ビジネスインサイツ49
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う教育は殆んど機能しませんでした。当時はとにかく事な かれ主義で日々楽しく仕事ができさえすればいいという状 態でした。ですから、学習意欲が湧いて来ない。そこで、 できるだけ多くの社員と話をする場を設けました。自分の 業務に関するケーススタディーです。最初の頃は、週に1、 2度夕方 10 人前後に集まってもらい、気楽にフリートーキ ングの場を設けました。といっても、しゃべるのはほとん ど私だけの状態でした。なぜなら自分の思っていることを 人の前で表現するという経験を多くの人がもっていなかっ たからです。だから逆にこちらが質問を用意して、まるで インタビューでもするかのように、私が質問しては聞き出 すということを繰り返しました。 まさに暖簾に腕押し。孤立感を強く感じながら、それでも 挫けず 2 年以上の歳月を費やしたんです。その過程で、違う 世界を見てきた中途採用者が徐々に増えていき、彼らを中心 にだんだん会話が弾むようになりました。転職歴のある彼ら が新しい風を吹き込むことで、閉ざされた環境にいた社員達 も、もしかするとこれまでの自分の常識は非常識で、外の常 識は違うのではと感じるきっかけになったんです。 もう一つは「気づき」です。当時の社員は物事を点では 見られるのですが、その周辺に関連するヒントや可能性、 活用できる要素があるのにそれを見つけ出す意欲に欠けて いたんです。そこで、 とにかく雑学でもなんでもよい、 様々 な物事に興味をもってもらい、そこにある情報が少しでも 仕事に関連すればいいからと、 常日頃から 「気づき」 をもっ てもらうように促しました。要は常に好奇心を持ち、身の 回りの情報に、もしかしたら商品のニーズがあるかもしれ ないという疑いの目やアンテナを張り、視野を広げてもら えるような取組みを始めたのです。そんな気づきが結果に 繋がるに連れて、 社員の視野が徐々に拡がって行きました。 もちろん、どんな仕掛けをしても、全く響かず変わらな い人がいるのも事実です。だからそういう人に対しては、 具体的にそのポジションで必要なことを上げ、ある時点が きた時にそれが達成できなければ、ポジションを替わって もらいました。そうして結果的に若い人がそのポジション に就くようになっていったのです。あの時点では変われな い人が組織の中枢を占めると改革はできません。一方で無 秩序に変わればよいと言う訳でもなく、変われなかった人 達にも適所が存在したのです。そこのパワーバランスを上 手く使うことも組織改革には不可欠なのです。
自社の技術をマーケットへ どんどん打ち出せ
鈴木:御社の技術力をマーケットにどんどん発信していく ことにも重きを置かれていますね。 また SNS でも自社ペー ジを Facebook で設け、そこで多くの社員を登場させる など、外向きの発信に重点を置かれています。どのような 視点や意図をお持ちでしょうか? 駒村:これまで展示会では自社商品の PR が中心で、たと えばこういう技術を持っていますというアピールはしてこ なかったんです。今オープンにしている白蟻の擬似卵や、 レアメタルを回収するシームレスカプセルの技術について も、国内外の展示会に多数出展し、広告やニュースリリー スもどんどん出して、弊社はこういう特許も取得しました という情報を積極的に打ち出しました。そういう地道な活 動を通し、 メディアからも注目を浴びるようになりました。 展示会はどうしても B to B 中心です。業界では知られ ていても、消費者向けになると、まだ古いあの「仁丹」だ けをやっている会社と思われがちなんです。だからメディ アへ積極的に打ち出すことで、こういう技術を生かした B to C の製品であったり、弊社が今どういう風にヘルス ケア分野の中で変わっていっているのかを盛り込んでもら い、徐々に森下仁丹が変わってきたという印象を消費者の 方に持ってもらえるようになりました。
飛躍のカギはニッチと ソリューション型ビジネスにあり
鈴木:社長ご就任から今年で 7 年目を迎えられます。こ こまで企業改革を押し進められ、業績面でも売上高約 100 億に達するまでに成長されました。ここからさらに企業と して飛躍されるために、今後の御社の戦略、方向性につい てどのようにお考えですか? 駒村:ステレオタイプや追従型ビジネスでは勝機はありませ ん。やはりターゲットとなるのはニッチです。隙間を見てい く、つまり市場の中の穴ぼこだったり谷間だったり、ニーズ があるにも関わらずシーズがないというところを攻めたいで
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