ビジネスインサイツ70
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- 消費者も気づかない、 潜在ニーズをどう見つけるのか
のブロー成型技術を活かした漁業用
いところを︑ つも つも買うとい
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世の中にないもので 求め ら れている もの
ユーザーインとは︑お客さまの声 に耳を傾けて商品開発することでは ありません︒消費者も気づいていな いニーズを見つけ︑こちらが需要を 創造していくのがユーザーインの考 え方です︒そのためには消費者にリ サーチをするのではなく︑まず社員 が消費者となって考える︒自ら生活 の中で商品を使い倒し︑そこで見つ けた課題をヒントに︑自社の強みを プラスして最速で商品化する︒それ が私たちのビジネスなのです︒ アイリスオーヤマの原点は父が立 ち 上 げ た プ ラス チック 加 工 会 社 で す︒ 歳のときに父が亡くなり︑私 は若くして会社を継ぐことになりま した︒当時は下請けとして取引先か らのオーダー商品をつくっていまし た︒しかし︑次第に自分の商品を自 分で値付けして売りたいと思うよう になりました︒そして最初のオリジ ナル商品となったのはプラスチック
のプラスチックのブイ︒竹の筏やガ ラスの浮きしかない時代︑漁業の方 たちの﹁ 割れる︑重い ﹂という悩み に目をつけ︑新しく市場を生み出し た最初の経験です︒ その後︑農業にも目を向けます︒ 田植え機が発明され︑機械植えに必 要な育苗箱を開発します︒通気性の ないプラスチックでも強い苗が育つ ように研究開発し︑ 商品化しました︒ 商品の背景には ﹁こんなものがあっ たら便利だな ﹂ というニーズが必ずあ ります︒それを見つけ出すのはお客 さまではなく開発者自身の生活の中 から︑たとえば当社の大ヒット商品 に透明の衣装ケースがあります︒あ れは私が釣りに行く朝︑セーターが 見つけられなかったという出来事か ら生まれました︒私自身がユーザー の立場で見つけた課題から商品化し た中身が見える衣装ケースは︑工場 をいくつつくっても間に合わないほ どの需要を生み出しました︒
う行動を起こしたからです︒ところ
が︑そのリバウンドで︑あっという
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間に山のような余剰在庫に︒ 年間
で築き上げてきた会社の資産はたっ
た 年で底をつき︑倒産寸前まで追
い込まれました︒このときの私は︑
プロダクトアウトの塊だったので
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す︒その結果︑家族同然で頑張って
きた従業員をリストラせざるを得な
くなりました︒ 歳だった私は二度
とこのようなつらい経験をしたくな
いという思いから企業理念を掲げた
プラスチックの漁業用 ブイ。世界中どこにも なかった、独自商品の 第一号
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のです︒いかなる時代環境において
も︑その変化に左右されることなく
(昭和33年) 1958年 4月 (先代 ・ 大山森佑が大山ブロー工業所を創業)
着実に利益を上げ︑会社を存続させ
ていこうという決意です︒
[ アイリスオーヤマ株式会社 ]
(2019年1月現在) 3,503名
企業理念
アイリスオーヤマ株式会社
一 ︑ 会社の目的は永遠に存続すること︒ いかなる時代環境に於いても利益の 出せる仕組みを確立すること︒
1億円
二 ︑ 健全な成長を続けることにより
利益の還元と循環を図る︒ 社会貢献し︑
従業員数
事業内容
資本金
設立
この企 業 理 念 を 掲 げている 理 由
19 歳の頃。東 大 阪の 自宅工場前で
三 ︑ 働く社員にとって良い会社を目指し︑ 会社が良くなると社員が良くなり︑ 社員が良くなると会社が良くなる 仕組みづくり︒
1973 年のオイルショック直 後︑プラスチックなど石油製品の需 要が高まり工場をフル稼働させて商 品を量産しました︒消費者の物不足 への不安が高まり消費者が つでよ
四 ︑ 顧客の創造なくして企業の発展はない︒
IRIS OYAMA
常に未完成である 五 ︑ 常に高い志を持ち︑ 革新成長する生命力に ことを認識し︑ 満ちた組織体をつくる︒
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Business Insights Vol.70
生活提案型企業として市場を創造する︒
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本稿は 2019 年 6月 4日に開催した 「JMACトップセミナー」 の基調講演をもとに作成したものです。
生活用品の企画、 製造、 販売。 BtoCでは家電 事業、 食品事業、 ホーム/ヘルスケア事業を 手掛け、 建装・内装 BtoBではLED照明事業、 事業、 什器・スチール事業、 スポーツ施設事業 などを行う。
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