より一層のコストダウンを! 高まる購買・調達部門への要求購買・調達部門は、原材料である「直接材」が主たる領域だが、最近では「間接材」も担当するケースが増えているという。また、調達に伴う「CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)」も、調達部門の役割として重視されてきている。企業内の責任範囲が広がるなかで、急激な原材料費高騰に代表される厳しい環境と向き合いながら、コストダウンの実現を目指す必要がある。しかし、目標達成の難度は年々高くなっていると加賀美はいう。その背景には、リリースから生産終了まで製品のライフサイクルが短くなっていること、レアメタルといったもともと入手が難しい材料で、さらに世界的需要が高まるなど、さまざまな理由がある。「コストダウンの目標値自体も上がっています。以前は年平均して1〜2%程度だったコストダウン目標が、ここ5年ほどの間に、年間10%台や3年間で20%というケースが出てきました。景気の関係もあり、購買・調達部門に対する経営の期待が高まっているのです」それを証明するように、加賀美のもとに持ち込まれる案件数も増加している。「以前の調達部門に関するコンサルティングは、全社的な取組みの一部としてコストダウン支援を行う案件がほとんどでした。現在は、調達部門に設定されたコストダウン目標は、従来の仕事の進め方では到底達成できない水準であり、調達部門自身が仕事の進め方を変える取組みとして、コンサルティングを必要とする例が多くなっています」 舞台は世界各地へ グローバル人材へのニーズ日本の経済は、刻一刻とグローバル化している。その対応として「バイヤーには、従来の調達スキルに加えて、相手国の言語、商習慣、法律についての知識は、当然要求されます。そのうえ、政情などのいわゆるカントリーリスクとも無縁ではいられません」単に安くてよいものを調達するに留まらず、契約するサプライヤーはきちんと供給を続けられるのか、納品の段階で条件変更を要求される可能性はないか、関連法規や規範を守った事業運営・取引が行われているか、政治的な混乱のリスクはないか、相手を見極める能力が必須となる。「もともと、バイヤーには可能な限り多くの情報収集を行い、その後、その情報を見極める力が必要とされます。その範囲が、より広く複雑になってきています。あえて、安価な条件を提示する相手ではなく、多少コスト高でも安定供給できる相手を選ぶこともありえるのです」バイヤーは、こうした状況判断のなかで、同時にコストダウンと安定調達の実現を要求される。調達業務は、従来からこのようにバランスを求められる難しいものだったが、今後ますます複雑になる方向にあり、現在より簡単にはならないと加賀美は言い切る。だからこそ、購買・調達部門への期待、人材育成の必要性が高まっているといえよう。 “属人化”によって見えない購買・調達部門の内情厳しい経営環境に直面する中で、購買・調達部門が果たすべき役割は大きくなっている。しかし、重要な位置にありながら、この変化に対して従来の体制や仕事の進め方のまま対応を余儀なくされているケースが多い。経営陣もこれらの課題を正確に理解・把握していないケースも少なくない。「残念ながら他部門からは、購買・調達部門はどういう業務をしているのかわかりにくいのです。単に、購買時の交渉のみをしていると考えられています。実際には、奥深い知識・スキルを持っていなければ、うまい交渉を行い、成果を挙げていくことはできません。しかし、その知識やスキルを調達部門自身も明確に定義していないことが、多くの企業の課題です」加賀美は、そこに日本企業の購買・調達部門に多く見られる“属人化”の実態があると指摘する。「多くは、バイヤーとしての能力とは何か? ということが定義されていません。その状態では、教育の手段もあいまいになりがちです。教育制度をもつ企業でも、形式化した内容であるケースも多く、単に先輩バイヤーについて現場で体験させることをOJTと称しバイヤー教育としている場合もあります。その結果、ベテランがやれば大きな成果が出せる事例でも、経験の浅いバイヤーが担当すると成果が小さい……という“属人化”が起きています」これが購買・調達部門が直面している現実なのだ。「調達が経営貢献していくためには、人材の育成・強化は大きな課題です。それには、人材要件やスキルの体系化が必須の作業であり、これは、我々JMACが得意とする分野です。昨年度、JMAが立ち上げた購買・調達(CPP=Certified Procurement Professional)資格認定制度でもその体系化を試みており、JMACも参画をしました」
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