ビジネスインサイツ55
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﹁やさしさ﹂ こそが 人を育て︑ 企業を伸ばす
〜キヤノン電子を高収益企業に革新したマネジメント術〜
TOP MESSAGE
キヤノン電子株式会社 代表取締役社長
酒巻 久
06 BUSINESS ON VA V LUE
株式会社豊田自動織機
ビジネスモデルの創造は 発想する人材を育てることだ!
10 Human&Organization
ウシオ電機株式会社
これからの「光」を社会に提供する
14 MANAGEMENT BASE
富士電機株式会社
マネージャーの意識が職場を変える
18 iik 塾 20 顔
-第2回新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ前監督
ギャオス内藤氏
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毎回、革新、成長を続けている企業のトップに 経営哲学や視点についてお話しを伺います。 インタビュアー:JMAC 代表取締役社長 鈴木 亨
「やさしさ」こそが 人を育て、企業を伸ばす
キヤノン電子株式会社
〜キヤノン電子を高収益企業に革新したマネジメント術〜
経営と研究開発の マネジメントの違い
鈴木:酒巻社長は1999年にキヤノン電子の社長に就任さ れましたが、その前はキヤノンの技術者として開発部門 を牽引してこられました。技術者である酒巻社長が経営 のトップに就任された時のマネジメント視点の変化や、 心がけたことなどをお聞かせください。 酒巻:まず研究開発のマネジメントですが、研究開発は 成功率が2〜3/1,000と低いです。成功に向けては多くのパ ラメータがあり、事業化の可能性や、お客様の要望、世 界の動きなど、10年後20年後はどう変わるのかといった 予測が必要になります。そのような成功するかどうかわ からない時点から開発を始めないと競争に先んじること はできない。こういった厳しい条件や、低い成功率の中 で成果を出すことが研究開発のマネジメントには要求さ れます。一方、経営のマネジメントは見なければならな いパラメータが実は少なく、そのスパンも1年単位で指 標を捉えます。また、押さえておかなければならない変 化点はあまり多くはありません。過去の成功した経営モ デルを研究すると失敗はしにくいものです。一概に比較
は出来ませんが、私は研究開発のマネジメントの方が、 押さえるべきポイントが多く存在すると思っています。 そして、研究開発の成功率を上げるために、経営マネ ジメントとしてどうしたらよいかと言うと、開発費を自 己資金で行うことです。新規事業はスピードが問われる ため、借り入れなど融資に頼ると平気で2年や3年の遅れ がでます。これは致命傷になりかねません。ですから、 これは良い開発の芽だと思った瞬間に自己資金で、ゴー ルまでの最短距離を狙うのです。 私が社長に就任した当時、キヤノン電子には不良資産が 100億円近くありました。自己資金を用意するためには目 の前にある借金をなくすこと、それが喫緊の課題でした。 大企業を立て直した先人達の過去の実績を調べてみると、 皆、拡大政策は取らず、必ず縮小政策を取っていたことか ら、まずはコスト削減に手を付けようと考えました。
ドラッカーの著書と出逢い、 自分の生きる道が見つかった
鈴木:キヤノンの技術者になって間もない1970年代のま だお若い頃から、ピーター・F・ドラッカーの「経営の 適格者」を読み出して、今でも繰り返しお読みになって
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設 立:1954年5月20日 資 本 金:4,969,150,000円 従業員数:単独:1,752名、 連結:4,841名 (2014年12月31日現在) 主な事業内容: 精 密機械器具、電子・電気機械器具、光学機械器具、 情報機器、コンピュータ・通信機器ソフトウェア等の 開発・生産・販売
キヤノン電子株式会社は 1954 年、株式会社秩父英工舎 として設立。精密機械器具、電子・電気機械器具、光学 機械器具などを中心に開発 ・ 製造している。 1999 年 3 月、 キヤノン電子株式会社の社長に就任した酒巻 久氏は、 環境経営の徹底により、6 年で売上高経常利益率 10% 超の高収益企業へと導いた。 「コスト半分」を断行し、 改革を成し遂げたそのご苦労や、人と企業を育てること への思いをお伺いした。
代表取締役社長
酒巻 久
Hisashi Sakamaki
いるとお聞きしています。当時から経営やマネジメント に興味をお持ちだったのでしょうか。 酒巻:今でもその本をずっと持っています。本はたくさ ん読みましたが、結局はこれが基本ですね。実はキヤノ ンに入社して間もない頃、会社を辞めようと本気で考え た時期がありました。入社後配属された部署の先輩は非 常に優秀な方ばかりだったので、「技術ではとうてい勝 てない、他の職業に変わった方がいいだろう」と考えた のです。そんなときに何気なく立ち寄った自由が丘の本 屋で目に入ったのがこの本でした。当時ドラッカーなん て知りませんでしたが、立ち読みしてみると面白くて、 購入して読んだのが始まりです。 この本を読んで確信したことが、「これからは横串の時 代だ」ということです。近い将来コンピュータの時代が来 て、そのときに必要なのは「深いが狭い技能」ではなく、 「幅広い知識とものごとを多面的に見る力」なのだと気づ きました。当時はまだ横串の視点を持った技術者はほとん どいなかったですから、これを習得すれば、私も生き延び ることができるかもしれないと感じました。 それからは就業時間後、先輩のところに行って設計を 教わったり、講座で経営を学んだりと、幅広い分野の勉 強を続けました。結果としてこれが技術者としても非常
に生きました。横串の視点で生み出したアイディアをも とに700件近くの特許をとり、技術者として先頭を走り続 けることができたのです。 しかし残念なことに、日本では未だにこの横串の視点 が乏しく、技術は世界でトップクラスなのにビジネスで は負けています。40代の頃一緒に仕事をした米アップル 社の創業者スティーブ・ジョブス氏は、横串を早くから 理解し実践していました。この視点があるかないか、そ れが、世界で勝ち残る企業に成長させられるかどうかの 分かれ目だと思います。
シンプルな目標で 現場を育てる
鈴木:会社の建て直しを図る時には、会社全体を巻き込ん だ活動にする必要があったと思います。酒巻社長の思いを 社員の方々にどのように伝え、どう変革していったのか、 改革の仕掛けやご苦労された点などお聞かせください。 酒巻:会社をよくするために大切なのは、「受動的な社 員を能動的に変える」こと、それと「無駄をなくす」こ とだと思います。
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この2つを目標にして会社を建て直そうと決めましたが、 受動的な社員をすぐに能動的に変えるのは非常に難しいこと です。そこでまずは無駄をなくすことに専念しました。目標 はシンプルに 「世界トップレベルの高収益企業になろう」、 そのための手段として、 「TSS1/2」 (TSS=Time&Space Saving) と決めて社員に呼びかけました。 TSS1/2のカギは現場の生産性向上にありますから、私 は毎日のように工場に通い、現場のメンバーに「今作る のに4秒掛かっていたら、どうやって2秒で作れるか考 えてね」などと伝え続けました。半年くらい毎回毎回繰 り返していると、「社長、なんでもいいから半分にすれ ばいいんでしょ」とこちらが言う前に言ってくれるよう になりました。こうやって、思いを現場に根気強く伝え 続けた結果、マネージャー層にもこの考えが浸透して いったのです。 そのうち、現場のメンバーは自分で考えてどんどん作 業工程を改善していくようになりました。あるとき、技 術の進化でパーツが小さくなり、それに対して以前から 使用しているメッキ容器が非常に大きかったので「この 無駄何とかならないかな」とつぶやいたのです。そうし たら工場に長く勤めていたメンバーが、「自分達も小さ く作り替えたいから予算をくれますか」と言ってきまし た。任せてみると、ホームセンターで購入したパーツで 自作し、外注では数千万はかかるところ500万円で設備を 作ってしまったのです。さらに大きなメッキ容器のため に無駄になっていた5kgの金を削減してくれました。 私は、このような成果を上げた社員がいたら、すぐに幹 部全員を集めて表彰します。皆の前で彼らに発表させるん ですね、すると幹部たちも感動します。そして本人には表 彰状、奥様には手紙と贈り物を添えて感謝の気持ちを伝え ます。とにかく、成果を上げたらすぐに褒めることが重要 です。すると、次から次へと意欲的な提案が出てくるよう になり、能動的な人間が増えていくのです。 現場のメンバーの意見は非常に貴重ですし、彼らが変 わることが会社全体を変えていく原動力になります。本 社でも朝7時過ぎから誰でも自由に参加、意見交換がで きるような朝会を私の社長室でしています。お菓子を食 べながら、上下の関係なくざっくばらんに意見を言い合 うコミュニケーションの場で、若い社員などはここで 日々ダメだしをされながら、切り返す術を身に付けて
いったりと別の成長もあります。
「気づき」の場を与え、 管理職を育てる
鈴木:現場が変わることでマネージャー層も変わると言うこ とですね。しかし、マネージャー層からは自分たちの意見も 聞いて欲しいというような不満はなかったのでしょうか。 酒巻:最終的には上の者が変わらない限り、現場がよい 方向へと変わり続けることはできません。ですから、マ ネージャー層ともコミュニケーションを取り、身につけ るべき判断力、実行力を養うための教育をしています。 このときに大事なのが、教えるのではなく気づかせると いうことです。 我が社では現場からの提案制度を推進していますが、課 長職には提案への拒否権を与えていません。そのかわり、 課長の責任は問わず、社長である私が全責任を負います。 本当は拒否した方が良いと思った提案がうまくいった場 合、彼らは自分の判断が間違っていたと反省します。反省 し、原因を考える人は伸びます。そして、周りの意見に耳 を傾けながら慎重な判断をするようになるのです。経験か ら判断力を身に付けて欲しいという考えです。 もうひとつ行っているのが、課長以上の週報を通じた マネージャー教育です。週報を読めば、彼らが今何を考 えどう実行しているのかが把握できます。毎週月曜日の 午前中は、全てに目を通しコメントを書いてフィード バックをしています。 人は自分で気づかないと行動を変えることはできませ ん。とにかく、本人の気づきの場を与えること、そして コミュニケーション、これが大切です。
「現場の人は私が守る」 ―酒巻イズムの根底にあるもの
鈴木:お話を伺っていると、酒巻社長は現場が大事なんだと 一貫してお話しされています。そこを実践されているのは、 ご自身の今までのご経験があったからなのでしょうか。
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酒巻 久
1967年
Hisashi Sakamaki
1999年
キヤノン株式会社入社 研究開発部門でVTR、複写機、ワープロ、 PCなどの開発に携わり大きな実績を残す キヤノン電子株式会社 代表取締役社長就任
酒巻:実は、キヤノン電子に来るまでそのような考えは なかったんです。私はキヤノン時代、技術者として自分 がこの会社を牽引しているんだという自負がありまし た。ですから、遠く離れた工場のことは考えたこともな かったのです。 しかし、キヤノン電子の社長になってから、それは大きな 勘違いだったと気づきました。当時は本社が秩父工場に隣接 していましたから、工場の現場をずっと見ているわけです。 設計の不具合を現場が直しながら製品にしていってくれてい る。そんな場面を目の当たりにする中で、自分は偉そうなこ とを言っていたけれど「会社を支えているのはこういう現場 の方たちの努力なんだ」と気づかされたのです。 アンケートを取ってみると、こうやって会社を支えて くれている多くの方たちが、好不況にかかわらず安心し て定年まで働きたいという気持ちを持っているというこ とが分かりました。かたや、当時の管理職の中には、安 住して学ぶことをせずに業務をこなすだけの者が少なく なかった。自分の努力で選択肢を持てる人たちは何もせ ずとも守られている、こんなバカな話はありません。 私は、業績を立て直す際に全体会議で最初に言ったの は、「現場の方たちはどんなことがあっても私が守る」 ということでした。そして現場の人員に手をつけること はせず、管理職には業績が回復したら戻すと約束して関 係子会社などに出向してもらいました。誰一人文句を言 う管理職はいませんでしたし、約束通り業績が回復し 戻ってもらいました。 現場の制度も定年60歳までは100%保証、その後も65歳 まで仕事を続けることができるように整え、賞与も増や
しました。また、老朽化していた食堂やトイレも一新 し、生き生きと気持ちよく働ける環境を整えていったの です。
経営者に一番重要なのは 「やさしさ」である
鈴木:最後に、酒巻社長から次世代を担うトップ、経営 幹部の方へ向けたメッセージをお願いします。 酒巻:経営者に一番重要なのは「やさしさ」です。それ以 外は無いと言っていい。トップになるんだったら、自分中 心ではなく相手の立場になって考えられるようにならなけ れば、部下たちはついてきません。それはたとえば、繰り 返しメッセージを送る忍耐力であったり、現場を大切にす る気持ちだったり、学びの場を与えるということだったり と、さまざまな場面で必要とされるものです。 そして、今の若い社員に多くの勉強の場を意図的に与 えることが重要です。たとえば、本を読むときに本の最 後に掲載されいる引用文献も同時に読めば、1冊で50冊分 の知見が身に付きます。また、コミュニケーションは メールではなく、顔の見える直接の対話で行うことが大 切です。これを徹底すれば、コミュニケーションが円滑 になり、会社の風土も変わります。 次世代のリーダーには、「やさしさ」とその思いを実 行する「強いリーダーシップ」を持って、自分の使命を しっかりと果たしていって欲しいですね。
鈴木亨の
対談を終えて
酒
ひとこと
巻社長の社長室は何か新しい発想がどんどん出て来そうな、まるで図書館 と実験室が同居した雰囲気で、とても居心地の良いお部屋でした。そこで
技術に対する酒巻社長のお話しを伺っていると、私も技術屋の血が騒ぎ、ワクワク してきました。お話しの端々に現場の方々とのエピソードが出てきましたが、現場 の方々への気遣い、酒巻さんの「やさしさ」を実感したインタビューでした。
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〜「フック、ロック、チャージ」が共通言語に〜
ビジネス成果に向けて JMACが支援した 企業事例をご紹介します。
ビジネスモデルの創造は 発想する人材を育てることだ!
株式会社豊田自動織機
株式会社豊田自動織機(以下豊田自動織機)は、2011 年に「2020年ビジョン」を掲げ新たな目標に向かって 動き出した。しかしその目標は高く、今までと同じ活 動、考え方では2020年のあるべき姿を描けない。そう 感じた当時TMHG経営企画部 部長 稲川 透氏は、新た なアイデアをどう出してどうビジネスモデルに繋げて いくのか、発想を具体化するための新たなプロジェク トを立ち上げた。その活動と、プロジェクトを通して メンバーに根付いた考え方などをお伺いした。
稲川 透
Toru Inagawa
執行役員
経営の柱は 多角化の歴史から生まれた
豊田自動織機は、豊田佐吉が発明・開発した自動織機 の製造・販売を目的として、1926 年現愛知県刈谷市に株 式会社豊田自動織機製作所として設立された。その後事 業の多角化を推進し、自動車・エンジン・カーエアコン 用コンプレッサー、そして、産業車両、エレクトロニク スへと事業領域を拡大してきた。また、同社は自動車製 造部門として発足し、後に分社化した現トヨタ自動車株 式会社を始めとするトヨタグループの源流でもある。創
業 88 年を迎えた現在、生産拠点、販売ネットワークは世 界に拡がり、連結従業員数約 5 万人、売上 2 兆円を超す 大企業グループとなっている。 多角化により複数の事業の柱を持つ同社において、現 在の事業別売上げは自動車関連 50.1%、それに次ぎ、 40.3%と大きな柱になっているのが産業車両である。産業 車両とはフォークリフトをはじめとする産業用の車両を いうが、 同社ではその開発、 製造、 販売だけでなく、 「搬送」 「保管」 「仕分け」にかかわる物流機器・システムも合わ せて開発・生産・販売しているのが特徴だ。 この産業車両事業を担っているのが、トヨタL&F (ロ ジスティクス&フォークリフト)カンパニー(以下トヨ
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タ L&F)である。トヨタ L&F の歴史は、1956 年に共和 工場で初号車「LA 型フォークリフト」の生産開始に始ま り、2008 年フォークリフト生産累計 200 万台を達成、 2013 年には国内販売台数 48 年連続 No.1 達成し、揺るぎ ない基盤を築いている。
者として事業を牽引して行く、将来の核となる年代に成 長してもらいたいという思いがありました。カンパニー トップの理解と強い後押しもありプロジェクトを立ち上 げることができました」と当時の思いを語る。
2020年を見据えた 新規事業への挑戦
強い基盤を持つ同社であるが、2008 年リーマンショッ クの波は厳しいものだった。売上が低下することで 2008 年度、2009 年度と2期連続の最終赤字を余儀なくされた。 回復基調を待ち、同社は 2011 年秋「2020 年ビジョン」を 掲げた。変化を続ける時代環境の中、 新たな成長のステー ジへと向かうための経営の羅針盤である。 トヨタ L&F でもカンパニーとしてのビジョンを作成し 高い目標に向かって動き出そうとしていた。当時 TMHG 経営企画部 部長で、現在執行役員の稲川 透氏は「 『2020 年ビジョン』の高い目標に到達するには単にフォークリ フトを作って、売って、アフターサービスをする従来の ビジネスモデルを続けているだけではダメだと思いまし た。2020 年にどんな姿になっていたいのかを具体的に描 くことも必要ですし、事業拡大のため、コア領域をベー スにもっと活用、応用することを模索してみてはどうか と考えていました」と当時を振り返る。 ちょうどその頃、稲川氏は JMAC が開催したセミナー に参加した。そのセミナーが 「プロフィット ・ デザイン」 で、 事業開発に向けた内容であった。稲川氏は「シンプルで 分かりやすいプロフィット・デザインの考え方は使えそ うだ」と感じたという。 プロフィット・デザインとは、ビジネスモデルを「フッ ク(顧客を魅了する要素) 」 「ロック(顧客をスイッチさ せない要素) 」 「チャージ(顧客視点での課金要素) 」とう い3つの要件から描く JMAC 独自の思考方法で、この3 つの要件を満たすビジネスの仕組み(ビジネスモデル) を描くことで、持続的に利益を生み出す事業を生み出す 手法である。 セミナーをきっかけに稲川氏はプロジェクト立上げに 動き出す「将来の事業の芽、アイデアを出すことも大事 ですし、そういう発想を持った人材、特に 2020 年に責任
視点が変わり 発想が変わってきた
2011 年 10 月末、販売、調達、物流、商品開発などさま ざまな部門に稲川氏が声を掛け、公募、推薦でメンバー を募る形で 10 名のメンバーが集められた。JMAC からは チーフ・コンサルタント竹村 薫を中心に数名のコンサル タントがチームで参画し、トヨタ L&F における「新たな ビジネスモデル構築プロジェクト」がスタートした。 半日を 11 回、3 ケ月を掛けて進められたプロジェクト だが、 メンバーから69件のアイデアが出てきた。 竹村は 「最 初は現在の事業の振返りをしっかりと行い、自分達の強 みを把握しながらアイデア出しを行いました。皆さんア イデアが豊富で組み立て方を変えると良いものになるの ではないかと思いました」という。 調達部 調達室 グローバル企画 G グループ長 今枝 憲吾 氏は「当時 2020 年ビジョ ン が 出 て、現 状 と の ギャップが大きくどう やってギャップを埋めて いくのだろうと感じてい ました。プロフィット・ デザインの考え方は分か りやすく、現業の延長線
▲今枝 憲吾氏
上でアイデアを出し合うことでも新たなビジネスチャン スを生み出すことができるんだという学びはが大きかっ たですね。ギャップを埋めるために何とかしなくてはな らないという考えに変わって行きました」という。 海外営業部 販売企画 室 企画グループ 濵中 翔 太郎氏は「会社の風土と して標準化が根付いてい るため、決まった仕組み で動かしていくことは強 いのですが、新しい発想
▲濵中 翔太郎氏
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プロフィット・デザイン成立の3つの要件
フック
顧客を魅了する 要素
×
ロック
スイッチングを防止し 購入し続ける要素
×
チャージ
顧客ベースの 課金方法
3つの要件をすべて満たす戦略を描くことが 「プロフィット・デザイン」である
▲ 「プロフィット・デザイン」3つの要素
を出しまとめていくことは少し弱いと感じていました。 日々の業務の中で考えていた拡販のアイデアを具体的に まとめられたことと、自分自身頭が柔らかくなり、殻を 破ることが出来て良い機会だったと思っています」とい う。 最初はメンバーも手さぐりの状況でスタートした今回 のプロジェクトだが、皆が3つの要件に当てはめて考え てみると、 頭の中がすっきり整理されたと同じ感想を持っ ている。そして今まで顔を合わせたことがない他部門の メンバーや、業務の未経験者が入ることで大きな刺激に なったという。 プロジェクトは 69 あったアイデアを「フック、 ロック、 チャージ」の要素に当てはめて5つに絞り込み、具体的 な事業モデルとして報告書をまとめる形で進められた。
たし、現在では3要件に当てはめたらどうなるだろうと 無意識に考えるようになっています」という。 また、海外営業部 販売企画室 企画グループ グループ長 八木 慎一郎氏は「JMAC からは自分にない思考の 切り口をいただけてとて も参考になりました。現 在の仕事にどうやって付 加価値をつけようかとい う時、今回の考え方が参 考になっています。この 活動は、定常的な活動にしてもいいのではないかと思っ ています」と語る。 国内営業部 販売企画室 販売促進グループ 清水 哲氏も 「私は広告宣伝を担当していますが、今年度の広告を考え る際、フックを何にする か、ロックを何にするか と自然に実践していまし た。相手にどう伝えるか といった場面でもこの3 要素は使えると思いま す」といい、その考え方 が浸透し日々の仕事に生
▲八木 慎一郎氏
日常に滲みこんだ 「フック、ロック、チャージ」
プロジェクトが終了した現在、TMHG 統括部 グローバ ルサプライ企画室 本多 功治氏は「ビジネスにするために は何を考えたら良いのか を、非常に分かりやすい 言葉で教えていただきま した。当時私は異動した 直 後 だ っ た の で す が、 日々の仕事にもこの考え
▲清水 哲氏
かされている。
竹村は「プロジェクトが終わりに近づくにつれて『こ れ誰がやるんだろう』という発言も出て、 皆さん熱が入っ てくるのが分かりました。 『フック、ロック、チャージ』 という分かりやすさと共に、その考え方も浸透して、日々
▲本多 功治氏
方が使えるなと思いまし
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の仕事にも応用できていることはとてもうれしく感じて います」と語る。
稲川氏は「以前は事業の継続性や、恒常的に収益を上 げるという視点は弱く、例えば販売部門だと特に販売量、 シェアといった短期的な思考になりがちでした。しかし 今回プロフィット・デザインという考え方でどうやって ビジネスモデルを描けばいいかを学ぶことができました。 今後は共通言語を理解して実践できる人口を増やしてい きたいと思いますし、こういった活動、考え方を通して 次世代の人材が育って行って欲しいと思っています」と 2020 年に向けた姿を描いている。 同社は安定した事業運営の中にもチャレンジをしなが ら多角化を推進してきた。次なる事業の芽を生み出すこ とは、発想する人材を育成することから始まると稲川氏 は言う。豊田自動織機の新たなチャレンジが楽しみだ。
共通言語で 次世代の人材を育成
今回のプロジェクトから生まれた5つのアイデアは、 具体的な取組みに向けて進んでいるアイデアもある。 JMAC の関わりについて稲川氏は「こういったプロジェ クトを我々だけで推進することはできなかったと思いま す。JMAC は、我々の目線に合わせてくれて、現状に合 わせたアレンジをしながら進めてくれました。時には背 中を押してもらいましたし、何よりも一緒に考えながら 推進してくれたことで多くのヒントを貰えました」と語 る。 プロジェクトが進むうちに「フック、 ロック、 チャージ」 がメンバー共通の言語となってゆき、考え方のベースが 出来て行ったと稲川氏はいう。そして、メンバーが共通 して口にするのは、定期的なプロジェクトの開催だ。参 加人口が増えることで共通言語を持ったメンバーが増え、 それが考え方、視点の土壌になっていくのではないかと いう。さらに、階層別、世代別、シニア層、混成など編 成によって様々なアイデアが出てくる可能性がある。そ れがプロフィット・デザインの良さだともいう。
※プロフィット・デザインの詳細はこちらから >> http://www.jmac.co.jp/special/profit/ ※ 動画でご覧いただけます
着眼と経験と 議論から アイデアは生まれる
担 担当 当コ コンサルタントからの一言 ンサルタントからの一言
考え方が根付いてこそ、次々と事業が生まれる
多くの会社で、新たな事業を生み出していく活動が行われています。し かしながら、知らず知らずのうちに既存事業の常識にとらわれ、発想が 停滞する場面も多く見受けられます。 新しい概念 ・ 視点、共通の言語の中で仲間との議論を重ね、刺激し合い、 様々な経験を持った各個人が、きらりと光る小さいアイデアを発想し持 ち寄る。それを組み立ててビジネスに仕立てていくのが検討の醍醐味だ と思います。 ビジネスの考え方、発想の視点、発想の手法と安全な議論ができる場を ご提供するのが我々の使命だと考えています。
チーフ・コンサルタント
竹村 薫
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人と組織(チーム)の力を最大化することを目的にJMACが 支援した企業事例をご紹介します。
これからの「光」を社会に提供する
〜開発現場のマネジメントの新たな挑戦〜
「光」の高度な技術を 追求し続ける
ウシオ電機株式会社(以下ウシオ電機)は、1964年の創 業以来、産業用の光源や光学技術を核に、産業の最先端分 野が求めるさまざまな「光」を切り口とした製品やサービ スを開発し提供し続けてきた。 同社の創りだす「光」は、ハロゲンランプや放電ランプ など、多種多彩なランプにはじまり、これらを組み込んだ 光のユニット、光応用装置、光のシステムへと拡がって 行った。さらにはモジュールやシステムとなって、光のソ リューションへと発展し、現在では「エレクトロニクス」 「映像」「メディカル・ライフサイエンス」を中心に、世 界のさまざまな産業分野で活用され、世界初や世界トップ シェア製品を多数生み出している。 世界の産業分野に多くの優良企業を顧客として持つ同社 であるが、その一方で、いずれの分野においても高い専門 性と高度な技術が求められるようになり、その技術的課題 の解決もより困難で複雑なものとなっていった。
職場のマネジメント改革の 断行へ
このような背景の中、2005年ころからJMACが主催する セミナーや開発・技術マネジメント革新大会などに参加 し、開発部門のマネジメント改革に何か良い手法や手立 てはないかと模索をしていたのがR&D本部 執行役員 副本 部長 吉岡 正樹氏だった。当時ウシオ電機は、順調に事業 を拡大していたが、同時に開発現場では、残業も多く、 担当者の課題が上司に上がってこない、技術的な不具合 が頻発するなど多くの問題を抱えていたのである。吉岡 氏は「当時の開発部門では、忙しい割には新製品がなか なか出てこないことや、人材面ではミドルクラスのマ ネージャーの育成がうまく進んでいないという課題があ りました。何か解決する手段はないかと、JMACの様々 なセミナーに参加する中で出会ったのが日本的な『技術 者の組織マネジメント改革活動』でした。セミナーの事 例企業が抱える課題は、当社の課題に非常に近く、自社 の開発現場にも馴染むと感じました」と振り返る。 また、光源事業部 技術部門 部門長 北野 洋好氏は「現 場では仕事がどんどん増えて、開発納期が遅れるなど、 マネージャーは頭を悩ませていました。製造現場には改
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ウシオ電機株式会社
ウシオ電機株式会社では業績が急成長する一方で、OEM 中心 の開発現場が日々増え続ける業務に忙殺されていた。現場の マネージャーが解決策を探し、セミナーに参加する中で出会っ た JMAC の日本的な『技術者の組織マネジメント改革』 、その 導入をきっかけに開発現場が徐々に変わり始めた。7 期に渡る 活動のご苦労や、更なる飛躍を目指す 2015 年度からの活動 についてお伺いした。
執行役員 R&D本部 副本部長
吉岡 正樹
Masaki Yoshioka
善ツールやマネジメント 手法が多数ありますが、 そのまま開発現場に適用 しても馴染まない。その ような中、開発現場に特 化した『技術者の組織マ ネジメント改革活動』の 説明会が社内で開催され ました」という。 説明会を経て2006年7月から半年間、トライアルとして 3つの職場に絞り、実際のプロジェクトに直結した課題ば らしを中心に活動がスタートした。JMACからはチー フ・コンサルタントの柏木 茂吉がその支援を行った。 柏木は「当時ウシオ電機さんは急成長をされて、製造 業では数少ない高収益の業績を残されていました。しか しながら現場の方々にお話を聞くと、日々の業務に追わ れて様々な課題があると感じました。その一つとして、 職場のメンバーは技術を通じて社会に貢献したいという 気持ちがありながらも、その力を活かしきれないジレン マを抱えていることでした。これは急成長されたがゆ え、内部マネジメントに課題があると感じました」と振 り返る。 トライアル期間を経て2007年度から活動は本格スター
トを切った。
メンバーもリーダーも 共に成長できる場へ
プロジェクトに参加した光源事業部 技術部門 次長 岡崎 佳生氏は「私は当時、部下の育て方に悩んでいる時期で した。普段から良く会話もしていて、話しやすい関係が 出来ていると思っていましたが、この活動を通じて部下 の本音を聞いてみると全く違っていたのです。コミュニ ケーションを取ったつもりになっていたことに気づかさ れました。開発現場は多様な考えや価値観を持った集団 です。その育成やマネジントとしても本活動が有効と感 じ、より積極的に活動に取り組むようになりました」と 自身の変化を語る。当時岡崎氏の部門は、新入社員が配 属されたくない部署No.1だった。しかし現在は組織の風 土に関する職場のアンケートでは良い結果へと変わって きている。この活動の成果だけではないが、職場の雰囲 気が変わった結果である。 北野氏のチームでは「当時の職場には世代間のギャッ プがあり、私が意見を言うと皆がそれを聞いてしまって 成長しない、そんな悩みがありました。そこで本活動に
▲北野 洋好氏
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技術者の組織マネジメントの強化ポイント
組織変革 業務・プロセス 組 織 個 人
・組織のありたい姿 ・変革シナリオ・課題の共有 ・完成度志向のプロジェクト運営 ・迅速なマネジメント上の意思決定 ・専門家同士のチームワーク ・目的志向のコミュニケーション ・組織・個人への知識蓄積 ・自己成長 ▲ プロジェクト推進のポイント
参加したところ、メンバー間で議論し答えを出す姿勢が 芽生えてきました。JMACの支援後もさらに成長し続け て、今ではエース級にまで成長してくれたメンバーもお り、とても良い経験だったと思います。私自身も任せる ことの大切さを学びました」とマネージャー自身の気づ きにも繋がると語る。 柏木は「マネージャー層には、メンバーに任せる課題 と、手を差し伸べるべき課題の切り分け、メンバーの力 量を捉えた上で少し高い課題を与えることなど1人ひとり きめ細やかに考えていただきました。問題意識を持ち真 剣に取り組んでくれる姿勢を見て、マネージャー、リー ダーの現状を変えていこうという本気度を感じました。 この活動の原動力はマネージャー層の本気度だったと思 います」と語る。
合わせてアレンジしてく れました。薬に例える と、現場の症状に合わせ て処方箋を書いてくれ る、そんな感じでした」 とは岡崎氏。こういった コンサルタントと現場の 信頼感がリーダーの変化 にも繋がるという。 そして吉岡氏は「JMACは日本のものづくりの現場に 精通していますし、技術部門の現場に合った指導をして くれるなと思っています。我々は活動を通して柔道の型 のように基本の型を覚えている段階です。開発現場に普 遍的な型ができれば仕事が楽に進むと思いますし、基本 の型を覚えたら応用で幅が広がっていくと思います」と 本活動の先を見据える。 柏木は「型を作ることは、マネージャーの共通認識や 共通言語を作るためにも必要だと思います。またそれに よってウシオ電機流のマネジメント思想ができていくと
▲岡崎 佳生氏
活動がリーダー発掘の場に!
北野氏は「この活動はリーダーの真剣度や、活動の理 解度が問われると思います。メンバーだけでなく自身も 成長するリーダーもいます。その一方、やらされ感で取 り組んで活動の成果を出せないチームもありました。そ ういう意味では、リーダー発掘の良い場にもなると思い ます。JMACは様々なテーマを持つチームの特性に寄り 添い、現場に合った指導をしてくれると感じています」 と活動がリーダー育成、発掘の場にもなっている。また 「JMACは常に現場目線で、それぞれのチームの状況に
思います」という。
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組織力と、突き抜けた技術で 次なるステージへ
今年10月経営トップの交代を受け、同社では今までの顧 客を大切にしながらも、新たな分野や技術への挑戦が始 まった。2006年に始まった本活動も、JMACの指導の下 2013年3月まで7期継続したが、2015年からまたJMACが加 わって活動を加速させる予定だ。 吉岡氏は「当社は80年代、90年代とOEMを中心に成長し てきました。しかし、そのビジネスモデルが踊り場に来て います。今年マーケティング&イノベーション部門が新設 されて、新しい分野、技術への挑戦が始まりました。その 実現のためには、今までと違うことにチャレンジする人材 が必要です。実際にそれが出来るポテンシャルを持った、 社会への貢献意識の高いエンジニアが多数いると思ってい ます。2015年からはヴァージョンアップする本活動をきっ かけにして、より組織が活性化して、エンジニアが一丸と なって革新的な技術を生み出していって欲しいと思ってい ます」と大きな期待を持っている。また、岡崎氏は「7期 の活動で、約半数の社員が本活動に参加し既にベースはで きています。JMACにはこのレベルまで行きましょうと、 もっと引張り上げてもらいたいと思っています」とJMAC への期待を語る。 優れた専門性を持ったスペシャリストも多くいる同社だ
が、これからはエンジニアの総力戦が求められ、その力の 発揮、融合も大きな鍵になるという。これからマネジメン ト、スペシャリスト、若手、職場が一体となって議論をし ていく場がますます必要になってくる。 そのために柏木は「今までの活動を通して、組織で課題 を共有化し、解決していくベースはできています。それに 加えて、一人ひとりのエンジニアがお客様と向き合いどう 貢献するか、それにはどんな技術的な進歩をさせていけば 良いのか、ウシオ電機の原点である、強く個性あるエンジ ニアを育てることが求められていると考えています」と来 期の活動には、エンジニアの高い技術力と組織活動の融合 で更に強い開発組織を作ることが必要だと語る。 同社は新たな挑戦に向かい、開発部門の活動も「忙しさ からの脱却」から、「新たなる挑戦」へとギアを上げてい く。活動を進化させ、新たなステージに向かうウシオ電機 のチャレンジが楽しみだ。
組織力を引き出し︑ リーダーシップを 強化する
担 当 コ ン サルタントからの一言
今求められるマネジメントは組織力とリーダーシップの両立
これまでの日本企業の特徴は、担当者に近い目線でコミュニケーションを 取り、日々のプロジェクトの現場に近い視点で意思決定を行うミドルマネ ジメントの強みがあったと思います。しかし技術部門では、これだけでは 担当者とマネージャーの役割分担が不明確になり、変化の激しいプロジェ クトを正しく導き、競争を勝ち抜くことが難しくなってきています。 そこでコミュニケーションや日々のプロジェクトの現場に即して 「組織力」 を引き出しながら、 ありたい姿に向けた迅速な意思決定といった 「リーダー シップ」を両立することが求められています。この両立を日々の実践を通 じて強化することこそ技術者の組織マネジメント改革の要です。
チーフ・コンサルタント
柏木 茂吉
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マネージャーの意識が 職場を変える
management base
経営基盤の強化にむけた様々な取り組みについて、 JMACが支援した事例をご紹介します。
〜自ら〝あるべき姿〟を描き腑に落ちる改革へ〜
富士電機株式会社
安部 浩司
松本工場長
Kohji Abe
富士電機株式会社 松本工場に 2010 年工場長として赴任した、電 子デバイス事業本部 生産統括部 松本工場長 安部 浩司氏は、忙殺 される日々の業務の中で、仕事が属人的になっていることを懸念 し、間接部門の 「業務品質向上活動」 に動き出す。 2S (整理・整頓) から始まったこの活動は、自分達の業務はどうあるべきかをメン バー自身が考える活動へと進化した。 活動へのトップの関わり、 メ ンバーの意識、 行動の変化などをお伺いした。
電気、熱エネルギーで 世界のインフラを支える
社会インフラ」 「産業インフラ」 「パワエレ機器」 「電子デ バイス」 「食品流通」の 5 つの事業を柱とし、製品の展開 エリアは 52 ケ国、製品数は 29 万点を超えている。それ に伴い、社員数は海外合わせ 2 万 5 千人を超え、売上 7599 億円(2013 年度実績)に上る企業グループへとその 規模を拡大してきた。 同社において、パワー半導体の研究開発・生産技術で 世界各拠点をリードしグローバルマザー拠点の役割を 担っているのが松本工場である。その松本工場に 2010 年 4月工場長として赴任したのが、電子デバイス事業本部 生産統括部 松本工場長 安部 浩司氏である。
富士電機株式会社(以下富士電機)は、古河電気工業 とドイツのシーメンス社の資本・技術提携により 1923 年 に創業した企業である。創業から電気、熱エネルギー技 術の革新を追求し続け、産業・社会のインフラ分野を中 心に、安心・安全で持続可能な社会の実現への貢献を経 営の軸としてきた。 現在では、電気、熱エネルギー技術をコアに「発電・
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2Sを通してその考え方を 身に付ける!
トップの本気度が メンバーを動かしていく
安部氏は、就任当時の松本工場の間接部門を見て「製 造現場ではいろいろな改善をしていましたが、間接部門 では部分最適で、仕事の仕方も属人的になっていると感 じました」と語る。工場なのになぜ間接部門なのか、実 は安部氏は前任の株式会社北陸富士(現富士パワーセミ コンダクタ株式会社 北陸工場)において、経営者として 工場の 2S 活動を全社展開し、間接部門でも 2S 活動から 業務改善活動へと活動を進化させた実績があった。 「前任の工場へは間接部門の 2S 活動を始めたころに赴 任し、面白い活動をやっているなと思いました。製造現 場では 5S は当たり前ですが、間接部門には、改善活動で なかなか定着するものがなく、整理整頓という基本の分 かりやすさと全員で活動する点が間接部門にも馴染むと 思いました。松本工場でも同じ活動で『○○さん しか できない』から『誰 でも できる』という仕事の仕方 に変わって欲しいという思いで、支援をしてくれていた JMAC の芝田さんに声を掛けました」 (安部氏) 。 2010 年 6 月から診断を始め、同年 10 月間接部門を対象 にした「業務品質向上活動」がスタートした。 チーフ・コンサルタト 芝田 邦夫は当時を振り返り「診 断時の間接部門は、机の上、引出しの中、キャビネ全て が雑然としていました。 そこで、 2Sの必要性を感じました。 2S は『要るモノ』 『要らないモノ』を区分けし、要るモノ はどこに何があるかを明確にします。ただモノを分け、 置き場を決めるだけでなく、本当に必要なモノを見極め、 使いやすいようにする仕組みを構築する考え方を身に付 け、従来の見方を変える活動でもあります。モノの 2S か ら発展し、書類、電子データなど情報の 2S も行います。 情報の 2S は、属人化している情報が誰でも見えることで メンバーがお互いの業務内容や業務の仕方を知ることを 目的の一つにしています。そのため第1ステップは『モ ノの 2S (整理整頓) 活動』 、 第2ステップは 『情報の 2S (ファ イリング)活動』とステップ化して順を追った活動とし ました」と語る。活動は課長職以下の事務所のメンバー で構成され、モデルチームが先行して活動の見本を作り、 その後の横展開で全職場を対象として進めていった。
生産統括部 松本工場 チップ製造技術部 製造技術課長 毎熊 健氏は「私の部門 は製造ラインで出る不良 に対して、再発しないよ う日々、工程管理などを 見直し品質改善を行って います。当初はそういっ た通常の業務との違いが 理解できませんでした。
▲毎熊 健氏
ただ不良への火消的な対応が多かったので、現場への改 善提案が必要だとも思っていました」という。 松本工場 総務部 経理課長 山下 和浩氏は「以前にも社 内で同じように改善活動 がありましたが、全員活 動ではなかったので、プ ロジェクトが終わると活 動も終わり継続性があり ませんでした。最初はメ ンバーからも業務の負担 が大きくなるという声が
▲山下 和浩氏
ありました。ただ経理は専門性が強く属人的になりがち です。残業時間が多いことや納期を守らなければならな いプレッシャーを皆が感じていました」と振り返る。 そして、現在事務局の生産統括部 生産企画部 担当部長 山口 武氏も活動当初を 「間接部門は直接部門の サポート役で様々な業務 が発生しますが、元々雑 務も多いため、効率を上 げるということに結びつ けて考えることがありま せんでした」という。現 殺されていたのだった。 現在事務局の生産統括部 生産企画部 SC 改革課長 小山 勉氏は 「チームによって活動に対する温度差やアウトプッ トのバラツキは確かにありました。ただ、工場長のブレ
▲山口 武氏
場には危機感や課題意識はあるものの、日々の仕事に忙
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改善前 改善後
モノの 2S 活動による 改善前、改善後の変化
ないリーダーシップと チームへのサポートがあ りました。そして芝田さ んは我々の考えを受入れ てくれたうえで的確なア ドバイスをくれて熱意あ る指導をしてくれまし
かし、ここまでは当たり前レベルです。1 年位活動を続け ると、もうトライアルのテーマがないというチームもあ りました。もっと自分達で考えるような活動へと質を上 げていきたいと芝田さんに相談しました」という。 芝田は「これまでの活動でチーム内の業務の共有化、組 織での問題解決など、コミュニケーションが良くなり改革 へのベースは出来たと思いました。活動の質を上げるため には、マネージャーがもっと変わることが求められ、そし て一人ひとりがプロスタッフとして何をすべきかを考える 力をつけることが必要と考えました。そこで、 マネージャー が中心となって自分の部署における業務の あるべき姿 を描いて、現在とのギャップを埋めるために業務を見直し 業務内容を変えると共に、個々のスキルを向上させる、そ んな改革活動が必要だと提案しました」と語る。 活動は、 第3ステップ「自部門の業務改革」 、 第4ステッ
▲小山 勉氏
た。メンバーはとにかくやってみようと動きだし、少し ずつ成果となって表れてきました」とトップの関わりの 重要性も指摘する。 安部氏は3ケ月に1度の診断には必ず参加し、検討会 の場にも時間が許す限り顔を出して現場の進捗をしっか り把握している。
自分達で考えるからこそ意味がある あるべき姿
当初メンバーの不安に対して、 「とにかく信じてやって みて欲しい」という安部氏の言葉からスタートした本活 動だが、次第にマネージャーや、メンバーの意識や行動 に変化が表れ始めた。そして徐々に業務に関する定量的 な成果も出だした。約半年後の 2011 年 4 月時点、 「モノ の 2S 活動」では不要物を徹底的に排除した結果、廃棄物 は 26 トンに及んだ。また「情報の 2S 活動」では紙ファ イル 6486 冊を廃棄、削減率は 86%、電子データは 1 テラ バイトの削減に繋がった。 そして、活動を通じチーム内の情報共有、業務内容の共 有化が進むことで、メンバーには余力も生まれ、業務工数 の削減やリードタイム短縮などの効率化も進んで行った。 安部氏は「活動でペーパーレスの定着や、残業時間の 減少、意識や行動の変化など一定の成果が出ました。し
プ「関連部門連携による業務改革」とテーマをステップ アップしていった。
腑に落ちる 納得感ある活動 だから組織の改革が加速する
マネージャーを中心に考えられた あるべき姿 は、安 部氏の承認を得られるまで、繰り返し打合せが重ねられて いった。安部氏は「 あるべき姿 を描くまで、早いチー ムで3ケ月、 1年掛かって OK を出したチームもあります。 それだけ真剣に、スローガンではなく地に足の着いた自分 達の あるべき姿 を考えて欲しいと思いました」という。 そしてマネージャー層も納得感のある活動で成果を実感し ていった。山下氏は「今まで自分達の本来の役割を考えた ことはありませんでした。存在意義や付加価値、質ってな んだと自分達に問いかけ何回も議論を重ねる中で、仕事に
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対する考え方自体が大きく変わりました。 あるべき姿 を描くことも大切ですが、そこにどれだけ近づきたいか自 分達の本気度が問われると思いました」部門の方向性が はっきりし、属人化からサポートし合え、工場に貢献する 業務を実施する組織へと変わって行ったという。 本来の目指す姿に近づいてきているというのは毎熊氏だ。 「今まで不良の火消しをすることが自分達の役割だと思って いるメンバーが多かったと思います。真のサポートの姿は 何かと考えました。業務に対する意識が変わり、仕組みも 変えて、現場と解決のコミュニケーションを取りながら予 防対策が打てるように変わっていきました」 (毎熊氏)
芝田は「間接部門のス タッフは言われたことを 忠実に実行することは優 れています。しかし、グ ローバル展開をしている 富士電機さんにおいて は、海外スタッフと連携
▲早川 文吾氏
していくためにも、自ら考えて、行動できるスタンスが 必要不可欠です。元々優秀な皆さんですので、それを最 大限発揮するポテンシャルはあると思います」と役割の 幅の広がりも示唆する。 2010 年からの活動を振り返り、及第点を付ける安部氏 だが「メンバーは意識や考え方が変化し、行動も変わっ
松本工場が 世界の拠点をリードする
本活動は 2012 年から開発部門にも展開され、電子デバ イス事業本部の全体活動として展開している。 2013 年からは、富士電機の全社活動として始まった 「Pro‑7 活動」 の一環として本活動の内容を継承し、海外に も活動範囲を拡大した。海外での展開に関して、松本工場 生産企画部 SC 改革課 早川 文吾氏は「 『Pro‑7』の活動とな り海外にも展開を始めていますが、国民性を理解し、モチ ベーションがどこにあるのかを探りながら推進していま す。ローカルのマネージャーの理解はまだこれからの課題 です」という。
てきており、 期待以上に成果を出してくれました。しかし、 他の企業が行っている改善活動(QC 活動)に比べるとま だまだ差があると思います。全国のトップレベルと戦え るレベルに活動を高め、全富士電機のモデルになるくら い成長して欲しいと思っています。そのためには、プロ スタッフとして何をすべきか、マネージャーだけでなく メンバー全員にそういう意識を持ち続けてもらいたいと 考えています」と世界拠点のモデルとなるような活動を 目指している。 「楽しくアウトプットを出す挑戦をして欲しい」とも語 る安部工場長を中心に、富士電機松本工場の間接部門に おける業務品質改善活動は、更なるステップアップを目 指し挑戦し続けている。
忘れてはいけません
地道な土台作りを
改革を実現するには︑
担 当 コ ン サルタントからの一言
各活動を徹底したからこそ、あるべき姿が実現できます
富士電機では、 「あるべき姿」を目指した活動を今は行っていますが、そ の前には2Sを基本としたステップ活動を2年ほど実施しました。当初 は活動に対する温度差がありましたが、工場長のブレない信念もあり、 徐々に全グループが活動に対して真剣に徹底的に取り組み、大きな成果 を出してきました。だからこそ、管理職を含め多くのメンバーの考え方 や行動、職場内のコミュニケーションが変化し、あるべき姿を狙えるよ うになったのです。職場の改革を実施するためには、まずは基本的な活 動を徹底して行い、土台をしっかり固めることが重要です。
チーフ・コンサルタント
芝田 邦夫
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「意」を JMAC では、若手のころから一人ひとりの 「活かす」ことを大切にしています。 闘する このコーナー では「iik 塾」と称して、日々奮 。 ます 介し 若手コンサルタントの「意」をご紹
「顧客洞察」によりフロントラインに 新たな価値を提供する
「 マー ケテ ィン グ」 とい うテ ーマ は、お客様と企業の接点・現場 を知る ことが必要不可欠です。私自身 が意識 、営業 現場 に足を運び、腑 ことで ント企
熊谷 真
うちの
CS・マーケティング /セールス革新センタ ー
や売場などの
して実践していることの一つは
て毎日のように食べてみます。
に観察・洞察しますし、実際に
品、購入しているお客様までを
場に足を運び、陳列の状況から
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業をご支援する場合は、百貨店
す。例えば食品業界のクライア
に落ちるまでその実態に接する
やスー
どの売
競合商
徹底的
購入し
そのた
問題や課題、ものごとの本質を 見抜こ うと努めています。 また、多様な生活者・お客様の 視点か ら考察するために、様々な新し い商品 やサービスも積極的に購入・体 験する
味しながら、データだけでは見
す。私は、現場で見た行動の実
態から考察することがきわめて
だけでなく、「行動の現場」で
であり、定量的な調査・データ
ってい るね」と言われることもしばしば。 マーケティングは人の行動を扱 う領域 の分析 生の実
会社の人間より商品のことを知
め、クライアントの方々から「
重要で
態を加
えない
ントも得ています。 これからも、現場を基軸に置き ながら プロ とし ての 洞察 を通 じて 、新 たな マーケティング機能の獲得や営 業の革 新を実現し、お客様と企業の関 係強化 のお役に立ちたいと考えています。
しての 感覚 を鍛 える とも に、 営業 やマ ーケ ティングに関する新たな価値提 供のヒ
品に触れることでマーケターと
ようにしています。最新のトレ
ンド商
開発マネジメント 革新センター
中田 奈津子
の日々の取り組みです。 「A Newの1枚を創る」これが私 技術やドキュメントがス JMACには多くのコンサルティング ルタントが残した素晴らし トックされています。先輩のコンサ も、自分なりの「1枚」を い財産やノウハウを大切にしながら ルタントとして成長するた 創り出すこと、それがプロのコンサ めに不可欠だと考えています。 様々な気づきや出来事をメ 日々のコンサルティング現場での 裏に焼き付けることも意識 モに残すとともに、そのシーンを脳 シーンをベースにドキュメ しています。こうして貯めた情報や 提示する訳ですが、私はこ ントとしてアウトプットしお客様に 。 のプロセスが非常に楽しく好きです 出てこないこともありま 」が もちろん、なかなか「A New
「A New」を通じて お客様と共に成長する
様の思考や行動の変容につ すが自分の思いを込めた1枚がお客 って良かったと実感しま ながる瞬間は、コンサルタントにな す。 が課題解決にむけて自ら行 コンサルタントは、実際にお客様 しすることが役割だと思い 動を起こし変化を与えることを後押 ので、そのためにもお客様 ます。お客様ごとに課題は違います とが私の使命だと考えていま ごとの「A New」を提供するこ コンサルタントが日々実践し す。実はこの「A New」は先輩 とです。『本質』を捉え ていることに刺激を受けて始めたこ お客様とともに自分自身も 『シンプル』なメッセージを創り、 ら日々、コンサルティング 成長していくことに喜びを感じなが の現場に足を運んでいます。
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編集部からの耳より情報
JMACトップセミナーのご案内
〜経営革新を推進する先人から学ぶ〜
3月10日 開催
(火) 2015 年
「JMAC トップセミナー」は、 JMACと経営トップ層を繋ぐ本誌にご登場いただいた経営トップの方々を講師にお 招きし、実際に改革を断行していく苦難や成功体験をお話いただく経営トップ向けセミナーです。 今回は、本誌の TOP MESSAGE にご登場いただいた、 キヤノン電子株式会社 代表取締役社長 酒巻 久 氏を お迎えし、 『キヤノン電子を高収益企業に革新したマネジ メント術』と題し、お話しいただきます。 本誌ではご紹介しきれなかった酒巻氏のお話を、直接お聞 きできるチャンスです。ぜひご参加下さい。
15:00 〜 18:30
ザ ランドマークスクエアトーキョー
※シナガワ GOOS(旧パシフィックホテル)内
定 員:50 名(お申し込み順) 対 象:経営トップ層、部門長の方々 参加料:10,800 円(税込) ※参加者交流費を含む
http://www.jmac.co.jp/service/event/
第三回 春節特別セミナーのご案内
中国・ASEANで 通用する日本流、通用しない日本流
締め切り 間近 !
マネジメントの現地化と統合化
アジア戦略の双璧となる中国と ASEAN・タイにおい て、市場の現地化、人材の現地化で巻き返しをはかる 日本企業。いま、その「日本流」が問われています。 これから日系企業はどのようなマネジメントで戦って いくのか。アジアで成長を目指す各社にとって不可欠 な課題を提起します。
日 時 会 場
2月23日開催
(月) 2015 年
13:30〜 16:50
東京コンファレンスセンター・品川 (アレア品川 3F 〜 5F) 無料 ※お申込み多数の場合は抽選となります。 ご了承願います。
参加料
http://www.jmac.co.jp/service/event/
セミナープログラム(予定)
01 02 03 04
ご挨拶 −アベノミクス以降の中国・アジア戦略のマクロ動向− 中国・ASEAN で負けないモノづくり −日本流・現地流ミックスの製造現場マネジメント− つながるアジアの市場創造型組織づくり −アジア流協業で超える成長の壁− 中国ビジネスの細心、アジアビジネスの大胆 −2015 年取り組みの方向性−
酒巻社長の 「やさしさ」 は、 本社の社員食堂にも込められています。 一流の料理人による食事が昼食だけでなく、 夕食も提供されているそうです。一人暮らし、共働き、子育て中など多様な働き方の社員の負担を少しでも 軽減することや、 社員の栄養のバランスを考えて改善されたということです。酒巻社長の細やかな 「やさしさ」 と「思いやり」が詰まっていると感じました。
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- 人間集団である組織を動かし成果を出す。それはスポーツの世界にも通じます。毎年、「入団」と「退 団」で常に新陳代謝を繰り返すプロ野球。その中で監督は「チームビルディング」を、選手は「最高の パフォーマンス」を要求されます。お互いに与えられた条件で戦う姿は私たちマネジメント活動にも参 考になると思います。今回の「顔」はプロ野球の選手を経て、BCリーグの監督を務 めたギャオス内藤さんにフォーカスしました。
インタビュー:JMAC大石 誠
新潟アルビレックス・ ベースボール・クラブ前監督
(内藤 尚行:ないとう なおゆき)
ギャ オ ス内藤氏
第 2 回
1968 年 7 月 24 日愛知県生まれ。豊川高等学校から 1986 年 ドラフト 3 位でヤクルトスワローズに入団。 1995 年に千葉ロッ テマリーンズに移籍、 1996 年シーズン途中に地元の中日に移籍。 1997 年現役を引退。2013 年ベースボールチャレンジリーグ (以 下 BC リーグ)新潟アルビレックス BC の監督に就任し、リーグ 記録となるシーズン 52 勝を達成。2014 年は上信越地区後期優 勝を果たすも 2 年契約の契約満了を以て、今シーズン限りでの退 任を発表した。 登録名はギャオス内藤。 解説者活動も継続している。
創造力を持て!
自分ごとで考えるから 成長する
大石:チームプレーは個人の成長がチーム の成長にも繋がりますが、個人の成長に欠 かせないことはどのようなものでしょう か。 内藤:私はスポーツ選手で一足飛びに上手 くなる選手はいないと思っています。たと え今日試合に勝ったとしても、その中で防 げるミスがあったらそれを無くす練習を し、日々次に繋がることを各自が考えて努 力することが成長に結びつくと思います し、選手にもそのように伝えています。 試合でミスをしないために練習を重ね試 合に臨むのは当たり前の事、さらに、自分 に足りないものは何か、不得意を克服する 方法は何かを自ら考えて徹底的に練習する くらいでないと人より秀でることはできま せん。うちはどこの球団よりも全体練習の 時間が短いのですが、与えられた練習で満 足してしまう選手もいます。結果を出す選 手は、やっていないように見えてもどこか で練習しているものです。私もこう見えて 選手時代は影で誰よりも負けないくらい練 習をしていましたしね。 個々が強い気持ち、 高い意識を持って取り組むことが成長の鍵 だと思います。 内藤:前回のお話しの中で「野球はエラー の出るスポーツ、エラーをした後のプレー の方が大事」と言いましたが、それは、ひ とつの出来事に対してどれだけ想像力を働 今の選手は足も速いし、バッティングも 守備もうまい。皆ベースの才能はいいもの を持っています。 もっと個の力を強くして、 プロ野球を目指せるような選手になっても らいたいと思います。プロ野球に行ったら 同じようなレベルばかりですから、自分の 強みを知ってそれを磨き、自らを律して動 くことの出来る人がプロになれるのではな いかと思います。 どんなことでも無駄な経験はありませ ん、全てを自分のものにするくらいの貪欲 さが必要だと思います。 かせることが出来るかと言うことです。自 分や、仲間がミスした後に何ができるのか と瞬時に考える。同じようなミスのパター ンはありますが、勝っているのか負けてい るのか、 初回か 9 回なのか、 アウト数、 ボー ルカウント、さまざまな場面で何通りかの シナリオを考える力を持たなくてはなりま せん。グラウンドで同じプレーは2度とな いですから、個人が瞬時にどう判断し、決 断して行動に移せるかその積み重ねがプ レーの幅を広げ、チーム力アップに繋がっ ていくのです。これは日々の地道な努力の 積み重ねでしか培うことが出来ないことで す。 そして、グラウンドは選手にとって最高 のステージです。監督は気持ち良くプレー ができるようにアドバイスし、送り出すだ けです。そこでどんなパフォーマンスをす るか、そういったアピール力も合わせて身 に付けてもらいたいですね。
脳の瞬発力が プレーの幅を広げる!
大石:では、チームが成長する上でのポイ ントはどのようなことがあるでしょうか。
大石 誠の
「現役時代、誰よりも練習した」とギャオス内藤監督。そしてプロとして結果を出すた めに球団の練習メニュー以外に自ら考えた内容で練習したうえで試合に臨むことも 当
ここが
Point
たり前 とのコメントが印象的でした。明るいキャラクターでファンを魅了し続けて いたのも、こうした地道な積み重ねによる自信があったからだと理解しました。 段取り8分 これは私たちビジネスの世界でも基本であり大切な姿勢だと感じました。
Business Insights Vol.55 2015年 2月 発行
編集長:大石 誠 編集:石田 恵
TEL:03‑3434‑0982 URL:http://www.jmac.co.jp/ FAX:03‑3434‑2963 Mail:info̲jmac@jmac.co.jp
〒105‑0011 東京都港区芝公園三丁目 1 番 22 号 日本能率協会ビル 1 階
本資料の無断転載・複写を禁じます © 2015
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