第4回 中国ビジネスで生き残れ!〜巨大なアジア市場を攻略する〜

一般法則では解決できないアジア市場 日本企業の手腕が問われる

アジアを制する企業とは? 市場の創造がポイント

しかし、実際にアジアで市場を創るというのはどういうことなのだろうか。銭はこんな事例を紹介した。「これは上海の話ですが、それまでは小売といえば、伝統的な市場か、欧米式のスーパーマーケットでした。ある現地企業に、そのどちらでもない独自の業態としてデパ地下形式の店舗を提案しました。が、予定地は当時何もない更地でしたし、デパ地下を知らないクライアント幹部からは反対の声もありました。JMACでは、中国でも富裕層が増えており、デパ地下のような販売方法には需要があるという確信がありました。高級感があり、きめ細やかなサービスを提供するデパ地下がどんなものなのか、どういう層が利用するのか、現地企業の幹部に日本への視察を行い、実際に見てもらうことからはじめました。理解して計画を共有したあとの実行力は中国では素早く、中国流のデパ地下が実現しました。このときは業態の戦略から実施する際のデザインまで全体の支援を行いました」(銭)このデパ地下は開店以降いろいろと改良を施しつつ、好業績をあげているという。日本の視点・ノウハウが市場創造をしたひとつの例といえるが、高品質・高効率を両立させるという考え方にアジア戦略のヒントがありそうだ。

遅れを取戻し躍進につなげる 今こそアジア戦略見直しを

過去にアジアに進出して手痛い経験をした日本企業も存在する。「その難しさは合弁会社のケースに顕著です。かつて現地資本と共同で設立した会社の見直しも必要ですが、撤退などのケースでは、日本企業は大きな損失を蒙り、機会を失っている場合があります。この場合は現地経営に精通した専門家チームで素早く対応する必要があります。企業価値算定と交渉戦略などでは、中国側に都合のよいよう運ばれてしまうというものです」(銭)こうすれば必ず成功するという便利な方程式は存在しない。富永は「一般法則がない、ということがアジアの特徴」という。「それでも市場をつかむこと、よい現地の人材を確保すること、スピード感のある戦略を打ち出すことが、アジア戦略成功で共通するポイントになります。最近の中長期経営計画では、2013年までに中国の事業規模を3倍にする、などとうたう企業がありますが、今なら、この数字は決して挑戦的ではあるものの、実現不可能な目標ではないといえます」(富永)ただし、それには日本企業が、フィールドを日本国内からアジアに移し、大胆な戦略を打ち出すことが重要だ。「日本企業は、もっとアジアに真剣に取組んで欲しいと思いますね」という銭の言葉が意味するところは重い。

今後、経済の中心はアジアに 巨大市場の成長をものにする


今、日本全体に元気がないと富永はいう。アジアを取入れていくことがひとつの打開の方向ではないか。「Asianizationとは、元気なアジアの活力を取込む、ということです。アジアとともに成長する、そういう長期的なビジョンを持ちましょうという呼びかけでもあります」(富永)それは日本中心でアジアは周辺という戦略を、《日本=アジア》発アジア向けという戦略へのシフトも含んでいる。「日本企業には数多くの長所があります。そのよいところを、アジアという大きな市場で鍛え直すことで、日本に限定されたものではなく、普遍的なものとして世界に提供できるのではないかと考えています」(富永)「日本は同じ東洋の国として価値観や文化を共有している部分も多いのです。そのアドバンテージをいかすことで大きな革新が可能でしょう」(銭)
内需型の産業であってもアジア化が可能だと、富永は提案する。過去のアジア進出は輸出型企業が多かった。しかし、食品、住宅、小売、サービス業など、これまでアジア市場への展開が難しかった分野にも需要は存在している。「JMACは、こうした内需型企業へのサポートも得意としています。市場の創造によって、新しいビジネスを実現できます」(富永)JMACの考えるアジア戦略、それはアジア発のスタンダードによって生み出される21世紀のイノベーションなのだ。

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