ビジネスインサイツ59
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毎回、革新、成長を続けている企業のトップに 経営哲学や視点についてお話しを伺います。 インタビュアー:JMAC
代表取締役社長 鈴木 亨
〜「仕掛け」と「実行」の徹底で改革を目指す〜
“ 第 3 のイ ノベーション ” で 新たなバリ ューを創造する
ヤマトホールディングス株式会社
挑戦し続けるヤマトグループ が持つ「健全な危機感」の正体
鈴木:木川会長は 2005 年、みずほコーポレート銀行か らヤマト運輸に移られましたが、きっかけや入社したとき の想いをお聞かせください。 木川:もともと、私がいたみずほフィナンシャルグループ はヤマト運輸の取引銀行としてお付き合いがあり、そのご 縁でヤマト運輸に入社しました。 入社したときに当社の有富(当時のヤマト運輸会長)か ら聞いた「木川さん、ウチの会社、5 年後 10 年後には衰 退しているかもしれない」という言葉は衝撃的でした。で も、よくよく話を聞いてみると、 「今は宅配便のトップラ ンナーでも、人口が減って GDP も低下していく中、内需 産業だけに頼っていたらいずれ成長力を失う」という危機 感を持て、ということだったのです。 ヤマト運輸といえば、取引銀行の目から見ても業績を順 調に伸ばし続ける宅配業界のリーディングカンパニーで、 財務的にも無借金で何の心配もない会社だというイメージ がありました。そのため、外から見ていたときとのギャッ プに驚いたのと同時に、この「健全な危機感」こそが、ヤ マトグループの絶えざるイノベーションの DNA であり、 強みなのだと感じました。
ヤマトグループは 1919 年の創業以来、二度のイノベー ションを起こしてきました。一度目は創業者である小倉康 臣氏が手がけた 1929 年の「路線事業」 、二度目は創業者 の後を継いだ小倉昌男氏が手がけた 1976 年の「宅急便」 です。宅急便は 40 年近くたった今でも成長を続けていま すが、実はオイルショック後の経営難を立て直すために開 始した事業でした。ですから、昌男氏には、経営難に陥る 前に次の一手を打つことができなかったという反省があっ たのではないかと思います。その反省から、 「元気なとき こそ次の成長を目指して挑戦を続けるべきである」という ヤマトグループの風土がつくり上げられ、今もなおそれが 根付いているのだと思っています。
「路線事業」 「宅急便」に次ぐ 第 3 のイノベーションに挑む
鈴木:銀行業界と運輸業界では何が一番違うとお感じにな りましたか。また、それが成長戦略を描くうえで、どのよ うに影響してくるのでしょうか。 木川:一番の違いは銀行業界は非常に規制が強く、運輸業 は規制が緩やかであるという点です。ですから、ヤマト運 輸に来たときには、解放感がありました。次の成長戦略を どう描いていこうかと考えるときに、規制にとらわれるこ
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創立 : 1919 年 11 月 29 日 資本金 : 1,272 億 34 百万円(2015 年 3 月末日現在) グループ従業員数:197,056 名(2015 年 3 月末日現在) グループの主な事業内容 : 小口貨物輸送サービス、 企業間物流サー ビス、生活支援サービス、情報システ ム開発、金融サービス、車両整備、幹 線輸送、人材派遣
ヤマトホールディングス株式会社は 1919 年(大正 8 年) に創業し、2019 年に創業 100 周年を迎える。前身であ る旧ヤマト運輸株式会社の純粋持株会社制への移行に伴 い、2005 年、現社名に変更された。宅急便をはじめ、ロ ジスティクス事業やフィナンシャル事業などを行ってい る。代表取締役会長の木川眞氏は現在、 「路線事業」 「宅急 便」に次ぐ、ヤマトグループにとって第 3 のイノベーショ ンを手がけている。イノベーションの担い手ゆえのご苦労 と喜び、そして今後の展望についてお聞きした。
代表取締役会長
木川 眞
となく、自由にさまざまなことに挑戦し、当社の強みを存 分に発揮できると感じました。 しかし、規制がなく自由な分、同じ土俵で闘っている他 社との差別化を図っていかなければ勝ち残れないという厳 しさもあります。オンリーワン、ナンバーワンの存在でい るためには、10 年後 20 年後にターゲットとする市場で どのような変化が起きているのかを見通して、常に新しい ことに挑戦し続けていかなければなりません。 私が入社した 2005 年当時、宅急便はまだまだ伸び続け ていましたが、宅急便だけに軸足を置いたままではいずれ 成長力を失うのではないかという危機感がありました。そ こで、次の成長戦略では、宅急便を伸ばし続けながらも、 新たなフィールドにも活動領域を広げることで事業ポート フォリオ構造を変えていこうと考えました。そのために ホールディングス制を導入し、 さらに 「路線事業」 「宅急便」 に次ぐ第 3 のイノベーションの実現に向けて今もなお走 り続けています。
木川:われわれは、第 3 のイノベーションを通じて「ア ジア No.1 の流通 ・ 生活支援ソリューションプロバイダー」 となることを目標に掲げています。それに向けて打ち出し たのが、 ネットワーク構造改革を柱とした「バリュー ・ ネッ トワーキング」構想です。 この構想では、物流を単なる「コスト」から「価値を生 み出す手段」に進化させ、企業の物流改革を支援すること で日本経済の成長戦略に貢献することを目指しています。 これまで to C(個人宛て)に強みを発揮してきた当社の ネットワークを進化させ、さらにモノの流れの中で修理・ 洗浄・印刷などさまざまな価値を付加することで、ワール ドワイドに小口・多頻度でモノが動く B to(企業発の荷 物)の分野で価値あるサービスを提供します。また、to C 分野においても利便性をより向上させるために、e コマー ス(インターネット通販など)における関東・中部・関西 の三大都市間における当日配送を実現します。 これらの実現のため、ネットワークの革新を図ってきま した。グローバル輸送においては、 「宅急便のアジア展開」 と「沖縄国際物流ハブ」の活用によりアジアへの翌日配送 を実現し、羽田に日本とアジアを結節するヤマトグループ 最大級の総合物流ターミナル「羽田クロノゲート」を建設 しました。また、国内輸送においては、今後の労働力不足 も考え徹底的な省力化と、同時に国内主要都市間の当日 配送を実現する新たなネットワーク「ゲートウェイ構想」
ネットワーク革新で企業の 「物流改革」を目指す
鈴木:木川会長が描いている「第 3 のイノベーション」 では具体的にはどのようなことを実現するのでしょうか。
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をスタートさせ、その第 1 号となる「厚木ゲートウェイ」 を建設しました。 この革新的なネットワークとロジスティクス・IT・決済 といった当社グループの有する機能を生かして企業の「物 流改革」を支援していきたいと思っています。 当社はこれまで、ゴルフやスキーの手ぶら文化やクール 便、時間帯お届けサービスなどを次々とつくり出し、お客 様の利便性を飛躍的に高めてきました。この宅急便で培っ たエンドユーザー目線を生かし、企業のお客様のニーズに 応えることで、企業の「物流改革」を大きく進めることが できると考えています。
めに少し今までとは違うやり方を工夫しようじゃないか、 ということを現場に問いかけ続け、チャレンジしてもらい ました。2 年くらいトライアルし続けていくうちに、ベテ ランのセールスドライバーも「意外にいいじゃないか」と 納得して、さまざまな工夫が現場で生まれ始めました。 これと同時に、ソリューション営業を積極的に推進する ための意識改革も行っていきました。それまでは本社が商 品開発をして現場が遂行するトップダウン型でしたが、お 客様のニーズを拾うためには現場の声をもっと聞こうとい うことで、社長以下本社の役員が現場に赴き、そこで提案 を受け議論を行うボトムアップ型のグループエリア戦略 ミーティングを開始しました。これにより、お客様の生の 声をより適切に商品企画に反映できるようになったと考え ています。 また、企業の「物流改革」は宅急便という単機能で実現 できるものではなく、ヤマトグループ全体で支援していく ものですから、グループをあげてソリューション活動をし ていこうと呼びかけ、啓蒙を進めていきました。
サービス向上のカギは 社内改革にあり
鈴木:国内外ネットワークの構築と B to B の強化、ソ リューション活動を次々と実践されているヤマトグループ ですが、ネットワークの運用やお客様へのソリューション 活動は、現場の社員の皆様によるところが大きいと思いま す。現場の社員の皆様に経営陣の想いを伝え、共に動いて もらうために、どのような方法をおとりになったのでしょ うか。ご苦労されたことなどがあればお聞かせください。 木川 : 従来の物流においては、 「品質」 「スピード」 「コスト」 のうちどれかが秀でていれば評価されていました。しかし 現在は、これらすべてが揃わなければ、お客様の満足を得 ることはできません。そこで、品質とスピードを向上させ ながらも、低コストなサービスをご提供できるよう、ネッ トワーク構造改革とともに社内の業務改革と意識改革を行 いました。 宅急便サービスを提供するヤマト運輸では、生産性低下 につながるオーバーワークの見直しから始めました。たと えば、セールスドライバーの業務から集荷・配達以外の作 業を極力省力化・分業化し、長時間労働をなくす仕組みづ くりをしていきました。セールスドライバー自身が行って いた荷物の積み込みをパート社員に任せることで、早い人 で朝 7 時前に出社していたセールスドライバーは 8 時に 出社すればよくなりました。 ベテランのセールスドライバーからは、 「他人が積んだ のでは不安だ」 「やっぱり自分で積み込みたい」という戸 惑いの声が上がりましたが、お客様へのサービス向上のた
仕掛けと実行を分担・徹底 二人三脚で改革を断行する
鈴木:第 3 のイノベーションに向けて、ネットワーク構 造改革をし、同時に社内改革も進めてこられました。これ らを徹底してやられてきたことへの想いや今後の展望につ いてお聞かせください。 木川 : 一連の改革では、仕掛けと実行を徹底してきました。 ネットワーク構造改革の仕掛けは主に私が行い、現場へ出 向いての社内改革は私の前任者の瀬戸(現相談役)が担っ てくれましたので、まさに二人三脚で進めてきました。こ れらの改革は同時並行的に行いましたが、だからこそ大胆 かつ先進的なイノベーションが可能だったのです。 10 年間必死で走り続けてここまで来たわけですが、成 果はこれから刈り取っていくという段階です。ただし、き わめていい流れができており、事業のポートフォリオもね らいどおりに大きく変化しています。 何よりも、来年度には三河ゲートウェイが、再来年度に は大阪のゲートウェイが完成する見込みで、関東・中部・ 関西間の当日配達の実現が見えてきました。海外のネット ワークも順調に拡大しています。この姿を社内外に示すこ
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木川 眞
Makoto Kigawa
1949 年 1973 年 2004 年 2005 年 2006 年 2011 年 2015 年
広島県生まれ
一橋大学商学部卒業 富士銀行入行 ヤマト運輸入社 常務取締役
みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)常務取締役 ヤマトホールディングス 代表取締役 常務執行役員
代表取締役社長 社長執行役員 代表取締役会長 現任
とができ、お客様には「ヤマトグループは大きく変わった な」 「一緒に組めば何か面白いことができるかもしれない な」と感じていただける流れができたと思います。社員は 自信を持ち、モチベーションは順調に上がっています。 また、日本企業が国際競争力をつけていくためには、も のづくりを担う一次産業二次産業の成長が欠かせません。 たとえば、農産品を新鮮なまま海外に届けることにはとて も価値がありますが、 そのインフラはすでにわれわれが 「国 際クール宅急便」としてつくり上げています。デフレの時 代に思い切った先行投資をしたおかげで、われわれの役割 をこのタイミングでアピールでき、順回転できているのだ と思っています。
1 年半前のクール宅急便の温度管理問題が典型です。問題 が発生したときに経営者が初動をどうするかで、その後が 決まります。 初動を間違えると泥沼に入っていきますから、 それをどうくい止めるか、社員の動揺をどうおさめるか、 これは経営者として磨いておかなければならない力です。 そして 4 つ目は「発信力」です。これが 4 つのうちで 一番大切です。社内外に発信するときは、どう伝え、どう 理解してもらうかという自分のスタイルを持たなくてはい けません。いくら挑戦する力があっても、そして危機対応 のスキルを磨いても、発信方法を間違えたら結局何もでき ません。先のネットワーク革新には、それまでの設備投資 費の 10 倍にあたる約 2,000 億円という巨額を投じました が、私はこれを積極的に発表しました。ヤマトグループが 大きな攻めに転じたということをメッセージとして社内外 に示すためです。また、メッセージはわかりやすいことが 大切です。私は常に、言いたいことを短いキャッチフレー ズにします。たとえば、昨年の発信は「シッカリ、イキイ キ、ワクワク」でした。これには、ヤマトグループがこれ からも成長し続けるためには「しっかりした経営理念を皆 で共有し、社員がイキイキと働き、ワクワクするような経 営戦略が実行されている」ことが大切だというメッセージ を込めています。 次世代のリーダーには、長い視点で先を見通し、絶え間 ない挑戦をしていってもらいたいですね。そして、この挑 戦を支えてくれるのは「人」ですから、ぜひ「人づくり」 を積極的に行い、全社員が一丸となって挑戦していく風土 をつくっていってほしいと思います。
経営者に必要なのは 「発信力」 どう伝え、理解してもらうか
鈴木:最後に、木川会長から次世代を担うトップ、経営幹 部の方へ向けたメッセージをお願いします。 木川:私は、経営者にとって大事なスキル・力は 4 つあ ると考えています。 1 つ目は「挑戦力」です。率先して事業変革をさせると いった、新しいものに挑戦する力が必要です。 2 つ目は「決断力」です。これは、決断することに対し て腹をくくっているかということです。たとえば、投資を いくらするかといったときに求められます。 3 つ目は「危機対応能力」です。当社の場合、たとえば
の DNA を引き継ぎ、ヤマトグループのサービスの原点を見つめ、新たな改革の牽引 者としてグループをまとめていくトップとしての強い想いと物流事業者としての熱い 心意気を、ご本人のインタビューを通して感じました。
木
川会長が一貫してお話になっていることは「健全なる危機感」を持ち、次の ステージへ挑戦していく、ヤマトグループの DNA ではないでしょうか。こ
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〜マザー工場の力を育む「道場」の効果〜
ビジネス成果に向けて JMAC が支援した 企業事例をご紹介します。
安全活動で醸成される 「人間力」が ものづく りの総合力を高める !
栗東積水工業株式会社
積水化学工業株式会社・滋賀栗東工場では、災害撲滅に向けた改善 活動や訓練などの安全活動を再優先の取組みとしている。同工場で は、 『安全と生産性や利益確保は相反するものでなく、安全の推進 が事業全体の基本であり、 ひいては生産性を高め、 利益体質を生む』 と考え、事業活動を行っている。同工場の生産を担っている栗東積 水工業株式会社の代表取締役社長・岩田吉信氏は、長らく同社全体 の安全活動の「仕掛け人」として尽力してきた。同氏に、現場の安 全づくりへの思い・人づくりのモットーなどをお聞きした。
代表取締役社長
岩田 吉信
Yoshinobu Iwata
現場・現物・現実の精神を 「道場」で継承していく
積水化学工業株式会社は、プラスチック製品のパイオニ アとして 1947 年に創業、戦後日本の生活および産業への プラスチックの普及に貢献してきた。同時に海外進出など のグローバル化、住宅などの事業の多角化も進めてきた。 現在、 「住宅」 「環境 ・ ライフライン」 「高機能プラスチックス」 の 3 つのカンパニーにより事業を展開している。環境・ ライフラインカンパニーに属する滋賀栗東工場は、 給排水 ・ 建設設備・下水道などに使用される管工機材の主力工場で
あり、 高い生産力 ・ 技術力を有するマザー工場の役割も担っ ている。 同工場には、安全・品質・環境・KAIZEN・保全の 5 種類の「道場」が設置されている。この「道場」は技術・ 技能伝承と向上のための研修施設であり、優秀事例やトラ ブル事例のパネル・材料・工具・測定器などの現物も展示 されている。とくに安全道場には、さまざまな災害(挟ま れ・巻き込まれ・感電など)を疑似体験できる設備や機器 が設置され、従業員の訓練に活用されている(次頁写真) 。 同工場の道場は、技能教育の場として他の模範となってお り、全国に広く普及している。 「気がついたら、道場だらけになりました」と笑いなが
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ら語る岩田氏は、長く現場第一線でものづくりに従事して きた。その当時について岩田氏は 「設備・原料が原因で のトラブルが多く、現場で働いていて苦労しましたね。し かしそれを克服するために、技術やスキルを磨くことがで きたのです」と振り返る。 岩田氏は「昔と比べて今は、 トラブルが激減しています。 そのため、標準以外のことはできず、三現主義(現場・現 物・現実)に現人 を加えた『四現主義』が希薄になって
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ション高く推進してきた。 岩田氏は「製造職はものをつくってお客様に提供するの が仕事。トップの方針で TQC・TPM 活動があるのを知っ たとき、最初は『なぜこんな活動をするのか?』と疑心暗 鬼でしたが、これらの活動を行っているうちに、自らの成 長を実感できたのです。とくに TPM ではステップが進む ごとに、自分の中にマネジメント力、指導力が身につきま した」とモチベーションを高く保って活動したことで、大 きく成長できたことを振り返る。 さらに「今は『定年まで勤めるのが吉』という時代では なく、転職もめずらしくありません。製造業に入って定年 までものづくりをするという人だけでなく、サービス業か ら転職した人、短期で働く人などで組織が構成されている ので、ものづくりのスキルを今までどおりじっくり高める ことができないのです。人材育成のために、TPM の再ス タートを模索したこともあります」と語る岩田氏は、これ らの活動への思いをとても強く持っている。しかし現在で は、かつての TPM のような活動の展開はむずかしい状況 にあるという。そこで、道場の役割が重要になってくる。 これまで岩田氏と何度か議論する機会があった JMAC マスター TPM コンサルタント大崎秀夫も「一般的にトッ プの任期が短くなってきて、TPM のように 3 年かけて全 体を底上げしていくような大掛かりな活動は、取り組みに くくなっているのは事実。導入するとしても限られた範囲 の活動になる傾向にあります。活動で人が育つ機会が減っ た分、道場の機能と役割が重要になってきます」と語る。
※現人:現場の現物・現実を確認し改善するのは「人」であること
います」と危機感を抱いている。安全においてもこの四現 主義は必要不可欠だという信念もある。積水化学グループ 統一スローガンの「安全無くして品質無し 安全と品質無 くして生産性無し!」のとおり、まず安全なのだ。もちろ ん、その時々の事象は千差万別で、道場ですべてを再現す ることはできない。そこで岩田氏が重視したのが、 「学び」 「躾」 「モチベーション」である。 「擬似体験を目的とした道場はよくありますが、当社の 道場では、従業員の『躾』を重視しているのが特徴です。 躾の基本は声を出すことですから、四現主義へのモチベー ションを上げるために、道場では声を出すところから訓練 できるように設計しました。躾と疑似体験がセットになっ てこその道場だと考えています」 (岩田氏) 。 また、岩田氏がモチベーションを大切にする理由は、自 身がモチベーション高く活動を推進してきたからだ。日本 では高度経済成長期から、各企業で QC サークル活動が 活発になり、さらに TQC・TQM・TPM などの全社的な 活動に発展していった。岩田氏もこれらの活動をモチベー
滋賀栗東工場の「安全道場」
▲感電の疑似体験 ▲▶さまざまな災害を疑 似体験できる設備が充実 している
▲道場に入るときは指差呼称 で「声」を出す ▶挟まれの疑似体験
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道場に集まることで 人と人との接点が生まれる
岩田氏が「道場」に期待している機能は、単に個人が知 識・技術・技能を習得することだけではない。大きなねら いとして、 岩田氏は「道場に人が集まり、 コミュニケーショ ンを取ることが重要」と語る。 確かに岩田氏の若いころと違い、今では設備の大型化・ 自動化で製造現場の人の数が少なく、コミュニケーション も少なくなっている。コミュニケーションがないと「教え 合い学び合う」機会もなくなる。大崎も「設備高度化の流 れは、人づくりと逆行する面もあります。故障が起きても 部品を交換するだけで、再発防止のための解析が不十分な ままになっていることが少なくないし、故障を放置してい ても誰も指摘しなくなる。人がいないからと言えばそれま でですが、だからこそまず道場に人を集めることで、人と 人の接点やつながりを意識してもらうことが大切です」と 岩田氏のねらいに賛同している。 「環境や設備が変わるのは、仕方のないことだと考えて います。しかし、それらがどう変わってきても、われわれ のような上の立場の者が最重要視すべきことは、人づくり です」と岩田氏は断言している。岩田氏が、これからの人 材育成面で力を入れていきたいのは、技能や技術力だけで なく「人間力」を伸ばすことだという。 岩田氏は「マネジャー層・リーダー層には、現場に足を 運ばず、現場の状況を知らないまま、机のパソコンで処理 する人が増えてきました。管理指標を学び・見るだけでは なく、リーダーにはものづくりのイロハのすべてを学んで もらいたいのです」と育成への思いを語る。組織がひとつ になって大きな目標に向かっていくときに、リーダーシッ プ・部下への思いやり・コミュニケーションによる「人間 力」が大切であることを、岩田氏は自身の活動経験から身 に染みて感じている。
を実施している。目的はスタンプそのものではなく、現場 に足を運んでライン長・安全担当者が作業員に声をかけ、 コミュニケーションを取ることにある。このコミュニケー ションが全員の安全意識の向上に役立っている。 さらには、 管理者が現場に足跡(気づき)を残し、潜在的な危険・見 えないリスクを抽出することで、不安全行動や不安全状態 の改善にも大きく貢献している。 「素晴らしい活動を思いついても、それを実行して定着 させなければ意味がありません。活動を定着させるために は、管理者がどれだけ現場に通うかで決まります」と岩田 氏は現場主義を強調する。 さまざまな仕掛けづくりをしてきた岩田氏が今年のテー マとしているのが「考える力」だという。岩田氏は「標準 によるものづくりが定着して、当たり前に製品ができてい くため、考える機会がなくなっているのではと危惧してい ます」と語る。そこで、改善活動を通じて考える力を伸ば すことをねらい、現場改善王の表彰を昨年度から行ってい る。 「私が製造現場でものづくりをしていたころ、自分が 考えた改善が職場の中で活用されていることが非常にうれ しかった。この喜びを皆に味わってもらいたいのです。ま だまだこれからですが、 現場 9 大任務〔P(生産性) ・ Q(品 質) ・ C(原価) ・ D(納期) ・ S(安全) ・ M(設備) ・ M(道徳 ・ 志気) ・E(環境) ・E(教育・訓練) 〕の向上のために、もっ と現場が知恵を絞るようにしていきたいですね」 (岩田氏) 。 標準があるとはいえ、現場は生き物なので状況は一様で はない。標準を守るだけは対処できないケースも少なから ず出てくる。 「考える力があると、イレギュラーに対処す る選択肢の幅が広がります。 その対処が良い事例となって、 道場などの教材で共有化され、次の改善のヒントになって いくはずです」 (大崎) 。
ゼロ災を目指して 全員が参画する活動を
岩田氏がこうした道場の設置やさまざまな「仕掛け」を 打ち出してきたのは、環境・ライフラインカンパニー 12 工場の安全を担当していたことに由来する。そのころ半期 で数件の不休災害があり、何がなんでもゼロにしたいと目 標を定めた。 「ゼロにするために何をしたらよいか? そのためには、
知恵を絞った改善で 考える力をつける
こうしたコミュニケーションは道場だけでなく、仕事上 でも必要なため、同工場では「安全巡回スタンプラリー」
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従業員全員が安全に関心を持つべきだと考え、他社事例を 学び、 『仕掛け』をつくり実行しました」 (岩田氏) 。岩田 氏の思いが詰まった安全道場は、全社に展開され同様の道 場が各工場に設置されている。 「道場をつくれば、災害がなくなるわけではありません。 重要なのはケガをさせないための真剣な思いで、日頃から 安全を言動に表すことが大切です。スタンプラリーによる 声がけもそうですし、栗東積水幹部会の会議も『ご安全 に!』という言葉で始めています」と語る岩田氏は、道場 というハードそのものよりも、日頃からの意識や関心の喚 起が大切だと強調する。 岩田氏が「ご安全に!」に込めている思いは、トップは 「誰ひとりケガをさせない」 、管理監督者は「部下にケガを させない」 、全従業員は「自分はケガをしない・仲間にケ ガをさせない」という思いをそれぞれ持ってほしい、とい うこと。全社的に Safety First の文化があるが、40 年以 上も安全を突き詰めて考え抜くことに尽力してきたからこ その思いである。 「何よりもまず安全が最優先です! その次に品質・運 転条件・設備条件などへ枝分かれし、さらに人間力を高め ることで、ものづくりの総合力が上がると考えています。 どんなに自動化が進んでも、ものづくりは人が行うので、 ケガがなく元気なものづくりを実現することを大切にし て、これまで仕事をしてきました」 (岩田氏) 。 その思いを同社の活動に感じ取った大崎は「安全を軸に して組織でまとまった活動を展開できているのは、岩田さ んが常に “ わかりやすさ ” を追求しているから。一般的な知 識の伝達ではなく、具体的にどうすれば現場でケガなく安
全を保てるかを、わかり やすく伝える工夫が随所 にある」と見ている。 安全活動はどこでも やっているので、当たり 前の活動として考えられ がちだ。しかし、安全は すべての人に関わること なので、全社員が取り組 むべきテーマだ。 「組織を まとめる際に、安全を切 り口にしたことは効果が あったと自負しています。 災害ゼロという目標の達
▲正門に設置されている全従業 員の守り神 「三心安全安心の塔」 。 三心とは「怪我をしない心・怪 我をさせない心・全従業員、家 族を含めゼロ災を誓う心」
成は、全部門が協力しないと不可能です。安全活動は当た り前ですが、当たり前を徹底させてゼロにしていくのは難 しいことです。マンネリにならないように、常に新しい発 想で新しいことを取り入れていかないと活動を継続できま せん」 (岩田氏) 。 休業災害だけでなく、不休災害や交通災害なども含めた 「1,000 日ゼロ災」を目指し、結果 5 年間ゼロ災を達成す ることができたのも、全従業員の協力があってこそだと岩 田氏は考えている。 安全活動を通じて人間形成が行われ、それが現場力・改 善力の向上へとつながっていく。この力がこれからも積水 化学グループのものづくりを支え続けていくに違いない。
「道場」を
ことです!
育つ場にする
教える人も
担 当 コ ンサルタントからの一言
「道場」はものづくり人材育成に欠かせない
かつてのように人も時間もコストも活動にかけられない中、岩田さんご自身が 活動で得た学びの体験を、後の世代のために「道場」で実現しようとしている 意義は、非常に大きいと思います。今後のものづくり人材育成では、道場のよ から、道場を学ぶ場だけでなく、教える人を育てる場にすることも意識すべき 道場でなければ、効果も期待できません。また、 「師範」になる人はトップと つながりながら、ニーズを現場に伝える役割も持ってほしいと思います。 うな「場づくり」は必要不可欠となるはずです。道場には「師範」も必要です です。漠然と見よう見まねでつくるのではなく、岩田さんのように考え抜いた
大崎 秀夫
マスターTPMコンサルタント
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人と組織(チーム)の力を最大化することを目的に JMAC が 支援した企業事例をご紹介します。
グローバル拠点での良品生産を支える 「ワンランク上」への挑戦
〜「自分たち流」をつくり、次世代へつなげていく〜
急速なグローバル展開で 「ワンランク上」が課題に
総合自動車部品メーカーであるカルソニックカンセイ株 式会社は 1938 年、 「日本ラジエーター製造株式会社」と して設立された。その後 1988 年に「カルソニック株式会 社」へ社名変更し、2000 年には「株式会社カンセイ」と 合併して「カルソニックカンセイ株式会社」 (以下、カル ソニックカンセイ)を設立し現在に至る。 日本にグローバル本社を、欧米とアジアに統括機能を置 いてグローバルネットワークを築き、さらに日本、アメリ カ、メキシコ、イギリス、フランス、中国、タイ、インド に開発拠点を、そして世界に 60 を超える拠点を持つ。こ れら拠点では 2 万人を超える従業員が日々製品の最適供 給に取り組んでいる。 1976 年に米国法人を設立して以来、順調にグローバル 展開を続けてきた同社であったが、近年の顧客の海外進出 に伴い、海外拠点の拡大を急速に進めてきた。顧客は、い つもカルソニックカンセイとしての高い品質の製品を求め ている。現地生産・現地供給の場にあって、そのニーズに 応えるためには、良品をコンスタントにつくり続けなけれ ばならない。 これについて、熱交事業本部 熱交生産技術グループ部 長兼グローバル生産本部 生産技術センター センター付部
長 佐藤彰洋氏は「地産地消に対応できる良品をつくるた めには、高い技術力が必要なのはもちろんのこと、すべて の拠点でその技術が発揮できるよう標準化していくことが 大切です。グローバル化の進展に対応していくためには、 さらにワンランク上の仕事の進め方をしていかなければい けないという思いがありました」と語る。 そこで同社は 2012 年、 「ワンランク上」を目指し、そ れを実現するため、生産技術センターの改革活動を独自に 開始した。
なぜ成果につながらない? 立ちはだかる 2 つの 「内なる壁」
こうして始まった同社の改革活動であったが、 「なかな か思うように進まなかった」と佐藤氏は語る。そしてそこ には「内なる壁」のようなものがあったのだという。 その「内なる壁」は 2 つあり、まず 1 つ目は、 「 『ワン ランク上』を具体的にイメージするのが難しい」というも のだ。ワンランク上を目指せと言われても、すでに一生懸 命に仕事をしているので、自分たちがどこまでやらなけれ ばならないのかがわからず、結果として動けていないとい う状況があった。 2 つ目は、 「ベンチマークとのギャップに気づけない」 というものだ。これまで、他社は何をどうやっているのか
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カルソニックカンセイ株式会社
カルソニックカンセイ株式会社は、40 年にわたりグロー バル展開を続けてきたが、近年は顧客の海外進出に伴い、 海外拠点の拡大を急速に進めてきた。そのため、グロー バル化に対応した改革が急務となったが、そこには改革 そしてそれをどう乗り越えていったのか。その改革の軌 跡と今後の展望についてお聞きした。
を阻む「内なる壁」があった。 「内なる壁」とは何なのか、
熱交事業本部 熱交生産技術グループ部長
佐藤 彰洋
Akihiro Sato
を知る場や機会が少なかったため、それに比べて自分たち はどうなのかという視点をなかなか持てずにいた。結果、 目指すべきベンチマークと自分たちとのギャップに気づけ ず、改革意欲も芽生えないという状況があった。 佐藤氏は「それまでは『変わらなくてはダメだ、ワンラ ンク上を目指せ』とトップダウンで改革を進めていました が、内部の人間の言うことだけではなかなか伝わりませ んでした。それに、自分たちだけでは “ なるほど ” と思え るストーリーを描くことができなかったのです。そのた め、自分たちだけで改革をしていくのは難しいと感じてい ました」と語る。そこで、同社はこの状況を打破しようと 2013 年、JMAC をパートナーに選び、さらなる改革に乗 り出した。 JMAC を選んだ理由について佐藤氏は「JMAC には以 前から改善手法の講習会などでお世話になっていました が、活動がうまく進んでいないことを JMAC に相談した ことが支援依頼のきっかけになりました。そのときに、さ まざまな事例やカルソニックカンセイの立ち位置を紹介し てもらったのですが、やはりそういうことを教えてくれな がら先導してくれる存在は必要なのだと痛感し、経験豊富 な JMAC にお願いすることに決めました」と当時の思い を振り返る。 本活動を今も支援しているのは JMAC チーフ・コン サルタントの柏木茂吉とコンサルタントの後藤芳範だ。当 時の同社の印象について、柏木は「立派な仕組みはあるの
ですが、一人ひとりの皆さんがそれに縛られ、目の前のこ とをこなすことで精一杯だという印象を受けました。多忙 な中でも、仕組みを活用して今後の業務を変えていこうと 思えるような支援をしていきたいと思いました」と振り返 る。後藤は 「とくに若い人たちが苦しそうで、 一生懸命やっ ているのに報われない、という気持ちを抱えていると感じ ました。ですから、現場の若手エンジニアが少しでも楽に なるようにという気持ちで支援を始めました」と当初の思 いを語る。
「理想と現実」のギャップを知る まずはそこからだ
新たな活動を始めるにあたり、佐藤氏は JMAC に「目 指すべきベンチマークとのギャップを自分たち自身で気づ き、課題解決していけるような活動にしたい」と伝え、自 助努力するためのサポートを依頼した。 ギャップに気づくためには「現状を正しく認識する」こ とが必要だと考えていた佐藤氏は、まずそこからスタート した。そのために「振り返り分析」と「問題の吐き出し」 を行い、JMAC を交えたマネジャー層のミーティングを 週 1 回、約 40 回繰り返した。 「マネジャーミーティングでは、各チームの実践状況を 共有し、それを踏まえたうえで、自分たちは何をしなくて
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はいけないのか、そのためには部下とはどういう活動をし ていくべきなのかということを徹底的に話し合いました。 こうして試行錯誤を重ねながら『自分たち流』の感覚を育 てていきましたが、このようなときはとかく内向き思考に なったり、自分たちのやり方に拘泥したりしがちです。し かし、JMAC が他社情報やベンチマークを提供してくれ たり、こういうやり方はしないなどと指摘してくれたりし ましたので、ベンチマークとのギャップへの気づきをベー スとした『自分たち流』の改革感覚を育てることができま した」 (佐藤氏) 。 このときのことを柏木は「現実にしている仕事は目標達 成にあまりつながってないという認識を持ち、そこを何と か変えなくてはいけないというところに徐々に変わってき ているのを感じました」と振り返る。 なんじゃないか』と自分たちで工夫して仕事をするように なっていきました。 『吐き出し』で腹の中に溜まっている 不平不満を吐き出せたからこそ、自分たちが抱える本当の 問題に気づき、向き合うことができたのではないかと思っ ています」と語った。 さらに、このチームを率いるマネジャー自身も大きく成 長したという。当初は彼も「このままでいい」と言ってい た一人だったが、いざマネジャーミーティングが始まると 欠かさず参加し、 「変えていこう」というマインドを持っ て強力に引っ張っていくようになったのだ。 このマネジャーの変化について柏木は「これまでは、変 わらなければいけないとわかっていたものの、変わるキッ カケがなかったのではないでしょうか。しかし今回、日常 業務に連動させて改革を進める中で変われそうだなと感 じ、どんどん加速度的に変わっていった、そういうことだ と思います」と語る。 後藤は「日常業務の計画の立て方など、変化が目で見て わかるのが良かったですね。自分でも自信を持てますし、 マネジャーミーティングで他のマネジャーがいいよねと 活動が進み、各チームが変化していく中で、佐藤氏がと くに大きな変化を感じたチームがあったという。それは、 「 『問題の吐き出し』 のときに率直な話し合いができた」 チー ムであった。 佐藤氏は「私たちが一番エネルギーを使ったのが、最初 に行った『問題の吐き出し』でした。このときに『なぜ改 善活動なんかするのか。このままでいいじゃないか』と正 直な気持ちを言えたチームほど、その後の活動がうまく 進んでいきました。不満を出し切った後は、 『こうしたい』 という正直な意見がどんどん出てきて、 『私の役割はこれ
JMAC が支援するカルソニックカンセイの改革活動
1. 作業計画だけではなく、課題解決の計画を立てる • 計画立案時には、課題設定と課題解決ストーリーに注力する • スタートは現状の正しい認識 2. マネジャーによる改革の先導 •「課題ばらし※」の場を通じて、マネジャーが担当者を指導する • そのために、 「課題ばらしを適用する」ではなく、マネジャーが自部門の 改革イメージを強く持つ 3. 生産技術部門における課題解決 • 量産に対する多様な要請課題を同時解決する→目標ばらし • 個別車種対応と中長的にわたる量産品質の安定→原理・原則の追求
※課題ばらし=どのように推進すべきか明確になっていない業務に対して、課題の発掘と解決 ストーリーづくりを通して、実行可能な計画に展開するための手法
率直な「吐き出し」がメンバー のハートに火をつけた!
言ってくれることで、さらに自信がつくといういいサイク ルができていました」と語る。
見つけ、育て、任せる そして、さらに「ワンランク上」へ
現在進行形で活動している同社だが、佐藤氏は「それぞ れのチームに成長の差はあるものの、全体的な底上げは確 実にされてきていると感じます。また、皆の意識もようや く変わり始めたので、これからが正念 場です」とこれまでの成果と今後への 期待を語る。 そして、問題点は「元に戻りやすい」 ことであると指摘し、 「うまくいったと 思っても、少し気を緩めると簡単に元 の状態に戻ってしまいますし、頭や感 覚では理解していても、目の前にある ことを優先せざるを得ず元に戻ってし まうこともあります。体質を変えてい くことは本当に難しいと感じています」 と続けた。 そして、体質化していくために大切
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なのは「諦めずにやり直し続けること」 「核となる人物を つくること」であると強調する。 「元に戻っても、次はもっとうまくスピーディーにやっ ていこうと考えて改革を続けていくのが、私たちの役割だ と思っています。そのためには、それを先頭に立って行 う 『核となる人物』 をつくっていくことが大切です。今後、 核になりそうな人物と常にコミュニケーションをとって、 状況が変わったら同じ目線・理解になるまで話し合い、認 識のベースを合わせていきます。そしてベースを合わせた ら、その核となる人物にある程度任せて、そこで元に戻っ たとしてもとにかく繰り返しやらせてみるのです。そのと きに大切なのは、われわれも核となる人物も共にワンラン クアップしたうえでもう一度やり直すことだと思っていま す」と語る佐藤氏。そうした繰り返しが改革を前進させて ゆくのだ。 を越えることができたと感じています」と評価する。 柏木は「カルソニックカンセイさんが今後さらにスパイ ラルアップしていくためには、将来こうありたいという共 通の到達点を強く持つこと、そこに至るために自分たちが 何をしなくてはいけないのかを考えることが大切です。今 までは日常を変えることに重点を置いていましたが、今後 は明日に向かってより加速して変わっていこうというス テージに移行します。そこでのご支援がわれわれとしても 大事だと考えていますし、それが求められていることだと 感じています」と語す。 後藤は「今までは日常のトラブルを全員で解決しようと いう体質でしたが、今後は課長、メンバーの各役職が何を するのかということを改めて定義し、役割を引き上げるこ とが大切です」と語る。 そして、佐藤氏は「今後は、次世代のメンバーを育てら れるように人材育成にも注力していきたいですね。また、 改革活動で得たことを仕組みに反映させて、QMS(品質 マネジメントシステム)を進化させていきたいと思ってい ます」と今後の課題と抱負について述べる。 「ワンランク上」 を目指し、 改革活動の中で 「自分たち流」 の道を見つけていったカルソニックカンセイ。 「内なる壁」 を乗り越えた先には、無限の可能性を秘めた未来が待って いた。グローバル展開への勢いが加速した今、カルソニッ クカンセイの活躍からますます目が離せない。
「次は君たちの出番だ!」 次世代メンバーに想いをつなげる
これまでの活動を振り返り、佐藤氏は JMAC について 「JMAC は私たちの中に入り込んで、先導士のように引っ 張っていってくれました。ニーズに対してわれわれの事例 を使った解析データを持ってきてくれるなど、紋切り型で はないオーダーメードのソリューションを提供してくれる ところもいいですね。そういった JMAC の情熱に支えら れながら、 自分たちだけでは越えられなかった『内なる壁』
現状とありたい姿 のギャップ認識 か ら、 変 革 行 動 は 生まれる
担 当 コ ンサルタントからの一言
問題意識をポジティブな変革の原動力に変換する
不満がうっ積して挑戦的な目標に向かえない ―― このような停滞状態は多 くの企業で見られます。こうした場合、心の抑圧を解いて複数名で問題を 吐き出してみることで、 「自分だけの思い込みではなかった」という安心感 や連帯感が生まれてきます。一般的に、問題を言ってばかりの人には後ろ
チーフ・コンサルタント
向きだというレッテルを貼りがちですが、実はこのような人が、高い理想 そのエネルギーを適切に引き出し変換しながら、皆のやる気を起こす「あ なげていくことが、われわれの大切な役割だと思っています。
像を具体的に持っていることが多いものなのです。改革の輪の中に入って りたい将来の状態」を描き出し、それを実現するための段階的な行動につ
柏木 茂吉
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経営基盤の強化に向けたさまざまな取組みについて、 JMAC が支援した事例をご紹介します。
〜グローバルに供給する製品の品質保証体制づくり〜
開発から販売、営業までの 全プロセスの質を高めていく!
メディカル事業、そして海外事業の展開により、グループ
日本の衛生改善から 世界の「衛生・環境・健康」へ
終戦から 6 年、ようやく主権を回復したとはいえ日本 の衛生状態は決して良いとはいえず、赤痢などの伝染病が 蔓延していた。その翌年、 サラヤ株式会社(以下、 サラヤ) の創業者・更家章太氏は、衛生状態の改善に貢献すべく、 ヤシ油原料の「パールパーム石けん液」とそれを衛生的に 供給する容器を開発、発売した。これがサラヤの歴史の始 まりである。 以来、40 年以上のロングセラーとなっている「ヤシノ ミ洗剤」をはじめ、さまざまな消毒剤、体にやさしい甘味 料などを次々と世に出し、世界の「衛生・環境・健康」に 貢献する製品・サービスを提供してきた。とくに、2010 年からウガンダで実施している「100 万人の手洗いプロ ジェクト」など、途上国での各種プロジェクトで感染予防 に大きな成果を上げている。 事業規模も順調に拡大し、現在国内に製造 2 拠点、開 発研究 2 拠点、営業拠点 56、海外に営業 17 拠点、製造 6 拠点(中国・タイ・マレーシア)を有している。 現在では、コンシューマー事業、サニテーション事業、
全体で従業員約 1,800 人、売上規模 356 億円にまで成長 した(2014 年 10 月現在) 。
グローバル化に対応できる 品質保証体制の仕組みを
長年の研究成果による製品・サービス、衛生への取組み のノウハウは、 今や世界中に受け入れられるようになった。 しかし、それゆえの悩みも出てきた。 「今、海外での事業展開はどんどん話が進んでいます。 一方で韓国の MERS 感染など、グローバルで対処すべき ことに応えるサラヤの品質保証体制はどうなのか? グ ローバル化に対応できる仕組みがあるのか? ということ にトップが危機感を抱いていたのです」と語るのは、同社 の取締役品質保証本部長の根本三千夫氏だ。 根本氏はサラヤの前職では品質保証のシステムづくり、 プロセスの仕組みづくりに従事、また ISO の審査員でも あり、その目から見ても「製品そのものだけでなく、プロ セス全体の品質を保証する仕組みが十分でない」と感じた という。 たしかに国内であれば、品質問題が生じてもこれまでの
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サラヤ株式会社
「衛生・環境・健康」をモットーに定評ある自然派商品を開発、 販売しているサラヤ株式会社では、 海外事業の拡大に伴い製品 ・ サービスの供給もグローバル化しており、従来の体制による品 質問題への対応に不安を抱えていた。そこで同社の取締役品質 保証本部長・根本三千夫氏、顧問・富田晋平氏(元品質保証本 部長)の両氏は、全社品質改善活動のプロジェクトを立ち上げ た。本活動の背景、仕掛けづくりによる意識の変化、今後の展 望などをお聞きした。
▲取締役品質保証本部長・根本三千夫氏(左) 、 顧問・富田晋平氏
従来のやり方の延長線上でクレーム処理もこなせるが、 〈仕 組み〉がないと海外で発生した問題に対しては、日本から 飛んで行くことになる。何ヵ国にもなれば、これまでのや り方では通用しない。全社的にグローバルな品質保証体制 づくりが急務になったのだ。そのためのプロジェクトの立 上げと運営の専任として、根本氏に白羽の矢が立てられた のである。 「目先の問題の火を消すだけでなく、真の原因から是正 する仕組み、原因を解析して同じ問題が再発しない仕組み が必要と切に思いました」 (根本氏) 。 顧問の富田晋平氏(元品質保証本部長)も「これまでの 品質保証部は、実は “ 失敗の後始末部門 ” だったのです。 意識も原因追求による再発防止・未然防止型ではなく、ま さに処理型だったため、意識改革の活動に取り組むことに したのです」と語る。 いざ社内で活動を展開しようとしても、さすがに内部の 人員だけで実施するのは難しい。プロセス全体に関わるシ ステムづくりとなるので、やはり外部の力が必要となり、 JMAC が活動を支援することになったのである。 JMAC を選んだ根本氏は「上流の設計品質に課題を抱 えていて、真の原因への対策を打っていくうえで、物事の 基本をしっかり理解して進めていくべきだと思っていまし た。さまざまなコンサルティング会社を比較しましたが、 JMAC のアプローチ方法がわれわれの思いにマッチして
いると判断したのです」と語る。 JMAC シニア・コンサルタントの亀ヶ森昌之は「両氏 が指摘するように、設計から生産、営業、販売という流れ の中で、 やはり “ 連携 ” という部分がまだまだでした。 個々 人は非常に一生懸命に取り組んでいても、品質問題は組織 で対応ができないと効果も弱いのです。 その点、 問題をテー マ化して全社で進めていきたいとするサラヤさんの熱い思 いは、最初から伝わってきました」と語る。
ボトムアップ型の活動で プロセスの質を高めていく!
こうして 2014 年、サラヤ全社の品質改善活動プロジェ クトがスタートする運びとなった。品質リスクマネジメン トプロジェクトと名前を付け、その推進組織として社長を トップに品質保証本部が事務局となり、工場から管理間接 部門、海外工場も含めて 40 以上の部門が参画している全 社活動である。富田氏は「トップダウンではなく、ボトム アップ型で活動に取り組みたい」と期待を寄せている。 活動は JMAC の支援のもと、全社的に品質のリスクを すべて洗い出す作業から始まった。 大きなものだけでなく、 こんな心配がある、恐れがあるというレベルまで含めて約
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500 項目を洗い出した。 それを最重要 50 項目 に絞り、さらに A ラン ク、B ランクに分類し て具体的にアクション・ プランに落とし込んだ。 現 在 は、 短 期 の も の、
▲根本 三千夫 氏
その横串しの機能と して本プロジェクトの 推進組織である「品質 保証委員会」を立ち上 げ、JMAC の支援を入 れてトータルで質が上 がる仕組みづくりを目 指したのである。大ま かには、根本氏の品質 保証本部が中心となっ て活動の仕掛けやビジョン展開を行い、JMAC は個々の アクション・プランの進め方や、個別テーマへのテクニカ ルなアドバイスを実施する支援体制になっている。 「当社は、いい指示があればいい仕事をきちっとこなす 企業文化があります。今回のプロジェクトは JMAC の指 導・アドバイスが的確だったので、いい活動になっている と思います」 (富田氏) 。 横串しの効果が出て、活動も自走できる状態になるまで 3 年はかかるのでないかと根本氏は見ているが、 「今の勢 いでいけば、もしかしたら 2 年くらいでは」 (亀ヶ森)と いうくらい現場からの「本気」が伝わるようになった。 活動前は、 何かが起これば現場ですぐに解決してしまい、 後のレポートに残らないことがあった。そのため、検証が 不十分になることが少なからずあったという。 本活動では、 JMAC の指導のもと、レポートとして記録するというこ とを定着させつつ、 「なぜ発生したのか?」をロジカルに 分析するようになったのである。 「なぜ起きたかを深く掘り下げて真の原因を特定して、 解決方法を探っていくと、技術的なこと、あるいは生産計 画までさかのぼって考えるようになりました。自分たちの 問題がロジカルに展開していくことで、何をどう変えたら よいかがわかってくるので、 現場も本気で向き合うのです」 と語る根本氏は、意識改革が着実に進んでいることを実感 しているようだ。今後は研究開発と営業という二大部署を しっかりと巻き込む活動にしていくことがカギになると見 ている。 「それぞれがバラバラに動いてしまうと、自分たちの部 分最適だけになってしまいます。トータルで全体最適を見 る横串しのポジションを担っていきたいと常に思っていま す」 (根本氏) 。
▲富田 晋平 氏
中期のものそれぞれの アクション・プランの 実施段階にある。
500 もの項目が出されたことに対して、根本氏は「海 外工場も含め、よく出してくれたと思います。うれしい意 味で意外でした」と振り返る。 実は従業員から項目を出してもらうに当たって、亀ヶ森 と根本氏でちょっとした「仕掛け」を施していた。 「自分だけで処理できることだけでなく、もし他の工程 でこうやってくれたら助かるんだけど……、ということを 書き出すようにお願いしたのです。そうしたら、お互いに 持ち寄って、これはウチで、これはそちらで、とみんなで 書き出すようになったのです」 (亀ヶ森) 。 根本氏も「自分たちだけでは解決できないことをトータ ルで考えるようになりました。 他のせいにするのではなく、 自分たちができていれば、次工程が助かるということの本 当の意味がわかってきたようです」とプロセスの質を高め ていく意識づけが浸透していることを評価している。
組織に “ 横串し ” をさして 全体最適の成果をねらう
根本氏が何度も強調する「プロセスの質を高めていく」 ためには、部門間の「困りごと」を解決していく必要があ る。サラヤも事業拡大とともに、 急速に組織が大きくなり、 それに対応できる仕組みの構築が追いついていないことを 根本氏も感じていた。 「組織が大きくなり縦割りが進むと、会社全体の戦略が 本当に実践されているかどうかが、見えにくくなります。 個々の製品の品質というより、製品やサービスを生み出す プロセスの質そのものを高めていくには、 組織に “ 横串し ” が必要でした」 (根本氏) 。
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サラヤの品質保証体制図
活動を安定させて さらなるチャレンジへ
当初、根本氏はサラヤの企業文化からして、活動には多 少は「厳しい指導」があったほうがいいと考えていた。短 期で早く結論を出したかったという自身の本音もあった が、意識改革という面からも多少の刺激が必要だと思って いたのである。一方、亀ヶ森は、矢継ぎ早に教え込むこと をせず、焦らずじっくりと従業員に向き合って、さまざま な気づきを「引き出す」ことにした。 亀ヶ森によると、 「ああしなさい、こうしなさいと、ま るでトップから言われるような状況をつくってしまうと、 なかなか実行されないこともあります。こちらから指示す るより、なるべく聞いてあげて、困りごとを共有するよう な作戦にしたのです」とのこと。 「結果として、そのやり方がよかったのです。受ける側 の声をしっかりと聞いていただき、問題点を引き出しても らっているんだなとわかりました。商品開発部をはじめ各 部門は今すごくいいムードになっています。これを壊さな いように、このような指導を長期でお願いできればと考え ています」 (根本氏) 。 活動がスタートしてまだ 1 年に満たないが、 「活動に参 画するメリット」を享受できる「場」づくりは成功したと 言える。全社員が活動そのものに期待しているのである。 今後の方向性や課題について両氏は「活動の土台がしっ かして安定してくれば、部署によってはより専門性の高い
経営会議
サラヤグループの品質保証の 規定、方針目標
ご指摘、 ご要望など
事務局:品質保証本部
品質監査 品質 アセスメント
品質保証委員会 お客様
品質基準 徹底
商品サービス 情報など
各工場
商品開発本部
営業本部
国内外関係会社
コンサルティングの導入も検討していきたいですね」 (根 本氏) 、 「まだまだ基礎的な技術力が弱い部分もあるし、研 究所の成果を実生産に移すときの製造工学を研究から製造 の技術スタッフは修得する必要があります。この部分でも JMAC の支援が必要になってくると思います。サラヤの 製品は、信頼で成り立っています。信頼は品質から生まれ ます。事業規模が拡大しても信頼を維持しなければなりま せん。そのために全社品質改善活動は欠かせないのです」 (富田氏)と語る。 活動が定着するにつれ、意識改革が進み、開発から販売 までのプロセス全体の質が向上していく――本活動の成果 により、サラヤの「衛生・環境・健康」は、これまで以上 に社会に大きく貢献するに違いない。
グローバルで 品質を保証できる 包括的な シニア・コンサルタント マネジメントを! 亀ヶ森 昌之
担 当 コ ンサルタントからの一言
品質をつく り上げる合理性と柔軟性の両立
企業の組織構造が、事業環境や戦略、テクノロジーに適合して変化するよう に、品質を維持・向上するシステムも、状況に合わせて見直す必要がありま す。グローバル拠点で製造を行い、 グローバル市場に製品を送り出すことで、 商品開発から販売までの各機能には新たな課題が生まれ、機能間の整合と調 整がより複雑かつ高度になります。品質マネジメントシステムの合理性を維 持しながらも、柔軟な対応を行う、包括的なマネジメントが要求されていま す。サラヤでは今、それをつくり上げ、ランクアップした品質を提供し続け る、新たなマネジメントレベルへのシフトが始まっています。
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「活かす」 を 「意」 若手のころから一人ひとりの JMAC では、 ことを大切にしています。 闘する若手 このコーナーでは「iik 塾」と称して、日々奮 コンサルタントの「意」をご紹介します。
(い いく)塾 i ik
お客様との議論で信頼関係を築き、問題解決につなげたい
JMAC へ入社しました。 「生産領域のコ ンサルティングを通して、日本のものづ くり企業に貢献したい。エンジニアとと カーでの 生産技術 エンジニ アを経て 私は大学で機械工学を専攻し、メー ウンと生産現場の改善テーマを中心に活 動しています。自身のエンジニアとして 入社以来、生産領域のコンサルタント として生産性向上、品質改善、コストダ また先輩コンサルタントからは、日々 のコンサルティングの場面で大きな刺激 を受けています。お客様と議論し、ホワ
機です。
もに悩みを解決していきたい」――これ が JMAC のコンサルタントになった動
「知識・情報」の蓄積は欠かせません。 時間を見つけては専門書を読んだり、 自身に知見のない技術情報の収集・まと めを続けています。そうした日々の知識
の経験を生かしつつも、さまざまな生産 領域のお客様と議論するためにも日々の
なっています。
日々の行動を続けているきっかけにも
イトボードに本質的な課題を素早く整理 する姿に、豊富な知識や経験の深さにプ ロとしての憧れを感じたことが、自身の
生産エンジニアリング
武田 康平
革新センター
かってはいますが……。
最近はインターネットなどで技術情報 などは簡単に閲覧できるので非常に助
の積み上げでお客様と議論することで信 頼関係が築けていると感じています。
ます。
購買、開発設計部門の種々の課題を解決 できるよう成長していきたいと考えてい
が連携した収益改善・体質改善活動を目 指した「ものづくり」を中心とし、 生産、
今後も生産領域を中心としたコンサル ティングを通じて、生産・開発設計部門
「壁」を乗り越えた経験を お客様が成長する糧にしたい
私は、組織開発・人材開発のコンサルティングに携わってい ます。 人材開発において、一人ひとりが成長の壁や職場での葛藤・ 対立を乗り越え、成長していくために、コンサルタントがすべ 、壁を きことは、本人が見えていない壁の自覚化(着想支援) (試 実践行動の後押し 、 (仮説構築支援) 乗り越える方法論の提供 行支援)だと考えています。 この3つを支援するうえで、私は自身の体験・実践から得た
エンパワーソリューションセンター
増田 さやか
振り返りです。
コンサルティングや研修を始める前、同行しているコンサル 」を伝え、 意識して取り組むこと(意図) 「私が今日、 タントに、 終了後に当初の意図について実践のフィードバックをもらった うえで、次の意図づくりをしています。
また、育児・家事といったプライベートと仕事の両立も、私 の壁であり成長機会なので、定期的にパーソナルコーチの力を
借りて、振り返りを行い、ファーストアクションという形で意
実感を大事にしています。成長の壁やコミュニケーション上の そういっ 私もひとりの人間として日々直面しています。 葛藤は、
図づくりを行っています。 自分の経験・成長が、お客様の成長の糧になり、そっと背中
た壁や葛藤を乗り越えた経験を自分だけにとどめず、お客様に も活用していただくのが私の役割だと感じています。
を押すきっかけになるというのは、人材開発の醍醐味です。こ れからもお客様の成長に自分事で関わるコンサルタント像を追 求していきたいと思います。
そのために私が意識して実践していることは、意図づくりと
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編集部からの耳より情報
JMAC トップセミナーのご案内
〜経営革新を推進する先人から学ぶ〜
「JMAC トップセミナー」は、JMAC と経営トップ層を繋ぐ本誌にご登場いただいた経営トップの方々を講師にお 招きし、実際に改革を断行していく苦難や成功体験をお話いただく経営トップ向けセミナーです。
11 月 19 日 開催
(木) 2015
と題し、ご講演いただきます。
基調講演:ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役会長 木川 眞 氏
15:00 〜 18:30
定 員:50 名(お申込み順)
11 月 19 日(木)の「JMAC トップセミナー」では、本誌 の TOP MESSAGE にご登場いただいた、 ヤマトホールディ ングス株式会社 代表取締役会長 木川 眞氏をお迎えし、 「“ 第 3 のイノベーション ”で新たなバリューを創造する」 本誌ではご紹介しきれなかった木川氏のお話を、直接お聞 きできるチャンスです。ぜひご参加ください。
イイノホール&カンファレンスセンター
対 象:経営トップ層、部門長の方々 参加料:10,800 円(税込) ※参加者交流費を含む
( 東京都千代田区内幸町 2-1-1 飯野ビルディング 4F)
URL http://www.jmac.co.jp/seminar/open
日本能率協会コンサルティング(JMAC)のコンサルタントが、コンサルティング現場で 得た経験や知見、問題解決の視点などを、コラムとして毎月 1 回更新しています。 ぜひご覧ください!
URL
http://www.jmac.co.jp/column
塚松 一也 笠井 洋
ものづくりのブレイクスルーで未来を拓け! 研究開発現場マネジメントの羅針盤 ロジスティクスの新潮流 MOT を核にした事業化展開 顧客中心マーケティングへの原点回帰
石田 秀夫 横山 隆史 守田 義昭 栗山 裕司
小澤 勇夫 細矢 泰弘 江渡 康裕
プロフィット・デザイン 設備を大切にする技術と技能 人事制度改革の論点
しなやかな組織・人・チームづくり 今から「働き方」の話をしよう 今こそ環境経営の推進を
田中 良憲 山田 朗
現場にトップのメッセージ(想い)がインストールされて改革プログラムが起動する――これは木川会長がイン タビューで強調された「発信力」あってこそ。その力を発揮させるには、発信する内容、タイミング、やり方な ど、自身の「スタイル」が重要とのことです。 「寡黙は美徳」などと言われることもありますが、こと経営に関 しては当てはまらないと悟ると同時に、本誌独自の「発信力」はどうあるべきかを考えさせられました。
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