経営戦略にもかかわる物流の本質 ロジスティクス戦略が企業を変える小澤はロジスティクスによる戦略として、まずQCD(Quality、Cost、Delivery)の向上をあげる。「もし、物流業務において同じ高いサービスレベルが提供されているようであれば、そこにQCDによる差別化というのは効果がありません。しかし、その業界内でレベルがばらついている状態で、圧倒的なQCDを提供できるのであれば、それは戦略といっていいでしょう」さらに、“できるだけ早く”という、納期短縮への要求が圧倒的にあるという現状がある。「できるだけ早く納品することでシェアをあげようとするのが、物流サービスの大勢です。そこへリードタイムは長いけれども低コストのサービスを提供し、シェアをあげるという考え方は、大きな構造の変化なのですね。他社と異なるサービスを提供するのですから、これもひとつの戦略といえるでしょう」 強みを活かした新しいビジネスモデルの開発…… さらに先を見据える圧倒的に高いQCDの提供、新しいビジネスモデルの先には、ロジスティクスの事業化が存在する。「ひとつは、高いサービスレベルのインフラを持っているケースでは、自社の物流だけでなく、他社の物流も担えるということです。アウトソーシング業務として受託することができるのです。例をあげると、荷主の企業が発注しているグループ内の物流子会社が、グループ外の業務を請け負うといった形ですね。ふたつめは新しいサービスメニューの設計によるビジネスモデルの開発です。こちらは、現在あるサービスにプラスして新しい提案ができるということです」小澤が手がけた案件では、グループとして保有しているIT技術に関するノウハウに加えて、新しい物流サービスを創造するというものだ。インターネットのポータルサイトで購入いただいた商品をどのようにお客さまの元まで届けるかといった例がある。その企業では、発注から配送までの工程を圧倒的なローコストで実現できるという強みがあった。このサービスを新しいビジネスモデルとし、事業化した。「すでに幾つもの企業がこのサービスを使ったシステムを採用し、インターネットを利用した販路として稼動しています。こうした事業化は、現在進行しているもののごく一部ですね」 ロジスティクスからSCMへ! 環境とグローバル化が新しいニーズを生むロジスティクス機能の再構築、ロジスティクス事業化の動きは、まだ始まったばかりといえる。これから物流事業に関わる企業は、これら多くの課題を解決して高い競争力をつける必要に迫られていくだろう。しかし、物流分野は、もっと大きな変化を受け入れることになると小澤は考える。「そのひとつが、環境への配慮を実現するグリーン・ロジスティクスですね。二酸化炭素(CO2)の削減、ゴミの排出を減らすという観点でのロジスティクスは、これからかなり本格的に動き始めるでしょう。リードタイムを短くするためにトラックでの輸送を選択する、といったことがしにくくなっています。たとえば、CO2排出量を減らすために鉄道での輸送をするけれども、トータルのリードタイムとしてはトラックを選んだ場合と同じ時間で配送できるような仕組みを作らなければならないということですね」企業に求められるCO2排出量削減は、もはや全世界的な動きであり、避けられない課題となるだろう。 |
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