ビジネスインサイツ49
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震災で被災し、被害を 受けた東北営業所が新 しく生まれ変わった。
ブルーシートで覆われた外壁 ばらく売上など期待できるような状態ではなかった。 一方同社では震災以前から老舗企業ならではの課題も抱 えていた。社員はお客様目線の意識が薄れており、今まで と同じことを続けていれば良い、また変えることができな い組織体質も目立っていた。 「たとえば商品開発でいうと、カステラはガリバー的な 商品。長らくお客様にも信頼いただいていますし、老舗専 門店ならではの役割があるんじゃないかと。だから、 『あ の文明堂が?』と言われるような思いきったことができな かったんです」 (吉川社長) カステラは 10 斤、12 斤という木枠があって、風味を損 なわないよう、食べる直前に切る、またはちぎって食べる のが一番おいしいのだ。しかし、顧客や市場のニーズが変 わる中、ある種そういうタブーにも踏み込まないとタイム リーにマーケットへ対応できなくなっていた。思い切って 固定観念を捨て、 客観的に物事を見られるような柔軟さが、 当時の文明堂には求められていた。 もらいたいという強い想いがあり、常駐でコンサルタント に入ってもらったのです」 (吉川社長) 。従来にない常駐型 の経営ボードメンバーとして抜擢されたのが、シニア・コ ンサルタントの溝口直樹だった。 当時の状況について溝口はこう振り返る。 「文明堂銀座 店は老舗としての、 『カステラの本物さ』 を持っていました。 ですが、それだけでは全国的にこのブランドを守り続ける のが厳しい状態だったのも事実です。また、 『カステラの 本物さ』へのこだわりが、高コスト体質にも繋がっていま した」 カステラは昔から日本人に馴染みのある菓子。また三笠 山、 世に言う 「どら焼き」 もそうだが、 人気があるがゆえに、 老舗ブランド品に追従した商品を他分野からの参入も含む 多数のメーカーが投入してきた。味・価格帯・サイズ・日 持ちやフレッシュ感も千差万別な商品が市場に多く出回っ ていた。こういった商品とも戦わなければならない。昔な がらの老舗の味を知っている人ばかりが消費者とは限らな い。本物の味を知って欲しいというフロントランナーの意 地をかけた戦いが始まった。 「ただマーケットを追いかけるのではなく、老舗の味を 守っていくために、市場でこういう商品と戦って構図を ひっくり返さないと。危機感と老舗としてのプライドを 持って、打ち負かす必要がある。それがここに来た私の使 命」と、溝口は語る。
二人三脚ではじめた組織の 抜本的改革
そのような厳しい経営環境下、今から約 1 年半前、吉 川氏は社長に就任する。決して楽な船出ではなかった。そ こで、古い体質を見直し、新たな文明堂銀座店へと再生す るために、JMAC へ支援を依頼したのだ。 「元々、当社は JMAC さんとお付き合いがあったのですが、他のコンサ ルティング会社と違い、戦略を立てるだけでなく、現場に 入り込み、事実を掴んでフレキシブルにカスタマイズして いただけるところに期待して支援をお願いしました。そし て、今回はじっくり腰を据えて二人三脚で経営改革をして
痛みを伴う改革の末、戦え る素地が生まれ始めた
もちろん、ひっくり返すといっても容易ではない。まず は収益をあげ、品質、製造、商品開発、営業、流通、販売、
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