ビジネスインサイツ59
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従業員全員が安全に関心を持つべきだと考え、他社事例を 学び、 『仕掛け』をつくり実行しました」 (岩田氏) 。岩田 氏の思いが詰まった安全道場は、全社に展開され同様の道 場が各工場に設置されている。 「道場をつくれば、災害がなくなるわけではありません。 重要なのはケガをさせないための真剣な思いで、日頃から 安全を言動に表すことが大切です。スタンプラリーによる 声がけもそうですし、栗東積水幹部会の会議も『ご安全 に!』という言葉で始めています」と語る岩田氏は、道場 というハードそのものよりも、日頃からの意識や関心の喚 起が大切だと強調する。 岩田氏が「ご安全に!」に込めている思いは、トップは 「誰ひとりケガをさせない」 、管理監督者は「部下にケガを させない」 、全従業員は「自分はケガをしない・仲間にケ ガをさせない」という思いをそれぞれ持ってほしい、とい うこと。全社的に Safety First の文化があるが、40 年以 上も安全を突き詰めて考え抜くことに尽力してきたからこ その思いである。 「何よりもまず安全が最優先です! その次に品質・運 転条件・設備条件などへ枝分かれし、さらに人間力を高め ることで、ものづくりの総合力が上がると考えています。 どんなに自動化が進んでも、ものづくりは人が行うので、 ケガがなく元気なものづくりを実現することを大切にし て、これまで仕事をしてきました」 (岩田氏) 。 その思いを同社の活動に感じ取った大崎は「安全を軸に して組織でまとまった活動を展開できているのは、岩田さ んが常に “ わかりやすさ ” を追求しているから。一般的な知 識の伝達ではなく、具体的にどうすれば現場でケガなく安
全を保てるかを、わかり やすく伝える工夫が随所 にある」と見ている。 安全活動はどこでも やっているので、当たり 前の活動として考えられ がちだ。しかし、安全は すべての人に関わること なので、全社員が取り組 むべきテーマだ。 「組織を まとめる際に、安全を切 り口にしたことは効果が あったと自負しています。 災害ゼロという目標の達
▲正門に設置されている全従業 員の守り神 「三心安全安心の塔」 。 三心とは「怪我をしない心・怪 我をさせない心・全従業員、家 族を含めゼロ災を誓う心」
成は、全部門が協力しないと不可能です。安全活動は当た り前ですが、当たり前を徹底させてゼロにしていくのは難 しいことです。マンネリにならないように、常に新しい発 想で新しいことを取り入れていかないと活動を継続できま せん」 (岩田氏) 。 休業災害だけでなく、不休災害や交通災害なども含めた 「1,000 日ゼロ災」を目指し、結果 5 年間ゼロ災を達成す ることができたのも、全従業員の協力があってこそだと岩 田氏は考えている。 安全活動を通じて人間形成が行われ、それが現場力・改 善力の向上へとつながっていく。この力がこれからも積水 化学グループのものづくりを支え続けていくに違いない。
「道場」を
ことです!
育つ場にする
教える人も
担 当 コ ンサルタントからの一言
「道場」はものづくり人材育成に欠かせない
かつてのように人も時間もコストも活動にかけられない中、岩田さんご自身が 活動で得た学びの体験を、後の世代のために「道場」で実現しようとしている 意義は、非常に大きいと思います。今後のものづくり人材育成では、道場のよ から、道場を学ぶ場だけでなく、教える人を育てる場にすることも意識すべき 道場でなければ、効果も期待できません。また、 「師範」になる人はトップと つながりながら、ニーズを現場に伝える役割も持ってほしいと思います。 うな「場づくり」は必要不可欠となるはずです。道場には「師範」も必要です です。漠然と見よう見まねでつくるのではなく、岩田さんのように考え抜いた
大崎 秀夫
マスターTPMコンサルタント
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