第8回 イノベーションで突破する! 〜開発プロセスと開発組織を抜本的に革新〜

長期的開発で不可能を可能に! 未来を創造する企業になる

品質保証・生産準備も参加 開発の上流で行うプラットフォーム作り

「RAPIDにおいて、プラットフォームプロセスを設けることの意味はとても大きい」と塚松はいう。「過去には、種類ごとリレーのようにバトンタッチしていく工程逐次型のやり方がありました。このときに上流工程で起きた完成度の低さは、やり直すことによってカバーしていました。その後、コンカレント型という考え方が出て、現在の主流となっています。各フェーズが一部オーバーラップしている形ですね。たとえば、開発部門が企画の初期段階から入っています。上流工程に次以降の下流工程が並行して設定されているので、各工程の担当者が協力しあい、すりあわせをします。けれども、RAPID思想の工程は、従来の形をさらに進化させた形式です」RAPID革新は、ポストコンカレントとして新しい潮流を作り出すと、JMACでは捉えている。
RAPIDでは、プラットフォームプロセスには、これまで下流工程であった品質保証や生産準備部門も加わり、開発の先行工程として仕事をすることになる。「下流工程とされてきた品質保証や生産準備部門がプラットフォーム作りに関わることで、開発品質を向上することができます。たとえば、品質向上には生産後の『品質リスクを予見すること』『予見したリスクに対して予防的な解決策を考案し、実施すること』の2つが必要です。ところが、開発部門だけでは後者はともかく、前者をカバーしきれません。そこで品質保証部門が、プラットフォーム作りにおいてこの部分を担当することで、問題を解決できるのです」品質保証部門からすれば、プラットフォームとして盛り込むことで、品質保証フェーズでの問題を軽減でき、最終的に担当分野の責任を果たすことができるというわけだ。

個々のパフォーマンスを高める スマートライン&リッチスタッフへの進化

企業を取巻く環境の変化に伴い、開発の現場は、『開発スピードの向上』と『人員削減』という一見相反する要請にさらされている。ライン・スタッフ体制を取っている企業では、開発業務を行うライン人員の増員と、彼らを補佐するスタッフ人員の削減という形で対応してきた。しかし、「このやり方では本質的に解決することはできない」、と塚松は考えている。「開発スピードを上げたいのにライン人数が増えれば、調整のための時間のほか、意志決定の機会も、それにかかる時間も増加してしまいます。それなのに、スタッフの人数は減っているので、ラインの負担は増えてしまうのです。このような状況は、ヘビーライン&プア・スタッフの構造に陥っているとでもいえるように思います」
「RAPIDの考え方では、1人が対応できる範囲を増やし、少人数で対応するというセル制の業務形態を取ります。細分化された担当範囲よりも、ある程度の範囲を1人で対応した方が、業務はスムーズに展開するものです。つまり、個人のパフォーマンスを高めるということですね。スタッフが専門性や先行性の高いサポートをすることで、ラインのパフォーマンスを高めることができます。JMACでは、これをスマートライン&リッチスタッフ構造と呼んでいます」(塚松)

長期的視野が可能にする 不可能領域からの製品開発力

今後、企業は経営の舵取りをどのように行っていけばよいのか、将来の見通しと方策を求める声は多くの業界から聞こえてくる。経済環境の悪化により、そうした要望はこれからも増えていくだろう。激しい状況の変化にも強く、独創性をもった企業体質を現実にするには、どういったことが必要となるのか。どの企業も、不況に負けない企業価値を模索している。
塚松は、長期技術開発の重要性を強調する。「企業価値となる独創的・創造的な開発力、技術力を育てるには長い時間が必要です。それは、研究がスタートしたときには、不可能といわれる夢のようなものかもしれません。けれども、こういう製品が世の中に必要だ、世界に提案したいという理念をもって進めていれば、やがて時代が追いついてくるでしょう。世界初といわれる製品の多くは、そうした企業の“夢”から始まっています。当然、製品化まで10年以上かかった例もありますが、開発チームをバックアップするトップの強い意志と、役に立つ製品を世に送り出したいという開発メンバーのこだわりによって、夢が現実のものとなっているのです」企業のもつ思想と、それを実現するためのRAPIDによる研究開発体制、その環境をフォローする経営陣の意志が、新しい価値を生み出すのだ。

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