第11回 単純なコストダウンの時代は終わった 企業価値を高めるロジスティクス機能の再構築

企業内の組織を連携させる! 最適なサービスの実現へ

ロジスティクス管理・統制機能の再構築 全体の最適化を目指す

JMACが提供するロジスティクス管理・統制機能の再構築とは、どういったものだろうか? 物流を完全にアウトソーシングしている企業では、担当部門は窓口としてのみ機能しているケースが多いという。実際の業務はブラックボックス化しており、物流の担当者であってもどう改善すればよいのか糸口をつかめないでいる。「まず、物流工程そのものを管理できる機能、それを部門内に再構築する必要があります。具体的には、どのように物流全体の構造を変えていかなければならないのかを考える企画の機能、そして、外部委託している部分を評価し問題点を検証する評価・分析の機能、改善を検討して、解決方法を物流業者に指示できる機能、またそれが実現できる環境を作る機能をもつことです。これらは外部との関係において、必要となる機能といえるでしょう」
さらにロジスティクス改革では、荷主である企業内部の各機能をも再構築することがある。「これまで、社内の各部門はそれぞれの生産性を独自に追求してきました。たとえば、製造業の企業では、生産部門は製品コストを下げるためロットを大きくします。これは在庫になりますから、物流部門ではこの在庫を管理することになります。営業部門はサービスレベルを上げるために24時間で納品する、朝6時までに納品するといったことを決定します。そうすると、大量に作った在庫の保管をどうするのか、お客さまにはどう納品すれば物流は最もスムーズに流れ、かつ顧客満足度もあげることができるのか、そういうことを各部門間で調整しつつ実現する必要が出てきます。この機能も、ロジスティクスを担う部門の役割と考えています」製品が作られてから、販売されるまでの全体を見ることができる立場だからこそ、それが可能となる。

“新生”物流部門が可能にする 新しい付加価値の創出とは

ロジスティクス管理・統制機能によって、コストダウンやサービスレベル向上という課題に対して企業は継続的に解決できるようになる。しかし、そこにあるのは、物流に求められる要求を単純にクリアできればよいという性質のものではない、と小澤は指摘する。ある製品を24時間で納品して欲しいというお客さまがいるとしよう。だが、速いことが本当にお客さまのためかというと、そうばかりとはいえない面がある。「その製品特性を考えたときに、48時間でも問題ないかもしれません。しかし、24時間と48時間では、コストが大きく変わります。納品のサービスレベルは下がるけれども、ローコストで提供する方がお客さまにとっては結果的によいという場合もあるんですね。実際に、荷主の方からお客さまに逆提案した実例です。コストとサービスはトレードオフの関係にあり、市場状況などさまざまな環境要因によって変化します。その状況変化に対して、どのような対応をすべきか、適切な判断をしなくてはなりません。これは、物流分野を超えて営業や生産というその他の機能と連携することによって、見えるようになるものです」全体的な視野をもち、変化への対応力を持つ。それが効果の“継続性”を生み出すのだ。
このように、これまで役割や機能が曖昧であった物流部門のすべきことを、きちんと定義することで、企業は物流部門の重要性と一層の活用を考えるようになる。さらに、ロジスティクス管理・統制機能を実行できる人材を育成するためのシナリオが明確になるのだ。「物流に関する業務をどう扱っていいのかわからなかった企業も、主体的に取組むことによって、コストもサービスも変えうる部門だということに気づいてくるんですね。また、そういう流れを作っていかなければならないと思っています」

荷主と物流業者の関係が変わる! 「自発的改善」を目指す

JMACがコンサルティングを行っていくなかで、荷主である企業とアウトソーサーである物流業者の関係がよい変化を起こすことも多い。実は、物流業者の提供するサービスレベルには、それぞれかなりの違いがある。これまでは依頼通りの輸送だけで満足していた企業でも、物流業者に問題解決への自発的な提案を求める例が増えてきているという。だが、そのギャップを埋めることは容易ではない。お互いに、どう歩み寄ればいいのかわからなくなっている事例は珍しくないと小澤はいう。「ここ10年で、物流業者は以前よりも高いレベルの要求を受けるようになってきています。この流れは今後も強まっていくでしょう。JMACでは、物流のことはわからない・製造のことはわからない状態だった2社間に管理のための共通のベースを作り、どういうコストにしたいか、中期的にはどうしていくのか、といったことをすりあわせていきます。KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を設定し、共通の物差しをもつことが重要なのです。最終的に、受け身だった物流業者が自発的にサービスの改善を実行するなど、関係が良い方向に変わることを目指します」JMACでは、あるメーカーから依頼を受けて物流部門の改善を行い、最終的にメーカーと物流業者からそれぞれ人材を出し合って、共同のロジスティクス部門を設立させたという実績もある。両方の立場を理解し、2社の接点となれるからこその事例だ。
また外部の客観的指標によって、社内ではできないことを可能にする例もある。「ある企業では、長年グループ内の物流業者と取引をしてきました。コストやサービスレベルで課題があってもグループ会社なので、社内で取引停止の決断をするのは、なかなか難しいという状況が続いていたわけです。そこにコンサルティングとしてサポートに入り、物流業者の再選択を行いました。結局、このときは双方の物流業者を客観的な再評価・検討のすえに外部の物流業者に決定したのです」これも、誰が見ても納得できる物流業者を評価する指標がある第三者ならではの成果だ。

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