第12回 “創品創客”に立ち返る! 品質経営マネジメント・システム

品質を生み出す組織の成熟度と お客さまとのギャップ解消をするのがキー

高い品質は感動を呼ぶ! 品質レベルの定義が重要

製品に求める品質と、提供した製品の品質が同じものであれば、お客さまは“満足”をしてくれるだろう。お客さま要求レベルより下がれば“苦情”になるし、それがあまりに低品質であれば“怒り”に結びつくだろう。「では、お客さまが求める以上の品質を提供した場合にはどうなるでしょうか」と宗は問いかける。「期待よりも高いレベルで提供すれば、お客さまは“感動”するでしょう。はるかに高品質な製品であれば、“感激”してくれるかもしれません。これは比喩的・感情的にたとえているのではなく、提供する製品の品質で感動や感激を狙いたいのなら、それに見合う品質のレベル感をもって取組まなければならないということなのです」営業部門であれ、生産部門であれ、目指す品質レベルを全社で同じ認識へと統一し、反応の狙いを持ってお客さまへ仕掛ることが必要なのだ。
しかし、「高いレベルを目標とする前に、品質について改めて考えてみて欲しいのです」と宗はいう。「品質と一言でいいますが、自社内ですら部門が違うだけで同じ意味で使われていないケースがあります。ましてや他社であり、立場の異なるお客さまでは、品質の定義は異なっていても不思議ではありません。お客さまの要求レベルを超える品質を提供するには、まずどの品質を指しているのか把握する必要があるのです」たとえば、性能や機能という数値にしやすい品質はお互いに了解しやすい。しかし、美しさや耐久性といった品質になると、企業によっては品質としてとらえていないこともある。「たとえば、お客さまのリクエストに応えて、デザインを何度もやり直したためにコストが嵩んでしまったとします。デザインも品質のうちではありますが、品質ならばどこまで保証するのか、企業側で考えておく必要があります。しかし、概念上は品質ととらえていても、この受注では製品としてどこまで保証すべきなのか、きちんと検討できていないケースが実際にあるのではないでしょうか。要は、いわれるままデザインを変更しただけで、品質保証ということでは考えられていないわけです。提供品質の定義があいまいだと、こうしたことが起こります」すでに述べたように、品質をとりまく状況は多様性をもち、複雑になっている。お客さまは、より広い視野で品質を評価する。そのことを今一度認識し、自社内で品質そのものを再定義することが重要となるのだ。

品質経営のマインド 品質重視の文化を築く

多くの企業が、品質を重要視している。理念として謳っている企業のほか、品質経営をシステムとして取入れている企業もあるだろう。それらと、JMACでいう品質経営とはどこが異なるのだろうか。実は、JMACでいう品質経営とは、いわゆる経営そのものとは性質の異なるものだと、宗はいう。便宜上“経営”と呼んでいるが、品質を維持・向上するための仕組みや活動ととらえた方が適切なのだそうだ。「JMACの考える品質経営とは、企業内に品質重視の文化を築き、“創品創客”の意識の強化と実現を目指すマネジメント・システムをいいます」高い品質レベルを実現するには、仕組みがあるだけでは不十分だ。「一人ひとりが無意識のうちにお客さまが求める価値を考えて行動することが必要です。そうした組織になるためには、仕組みでだけでなく、企業内の文化が大切なのです」
この品質経営には、3つの要素がある。「ひとつはお客さまに価値があると思ってもらえるような“魅力品質の創出”ですね。次に、業務の改善を常に目指す“改革活動ができる基盤を創出”することです。3つめは、お客さまとの間で品質ギャップを起こさない、または発生した場合には素早く埋める“システムを確立する”ことです」この3要素を、企業のなかに展開していくことで、品質経営を実際の現場とリンクさせていく。とはいえ、モノづくりにはさまざまな分野があり、現実的なやり方でなければ実施は難しいという側面がある。「JMACは、非常に数多くの製造業についてのノウハウがあり、現場感をもったコンサルタントを多数擁しています。こうした具体化の提案には強みがあるといえます。もちろん、品質経営は本質的に業界を限定するものではないので、たとえばIT分野でも同じように適用することが可能です」

品質経営の基本的コンセプト ギャップへの気づき

本来、立場も目的も異なるお客さまと自社の間には、常にギャップが存在していてもおかしくない。そのことにどれだけ早く気いて対処できるかが、品質経営では大きなポイントとなる。「顧客価値を創出し保証することとは、未知なる要求も含めてお客さまと自社のギャップを埋めることです。このギャップに気づいてスピーディに解消するシステムを構築することが、品質経営の基本的なコンセプトなのです」しかし、ギャップがあること自体を認識していないケースもあるのだという。「そのうえ、ギャップには見えやすいものと見えづらいものがあります。お客さまが要求している品質レベルと自社の提供できるレベル、この間に存在するギャップは比較的認識しやすいといえるでしょう。ですが、お客さま自身が気づいていないけれども、将来的に必要となるかもしれない品質というものも存在します。たとえば、要求には入っていないものの、使用時には必要になる品質ですね。お客さまにとっては未知の部分に存在している品質ですが、ここにも実はギャップは存在しているといえるのです」大きなギャップは、最終的にクレームとなって自社に返ってくる。
もっとも、品質保証の仕組みは、どの企業でもある程度用意されていることだろう。大切なのは、その仕組みがどれほど機能しているかということだ、と宗は考えている。「JMACでは、品質経営の成熟度を5つのレベルで測っています。クレーム対応はしているが問題対処型になっているレベル1の“不確実”、製造など下流工程での議論が中心で上流までに波及していないレベル2“気づき”、PDCAサイクルが回っており事前に品質リスクを評価するシステムが一部は存在するレベル3“自立自走”、品質リスクの視点が定着しており予測する活動と対策を実施しているレベル4“予知予見”、品質経営が実行できているレベル5“自創”です」JMACの品質経営では、もちろん、レベル5を目標とする。だが、宗の知る範囲では、ほとんどの企業がレベル1.5〜2というのが現状だという。

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