第3回 ミニマムコストを実現する購買・調達改革

開発購買を実現した企業が業界をリードする

開発段階からの参画! 部門間連携によるコストダウン

JMACでは、開発購買を重視している。開発購買の重要性は、広く知られてきているが、「うちはうまく行っている」と胸を張っている企業事例はまだ少ないと加賀美はいう。「通常、コストダウンの可能性は、開発・設計段階で、80%程度が決まるといわれています。量産段階に入ってからでは、コストダウンのために見直しをしたくても20%しか改善できる余地がないのです。しかし、開発段階から、購買・調達部門が参画し、コストダウンを検討しつつ仕様を決定すれば、これまで手をつけられなかった部分のコストダウンが可能になるのです」事実、加賀美の手がけた事例では、開発購買によって新製品の原価を20%以上減らした企業もあるという。開発購買の効果は、単にコスト面だけではない。経営戦略として重要な機能があるのだ。「製品ライフサイクルが短縮化している昨今では、開発購買の重要性は高まっています。これはさまざまな商品全般にいえることです。たとえば携帯電話の新モデルは、6ケ月サイクルで新モデルが市場投入されます。従って、新製品上市後の生産期間は、2〜3ケ月程度です。以前は、製品は長く販売されていたので、その間にブラッシュアップして完成度をあげ、競争力向上ができたのですが……」開発購買によって完成度の高い新製品を市場投入することで、企業は市場競争力を高めることができる。つまり、他社の先取りをできるわけだ。「そこに気づいて、早く着手すればするほど、他社より先んじることができるのです」

革新の効果は競争力にも影響! 経営戦略上の武器になる

「購買・調達部門の難しさは、正解はひとつではないということに集約されます。自社の技術も変化し、外部の調達環境も変化する中で、競合動向も見据えつつ最も適切と考えられる戦略を立案・実行をする必要があります」そのためには、調達戦略を経験的な直感だけでなく、ロジカルに考えられるようになるかどうかが重要だ。そして、今後も進行していくグローバル化によって、購買・調達部門はどのような現実と向き合うことになるのだろうか?「それはグローバル化と、ローカル化のバランスを取る必要性が出てくることだと思います。資材を調達する相手は、より一層世界に広がっていきます。それと同時に、世界各地に存在する生産拠点でのローカル化に対応することが求められるでしょう。ローカル化とは、拠点の環境にかかわらず、同水準の製品を安定供給できるサプライヤーを確保して、よい関係を作っていくことです」加賀美は、購買・調達部門の革新は必ずできると確信しているという。これまでに手をつけにくかった部門だけに、一度変化が起きれば、その効果は大きい。「経営層が本気になって取組めば、必ず効果を出せます。いまこそ、チャレンジしてください」これからの戦略を支え、経営陣にとっての心強い味方となれるかどうか、購買・調達部門の今後が注目されている。

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