第15回 継続的に経営目標を達成する! 全社最適型マネジメントシステム

自律的に機能する! 全社最適型マネジメントシステム

“全社展開体系”で“見える”化 現場の視野を部門から全社に広げる!

現場で業務を担う各人員は、どうしても目先の作業にとらわれがちになるし、意識するとしても所属する部門が掲げた目標どまりになりやすい。だが、経営目標を実現するためには、第一線で活躍する現場が動かなければならない。その一貫性はどう保てばいいのだろうか。石山は、経営目標、各部門の目標と施策を一覧できる全社展開体系を示した。「横軸にあるのが経営目標です。経営側からすれば、売上をアップするにはある製品をもっと売らなければならない、コストダウンを図るには製造原価などを下げなければならない、となります。この理屈は明確ですよね。問題は、どの部門の何でそれを実現していくか、です」たとえば、ある製品でコストダウンをめざすときに、製造原価でいくら、販売管理費でいくらと目標を設定する。さらに製造原価にかかわる生産部門や購買部門などが、全体の目標が実現するように各自目標を設定する。そこで出てくる部門目標を総合すると、経営目標が達成されることになる。「あとは、部門内で目標をクリアするために計画を立てるわけです。どこのラインでは、何秒以内にいくつの製品ができなければならない、などのように、最終作業者の目標にまで経営目標との一貫性を維持することが重要です」全員が、自分たちの担当する改善施策をなぜ行わなければならないのか、そこを自然と理解できるようになる。「管理職にある人でも、他部門が何をしているかということを案外知らないものです。ましてや、自部門も含めて考えたときに経営目標に対してどれだけ自身の計画が妥当なのか、なかなか判断しづらいのですね。横軸で見ていくことで、経営幹部、管理職といった人たちが目標のプライオリティを共有化できます。また、縦軸に表現される全部門の改革施策とあわせて見ていくことで、施策のムダや重複、相反する内容などをなくしていくことができるのです」
この体系図は、JMAC、JMA(社団法人日本能率協会)の共同研究によって現在の形になったという。「TPマネジメントをベースとして、さまざまな手法やノウハウを用いて、全社最適型マネジメントシステムを可能にしています。実際には、お客さまの事業もさまざまですし、おかれている状況、問題解決のポイントも個々に異なるので、定型のものをぽんと当てはめることはできません。この体系を使いつつ、お客さまそれぞれの実態にカスタマイズされた全社最適型マネジメントシステムをステップアップ方式で提供するのが私たちのやり方なのです」この体系図は、全社員が見られる形で掲示しておく必要がある。「以前は模造紙を使っていました。今は全体の概要のみ掲示して、各部門内、個人の担当部分などはパソコンで見る形になっています」

自律型マネジメントを実現する 日本だからこその4つの“感”

現場の一人ひとりが全社の目標を意識し、その達成に必要なことを自発的に行う。そんなマネジメントを現実のものにするために重要なことが、4つの“感”だと石山はいう。「人間は、気の進まないことだったとしても4つの“感”を経験することで自発的に前進しようと努力するものです。たとえば、部長に連れられて新入社員Aさんが、休日に取引先とゴルフをしなければいけなくなったと考えてください。Aさんからすれば、ゴルフの経験はないし休日は潰れるし、結局、あまりいい打数で回ることはできなかったとします。しかし、そこで部長に『初めてでこれだけやれるとは、すごいじゃないか』と誉められるのと、『練習もしてこなかったのか』と叱責されるのとでは、その後のモチベーションは大きく変わります。これが“達成感”ですね。そこから自分のレベルアップを感じる“成長感”、周囲の役に立ったという“存在感”、もっと成長しようという“目標感”に繋がります。この例でいえば、Aさんはもっとうまくなろうと思い、さらに次はもっといい打数で回ろうと目標を掲げて努力するわけです」仕事においてもまったく同じことがいえるそうだ。業務のなかで、達成できた部分を誉められ、以前よりも成長していること、自社の業績に寄与していることを実感しつつ、ステップアップした目標を設定して、次なる達成感獲得をめざす。そのサイクルこそが自律的なシステムの根幹となる。

この仕組みを生かすためには、とても大事な点がある。「それは、できていない部分を指摘するために使ってはいけないということです」これは、石山が説明をするとき、お客さまから誤解を受けやすい面でもあるという。「このシステムでは、各部門がどこで何をやっているのか、どれくらいできているのかを把握しやすくなります。けれども、経営者をはじめ、部門長など管理職にある人は、『ここができていないが、どうなっているのか』と追求してはいけないのです。それではシステムの自律性は失われ、指示されたからやるという旧来の形に戻ってしまうかもしれません。そうではなく、管理職などの上の立場にある人が、部下の成功体験を生み出すための方法として使われるべきなのです」そうして自律性を手に入れた組織では、変化の激しいビジネス環境のなかで、機敏に最適への方向修正を行い、大きな成果を生み出すことができる、と石山は確信している。

導入成功に導く3つのキー 企業の基礎体力をあげる

このシステムでは、企業は従来と大きくやり方を変えなければいけなくなる。導入を成功させるには、3つの秘訣があると石山は明かす。「まず、どのコンサルティング案件においてもいえることなのですが、導入後の成果をきちんと提示するということです。経営者は、成果の有無でもってそのシステムが有効であるかどうかを判断するわけですから。全部門を見渡せることによって、同じテーマを別々の部門が独自に取組んでいたことに気づき、一本化できたとします。すると、手が空いた方は異なるテーマに取組むことができます。今までは10しかできなかったことが20できるようになり、そのおかげでどれだけの効果が出たのか、そこを理解してもらえるようにします」当然、経営目標も任せきりではない。石山らは企業の実態を診断して、経営者の想いを実現する目標設定、改革方法設定からサポートを行う。
「2つめは、成果を出すのは、私たちコンサルタントではないということです。ここで動かなければならない、と私たちが気づいたとしても、それを指示してやってもらうのではダメなのです。あくまで、現場が動かなければなりません。動くべきときに動くことができるかどうか、というのは、一人ひとりの能力の問題になります。だから、導入当初の段階では、人材教育の部分も同時進行で手がけ、“動ける人材”を育てていくことが大事になります」どこにどんな教育をすればもっとも成果が出るのか、ポイントを押さえて提案をしていく。そこで威力を発揮するのが、JMACの擁する多彩な教育プログラムだ。
そして、最後が4つの“感”を根づかせることだという。「達成感をもたせるということは、言葉の上では理解できるのですが、行動に移すにはなかなか難しい面があります。部下に達成感を得てもらうために最も重要なことは、絶対に改革を成功させる支援をミドルマネージャーが実行するということです。そのために私たちコンサルタントは実績を検討・報告する会議などを開く際に、そのまとめ役になる課長・係長・主任などの立場の人と事前に作戦会議をします。資料を見て、なにを誉めるのか、どこに行き詰っていてどんな支援をすれば成功できるのか、どんな教育が必要か、場合によっては効果的に叱る、といった具合に要点を整理しておくのですね」そうして会議に臨み、その後部下が成長すると、この経験が上司にとっても部下育成の“達成感”という成功体験になるのだ。「そうなったら、次は課長を束ねる部長と作戦会議をするわけです」この方法で、全社に4つの“感”を広めていくことができる。ここまで徹底したコンサルティングができるのは、やはりJMACだからである。

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