第10回 イタリアで広がる日本発のメソッド! イタリアコンサルティング事情

世界に通用する高い競争力を 独自性が新たな価値を生み出す

イタリア企業の個別化と創造性

モンタナーリはこれまで、中規模企業の競争力を高めるための支援を行ってきた。「イタリア企業は、ニーズをつかんだ個別化の強みのほかに、さまざまな問題解決に取組める創造性をもっています。イタリアで創造性というと、デザイン面が思い浮かぶでしょうが、この創造性は製造の現場でも発揮されるものです。たとえば、ある企業の大きなプロジェクトでビジブル・プランニングを導入したのですが、あまり効果が出なかったことがあります。原材料の納期、情報の収集などさまざまな項目を模造紙に書き込んで、掲示板として貼り出しました。これはごく標準的なフォーマットで、他社で成功した実績のあるものでしたが、2週間しても、その掲示板が使われることはほとんどなかったのです。これはおかしいということで、聞き取りをしたところ、実はその企業では使うことがない項目ばかりだったというのです。そこでフォーマットを根底から見直し、その企業の現状に合った、実用性の高いものに変更し、その後は、活発に使用されるようになりました」新たな問題が発生したとき、どうしたら解決ができるのか、どの部分をどのように変えたら目的を達成できるのか、そうした課題にも創造性は発揮されるとモンタナーリはいうのだ。仕様変更や新たな依頼にNOといわず、どうにかして解決の道を見つけようとする。彼が、イタリア人を“職人的”という部分は、こうした気質が関係しているのだろう。日本企業との意外な共通点がかいま見える。「もちろん、企業がデザインを重要視する傾向が比較的強い、という創造性の高さも、確かにあります」
モンタナーリは、製品そのものの開発を中心に、これまでコストを下げるための提案も行ってきた。創造性と個別化、さらに柔軟性も駆使してニーズに応えようとした結果、さまざまな種類の製品を抱えてしまう企業は少なくないからだ。こうしたバラエティコストを意識していない企業に新しい見方を提案し、コスト削減を実現する手法を使う。イタリア企業のもつ特徴や個々の企業の独自性を生かしながら、競争力を高めていく。こうした競争力の強化は、不況時だけでなく、グローバル化が進むにつれ、今後も必要性は高まるだろう。

グローバリゼーションも具体化段階に 最前線で動きを感じる

グローバル化の流れは、もはや止めることはできないだろう。モンタナーリは、単に言葉のうえではない、具体的な動きを肌で感じ取っている。「JMACミラノでは、これまでもグローバル化を推進するプロジェクトを支援してきました。現在の感触は、以前に比べてもっと現実的な必要性に迫られ、さまざまな企業が対応せざるを得ないという印象を受けています」ヨーロッパにあるJMACの拠点では、コンサルティング技術の研究を目的とした会議をしばしば開いている。交流に加えて、技術開発をどのように共同して行い提案していくかなどを検討している。そこでも、今後の国際化と統合、競争力の問題が話し合われ、革新の重要性が再認識されたという。「JMACのヨーロッパ拠点のなかでも、今まで手がけてきた分野とは違う業界に、私たちが持っているソリューションで問題解決を提案できるという話になりました。たとえば、サービス業などがそうですね。特にイタリアでは製造業と違って、公共機関や医療機関、金融機関というのは、あまり効率化の対象とはなっていませんでした。つまり、ニーズがなかったのですが、これからは状況も変わってくると見ています」サービス業界へのコンサルティングは、日本でも新たな展開の手応えを感じている部分でもある。
ヨーロッパ内でも経験と知識の交換、協力体制の必要性を強く感じているモンタナーリだが、ヨーロッパと、アジアという大きな地域同士でも、同じような動きが生まれている印象を受けるという。「現在でも、ヨーロッパに拠点をもつ日本企業のニーズに応えていますが、これからはもっと多様な課題に対応する必要性がでてくるでしょう。こうした動きが、グローバルに展開するJMACへの新たな期待にもつながる。という思いもあります」モンタナーリは、大きな時代の変化を、各企業が取組んでいる制度改革や業務改善といった現場の動きによって、今、体感している。

国や文化、世代の差は重要なヒントに 新しい可能性を見いだす

グローバル化の反面、1つの国のなかでも地方によって文化や気質的な違いが生まれることはよくある話だ。イタリアでも、北イタリア、中部イタリア、南イタリアでは、気質がかなり異なるという。「こうした違いは、かなり明確に出ています。たとえば、北イタリアでは新しいものを取入れるのに熱心で、すぐに始めようという風土があります。スピード感があるんですね。けれど、南になっていくと、もっとのんびりした雰囲気になります。ある企業で、異なる地方拠点に導入するときは、同じやり方はせず、説明の仕方や頻度など方法を変更して対応します。また、同じ手法でも、現地支店で自分たちに合うよう、状況に応じて改善することが多いですね。こうした変更に対して、コンサルタント側にも柔軟性が必要です」
グローバル化による統合の重要性を指摘しながらも、モンタナーリはこうした“違い”に着目している。「統合が進むなかでも“違い”が価値になる事実も忘れてはならないでしょう。“違い”からヒントを得て、新しい価値を生み出していくこともグローバル化の別の一面です」そこには、イタリア企業の特徴をよく知ったうえで、課題を解決し、強みをさらなる競争力へと育てるモンタナーリがもつ、コンサルタントとしての鋭い視点がある。
さらに、モンタナーリは価値のある“違い”として、世代差をあげる。「JMACでは常識となっていることですが、若い世代の意見をよく聞くことが大切です。これは、私自身が師事した高達氏から学んだことでもあります。若い人材というのは、経験はありませんが、年齢が若い分、新しい見方や能力を手に入れることができます。私も、後輩の意見はよく聞くようにしています。世代の違い、地域の違い、文化の違いなど、さまざまな違いがありますが、そこから新しい価値を生み出すことができる、私はそう信じています」
技術や手法だけでなく、“違いをとらえて新しい価値を生み出す”日本発JMACのDNAは確実にイタリアにも受け継がれてるのだ。

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