育てる側・育つ側両方が成長 人材育成のあるべき形人材が付加価値向上の要であることを否定する者はいない。優れた人材を確保し、その能力を伸ばすことが重要になればなるほど、人事部門の新しいあり方が求められることになる。「人事担当者が現場まで出向くことが少ない企業もあるでしょう。しかし、育成環境を構築するには、各部門の内部に入っていく必要があります」この具体例となる質問が、2月27日名古屋にて行われた『人づくりの原点を見つめる』セミナーで参加企業から出された。「本人が成長実感を持つことができたとして、育てる側の育成実感はどうやって獲得すればよいのか? という疑問でした。人材育成では、育てる・育つという二者関係に加えて、第三者の介在が必須です。客観的な立場で育成状況を見つめ、評価や助言を行い、存在感を与え、貢献実感を味わう手助けをする人物です」 原点−布石−メッセージ 人づくりを現実にする3つの柱人づくりの原点とは何か、ここで改めて考えてみよう。伊藤は『人づくりの原点を見つめる』セミナー(前述)において、「人が成長するときのもっとも大きい原動力は、学びたいという強い気持ちであり、その背景には生き抜くために成長しなくてはならないという現実的な動機があります」と述べた。だが、日本社会は経済不安の最中であっても飽食の時代でもあるという矛盾した難しい状況にある。そのなかで、どのように現実的な必要性を作り出すのかという問いかけは人材育成を考えるときの中核になる。 全社に伝わる明確なメッセージを 問われる経営トップの姿勢企業規模の大小に関わらず、経営上の重要課題として『人材強化(採用・育成・多様化)』は常に上位に位置づけられている。また、不況は人材育成強化の好機ととらえる経営者も存在するという。少子化・高齢化社会、社会の多様化という大きな流れのなかで、コンプライアンス、メンタルヘルス、キャリア自律など新たに対処すべき課題が山積している。一時的な景気の悪化ではなく、構造的に社会が変化していくと考えるなら、その状況をどうとらえ対応していくのか、企業の姿勢を根本から考える必要が出てくる。「今、企業は“人”に対する理念を問われています。今の時期に人材育成をどの程度本気で考え布石を打っていくか、どんなメッセージを発信するか、企業は注目されています」人材育成を後手に回したとしても、それは間違いとはいえない。それほど世界同時不況は重いものだ。「曖昧にしないことが大事です。来年を念頭において今年の重点を決める、今年は人材育成に力を入れられないが布石だけは打つなど、何らかの展望を示すことです。先のことはわからないからと曖昧にしていると、社員は不安になるだけです」そのうえで、全体的にはコストダウンを進めても、人材育成の重点課題だけは経営トップの判断によって“聖域”とする施策があってもいい、と伊藤はいう。「それによって少し先の未来を示し、社員に希望と意欲をもってもらうことができるでしょう。展望を示し、皆で目指し、実行していくこと、それがJMACの考える人材育成、人づくりなのです」 |
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