ビジネスインサイツ58
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メータでもあります。そういう会社は長期業績、持続成長 にものすごいポテンシャルを持っている」 と評価している。 「HMC は、かつて社内にあった『工学塾』の流れを汲 むもので、すでに 12 年経ちます。顧客視点のものづくり のために、まだまだやるべきことがあるはずで、このコー スの見直しも検討しています。MBIS そのものの課題抽出 や HMC のカリキュラム評価などで JMAC さんと議論し てみたいですね」と織田氏。 三菱電機が「もう一段高いレベルの成長へ」進むための 変革を貫いているのが「顧客視点のものづくり」だ。それ を牽引するコア人材(選抜)の育成にも力を入れている。 選抜された人は三菱電機イノベーションスクール (MBIS) に「入学」することになる。 織田氏が担当している「ハードウェアものづくりコース (HMC) 」は、ものづくりプロセスの全体最適の視点で改 善・改革を推進できる中核的技術者・リーダーを育成する コースだ。同社 22 製作所と研究所から 1 人が選ばれ、今 現在 23 人が「入学」している。同コースの特徴のひとつ が、社内の部長や副センター長が講師を務めることだ。講 師自らの苦労や体験談などを交えながらの講義内容は、 「ス キルよりもマインド重視のコース。はっきり言って、かな り厳しい内容。とおり一遍の生産技術習得コースと思って 入学すると、とんでもない目にあう(笑) 」という。 事実、5 月から翌年 2 月までの 10 ヵ月でのべ 16 日間の 出席が必須だ。問題解決手法や JIT 改善活動、原価低減、 VE /標準化なども学ぶが、このほかに会場となっている 製作所の製品をどう展開していくか、海外事業をどう展開 するか、出身製作所の事業をどのようにして発展させるか を具体的に提言書にまとめるのが大きな特徴だ。閉講 1 年 後にも成果報告が求められるという、2 年がかりの育成で ある。A3 用紙 1 枚にまとめる提言書には何度も厳しい 「添 削指導」が入る。この間、幹部候補生は他のメンバーと交 流を持ちつつ、だんだんと幹部としての責任を自覚してい く仕組みだ。 三菱電機グループは技能水準の向上、技能伝承、技能者 育成などを目的に毎年秋に「技能競技大会」を開催、2014 年で 37 回の開催を迎えた。このときはグループ全体で 2,417 人が参加し、最終的に全社大会(10 職種)まで勝ち 進んだのは 112 人。各製作所を代表する技能の達人たち が競い合う大会である。 同社の大会への「本気度」はかなりのもの。選手とコー チは 3 ヵ月も仕事から離れて、競技に向けた「訓練」に専 念するのだ。大会の会長には社長が就任し、トップの技能 を守り育てていく意志が表れている。 「老舗の大手企業で もなかなかここまではやれないレベル」 (石田)なのだ。 織田氏自身は設備設計を担当していた新人のころ、組立 の技能者から「こういう設計では組み立てられない」とた びたび指摘されることがあり、エンジニアとしてかなり鍛 えられたという。また、リサイクル事業ではフロン回収率 を業界トップにできたのは技能者の貢献が大きかったと振 り返る。こうした経験は織田氏だけではなく、同社の多く のエンジニアや監督者にもあり、 それが全社的な「技能者」 へのオマージュとなって、 技能大会を支えているのだろう。 トップも現場も「技能」とそれを担う人を真に尊敬してい る表れだ。 また、大会は選手だけでなく、各製作所の現場の育成に も効果をもたらしている。運営委員長として大会の表舞台 も裏舞台も知る織田氏は、 「もっとも仕事のできる技能者 が選手で仕事から離れてしまうので、残された現場はその
三菱電機グループ技能競技大会 写真提供:三菱電機
コア人材の 育成カリキュラムの見直しを
今後のものづくり教育では、 「技術の内容そのものより も、それを 商売 に引き出すための戦略の部分をどうカ リキュラム化するか大事。実施にあたっては、座学タイプ ではなく、実業務できちんと成果を出す形のカリリュラム の方が人は育つ」という視点からの企画・運営がカギにな ると石田は指摘する。
全社をあげて技能を大切にする
『穴埋め』をしなければなりません。そこで仕事の仕組み
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