
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次は収益力の回復だ
に結び付けた大きな要因は、しっかりと意見を言える事 務局の存在とその成長、そして現場のミドルクラスの意 識が徐々に変わってきたことだ。 新酒氏は「今回は主軸の製造現場に絞った活動としま
当初一人ひとりは一所懸命に仕事に取り組んでいるが、 チーム、組織、経営というベクトルを合わせた視点が弱 かった同社だったが、中西は「今回の活動で皆さん全体 最適という視点ができたと思います。これまでは、自部 門しか見ていない傾向が強かった。今は全体を良くする にはという視点で議論をされているところが大きな変化 だと感じます。全社としては見える化が進み生産性の向 上が進みました。ただ、これを維持するのは人材です。 更に人材の育成をすることが今後の課題でもあります」 という。 JMAC は社員のように考え、動いて、実務にも関わっ てくれる。コンサルティングのイメージを 180 度変えて くれたという新酒氏は「この 10 年でベテランが定年退職 を迎え、世代交代が進んで 40 代が現場を引張っていくよ うになりましたが、 今までこうしていた という固定概 念が染みついていました。JMAC と活動をすることで、 一気に殻が破れ、 なぜこうしているのか といった問題 発見型に変わりました。 でも、 まだ殻から出てきたところ、 これから成虫になるための現場マネジメントの強化を更 にお願いしているところです」という。 そして新酒氏、中西が共通して言うのは、活動を成果
したが、製造現場が成長し営業と両輪で対応していける ベースができました。次はこれを全社の活動とすること、 そして未着手の経営課題にも取り組まなければなりませ ん。更なるミドルクラスの意識改革、マネジメントレベ ルの向上、人材の成長がなければこれは達成できません」 とこれからの方向性を語る。 同社は人材の成長を武器に、更なる飛躍に動き出して いる。
担当コンサルタントからの一言
ど う 描 く か !
シ ナ リ オ を
成 果 達 成
二つの可視化による現場のやる気向上がカギ
今回のポイントは、二つの可視化に尽きます。ひとつは、会社の実 態及び全社から見た課題と打ち手の可視化。もうひとつは、成果と その達成度の可視化。この二つの可視化が、高い目標設定を克服し なければならない状況で、早期かつ着実な収益改善を推し進める原 動力になりました。 特に、後者の成果の可視化においては、どんなに小さな成果でも明 確化、 共有化することで、 現場の 「やればできる」 という自信を創出し、 活動の納得感を向上させていきました。そしてその達成感が、次第 に改善活動の突破口となり、結果として個別最適ではなく、全社視 点での高い目標の課題に挑戦する意識、やる気に繋がりました。
シ ニ ア ・ コ ン サ ル タ ン ト
中 西 博 紀
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人と組織(チーム)の力を最大化することを目的にJMACが 支援した企業事例をご紹介します。
GTM活動が 改善成果と意識改革の両輪を動かし始めた
〜G (元気に)T (楽しく)M (前向きに)フラットなコミュニケーションの場が活動の原動力に〜
次世代を担うメンバーが もっと元気になって欲しい
ナガセケムテックス株式会社は、2001年にナガセグ ループの主要ケミカル製造4社が統合して誕生した企業 である。その前身は1930年代に創業開始した長瀬産業株 式会社尼崎工場に始まる。各社が長年培った合成・評 価・配合・バイオの技術を深化、融合し、さらに新たな 創生・製品開発をし続ける化学メーカーとして、近年で は、エレクトロニクス、ライフサイエンス、自動車、環 境をはじめする幅広い分野において高機能、高付加価値 な化学製品を提供している。 元々グループ会社であり文化が似ていた4社ではある が、製造現場では装置の大きさ、製造ロット、納期、顧 客からの要望の多さ、品質の厳しさなどにも大きな違い があり、改善活動の取り組み方やスキルにもバラツキが あった。同社は2013年1月JMACに依頼して3ケ月をかけ、 播磨事業所2工場の診断を行い、工場の課題を抽出し た。そして人材のローテーションによるスキルの共有化 も行いながら、JMAC支援の下2013年11月生産性向上を目 的としたマスタープランづくりをスタートさせた。 活動当初から事務局を担っている、社長室 石原 敏浩氏 は「当時私は生産本部 生産技術部 部長として活動を推進 していましたが、ものづくり企業の基本として製造現場
が元気でなければいけないという考えが根底にありまし た。受け継いできた技術やノウハウもあり、現場は個別 に改善に取り組んできま したが、合併で社員は 600人超の規模になり、 縦の組織だけでは解決で きない課題も出てきまし た。会社の仕組みとして 課題解決に向けた議論を
▲ 石原 敏浩 氏
する場が少なくなっていたこともあり、もっと若手メン バーの意見を吸い上げるそんな場を増やしたいと考えて いました。何よりも次世代のリーダーたちが変化に対応 していく力を付け、自ら解決していくような人材へと 育って欲しいという思いがあり活動をスタートさせまし た」と活動の原点を振り返る。立ち上げに際しては、生 産本部の部長クラス、検討メンバー全員が参加してワイ ガヤを行い、その中で「G(元気に)T(楽しく)M(前 向きに)活動」という活動名が付けられた。
GTM活動が 全社プロジェクトへ
同社は作成したマスタープランを元に、2014年4月から モデルチームを中心に生産性向上マスタープラン実行
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ナガセケムテックス株式会社
日本企業において、生産性改善活動は職場の小集団活動として 現場の困りごとを改善し、生産性向上という成果創出を自分た ちの手で行う活動として取り組まれてきた。ナガセケムテック ス株式会社では、全社活動として全員参加、現場社員の意識改 革、現場による改善成果創出をキーワードとして、従来の生産 性活動から枠を広げ、ベテランから若手への世代交代という課 題にも取り組んでいる。その背景や思い、活動を通した現場の 変化、今後の定着化に向けた活動についてお伺いした。
常務取締役
森田 悟
Satoru Morita
フェーズへと活動を推進させた。 実行フェーズから現職となった、取締役 播磨事業所長 志水 修三氏は「工場では以前から改善提案活動を15年位 続けており、今でも年間1000件以上の改善提案が出てき ますので、この点はうま く定着していると思って いますが、さらなる合理 化やコストダウンを目指 した生産改革に会社とし て取り組む必要があると
て次の自分たちの文化を作っていく、そんな活動だと捉 えていました。そのため石原部長に専任の推進役となっ てもらい、社長からも全社活動としてのコメントを出し てもらいました」とGTM活動を全社プロジェクトへと 拡大した思いを語る。 組織として人材のローテーションを行いながら、合わ せてGTM活動を通した多能工化や、他部署の仕事を知 ること、見えていない問題点の顕在化など、気づきの感 性を研ぎ澄ませてもらいたいという思いが込められ全社 プロジェクトがスタートした。
▲ 志水 修三 氏
も思いました。我々の規
模に合った、地に足の着いた活動にしたいという思いが あり、小さくても成功体験を積み重ね、メンバーが自信 を付けて成長して欲しいと考えました。活動を通して改 善が促進し、ものづくりの一体感を感じて欲しいとも 思っていました」と数値の成果と合わせて職場に浸透し た活動を目指していたと語る。 常務取締役 森田 悟氏は「私が2014年に播磨事業所に赴 任した当初、GTM活動は非常にいい活動だと思いまし たが、生産本部内だけでは活動の幅が狭くなってしまう とも感じました。他部門と協力し垣根を取り払いながら 進めなければならない改善もありますので、きちんと全 社プロジェクトとして立ち上げて定着させる必要性を感 じました。検討の段階では投資対効果という議論もあり ましたが、合理化で成果も出しながらメンバーが成長し
改善経験も違う忙しい現場 反応や成果も様々
日々お客様のオーダーに応える忙しい現場の反応はど うだったのだろうか。大型装置を使用し、改善活動の経 験も豊富なベテランも多い、機能化学品事業部 生産第一 部 部長の森本 正志氏は「機能化学事業部(以下機能化 学)では従来から安全生産体制推進、不良生産の低減、 作業環境の改善、合理化という4本柱の活動を推進して きましたので、改善を推進する土壌はありました。活動 は経験のある班長クラスを中心に進め、合理化案を着実 に進めることができましたが、日々改善を進めていたこ ともあり、改善成果として現場内で出来る範囲の内容が
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多く数値的には少ない状況でした。今回、全社プロジェ クトとなり、新たなチャ レンジとして他部署に協 力を依頼し計画生産によ る効率改善も目指してい るところですが、垣根は 高く現在は部門でできる
ができる場作りの大切さ を実感しています」と語 る。 石原氏は「現在ではワ イガヤの場に様々な部署 のメンバーが集まってき ており、今までにない変
▲ 本長 直樹 氏
▲ 森本 正志 氏
しているという。
改善を着実に進めて、成
化が見られます。また、現場からの提案で上長が動き、 他事業部を巻き込んで取引先に工程変更の申請承認が通 り生産効率が上がったという、組織の垣根を越えた初め てのケースが生まれました。メンバーからも『こういう ことってできるんですね』という発言が出る大きな変化 で、事務局としても嬉しい瞬間でした。こうした活動の プロセスを通じてメンバーのものの見方、データの解析 など生きた教育、人材育成の場となっていると実感しま す。会社としてこういった場を作ることがいかに大事な ことか学びました」と語る。 事務局と共に活動を推進してきたJMACのチーフ・コ ンサルタント 島崎 里史は「今回のGTM活動の推進に は、プランをしっかり立てること、目標管理においては 実現するための道筋を一緒に整備することを心がけまし た。そのために、分析方法や情報収集などの改善推進に ついての知識のベースを作りながら、早く成果感を実感 できるテーマ設定や、職場別に若手メンバーが自身で進
果に繋げているところです」と次の課題を見据え活動を 一方若いメンバーが多く、調整が必要な小型設備を使 用して、少量多品種、タイムリーな対応が求められる、 機能樹脂事業部 生産第一部 部長 脇坂 広明氏は「私はス タート時、機能化学に在籍しており、その後、機能樹脂 事業部(以下機能樹脂)に異動となりました。機能樹脂 は合理化活動の経験が少なく、生産量も多く現業の忙し さがあり当初抵抗感はありました。時にはJMACが来る 日に少人数で準備不足のまま対応をすることも見うけら れました。反面、改善余 地は多いため、歩留りの 悪い工程を修正する事で 改善数値は上がり、成果 は上がっているものの意 識変革としては内容が追 いついていないという実
▲ 脇坂 広明 氏
められる育成テーマを置いたり、他事業部への働きかけ や垣根を壊すチャレンジが必要なテーマなど、バリエー ションを持たせ活動に広がりが出る工夫をしました。活 動を通して自分たちで考えるきっかけができ、ひとつ高 いステージからの問題意識が芽生えたと思います。もっ とこういう場づくりをして欲しい、教育機会が欲しいと いう積極的な言葉も出てくるようになりました」とその 変化を語る。
態でした。ただ、活動を進める中で問題点や課題を活発 に出す意識の変化は見られ、徐々に活動が浸透していま すが、まだまだ道半ばの状況です」と語る。
「できるんですね」 現場の気持ちが動き始めた
事務局で、設備・環境安全統括本部 エンジニアリング 部 エンジニアリング課 第2チーム 本長 直樹氏は「私は 現場のメンバーと年齢的に近いこともあり、同じ目線で 話ができると思っています。日々の仕事に追われている 現場が、仕事にやりがいを感じ目の色が変わっていくこ とで、生産性向上にも繋がるのではないかと感じていま す。活動を通じて、始めは発言をしなかった若いメン バーが意見を言うようになり、事務局として自由に議論
活動をさらに ドライブさせる!
2015年度は全社活動となって2年目、同社では活動をさ らにドライブする大事な年と位置付けている。森本氏は 「交替勤務体系のため、打合せも取れにくい環境下で、 問題点があった時もメールで情報共有する一方通行的な
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コミュニケーションも多かったと思います。メンバーも GTMを通じてテーマを出し合い、議論して決めて行く ことの重要性に活動を通して気づきを得ました。合理化 と合わせ議論をする時間を増やしたことで、特に、若い メンバーも課題を出し意見を言うようになりましたし、 着実にレベルアップしています。今後は他部署を巻き込 んだ計画生産や稼働率の向上、垣根を越える高いハード ルにもチャレンジして行きたいと思っています」とさら なるレベルアップを目指している。 脇坂氏は「現在は少しでも計画的な生産を行って活動 の時間が作れるよう、他部署と連携して在庫の持ち方、 計画変更の理由などリストアップを進め原因を明らかに しているところです。活動時間がとれるようになれば、 成果だけでなく、意識改革や人材の育成に繋げて、どん どん若いメンバーから意見がでるような活動にしたいと 思っています」と動き出している。 生産品目の違いによりそれぞれの工場の特徴はあるが、 全社活動で問題点も明確になり、活動推進者の「変えてい く必要がある」という共通認識にも繋がっている。
るべき姿と活動全体のマスタープランの議論が重要だと考 えています。そのためには、まず余力を作り体制化するこ と、そして継続する仕組み化も必要です。その中で、環境 の変化に柔軟に対応できるマスタープランを作ることが活 動の きも になると思っています」という。またその実 現に向けては成功へのストーリーを皆で共有することと、 そのためのシナリオ検討が必要だともいう。 業務を平準化して全員に教育の機会を与えてあげたい という志水氏は「合理化、コストダウンは終わりのない テーマで、停滞する時期もあると思います。まず10年続 けるにはどうするかを部門主導で考えて欲しいと思いま す。また全社プロジェクトとしては、活動の定着化に向 け、部門の垣根を越えた議論が必要だと思っていま す」。 森田氏は「JMACには改善の成果と合わせて、メン バーが成長を感じ活動が根付くことも目的として推進し てもらっています。私も現場の変化を感じていますが、 社員からも『ぜひ継続して欲しい』と要請される活動に なっています」とまさに現場がG(元気に)T(楽しく) M(前向きに)なったことが評価されているという。 同社では、仲間を集めて議論する風土ができ、一人で は変えられないことも力を合わせて変えられる経験を積 み重ねている。そして次はこれを文化にするため全社が 一丸となって次の一歩を踏み出したところだ。
更なる 躍進に向かって
島崎は「今までの活動は、現場の目線であるべき姿を目 指してきました。今後の活動では、併せて全社の視点のあ
担当コン サルタントからの一言
重 要 で す
変化に強い現場になるには「欲」をかけ!
現場の改善活動が進まない、海外工場よりも本家であるはずの日本がおと なしいという声を最近伺うことがあります。これは、決まったことを決め られた通り「作業」する現場が増え、価値を付けるために「作業」を変え 続けるという「仕事」が減ってしまっていることだと考えています。 改善を通じて、変えることができるという成功体験を積み、苦労しながら 進めた効果・貢献を見えるようにすることで達成感を知る。それにいい意 味で味を占めて、欲を持つこと、欲を持ってどう変わっていくべきか、と いう議論に繋げていくための場づくりが大切だと感じます。
で き る 場 づ く り が
価 値 変 換 を 議 論
作 業 か ら 仕 事 へ の
チ ー フ ・ コ ン サ ル タ ン ト
島 崎 里 史
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〜未来を考え続けた先に 壁を乗り越えるヒントがあった〜
新たなペイント文化の 創造に向けて
日本ペイントの歴史は 日本の洋式塗料の歴史
日本における洋式塗料の歴史は、日本ペイントホール ディングス株式会社(以下日本ペイント)の前身である 光明社の設立に始まる。それまで輸入に頼っていた塗料 を、茂木 春太、重次郎の兄弟が初めて亜鉛華の製造から 固練り塗料の国産化に成功し、1881 年(明治 14 年)塗料 会社が誕生したのである。1897 年(明治 30 年)には「亜 鉛華製法」の特許を取得、1898 年(明治 31 年)日本ペイ ント製造株式会社として改組し、日本初の塗料工業会社 として新たなスタートを切った。1927 年(昭和 2 年)か ら現社名へと改称し、今年で創業 134 年を迎える歴史を 積み重ねた企業である。 創業からの DNA を引き継ぎ、研究開発、技術の蓄積 に努めてきた同社は、塗料の用途を、自動車、工業用、 船舶用から、道路や家庭用にまで範囲を広げてきた。さ らに現在では、塗料技術の応用から表面処理の付加価値 を追求して、ファインケミカル、エレクトロニクスなど の新規分野にも積極的に参入し、日本で唯一、塗料と表 面処理をワンストップで提供できる総合塗料メーカーと して、さらなる多角化を推進している。
今までのやり方では 限界が見えてきた
長年培ってきた技術力を、新規事業へと結び付ける開 拓やチャレンジを続けてきた同社だが、被塗物、いわゆ る塗られる 物 があって初めて活きるという塗料の特 性から、お客様の要望に応える開発が多くなり、受け身 の感覚が強くなってきていたと語るのは、工業用塗料事 業本部 FP部 部長 山本 明氏だ。山本氏は「当社は他の 塗料メーカーに比べて、 新規事業開拓へのチャレ ンジには歴史があると 思 っ て い ま す。ま た、 1970 年 代 か ら オ イ ル ショック前後も含めて、 一般の塗料ではない領域
▲山本 明 氏
に我々の技術を活かしていこうという流れがあり、その 流れは今も脈々と受け継がれています。その一方で、私 は入社以来ずっと新規の開拓を担う組織におりますが、 次の新たな商品がなかなか生み出せないというジレンマ も抱えています。今までの延長線上の考え方やアプロー チでは限界がくると感じており、やがて頭打ちになるの ではないかという危機感を持っていました」と語る。 日本の経済が順調に伸び、新しい産業が次々と台頭し
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日本ペイントホールディングス株式会社
洋式塗料国産化の草分けである日本ペイントホールディングス株式 会社は、創業からのチャレンジ精神を脈々と受け継いできた。 しかし、 塗料の特性からお客様の要望に応える意識が徐々に強くなり、そこに 危機感を感じていた工業用塗料事業本部(現:日本ペイント・インダ ストリアルコーティングス) FP部 部長 山本 明氏は、従来と違った 視点で新規事業を考える人材の強化に動き出した。 その活動の背景や 思い、 メンバーの成長、 今後の方向性についてお伺いした。
▲光明社時代の輸入品企画に合わせた塗料缶の前で 左から藤田氏、古森氏、山本氏、林氏
てくる時代には、新たなチャレンジの場が自然に生まれ ていた。このような時代ならば、 今までの取り組みをベー スにした材料開発、チャレンジのあり方でも一定の成果 を出すことができた。しかし、市場や経済が成熟化し方 向性が見えづらくなる中、従来の発想や進め方を続けて いては近い将来限界がくるだろう。 山本氏の危機感のベー スにはこうした時代背景があった。 山本氏はこの課題にどんな長期視点で取り組めば良い のか悩み、様々なセミナーに参加して模索する日々が続 いた。併せて戦略企画部門と共に、複数のコンサルティ ング会社の提案から、自分たちに合った方法を熟考し、 準備も進めていた。最終的に JMAC の「未来構想」とい う考え方をベースに実践研修形式で進めるということが 決まったのは 2013 年 6 月だった。
なのか、どのようなシーンなのかをイメージアップする のが「未来構想」という考え方だ。 山本氏は「目の前にある開発、製品をいかに作り上げ ていくかということも大切ですが、一度、将来どうある べきか、という一歩高い視点から思考した上で、現在の 製品開発を考えていくことが必要だと考えました。我々 が新たな材料を提案することで、最終的な商品の未来を 変えていくような、そんな提案型の製品開発に変えてい きたいという思いがありました」と語る。今までの「潜 在ニーズの先取り」から「潜在ニーズの提案」へと風土 を変えていきたいという思いが込められていた。 企画段階からメンバーに加わった、工業用塗料事業本 部 FP部 課長 古森 秀樹氏は、 「新しい分野を開拓したい という気持ちは私自身も 持っていました。ただ、 塗料という限られた範囲 の中で、他社も同じよう に取り組んでいます。そ の中で我々だけが抜きん 出るということはなかな
限界の壁をどう乗り越えるか!
▲古森 秀樹 氏
従来の商品開発においては、現在の商品に対する不満 や改善要望といった顧客の声を元にしたテーマに偏りが ちで、どうしても今の延長線になってしまい、姿勢も 受 け身 になりがちだ。現状の延長線ではなく、飛躍(ス トレッチ)した未来を描き、飛躍した未来のお客様は誰
こもり
か難しい、そんな行き詰まりも感じていました。今回の 活動は、 その壁をどう打破していくのかを考える良いきっ かけになると思いました」と振り返る。 発想の自由度や、バイタリティを持ったメンバーに集 まってほしいという思いの山本氏だが、何よりも自主性
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が必要と感じ、手挙げ方式でメンバーの多くを募った。 研修には 9 人のメンバーが集まり、5 回の座学とディス カッションを中心に、 最後に発表の場を設けるというゴー ルも設定し、 「未来構想&マスタープラン作成」実践活動 は 2013 年 8 月からスタートした。 今回の活動を支援したチーフ・コンサルタントの山中 淳一は「最初は皆さんこういった活動に慣れていないこ ともあり、不安でいっぱいの雰囲気でした。ただ、参加 に自主性を重んじられたこともあって、 『何か持って帰ろ う』 という意欲の強さを感じました」 と当初の印象を語る。
手を挙げました」と語る。 自身を高めようとする意識を持ったメンバーであった が、 ストレッチした未来 を生み出すことは予想以上に きつい作業だったという。林氏は「これまで経験してい た研修は座学で教えてもらう場でした。今回の活動は、 最初にとにかくアイデアを出し、ひたすら発散し続ける 場でした。アイデア 1000 個を出すことが宿題になり、明 け方まで考え続ける日々が続いて、とにかくしんどかっ た。しかし、自ら手を動かし、説明して、メンバーから も様々な意見を貰ってまた考えるという場にいられたこ とは、とても自分にとってプラスになりました」という。 林氏は、 現在もフォーマットの一つである 「仮想カタログ」 を使用し、自分の頭の整理、未来の顧客への価値が不足 している点をしっかり見直す機会に役立てている。 藤田氏も「研修中は辛かったですね。まず考える癖付けが できていなくて、 自分でもアイデアの真価を問いますし、 ディ スカッションでもメンバーから切り込まれます。目の前の問 題に向き合わざるを得ない状況でした。これほど、塗料の価 値は何なのか、どうすれば塗料の価値を上げていくことがで きるのか考えたことはありませんでした」と話す。
きつい でも この活動を利用しよう
この研修の参加者のひとり、事業開発プロジェクト リーダー 林 泰弘氏は「私は 2013 年 4 月にFP部に異動 してきました。それまで 開 発 や 技 術 開発 と 商 品 開発 いった技術畑で、新たな 事業を生み出すことに携 わってこなかったため、 全く自分の型がない中も がき苦しんでいました。
▲林 泰弘 氏
メンバーに 個性と主張が出てきた
山中は「通常の研修ではインプットだけになりがちです が、今回は実践研修ですので、とにかく一人ひとりにとこ とん考えてもらうこと、そして、チームで議論し考えると いう2つの考えるを大切にしました。その中では『仮想カ タログ』を作成することでディティールまで描き、詳細の つじつまを検証すること、また顧客の力も借りて価値を検 証する巻き込みも大切にしました」とその意図を語る。 古森氏は「 『仮想カタログ』を作りましょうという課題 だと、こなすための『仮想カタログ』を作る受け身になり がちです。今回は始めにアイデアを出しましょう、次に 1000 個のアイデアを出しましょうというスタイルでした。
業務も忙しい中での研修は負荷を感じましたが、それよ りも新たな自分の一面を引き出せる場はプラスになるだ ろうと思い、むしろこの機会を積極的に利用してみよう と決意して参加しました」と振り返る。 また、事業開発プロジェクト 空間デザインチーム アシ スタントマネージャー 藤田 恭子氏は「私も異動してきて 1年目で、それまで人事 部、労働組合といった事 務方を担当してきました ので、マーケティングも わからない状況でした。 その中で事業を提案して いくためには、走りなが
▲藤田 恭子 氏
すると面白いことにその人のやりたいことが出てきて、個 性をうまく引き出せる形になったと感じました。今年は新 たなメンバーで自走していますが、ディスカッションをし
ら勉強していかなくてはならないと悩んでいる中、今回 の研修の話を聞きました。すぐに是非やらせてほしいと
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ている時には事業化に近そうだと考えているアイデアで も、いざ仮想カタログという一枚の絵にしてみると、足り ない要素が多数出てくるのです。事業化には何が必要なの か、障壁は何か、どう乗り越えなければならないかまで広 く深く考えることで、非常にスキルアップができたと思っ ています」と考え抜くことの重要性を感じている。 メンバーの変化を感じている山本氏は「メンバーは自 分なりに考え抜いたアイデアを出してきますが、まだま だ荒削りですのでダメ出しをする場面もあります。なぜ ダメなのか、こんな風にアレンジしたら良いのではない か、外部のこんな意見もある、と検証もしてきます。自 分の意見を主張できるようになったことは、今までにな い大きな変化です。またリーダー層も、自らが生み出す 苦労を経験していますので、従来と違う目線で指導がで きていると変化を感じています」とメンバーが自信を付 けたこと、その成長が何よりも成果だという。
なりました」と声を揃える。 山本氏は「我々は、被塗物があって初めて活きる塗料 の特性から、いつの間にかお客様に応えようという意識 が強くなり、新しいものを生み出す土壌が衰えてきてい たのだと思います。新しいものを生み出すことは難しい 挑戦ですが、あえてそこに挑んでいます。山中さんには、 資料のまとめ方、情報の取り方、整理の仕方など、基本 的なところから丁寧に教えていただきました。1年目は 考え方・進め方を一度詰め込んで、今はそれを消化して 血肉にしている段階だと思っています」と活動を継続さ せることで本物の風土になると語る。 そして「これからは、知恵で戦っていかなくてはならな い時代、今までと違う視点、違う知恵の出し方が求められ ると思います。その知恵をお客様にも提供しながら次を 作っていく、それは簡単なことではありませんが、挑戦し 続けていきたいと思っています」と未来を見据える。 そのような取り組みの一つが内装の塗料化という提案 だ。 実は日本には戦後に培われた壁紙文化がある。 これは、 早く家を建てるため、簡単に短時間で貼れる壁紙を使用 す る 日 本 独 自 の 住 宅 文 化 だ。藤 田 氏 は 現 在 ROOMBLOOM というブランドに携わり、今回の取り組 みの経験も踏まえ、新たな選択肢や豊かな生活の提案を することで文化の創造に取り組んでいる。 業界のリーディングカンパニーとして業界を牽引して きた同社は、2014 年 10 月から、日本ペイントホールディ ングスに商号を変更し、日本のパイオニアから世界の日 本ペイントになろうと新たな挑戦を始めている。
人の成長が新しいものを 生み出す原動力になる
JMAC の指導に関してメンバーは、 「議論の場ではじっ くりと自分たちの中にあるものを引き出してもらえたと 思います。併せて、毎回出る宿題に対して私たちが提出 した資料に、メールで丁寧に答えていただき大変参考に
担当コンサルタントからの一言
自分事化をとおして
じぶんごとか
壁 を突破する
「未来構想」手法は、 壁 を突破する有効なアプローチです。ここでは 手法を使う側の人に目を向けて補足をします。 今回の活動では、テーマ発案者、討議メンバーともに「製品・サービス を使う人の側」に立って真摯に考えることを大切にしました。 新たな製品 ・ サービスを検討する場面では、ややもすると独りよがりに、 また、 他人事になりがちです。テーマを 「自分事」 として考え、 誰が (who) 、 なぜ(why) 、何を(what) 、どのように(how)をセットで考えること が必要です。
な ら な い よ う に
が w h a t だ け に
﹁ 私 は 〇 〇 し た い ﹂
チ ー フ ・ コ ン サ ル タ ン ト
山 中 淳 一
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「意」を JMAC では、若手のころから一人ひとりの 「活かす」ことを大切にしています。 闘する このコーナー では「iik 塾」と称して、日々奮 。 ます 介し 若手コンサルタントの「意」をご紹
夢の実現に向かって 知恵の引き出し を増やす!
私は大学・大学院で化学を専 攻し、 メーカーに就職したのちJMACに 入社し ました。「日本のものづくり力を活 かせ ば、新興国、ひいては途上国の経済 発展 にも寄与できる可能性が広がってい る」 これがコンサルタントになった強い 動機 です。 現在、私は日本企業の技術開発領 域の コンサルティングを中心に活動して いま す。今後は、日本企業の対象市場が アジ ア新興国からアフリカの途上国にま で広 がり、グローバル視点での技術開発 のマ ネジメントがさらに重要になってく るの
技術戦略センター
加藤 優一
ではないでしょうか。そのためにも 、日 本だけでなく海外企業の動向や、最 新の 経営理論にも注目しています。休日 は国 会図書館で入手した国内外の文献や 論文 を読み、その内容について、同じチ ーム 内のコンサルタントと喧々諤々の議 論を 続けています。また、日々のコ ンサル ティング現場でも先輩コンサルタン トか ら大きな刺激を受けています。個性 的な 先輩が多く、そのコンサルティング アプ ローチは多様で、真摯にお客様に向 き合 う姿勢にはいつも勉強させられます 。入 社当初は、先輩コンサルタントがお 客様 とディスカッションする際の斬新な 視点
や豊富な事例に圧倒されていました が、 最近は自分自身の仮説を説明する機 会も 増え、お客様にとって有効なディス カッ ションパートナーとなるべく、自分 なり の視点を加えられるよう意識してお りま す。今後は、最新の経営理論と、日 々の コンサルティング現場の両面から知 恵の 引き出しを増やし、新興国・途上国 市場 への展開を見据えた技術開発領域の マネ ジメントを支援できるよう、成長を 続け ていきたいと考えています。
サプライチェーン 革新センター
山田 康介
を解決したい」これは私が 「お客様と汗をかき、ともに課題 けていることです。 コンサルタントとして、いつも心が 以来、主に生産現場の改 私は、2009年にJMACに入社して ィングを中心に活動してい 善や生産性向上に関するコンサルテ 動を通じて、組織や人の意 ます。学生時代よりスポーツの部活 人でも同様の関わりを実現 識を変えることに興味を持ち、社会 を志望しました。 したいとの思いからコンサルタント 知している方々と同じ土俵 最初の頃は、新人の私が現場を熟 そこで現場の悩みや実態を で意見交換することは大変でした。 、朝から深夜まで現場に出 把握するために、同じ作業着を着て けでなく、問題・課題を共 ていました。その中で実態を掴むだ た。そのような日々を経験 有する場・時間を大切にしていまし
「現場目線を大切に」 自分を高めていく
の場面で、先輩コンサルタ していくうちに、お客様との打合せ れ、目を見て相談してくれ ントと同様に私自身の意見も求めら ちろん大切ですが、そこで るようになりました。経営成果はも 、それが企業にとっての本 働く一人ひとりが変わっていくこと ないかと考えています。現 当の意味の体質化につながるのでは ーが輝きだした時に、コン 場・会社の雰囲気が変わり、メンバ しています。 サルタントになって良かったと実感 めに専門分野の学会に入会 最近では、さらに自分を高めるた 講師を務めるなど、コンサ し各種の活動へ参加したり、非常勤 重ねています。今後は、製 ルタントとしての幅を広げる努力を を経営者と共に解決できる 造業を中心に、より経営に近い課題 と思っています。 コンサルタントを目指していきたい
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- nformation
編集部からの耳より情報
JMACトップセミナーのご案内
〜経営革新を推進する先人から学ぶ〜
「JMAC トップセミナー」は、 JMACと経営トップ層を繋ぐ本誌にご登場いただいた経営トップの方々を講師に お招きし、実際に改革を断行していく苦難や成功体験をお話いただく経営トップ向けセミナーです。
7月13日開催
(月) 2015 年
基調講演:サントリープロダクツ株式会社 代表取締役社長 垣見 吉彦 氏
7 月 13 日(月)の「JMAC トップセミナー」は、本誌 の TOP MESSAGE にご登場いただいた、サントリープ ロダクツ株式会社 代表取締役社長 垣見 吉彦 氏をお迎 えし、 「一気通貫のチーム力で新価値を創造 !」と題し、 ご講演いただきます。 本誌ではご紹介しきれなかった垣見氏のお話を、直接お 聞きできるチャンスです。ぜひご参加下さい。
15:00 〜 18:30
ステーションコンファレンス東京
定 員:50 名(お申し込み順) 対 象:経営トップ層、部門長の方々 参加料:10,800 円(税込) ※参加者交流費を含む
9月18日開催
(金) 2015 年
15:00 〜 18:30
ステーションコンファレンス東京
定 員:50 名(お申し込み順) 対 象:経営トップ層、部門長の方々 参加料:10,800 円(税込) ※参加者交流費を含む
http://www.jmac.co.jp/seminar/open/
垣見社長は、9 工場それぞれに年 3 〜 4 回直接出向いて、特に新入社員の方に声を掛けるそうです。たっ た半年でも目に見えて成長を感じるんですよと、とても嬉しそうにお話されていました。醸造技師とし てビールを育てるように、時間を掛けながら人の成長を見守る温かさを感じ、本当に現場が好きなんだ と伝わってきた瞬間でもありました。
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- 雪印メグミルク株式会社 スキー部監督
第 1 回
人間集団である組織を動かし成果を出す。それはスポーツの世界にも通じま す。天候や風向きなど自然の条件で競技するスキーのジャンプ競技。一見す ると派手な印象がありますが、メンタルの強さも求められるデリケートな競 技です。監督は選手の個性を尊重し、「技術と精神の両面の良き相談相 手」。選手はジャンプ台で「最高のパフォーマンス」を発揮するための努力 を求められます。今回の「顔」は選手としてオリンピックに出場し、現在は 雪印メグミルクスキー部監督である原田雅彦さんにフォーカスしました。
(はらだ・まさひこ)
原田 雅彦氏
1968年5月9日北海道生まれ。東海大学付属第四高等学校卒業後、雪印乳業 に入社。小学校3年からスキージャンプを始め、上川中学校時代に全国優勝。 1990年代以降日本を代表するスキージャンプ選手として活躍。1992年アル ベールビル、1994年リレハンメル、1998年長野、2002年ソルトレイクシ ティ、2006年トリノと5回の冬季オリンピックに出場。オリンピック、世界 選手権を通して9個のメダルを獲得。2006年の現役引退後は、雪印メグミル クスキー部コーチの傍ら、解説者としても活躍。2014年春監督に就任。
メンバーとのコミュニケーションが全ての原点
選手一人ひとりの個性を 引き出すことが指導者の役割
大石:原田監督は 2014 年に就任されて、 この 1 年監督としてどのようなことを大切 に指導されてきたのでしょうか。 原田:私が選手時代の全日本のコーチは、 枠にはめ込まず、選手それぞれの特長を活 かした指導をしてくれました。その指導方 法に共感していますので、私が指導する立 場になっても、選手が納得することを一番 大切にしています。何よりも選手の考えを 尊重し、個性を伸ばしてあげることが指導 者の役割だと考えています。 それには、まず選手が何を考えているの かを知らなければ適切な指導ができませ ん。コミュニケーションを密にとり、考え を引き出すことが大切です。特にスキー ジャンプは他の競技に比べて経験者にしか わからない感覚が多く、監督、選手共に共 感できる数少ない仲間と言えます。親子ほ どの世代間のギャップがあっても、共通の 目線と言語を持っていれば、相互理解も早 いですし、選手の考えを捉えることができ ると思います。私は雪印メグミルクの社員 でもあります。職場におけるマネジメント も、現場と同じ目線で伝える、感じとるコ ミュニケーションが重要だと思っています。 また私はシンプルに目標を捉えています。 原田:私が現役の頃は V字スタイルなど新 たな飛び方を創ってきた歴史の変わり目で もありました。 個性の強いメンバーが多く、 理論など指導者と意見を戦わせながら自分 たちのスタイルを創り出してきました。監 督になって今の選手を見ると、意見をぶつ けてくる選手も少ないですし、がむしゃら 最終目標はどの選手も「試合で結果を出す こと」 です。ただそこに辿り着く道は個人々 違います。遠回りをする選手もいれば、要 領良く結果を出す選手もいます。目標まで のギャップを埋めるためにコミュニケー ションをとって、少しでも道を近くしてあ げることが指導者の役割でもあります。 に勝ちたいという執念のようなものが希薄 だったり、失敗をしたがらず無難にこなす 選手が多いとも感じますね。失敗からの学 び、気づき、原因を自分で考えることを通 して得る多くの経験値は、試合の時、瞬時 にあらゆるケースを想定する引き出しを持 つことにも繋がります。 技術力では差がない選手たちばかりで す。最後は経験と、勝ちにこだわる気持ち が結果を大きく左右します。チームの練習 でも今まで理論や体の科学的な分析に力を 入れてきましたが、 昨年度から、 オリンピッ クで共に戦った岡部孝信コーチに指導にあ たってもらっています。理論にプラスして 岡部鬼コーチが 我 を持つことを植え付 け精神的に鍛えてくれたことで、気持ちが 強くなり良い結果に繋がってきています。 今 の ス ポ ー ツ 選 手 全 般 に 言 え ま す が、 もっと自己主張をする選手がどんどん出て きて欲しいと思っています。
もっともっと自分の
我
を出せ!
大石:指導者となって初めて見えたこと、 感じることはありますか。
大石誠 の ここが Point
個
性や目線を尊重するためには、競技場で選手と会話する時間が大切である ことを原田監督は強調されていました。例えば、風の向き、強さなど感覚
的な面は現地で場を共有することが重要とのこと。 「わかったつもり」ではなく、 選手が何を考えているのかを感じとることがコミュニケーションの原点とのコメ ントは、私たちのマネジメントにも参考になるのではないでしょうか。
Business Insights Vol.57 2015年 6月 発行
編集長:大石 誠 編集:石田 恵
TEL:03‑5219‑8058 URL:http://www.jmac.co.jp/ FAX:03‑5219‑8069 Mail:bi̲jmac@jmac.co.jp
〒100‑0003 東京都千代田区一ツ橋一丁目2番2号 住友商事竹橋ビル11階
本資料の無断転載・複写を禁じます © 2015
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