ビジネスインサイツ JMAC40周年記念特別号
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- 11.30 EXECUTIVE SESSION
登壇者が語る 「グレート ・ リセッ ト時代」
経営理念を基本に サステナブルな社会を実現する
トップマネジメントの覚悟が イノベーションを成し遂げる
公益財団法人加藤記念バイオサイエンス振興財団 名誉理事 農学博士
松田 譲 氏
YKK株式会社 代表取締役社長
大谷 裕明 氏
会社は経営者に大きく依存するとよく言われます。裏 を返せば、トッ プマネジメントの能力を磨きあげればあげ るほど、会社は成長する可能性があるのです。 以前、ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智さ んに、科学と芸術の違いについて尋ねると 「科学は答え があり終わりがあるが、芸術には答えがない」 との言葉を いただきました。 トッ プリーダーは、 「 答えのない命題に答えをだす」の が役割だと私はよく言うのですが、芸術と同じように、 経営にはこれで良いという正解はありません。時に経営 者は、科学的な部分を捨てる覚悟も必要です。 近ごろ、組織の"Dynamic Capability" ( 急速に変化 する環境に対応するための社内外の技能を統合、構築、 再構成する能力:D.J.ティ ース) が着目されていますが、今 は次の成長を求めて、これまでのコンフォートゾーンから 抜け出す良い機会となっ ているのではないでしょうか。 トップマネジメント次第で会社が間違った方向に行く か、さらなる発展を遂げるかは、実は紙一重です。自己 研鑽を積み、リベラルアーツを身につけ、人間力を高めて グレート・リセッ ト時代の経営イ ノベーションを成し遂げ てほしいと考えています。
このコロナ禍で、以前からの課題だったアパレルの過 剰供給が顕在化し、サプライチェーン全体が淘汰の時代 に突入しました。これからは、すべての産業が、過剰な ものはすべて排除しようという動きになるでしょう。 「ソーシャルグッ ドな会社であること」が求められる中で は、 今までのビジネスパターンを捨て、 異なる次元の商品 ・ サービスを開発していかねばなりません。私も含め、今 回のような全面的な落ち込みや、根底からの変化の兆し には多くの方が戸惑っ ていることでしょう。 「グレート・リ セッ ト」 という言葉には身が引き締まる思いもありますが、 持続的に成長する機会にもなると考えています。 弊社でいえば、正社員の雇用を必ず守ることを最優先 に、コストダウンや投資抑制で耐え忍ぶ経験は、将来へ の大きな糧と必ずなるでしょう。また、新しい技術を使っ て進化を図ることは、これまでにないより良い世界を生 み出すことにつながるはずです。 経営理念などの、精神や思想がすべての拠りどころで す。 「VUCA」 の時代であっ ても、それは常にチャンスなん だと前を向くことができるのです。私たちは 「他人の利益 を図らずして自らの繁栄はない」 というYKK 精神のもとサ ステナブルな社会を実現したいと常々考えています。
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