ビジネスインサイツ49
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に根差したところにはなかった点だ。ものづくりにおける 効率化やリスク、改善方法などは、内部だけで進めると大 きなものが抜け落ちる可能性がある。 「以前、実現しなかった別の案件で JMAC にお世話にな り、その時可視化に関してはその道のプロのテクニックが あると感じていたんです。今回についても、顧客と販社と いう接点はありましたが、 その先は農家。 どういうオペレー ションになっているか全体像が見えなかったのです」 (為 田氏) また、 住友商事には投融資委員会という重要案件を審議、 検討する重要なステップがあり、必ずしも農薬に関する専 門知識のない経営層に納得してもらい、承認を得る必要が あった。なおさら可視化は重要だった。そこで外部からの 視点をもって、オペレーション上のリスクと可能性をとら えた可視化を実現することを目的に、今回のルーマニアの 案件を JMAC へ依頼したのだ。 「まず最初に、現状について1時間程度話しました。そ の時点では自分たちの要件も明確に定まっていない状況で した。それが、2 回目の打ち合わせの時、要はこんな感じ のアウトプットを作らないといけないんですよね?と逆に 参考になるものを提示いただいて。それがどんぴしゃり だったというか、確かにこういう風に説明したら、社内で もよくわかるだろうなと。何より当社のニーズをよく理解 されていましたし、予想以上に具体的な絵が見えてきたん です」と為田氏は振り返る。
方によってはそういうリスクもあったのです。そんな中、 結果的に誰一人として退職しなかった。初めて日本人を見 るという人も多い中、向こうによいイメージを残せたので はないかと。そこはありがたかった点ですね」 (為田氏) ま た、今 回 の 案 件 で は ミ ラ ノ に 拠 点 を 置 く JMAC Europe からイタリア人コンサルタントも参画。 「イタリ アの案件ではないにしろ、ヨーロッパ人同士、同じラテン のカルチャーということで、日本人だけより若干敷居が低 くなり、 警戒感が薄らいだというメリットがあったのでは」 と話すのは当時、住友商事で買収を担当し、現在アルチェ ド 経営企画部長 石原壮氏だ。 「実のある情報の取り方は形にはめるのではない。こう いう人たちだから少しやり方を変えよう、いや、こういう 風に接した方がいいなど、お持ちのパターンが一つではな いと思うんです。JMAC のコンサルタントはそういう引 き出しをたくさん持たれていると思いましたね」と為田氏 は語る。 そして、現地調査最終日となった 2010 年 7 月 9 日、現 地での最終報告会が実施された。 「農薬の専門知識がなく、 かつルーマニアも初めてというコンサルタントが、短期間 で上手く図に落とし込み整理して説明されるのにはびっく りしました。我々も社内で農業関連ビジネスについては専 門外の関係者に説明、 説得していかねばならないわけです。 だから専門外の方の視点からフォローされた資料は後に大 変役立ちました」と、その時の状況を石原氏はこのように 振り返った。
慎重を期した現地調査
その後、事前にコンサルタントへ農薬勉強会も行い、あ る程度下知識を積んだ上で現地視察へ赴いた。視察段階で はまだこの話がまとまるかどうかもわからない状態だ。し かも、元々顧客であり、万一話がまとまらなかった場合、 案件が実現できないのみならず、既存のビジネスにも影響 が出かねない。だから、 とにかく慎重を期す必要があった。 「各ラインの上の人間は背景もわかっていますし、情報 も持っている。しかし、その下は情報をシェアしていない 状況。なぜはるばる日本から来た人間に込み入った話を聞 かれるのかと警戒したり、戦々恐々となって、このディー ルが終わった後に最悪退職してしまったりしないか、やり 交渉から約 2 年半、ついに 2011 年 7 月、住友商事がア ルチェドの発行株式の 90%を取得することで合意に至っ た。何より即効性があったのは、資金面だ。 「もともとアルチェドの銀行借り入れ枠は 500 万ユーロ しかなかった。ですから、できるだけキャッシュを生むと ころへと、農薬に 7 割、種子に 2 割強、そして残り少し が肥料という風に儲かる順に運転資金を使っていたんで す。ですが 3500 の顧客が同じ割合でそれらを買っている 訳ではありません。要はこちらの都合でそうなっているだ
必要なのは 「規模、ファイナンス、地縁と人脈」
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