イタリアで新たなる形に進化 技術KIからビジブル・プランニングへイタリア上陸以後、成功事例を重ねているJMAC手法の顕著な例として、技術KIが挙げられるだろう。この手法は、イタリアでは主にR&D分野のプロジェクト・マネジメントの領域で活用されている。「ある製品を開発するときは、開発部門だけでなく、前後の工程を担当する部門との連携が重要です。複数の部門に対して横断的に情報を共有化し、意思の疎通を図るために使用しているのです。私たちは、この手法を特に“ビジブル・プランニング”と名づけました」ビジブル・プランニングによって、製造部門からのフィードバックを受けて起こりうる問題を設計段階で解決したり、設計者が変更したときに過去の問題点や課題を把握したうえで、業務を開始できるなどの利点が生まれ、プロジェクトがスムーズに進行するのである。 上司にもはっきり意見するイタリア人気質 調整と共通理解が重要なポイント日本ではコンサルティングを進めるにあたり、お客さまのチーム内でのコミュニケーションを活性化し、積極的に意見を出す様に進めていくことは大変重要であるが、イタリアではそれを特に意識する必要性はないという。「イタリアでは、はっきり意見を述べることには、全く問題はないですね。たとえ上司が決めたことでも納得できなければ“NO”ということにためらいがないんです。最近、ビジブル・プランニングを導入したある企業でのことですが、キックオフの日に10人くらい集めて説明をしていると、参加の予定がなかった技術部長がやってきて『うちの技術者を連れて行って何をしてるんだ。こんなことは時間の無駄だ。仕事が進まないじゃないか』と怒るのです。取締役がビジブル・プランニング導入を決めたのですが、技術部長は無駄と考えて反対したのです」意見をいわせることへの苦労とは無縁というわけだ。結局、このときは、その技術部長もビジブル・プランニングに参加をさせ、同じことができるようにレクチャーし、効果を納得してもらえるまで毎日ランチも付き合って、理解を求めたという。「日本では、こういうことは起きにくいのではないでしょうか。イタリアでは、誰でも必要だと思えばはっきり反対するので、そういう人たちも巻き込んで、理解してもらいながら、全員の賛成を得ていくこともコンサルタントの業務のうちですね」 柔軟性のあるイタリア人気質 導入後に起きた思わぬ効果ビジブル・プランニングの事例として、モンタナーリはおもしろい例をあげた。「北イタリア山地にある企業では、とても熱心にビジブル・プランニングに取組み、業務全体の根本的な改革まで実現できました。ビジブル・プランニングを高く評価してくださったんですが、なんと工場の移転作業のときにまでビジブル・プランニングを使って進行管理をしたんですね」実はイタリアでは、立てたスケジュール通りにすべて物事が運ぶということが非常に少ない。多少の遅れは気にしない面があるのだ。「だから、一番驚いたのは、移転作業が本当に予定通りに進んだということでした。これはイタリアでは驚くべきことですね」とモンタナーリはいう。模造紙に書かれていた移転終了の日時に合わせて、ぴったり作業が終わったのだそうだ。「そして、最後に新工場の電源を入れるべく、責任者がスイッチをオンにしたのですが、残念ながら、電力会社のミスで電気が通っていませんでした」 |
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