ビジネスインサイツ58
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毎回、革新、成長を続けている企業のトップに 経営哲学や視点についてお話しを伺います。 インタビュアー:JMAC 代表取締役社長 鈴木 亨
〜挑戦の場を与えて人の持続的成長を導く〜
本質を捉え、イノベーションを 起こし続ける
花王株式会社
科学の目で 物事の本質を追求せよ
鈴木:澤田社長のお父様も花王に勤めていらっしゃったと のことですが、就職先に花王を選ばれた理由からお話しい ただけますか。 澤田:私が大阪大学の学生のころ、父が花王に勤務してい た縁で、当時の社長の丸田と大阪支社で出会う機会があ りました。同じ化学を専攻している私に対し、 「物事を現 象だけ表面だけで捉えるのは化学ではない。その裏側にあ る原子分子の世界まで知ることで初めて化学がわかってく る。そうすると化学は、科学(サイエンス)の領域にまで 広がるのだ」と話してくれました。 また、 「多くのことを知り、吸収したいという願望は理 解できるが、学生である今はシンプルに科学の目で物事を 観ること、科学のスタンスで物事を考えるようにすること が大事だ」と諭されました。 「科学の目で物事の本質を追求せよ」――あれ以来、今 でも丸田のこの言葉が脳裏に焼き付いて離れません。感銘 を受けた私は、 「この花王から生み出されてくる商品は普
通ではない」 「花王とはどんな会社なのだろう」と、ぜひ 花王に就職したいと考えたのです。 実際入社してみると、花王は私の期待どおりの会社で した。花王では、製品開発の際には、 「エビデンスを重視」 します。なんとなく良さそうだから、といった雰囲気でも のをつくることはしません。科学的根拠を示すところから スタートするのです。 たとえば、 「洗濯物の生乾きのにおいの解消」というテー マを立てたときは、まず、においの本質研究からスタート します。研究を進めていくと、においの原因は菌が関与し ていること、生乾きのにおいは菌の中でもモラクセラ菌が 関与していること、その菌は洗濯槽の裏側にも潜んでいる ことなどが次々にわかってきます。それを製品開発へと生 かすわけです。 また、 「加齢に伴って歯が黄色くなることの改善」とい うテーマでは、まずは歯の色に関して徹底的に本質を研究 します。 歯はエナメル質が黄色い象牙質を覆っていますが、 そのエナメル質にはすき間があり、それが光を乱反射させ るすりガラスの役割をして白さを保っています。しかし加 齢とともに、そのすりガラスに食べ物や唾液からつくられ る無機物などが詰まってくると、光が乱反射せずに、次第 に象牙質の黄色が目立ってきます。これが加齢による歯の
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