ビジネスインサイツ65
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JMAC EYES
最新のコンサルティング技術・事例・実践方法などについて コンサルタント独自の視点で語ります。
イノベーションで成果を出せる技術人材をつくる 「場づくり」と「仕掛け」
R&D 組織革新センター センター長 シニア・コンサルタント
鬼束 智昭 Tomoaki Onizuka
R&D組織に 求められる人材とは
R&D(研究開発)の現場では、現在2 つのことが期待されています。 1つは現事業の競争力強化につながる 技術開発で、もう1つは新たな価値の創 造や新事業の創出につながる技術開発で す。難しいのは後者の新たな価値の創造 や、新事業の創出につながる技術開発で す。実現するには自らターゲットを設定 して、そこでの価値をデザインしなけれ ばなりません。ここで求められるのが、 “イノベーションを起こす人材”です。 JMACとJMA(日本能率協会)が実 施した「技術者育成担当者勉強会」(大 手製造業約20社の技術者育成担当者が 参加)でその要件を整理した結果、以下 の4つのスキル領域があげられました。 ①ヒューマンスキル(コミュニケーショ
③事業化推進スキル(ビジネスモデル構 ドなど) ④マネジメントスキル(経営知識、管理 能力、リーダーシップなど) ①②④はこれまでも言われていました が、従来と異なって強調されていたのが ③の技術イノベーションを事業につなげ る事業化推進スキルです。 R&Dを起点にして新たな価値や新事 業を創出するには、事業化推進スキルを 持った人材が必要なのは言うまでもあり ません。しかし、事業化に長けた人は必 要ですが、技術者にそこまで負わせるこ とが本当に良いのかは疑問です。そちら に注力するばかりに、本来の技術のイノ ベーションが起きなくなっては本末転倒 です。
ると、「①心の持ち方」「②人間性」 「③思考特性」「④行動特性」「⑤知 識・経験・スキル」があげられました。 ①〜④の特性は元来その人が持ってい る資質であり、その特性を磨いたり、発 見したりする“場”や“仕掛け”が大きな役 割を果たします。各社で行われている MOTプログラムのようなものは、そう した“場”や“仕掛け”のひとつと考えられ ます。 一方で、事業化につながる革新的な技 術を生み出す技術者を育成するための “場”や“仕掛け”はどうでしょうか? 革新的な研究開発テーマを設定して成 果を創出していくためには、 ①もともとイノベータとしての特性を 持った技術者にとって、 「やりやすい /やる気になる場」をつくること ②やる気はあるがやり方がわからない/ いい方法が見つからない人に対して、 「鍛える場」をつくること が重要なのです。
築力、オープンイノベーションマイン
イノベーションを起こす人材を どのように育成するか?
それでは、イノベーションを起こせる スキルを持った人材をどう育成していく べきでしょうか? 先の勉強会では、各社で実在する(し た)イノベーションを起こしてきた技術 者の実例をもとにその特性を整理してみ
ン能力、自主性、自律性、ネットワー ク構築力、 環境変化への柔軟性、 グロー バル対応能力など)
②専門スキル(固有技術、専門知識、設 客ニーズの汲み取り力など)
組織が人材を育て 人材が組織を変革する
やりやすい/やる気の出る研究開発の 場づくりや、技術グループやチームで活 発な技術議論が行われる場に変えていく には、研究開発トップや研究開発リー ダーがその重要性を認識し、現場を変革 していくことが重要です。 現場の変革で「成果を生み出す技術人 材」が創出され、その人材が増えてい き、さらにその“場”がより良い場になっ ていく、この循環がうまくできる組織か ら新たな価値や新事業を生み出す技術開 発が行われるのです。
計力、仮説構築力、検証力、市場、顧
鬼束 智昭プロフィル
電気通信大学経営工学科卒業後、1991 年 JMAC 入 社。入社以来一貫して製造業の R&D マネジメント領 域の改革コンサルティングを担当。主には新商品・新 事業立案、研究開発プロセス改革、R&D 組織革新な どにおいて成果創出まで一貫した改革を推進。最近は とくにイノベーションを起こす組織や人材に関する支 援を展開中。 最近の著書に、 『研究開発の Go/Stop 判断』 『ボトムアップ研究 その仕掛けと工夫』 (いずれも共著 : 技術情報協会刊) 。
本記事は JMAC のホームページで連載中の「JMAC EYES」の要約版です。完全版は www.jmac.co.jp/jmaceyes で。
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