ビジネスインサイツ59
- ページ: 2
- 2
毎回、革新、成長を続けている企業のトップに 経営哲学や視点についてお話しを伺います。 インタビュアー:JMAC
代表取締役社長 鈴木 亨
〜「仕掛け」と「実行」の徹底で改革を目指す〜
“ 第 3 のイ ノベーション ” で 新たなバリ ューを創造する
ヤマトホールディングス株式会社
挑戦し続けるヤマトグループ が持つ「健全な危機感」の正体
鈴木:木川会長は 2005 年、みずほコーポレート銀行か らヤマト運輸に移られましたが、きっかけや入社したとき の想いをお聞かせください。 木川:もともと、私がいたみずほフィナンシャルグループ はヤマト運輸の取引銀行としてお付き合いがあり、そのご 縁でヤマト運輸に入社しました。 入社したときに当社の有富(当時のヤマト運輸会長)か ら聞いた「木川さん、ウチの会社、5 年後 10 年後には衰 退しているかもしれない」という言葉は衝撃的でした。で も、よくよく話を聞いてみると、 「今は宅配便のトップラ ンナーでも、人口が減って GDP も低下していく中、内需 産業だけに頼っていたらいずれ成長力を失う」という危機 感を持て、ということだったのです。 ヤマト運輸といえば、取引銀行の目から見ても業績を順 調に伸ばし続ける宅配業界のリーディングカンパニーで、 財務的にも無借金で何の心配もない会社だというイメージ がありました。そのため、外から見ていたときとのギャッ プに驚いたのと同時に、この「健全な危機感」こそが、ヤ マトグループの絶えざるイノベーションの DNA であり、 強みなのだと感じました。
ヤマトグループは 1919 年の創業以来、二度のイノベー ションを起こしてきました。一度目は創業者である小倉康 臣氏が手がけた 1929 年の「路線事業」 、二度目は創業者 の後を継いだ小倉昌男氏が手がけた 1976 年の「宅急便」 です。宅急便は 40 年近くたった今でも成長を続けていま すが、実はオイルショック後の経営難を立て直すために開 始した事業でした。ですから、昌男氏には、経営難に陥る 前に次の一手を打つことができなかったという反省があっ たのではないかと思います。その反省から、 「元気なとき こそ次の成長を目指して挑戦を続けるべきである」という ヤマトグループの風土がつくり上げられ、今もなおそれが 根付いているのだと思っています。
「路線事業」 「宅急便」に次ぐ 第 3 のイノベーションに挑む
鈴木:銀行業界と運輸業界では何が一番違うとお感じにな りましたか。また、それが成長戦略を描くうえで、どのよ うに影響してくるのでしょうか。 木川:一番の違いは銀行業界は非常に規制が強く、運輸業 は規制が緩やかであるという点です。ですから、ヤマト運 輸に来たときには、解放感がありました。次の成長戦略を どう描いていこうかと考えるときに、規制にとらわれるこ
- ▲TOP