ビジネスインサイツ55
- ページ: 2
- 2
毎回、革新、成長を続けている企業のトップに 経営哲学や視点についてお話しを伺います。 インタビュアー:JMAC 代表取締役社長 鈴木 亨
「やさしさ」こそが 人を育て、企業を伸ばす
キヤノン電子株式会社
〜キヤノン電子を高収益企業に革新したマネジメント術〜
経営と研究開発の マネジメントの違い
鈴木:酒巻社長は1999年にキヤノン電子の社長に就任さ れましたが、その前はキヤノンの技術者として開発部門 を牽引してこられました。技術者である酒巻社長が経営 のトップに就任された時のマネジメント視点の変化や、 心がけたことなどをお聞かせください。 酒巻:まず研究開発のマネジメントですが、研究開発は 成功率が2〜3/1,000と低いです。成功に向けては多くのパ ラメータがあり、事業化の可能性や、お客様の要望、世 界の動きなど、10年後20年後はどう変わるのかといった 予測が必要になります。そのような成功するかどうかわ からない時点から開発を始めないと競争に先んじること はできない。こういった厳しい条件や、低い成功率の中 で成果を出すことが研究開発のマネジメントには要求さ れます。一方、経営のマネジメントは見なければならな いパラメータが実は少なく、そのスパンも1年単位で指 標を捉えます。また、押さえておかなければならない変 化点はあまり多くはありません。過去の成功した経営モ デルを研究すると失敗はしにくいものです。一概に比較
は出来ませんが、私は研究開発のマネジメントの方が、 押さえるべきポイントが多く存在すると思っています。 そして、研究開発の成功率を上げるために、経営マネ ジメントとしてどうしたらよいかと言うと、開発費を自 己資金で行うことです。新規事業はスピードが問われる ため、借り入れなど融資に頼ると平気で2年や3年の遅れ がでます。これは致命傷になりかねません。ですから、 これは良い開発の芽だと思った瞬間に自己資金で、ゴー ルまでの最短距離を狙うのです。 私が社長に就任した当時、キヤノン電子には不良資産が 100億円近くありました。自己資金を用意するためには目 の前にある借金をなくすこと、それが喫緊の課題でした。 大企業を立て直した先人達の過去の実績を調べてみると、 皆、拡大政策は取らず、必ず縮小政策を取っていたことか ら、まずはコスト削減に手を付けようと考えました。
ドラッカーの著書と出逢い、 自分の生きる道が見つかった
鈴木:キヤノンの技術者になって間もない1970年代のま だお若い頃から、ピーター・F・ドラッカーの「経営の 適格者」を読み出して、今でも繰り返しお読みになって
- ▲TOP