ビジネスインサイツ50
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ついに始動! IOT の 「全社戦略展開プロジェクト」
紹介から程なく、2012 年 7 月 JMAC のチーフ・コン サルタントの石田恒之と泉本保彦がセーシェルの IOT を 訪れた。最初に、全経営メンバーを集めて JMAC が「全 社戦略展開プロジェクト」の概要説明を行い、その後、 Madnack 氏が、IOT の戦略、経営指標、会議体や意思 決定方法などの現状と主要課題に関する説明を行った。 さらに、各機能部門長からも個別に、現状と課題のヒア リングが行われ、IOT の「全社戦略展開プロジェクト (Company‑wide Strategy Deployment) 」が始動する。 Madnack 氏は当時を振り返り「目標を立てて徹底的に 実行するという内容の提案を受け、これは行けると確信し ました。彼らは、常に組織全体に気を配り、船から魚を下 ろす作業、冷凍庫、魚の選別、調理、加工、パッケージン グ等すべての工程もしっかりと把握してくれました。その 後コンサルティングで滞在する度、必ず現場に足を運び、 現場の様子を把握し確認してくれていました」と語る。 また、今回のプロジェクトに関してこう評価する。 「JMAC のコンサルティングスタイルで私が特に評価しているのは、全社 がコミットするところから始まるという点です。当然ながら私が 社長として会社の経営目標にコミットします。その目標を、生 産部門、技術部門、品質部門、コマーシャル部門といった各機 能部門の長に展開していきます。さらに、現場管理者、一般社 員全員にまで目標を展開し、全社員が目標を理解した上で活動 を開始する点には非常に信頼感が生まれました」と。 泉本は「 『全社戦略展開プロジェクト』は、昔日本でも盛 んに行われた『方針管理』と、コンセプトにおいて共通し ている点があると思います。IOT メンバーの方々は、全社 一丸となって目標に向かって努力を積み重ねてくれました。 『方針管理』の日本語の書籍が最後に出版されたのは 1990 年代ですが、それ以降は日本よりも、むしろ欧米諸国に於
いて真剣に取組まれていると思います」と語る。
オーナーシップは こうして生まれた
プロジェクトは始動から 1 年余り経ち、当初は困難だと 思われていた目標達成が見えてきたという。 「 『全社戦略展 開プロジェクト』は、今では我々の血となり、自分達の体 を巡っていると様々な場面で実感しています。目標達成だ けでなく、何よりも社員全員が成長し、この改善の気持ち を持ち続けてくれると信じています」 とMadnack氏は語る。 この改善活動が現場に浸透した仕掛けのひとつは、コン サルタントが現場のチームミーティングに入りファシリ テーションを行ったことだ。さらに、ファシリテーション の仕方をメンバーに教えていった。これによりミーティン グの質が劇的に変わったという。 泉本は 「例えば、 本プロジェ クトでキャプテンと呼ばれる部門長がメンバーを集めて議 論する Weekly Meeting に我々も参加するのですが、ただ 座って侃侃諤諤の議論をするだけで終わってしまいそうに なることもありました。 そんなとき、 私が前に立ち、 メンバー が発言する度にホワイトボードに発言内容を箇条書きにし ていきます。そして、皆がそのペースに慣れた頃、その役 割をキャプテンに渡していくのです」とその方法を語る。 ある日 Madnack 氏は泉本に次のように語ったという。 「こ のプロジェクトがどうして上手く行っていると思いますか? 私はオーナーシップだと思っています。このプロジェクトを 通じて、社員一人一人が、これは誰かがやるべきことだ、で はなく、これは私がやるべきことだと、皆が思うようになっ たからなんです。 」 さらに Madnack 氏は続ける。 「JMAC からは管理のツールを提供してもらいましたが、カスタマイ ズして進捗管理システムを開発しました。これは、ジェネラ ル(軍司令官)と呼ばれる二人のプロジェクトマネジャーに 加え、財務部長にも協力してもらい、自力で開発したもので す。当初、このプロジェクトマネジャーは、コ ンサルタントが開発してくれるものと思ってい ましたが、業務を良く分かっているメンバーが、 自分たちで開発するのが最良であるというアド バイスで、自社で開発をしました。結果的には、 自社開発したことで、このプロジェクトに対す るオーナーシップが社内に生まれるきっかけに
▲「全社戦略展開プロジェクト」推進メンバーとコンサルタント (中央左から石田、泉本)
なりました」と。
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