ビジネスインサイツ58
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- 雪印メグミルク株式会社 スキー部監督
第 2 回
人間集団である組織を動かし成果を出す。それはスポーツの世界にも通じま す。天候や風向きなど自然の条件で競技するスキーのジャンプ競技。一見す ると派手な印象がありますが、メンタルな強さも求められるデリケートな競 技です。監督は選手の個性を尊重し、「技術と精神の両面の良き相談相 手」。選手はジャンプ台で「最高なパフォーマンス」を発揮するための努力 を求められます。今回の「顔」は選手としてオリンピックに出場し、現在は 雪印メグミルクスキー部監督である原田雅彦さんにフォーカスしました。
(はらだ・まさひこ)
原田 雅彦氏
1968年5月9日北海道生まれ。東海大学付属第四高等学校卒業後、雪印乳業 に入社。小学校3年からスキージャンプを始め、上川中学校時代に全国優勝。 1990年代以降日本を代表するスキージャンプ選手として活躍。1992年アル ベールビル、1994年リレハンメル、1998年長野、2002年ソルトレイクシ ティ、2006年トリノと5回の冬季オリンピックに出場。オリンピック、世界 選手権を通して9個のメダルを獲得。2006年の現役引退後は、雪印メグミル クスキー部コーチの傍ら、解説者としても活躍。2014年春監督に就任。
プレッシャーは自分を高める武器
120 点を取る準備がなければ 結果は出せない
大石:現役時代のご経験から、目標を達成 し結果を出すために何が必要だと思われま すか。 原田:ジャンプはたった2本、そこで結果 を出さなければなりません。最初から 100 点を目指す練習では勝てません、120 点を 取るための準備が必要です。120 点を取る 力がないとオリンピックでメダルを取るこ とはできないんですね。 私の現役時代は今と違い情報がなく、とに かく国内外のライバルの事が気になって仕方 がなかった。今頃ライバルはランニングして いるかもしれない、ヨーロッパの選手は想像 を超えた練習をしているかもしれない。そん な不安を打ち消すために陰で練習をする、徹 底的に考えるということを積み重ねてきまし た。そうやって 120%の準備をするプロセス が自信に繋がっていきました。 また、コンディショニングという当日に 100%の力を持ってくるトレーニングも行 います。 試合当日はさまざまな天候の中で、 信号が青になったらとにかくスタートしな ければなりません。どんな状況でも自分自 身に勝つことが求められます。流れを引き 込む力、プレッシャーを楽しむくらいの気 持ちがなければ、大きな舞台で結果を出す 原田:当時は周りの選手が闘志むき出しの 人たちばかり、そうやって皆が自分を鼓舞 して 尖って いましたね。ひとつの道を 進むとき、 自分をしっかり持っていること、 プレッシャーを利用するくらいの気持ちの 強さがなければ極めることはできません。 私はどんどんマスコミに出ていって自ら プレッシャーをかけました。成績によって は、 様々な反応もありましたが、 オリンピッ クという大きな舞台で存在感を示すために は、それくらいの気持ちがないと勝てない と思います。大きなプレッシャーの中で結 果を出すこと、もし失敗したとしても、そ ことはできないのです。 こには多くの学びがあり大切な自分の財産 になります。 時代の変化もありますが、今はネットで 検索するとライバルの練習内容なども簡単 に知ることができて、安易にその情報を信 じて表面的な思考になり、精神的な甘さに も繋がっていると思います。最近ではプ レッシャーを掛けないような傾向もありま すが、プレッシャーを避けるようならば、 いざという舞台で結果を出すことはできな い。プレッシャーを乗り越えて初めて厳し い接戦を勝ち抜くことができるのです。 今も現役の葛西選手(土屋ホーム)は経 験も豊富で素晴らしいジャンパーですが、 若い選手が 「葛西さんすごいな」 と言います。 その時点で自分自身に負けているのです。 リスペクトする気持ちは必要ですが、自分 の父親世代にいつまでも負けていてはいけ ないという気概を持って向かっていって欲 しいと思います。
プレッシャーで自分を 奮い立たせる!
大石:選手時代どのようにプレッシャーと 向き合われていたのでしょうか。
大石誠 の ここが Point
準
備のプロセスで自分を追い込み競技に臨んでいた選手時代の原田雅彦さん。 いろいろなコメントでメディアを賑わせていましたが、 これも原田流のプレッ
シャーのかけ方であったことがわかりました。オリンピックの大舞台でジャンプ台に 立つと、 あとは自分自身との勝負になります。その瞬間で最高の成績を出すためにも、 不断の準備が必要であることを理解しました。ビジネスの世界でもプレッシャーはあ ります。そのプレッシャーに勝つために、どこまでの準備をしているか。考えさせら れるコメントでした。
Business Insights Vol.58 2015年 8月 発行
編集長:大石 誠 編集:石田 恵 / 柴田 憲文
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