“全社展開体系”で“見える”化 現場の視野を部門から全社に広げる!現場で業務を担う各人員は、どうしても目先の作業にとらわれがちになるし、意識するとしても所属する部門が掲げた目標どまりになりやすい。だが、経営目標を実現するためには、第一線で活躍する現場が動かなければならない。その一貫性はどう保てばいいのだろうか。石山は、経営目標、各部門の目標と施策を一覧できる全社展開体系を示した。「横軸にあるのが経営目標です。経営側からすれば、売上をアップするにはある製品をもっと売らなければならない、コストダウンを図るには製造原価などを下げなければならない、となります。この理屈は明確ですよね。問題は、どの部門の何でそれを実現していくか、です」たとえば、ある製品でコストダウンをめざすときに、製造原価でいくら、販売管理費でいくらと目標を設定する。さらに製造原価にかかわる生産部門や購買部門などが、全体の目標が実現するように各自目標を設定する。そこで出てくる部門目標を総合すると、経営目標が達成されることになる。「あとは、部門内で目標をクリアするために計画を立てるわけです。どこのラインでは、何秒以内にいくつの製品ができなければならない、などのように、最終作業者の目標にまで経営目標との一貫性を維持することが重要です」全員が、自分たちの担当する改善施策をなぜ行わなければならないのか、そこを自然と理解できるようになる。「管理職にある人でも、他部門が何をしているかということを案外知らないものです。ましてや、自部門も含めて考えたときに経営目標に対してどれだけ自身の計画が妥当なのか、なかなか判断しづらいのですね。横軸で見ていくことで、経営幹部、管理職といった人たちが目標のプライオリティを共有化できます。また、縦軸に表現される全部門の改革施策とあわせて見ていくことで、施策のムダや重複、相反する内容などをなくしていくことができるのです」 自律型マネジメントを実現する 日本だからこその4つの“感”現場の一人ひとりが全社の目標を意識し、その達成に必要なことを自発的に行う。そんなマネジメントを現実のものにするために重要なことが、4つの“感”だと石山はいう。「人間は、気の進まないことだったとしても4つの“感”を経験することで自発的に前進しようと努力するものです。たとえば、部長に連れられて新入社員Aさんが、休日に取引先とゴルフをしなければいけなくなったと考えてください。Aさんからすれば、ゴルフの経験はないし休日は潰れるし、結局、あまりいい打数で回ることはできなかったとします。しかし、そこで部長に『初めてでこれだけやれるとは、すごいじゃないか』と誉められるのと、『練習もしてこなかったのか』と叱責されるのとでは、その後のモチベーションは大きく変わります。これが“達成感”ですね。そこから自分のレベルアップを感じる“成長感”、周囲の役に立ったという“存在感”、もっと成長しようという“目標感”に繋がります。この例でいえば、Aさんはもっとうまくなろうと思い、さらに次はもっといい打数で回ろうと目標を掲げて努力するわけです」仕事においてもまったく同じことがいえるそうだ。業務のなかで、達成できた部分を誉められ、以前よりも成長していること、自社の業績に寄与していることを実感しつつ、ステップアップした目標を設定して、次なる達成感獲得をめざす。そのサイクルこそが自律的なシステムの根幹となる。 この仕組みを生かすためには、とても大事な点がある。「それは、できていない部分を指摘するために使ってはいけないということです」これは、石山が説明をするとき、お客さまから誤解を受けやすい面でもあるという。「このシステムでは、各部門がどこで何をやっているのか、どれくらいできているのかを把握しやすくなります。けれども、経営者をはじめ、部門長など管理職にある人は、『ここができていないが、どうなっているのか』と追求してはいけないのです。それではシステムの自律性は失われ、指示されたからやるという旧来の形に戻ってしまうかもしれません。そうではなく、管理職などの上の立場にある人が、部下の成功体験を生み出すための方法として使われるべきなのです」そうして自律性を手に入れた組織では、変化の激しいビジネス環境のなかで、機敏に最適への方向修正を行い、大きな成果を生み出すことができる、と石山は確信している。 導入成功に導く3つのキー 企業の基礎体力をあげるこのシステムでは、企業は従来と大きくやり方を変えなければいけなくなる。導入を成功させるには、3つの秘訣があると石山は明かす。「まず、どのコンサルティング案件においてもいえることなのですが、導入後の成果をきちんと提示するということです。経営者は、成果の有無でもってそのシステムが有効であるかどうかを判断するわけですから。全部門を見渡せることによって、同じテーマを別々の部門が独自に取組んでいたことに気づき、一本化できたとします。すると、手が空いた方は異なるテーマに取組むことができます。今までは10しかできなかったことが20できるようになり、そのおかげでどれだけの効果が出たのか、そこを理解してもらえるようにします」当然、経営目標も任せきりではない。石山らは企業の実態を診断して、経営者の想いを実現する目標設定、改革方法設定からサポートを行う。 |
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