ビジネスインサイツ55
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設 立:1954年5月20日 資 本 金:4,969,150,000円 従業員数:単独:1,752名、 連結:4,841名 (2014年12月31日現在) 主な事業内容: 精 密機械器具、電子・電気機械器具、光学機械器具、 情報機器、コンピュータ・通信機器ソフトウェア等の 開発・生産・販売
キヤノン電子株式会社は 1954 年、株式会社秩父英工舎 として設立。精密機械器具、電子・電気機械器具、光学 機械器具などを中心に開発 ・ 製造している。 1999 年 3 月、 キヤノン電子株式会社の社長に就任した酒巻 久氏は、 環境経営の徹底により、6 年で売上高経常利益率 10% 超の高収益企業へと導いた。 「コスト半分」を断行し、 改革を成し遂げたそのご苦労や、人と企業を育てること への思いをお伺いした。
代表取締役社長
酒巻 久
Hisashi Sakamaki
いるとお聞きしています。当時から経営やマネジメント に興味をお持ちだったのでしょうか。 酒巻:今でもその本をずっと持っています。本はたくさ ん読みましたが、結局はこれが基本ですね。実はキヤノ ンに入社して間もない頃、会社を辞めようと本気で考え た時期がありました。入社後配属された部署の先輩は非 常に優秀な方ばかりだったので、「技術ではとうてい勝 てない、他の職業に変わった方がいいだろう」と考えた のです。そんなときに何気なく立ち寄った自由が丘の本 屋で目に入ったのがこの本でした。当時ドラッカーなん て知りませんでしたが、立ち読みしてみると面白くて、 購入して読んだのが始まりです。 この本を読んで確信したことが、「これからは横串の時 代だ」ということです。近い将来コンピュータの時代が来 て、そのときに必要なのは「深いが狭い技能」ではなく、 「幅広い知識とものごとを多面的に見る力」なのだと気づ きました。当時はまだ横串の視点を持った技術者はほとん どいなかったですから、これを習得すれば、私も生き延び ることができるかもしれないと感じました。 それからは就業時間後、先輩のところに行って設計を 教わったり、講座で経営を学んだりと、幅広い分野の勉 強を続けました。結果としてこれが技術者としても非常
に生きました。横串の視点で生み出したアイディアをも とに700件近くの特許をとり、技術者として先頭を走り続 けることができたのです。 しかし残念なことに、日本では未だにこの横串の視点 が乏しく、技術は世界でトップクラスなのにビジネスで は負けています。40代の頃一緒に仕事をした米アップル 社の創業者スティーブ・ジョブス氏は、横串を早くから 理解し実践していました。この視点があるかないか、そ れが、世界で勝ち残る企業に成長させられるかどうかの 分かれ目だと思います。
シンプルな目標で 現場を育てる
鈴木:会社の建て直しを図る時には、会社全体を巻き込ん だ活動にする必要があったと思います。酒巻社長の思いを 社員の方々にどのように伝え、どう変革していったのか、 改革の仕掛けやご苦労された点などお聞かせください。 酒巻:会社をよくするために大切なのは、「受動的な社 員を能動的に変える」こと、それと「無駄をなくす」こ とだと思います。
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