ビジネスインサイツ68
- ページ: 18
- 18
JMAC EYES
最新のコンサルティング技術・事例・実践方法などについて コンサルタント独自の視点で語ります。
アジア製造拠点の成長を実現せよ 〜利益を創出し続ける仕組みづくり・人づくり〜
プロセス・デザイン革新センターセンター長 チーフ・コンサルタント
角田 賢司 Kenji Tsunoda
アジア製造拠点の 実態を直視せよ
日本製造業はアジア市場の重要性の高 まりに応じて、製造拠点の成功や成長に 向けた取組みを強化しているが、成功/ 不成功の企業間格差が大きくなってい る。
つぎの3つのステージを経て成長してい くことが大切である。
ステージ1: 製品を出荷できる
まず最低限実現しなければならない 「製品を出荷できる(玉を出せる)」こ と、これには日々の管理がもっとも重要 で、正しい生産計画を立案し、現場がそ の計画を遵守できるように取り組む必要 がある。肝要なのは現場をマネジメント する第一線監督者(職長・班長クラス) の管理力を高めることである。
ステージ3: 継続的・自律的に成長できる
そして「自立的につねに高いQCD目 標に向かって改善を進めて実現する」と ともに、現地の人材による運営が進み、 現地の人による現地の人の育成が進むこ とが重要である。このような状態になれ ば、日本人赴任者を最少人数にすること ができ、現地の人材を中心とした製造拠 点運営が実現することになり、現地化さ れた状態といえる。
豊富で安価な労働力を活用すれば、ど の企業も利益を出せるのではないかと思 われるかもしれないが、製品売価の下 落、売上量の減少、調達品の不具合や納 期遅れなどによる製造工程の停止や追加 費用の発生、製造工程における不良発生 による材料の追加発注や納期遅れ、現地 で優秀な人材が育たないため日本人管理 者の過剰な配置、優秀な現地人材の雇用 継続のための人事制度の崩壊、最低賃金 の上昇による労務費の高騰……など、利 益が出ない理由は多岐にわたる。
ステージ2: QCD改善を実践できる
つぎに「製品競争力を高めるための QCD改善を実践できる」であるが、こ れは日々の問題解決を行う日常管理と、 標管理が同時に機能しなければならな QCDを高めるための課題解決を行う目 い。日本人赴任者が高いレベルの管理技 術、固有技術を駆使して課題解決を行う 際、現地の人材との連携のなかで課題解 決の実行や定着化を行いながら、課題解 決技術を現地管理者にトランスファーす る事も重要となる。
この3つのステージは一足飛びに上が れるものではなく、1段ずつ上がること で強い土台づくりが実現する。自社のア ジア製造拠点が現在どのような状態にあ る製造拠点なのか、正しい打ち手は何な のか、ということを考えて強化の方向性 を定める必要がある。
実態に応じた 打ち手が必要だ
製造拠点が利益を創出するためには、 自立的成長を促す取組みを進めなければ ならない。そのためには強い土台作りが 必要である。強い土台作りのためには、
アジア製造拠点の 成長のゴールを見極めよう
日本国内とは文化も風習も異なるのが アジア製造拠点。日本で行っているマネ ジメントがそのまま通用することはな く、その国の文化、風習に適合した「良 い仕組み」をつくること、そしてその仕 組みを運用できる「良い人材」を育成す ること、この2点が大切である。 アジア製造拠点の現在のステージ、今 後の成長すべき方向性、それらを明確に したうえで、アジア製造拠点の成長を実 れら3つのステージを見極め、適切な仕 拠点の成長の実現を支援していく。 現させなければならない。JMACではこ 組みづくり・人づくりを進めながら製造
東京理科大学大学院修了後、1998 年 JMAC 入社。製造 業の収益向上目標を達成するための支援に取り組んで いる。おもなコンサルティング内容は人や設備の生産 性向上、品質向上のみならず、調達コストダウンや在 庫削減、製造 LT 短縮など、複合的なテーマを同時に展 開する総合目標達成のマネジメント支援である。近年 は製造業のグローバル化にともない、タイ・ベトナム などアジア製造拠点支援として、生産性向上や品質向 上の成果実現とあわせ、マネジメントの仕組みづくり、 ローカル人材育成を実践している。
角田 賢司 プロフィル
本記事は JMAC のホームページで連載中の「JMAC EYES」の要約版です。完全版は www.jmac.co.jp/jmaceyes で。
- ▲TOP