企業にとって人材育成は“本当に”重要視されているか経済状況が深刻化するなか、企業の付加価値や基礎体力を向上させる要素として“人”に注目が集まり人材育成の重要性が高まっていると誰もがいう。だが、伊藤は「人材育成は、本当に重要視されているでしょうか?」と、その流れに一石を投じる。もちろん、人材育成をおろそかにしている企業は少ないだろう。問題はその中身だ、と伊藤は指摘する。「経営理念などで、人材育成を掲げる企業は多い。しかし、取組みの優先順位は必ずしも高くありません。 本当に重要であれば、最優先にすべきテーマのはずです」 優秀な人材は何もしなくても育つといえるだろうか他方、“優秀な人材は、放っておいても成長する”という意見がある。伊藤は、「結果としてそうなるケースもあるが、この考え方は誤り」と主張する。現在活躍している中堅層や管理職に自分の経験を振り返ってもらうと、育てられたという実感を持たない人が意外に多い。自分は経験を通じて育ったのだから、意図的な育成は必要ない、という声を聞くこともあると伊藤はいう。「ある経験によって自分が成長したとして、そこに上司の意図や配慮があっても、育てられた側にはわからないものです。それにこの点が重要ですが、管理職の意識と行動は、無意識であっても部下の成長に影響を与えてしまう、そういう性質を本質的に持っているのです」必ず受けてしまう影響…… ならば、意識してより良い育成環境を与えていれば、もっと大きく成長するはず。伊藤は、その可能性に目を向けて欲しいという。 人材育成で起きている空回り現象とは人材育成の大きな問題として、教える側と学ぶ側の歯車が合っていないケースがあげられる。育成の努力をしているのに、結果として人が育たない。原因のひとつは、壊れた育成関係だと伊藤は指摘する。「ITや語学は若者のほうが得意な場合が多く、かつ“経験が改革の妨げとなる”場合もあります。こうした背景から年長者から教わることがプラスになるのかという疑問が生じています」他にも、近年広まった個人成果主義によって個人のノウハウを公開・伝授することに対する抵抗感や、中堅層と新人の年齢が大きく離れてしまい、世代間の意識ギャップが大きくなってしまったことなど、人材育成以前にコミュニケーション自体が難しくなっている現実がある。 |
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