ビジネスインサイツ50
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12 月発行
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TOP MESSAGE
でお客様 の ﹁言行一致﹂ 新 たな価値創造・課題解決 へ
富士ゼロックス株式会社 代表取締役社長
山本 忠人
06 BUSINESS ON VALUE
ダイキン工業株式会社
「滋賀製作所」のものづくり力が集結! 「うるさら7」開発ストーリー
10 Human&Organization
ほくでんサービス株式会社
『称賛と提案』活動で 人・組織の意識と行動を変革!
15 Asianization
Indian Ocean Tuna (IOT)
「全社戦略展開プロジェクト」で 企業変革、体質を強化
18 iik(いいく)塾
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TOP Message
毎回、革新、成長を続けている企業のトップに 経営哲学や視点についてお話しを伺います。 インタビュアー:JMAC
代表取締役社長 鈴木 亨
「言行一致」でお客様の 新たな価値創造・課題解決へ
富士ゼロックス株式会社
~目指すは信頼されるエクセレントカンパニー~
希薄になった「お客様」と 「モノづくり」の視点
鈴木:まず初めに、山本社長ご自身が長く技術系部門でご 経験されてきたことや、組織をまとめる上でのご苦労など お聞かせください。 山本:2012 年度創業 50 周年を迎えた当社ですが、もとも とは販売会社でした。米国ゼロックス社が持つ優れた技術 とレンタル方式という新しいビジネスモデルで、日本の成 長路線と共に当社も右肩上がりで成長してきました。その 間、とにかく目まぐるしかったのが技術革新です。アナロ グからデジタルへ、 デジタル分野もモノクロからカラーへ、 そしてネットワーク化へ。さらに Windows 95 の登場で 誰もが PC を持つ時代が到来します。インターネットが急 速に普及し、 近年はクラウド、 モバイル機器との連携など、 新しい ICT との融合で、技術革新が今なお相当なスピー ドで起き続けています。 私も開発生産部門で最終的に専務として全般を掌握しま したが、入社間もない時分を思い起こすと、会社の規模も それほど大きくなく、知識レベルも今と比べれば浅いもの の、多くのことを広く調べないと開発ができなかった。つ
まり多能工的な仕事をしていたわけです。サプライヤーや 顧客のところに行って、どうやったら構想を実現できるの か、市場を創りだしていけるのかということを一緒に話し 合い、 上流から下流まで全方位でカバーしていたわけです。 しかし、 今は規模が違う。 さまざまな機能を多くのメンバー で分担し、細分化しながら開発を進めています。専門領域を 担当する優秀な人材はいるんですが、方向性が明確に共有で きていなかったり、チーム力も発揮しきれていなかった。 当時はこれから東南アジアという時代。すでに日本は成 熟国でしたから、時流はカラーへと移行していたんです。 一方、東南アジアを見ると、市場はまだまだモノクロの時 代。そういう状況にも関わらず、技術者の多くはモノクロ マーケットに興味を持っていなかった。ローエンド、ハイ エンド市場いずれの対象商品も偏りなくやっていく必要が あったのに、それができていなかった。結局、業務の細分 化によって、 「お客様」 と 「モノづくり」 の視点が希薄になっ ていたんです。
「本来のモノづくりの在り方」 に立ち返る
鈴木:まず社員の意識改革に取組まれましたが、その過程
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創 業 : 1962 年(昭和 37 年)2 月 20 日 資 本 金 : 200 億円 従業員数 : 45,040 名(2013 年 3 月期 連結) 主な事業内容:複合機、プリンター等の製造・販売ならび に業務の生産性向上やプロセス改革を支援 するソリューション事業
富士ゼロックスは 2008 年、前年に社長に就任した山本氏 のもと、 「複写機からの卒業」を宣言し、ソリューション ビジネス事業へと大きく舵を切った。 “モノ売り” から “コ ト売り”へ。顧客を取り巻く IT、コミュニケーション環 境が変化する中、 大胆な事業変革をどのように行ったのか。 その具体的な方針やアプローチについて山本社長にお聞き した。
山本 忠人
で、 「プレジデント塾」 というユニークな活動をされていらっ しゃいます。この活動の狙いをお聞かせいただけますか。 山本:当時はカンパニー制を敷いており、私は開発生産カ ンパニーの社長をしていました。前述したように、今の状 況ではダメだという思いがあり、この先、核となる優秀な メンバーを選び出して、徹底的に教育したんです。いわゆ る QCD など、そういうことは一切しませんでした。例え ば、わが社が置かれた状況や、どこにどれだけ無駄がある とか、在庫やサプライチェーンの問題、顧客満足度などに 重点を置き、 「本来のモノづくり」の在り方に立ち返り自 ら考える力をつけてもらうのが狙いでした。常に新しいも のを追求し、技術競争で忙殺されていた彼らからすると、 目から鱗だったと思います。 それを何期か繰り返し、その一期生が部長クラスになろう としています。現在、開発生産は非常によくなっていますし、 競争力を持てる商品ができるようになったと自負しています。 ソリューションビジネスへと大きく事業転換された背景や その際のご苦労についてお聞かせください。
代表取締役社長
山本:50 年前は複写機そのものにパワーがありました。 当時は PC なんてないですから、黒電話と複写機、あって も計算機という時代です。それこそ複写機はビジネスマ シーン。会議一つにしても、コピーしてレジュメを配り、 書き込みすることで記録もでき、折り畳んで持ち運ぶこと もできる。短時間に情報を伝達することが可能になり、コ ミュニケーションを飛躍的に向上させました。 しかし、今は取り巻く環境が違います。紙を主体とした コミュニケーションは、かつて 50 年前のお客様が考える バリューと大きな差があるのです。今までと同じことや、 その延長線のことをやっていてはダメだという思いから 「複写機からの卒業」を宣言しました。 社内でのコミュニケーションは「紙」だけでなく、例え ば会議の場や E メール、今ではさまざまなモバイル機器 など多種多様な媒体があります。 「紙」 という顧客のコミュ ニケーション環境、価値創造環境の一端だけを担っていて も、真の意味で価値創造をするための情報環境構築にはな りません。環境構築をするためには、ネットワークやサー バー、クラウドの立ち上げといったシステムインテグレー ション的な役割が求められるようになってきたのです。事
Tadahito Yamamoto
複写機からの卒業! ソリューションの富士 ゼロックスへ
鈴木:2008 年に「複写機からの卒業」を宣言されました。
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業転換により役割がガラッと変わったことで、カスタマー サービスのメンバーにも大変な努力と変革を要しました。 もちろん、変革と一言でいっても、モノ売りからコト売 りへという事業構造の変革は人材の再教育も、組織の再設 計も伴います。長年 50 年近く慣れ親しんだ事業から、 まっ たく 180 度違う事業をやっていく訳ですから、それはも う会社の文化まで変えるような大きな変革でした。
ソリューションは、我々の中にもあるということです。 自社の生産サイドで起きている問題を理解し、 解決せずに、 顧客に対して問題を聞きだし、ソリューションを提供でき るでしょうか。自社や自分の業務の中で日常的に課題を発 見したり、さまざまな気づきを持ち、改善するという繰り 返しの中でこそ、 そのような能力は培われると思うんです。 さらにもう一つが、C レベルコンタクトです。これはい わゆる CEO、CIO、CFO といったトップレベルへのアプ ローチです。基本的にソリューションサービスとなってき ますと、 「機械を1台買ってください」という次元の話で はなくなります。業務プロセスの変革を伴い、今までの仕 事のやり方をガラッとかえてもらうとなると、ボトムアッ プ営業だけでは難しい面があります。しかも、大きな経営 課題を掌握されているのはそういう C レベルの方なんで すね。ですから、当社の執行役員には皆、担当するお客様 を持たせています。やっと今、その仕掛けも成果を上げる ようになってきたところです。
「言行一致」がお客様の 課題解決につながる
鈴木:製品革新も事業変革も、共通項は「お客様」だと仰 いました。そのお客様の課題や悩みを分析してソリュー ションを提案し、新たな価値提供を図る上での具体的な方 針や課題解決のアプローチについてお聞かせください。 山本:弊社では毎年年度初めに経営方針を出しています。 2011 年は「Go to Customers」と定めました。実は当社 は基本的に毎年新たな経営方針を挙げてきましたが、この 「Go to Customers」は 2009 年から 3 年継続しました。つ まり、まだお客様のもとに行っていないと。それは、行く だけではダメだということなのです。 例えばある製造メーカーのお客様にしても、図面のよう な出力系の仕事がある開発部門だったり、コピーを扱う総 務部門だったり、従来はそういった使ってくださっている 部門に足しげく通っていたところがあります。しかし、お 客様の経営改革やソリューションを目的とした時、企画や 情報システム、営業部門なども対象となるわけで、管理部 門や関係部門の方だけ訪問しても不十分、これでは新たな 気づき、 提案に繋がらないのです。それを社員に言い続け、 この経営方針を3年継続しました。 また、全社運動で「言行一致」を掲げました。当社はコ ピーや価値を顧客に提供するメーカーです。例えば自動車 や医薬品メーカーにしても、何かしらの価値をつくり顧客 に提供しているわけです。だから我々も図面をつくること が最終目標ではないでしょうと。使いやすい複写機を安く 作れることが価値創造の一つの最終プロセスであり、やが て物ができれば在庫管理も必要ですし、リードタイムの問 題、品質、コスト、原価低減など、どの製造メーカーも同 様の悩みや問題を抱えているはずです。つまり提供できる
目指すは信頼される 「エクセレントカンパニー」
鈴木: 「言行一致」は素晴らしい取組みですね。お客様に自社 の例をあげて提案する上でも、社内の改革は重要ですが、具 体的にはどのような改革に取組まれているのでしょうか。 山本:2012 年度の経営方針は「Challenge for Excellent Company」と定めました。 「言行一致」の究極は、エクセ レントカンパニーに行きつくと思うんです。社員の士気が 低く、会社は赤字で減収減益。そんな会社がいくらかっこ いいことを言っても、誰も耳を貸しませんよね。 例えばモノづくり企業だったら、 「あなたの会社はさて おき、この商品だけはいいね」と言って買ってくれるお客 さんもいるかもしれません。ですがひとたび、我々は「課 題解決の富士ゼロックス」と謳い、 生産性向上や環境構築、 コミュニケーション改善を提案するときに、じゃあそう言 うあなたの会社はどうなんだ?と問われるのは当然でしょ う。部下やチームのモチベーションが低い会社が、顧客満 足を実現できるはずがありません。 2012 年 度 は「 自 ら 考 え、 行 動 す る 」 人 材 育 成 に 向 け、イノベーションや業務改革に挑戦する行動を積極的
2014年 2月14日 (金) に山本氏をお迎えし 「JMACトップセミナー」 を開催いたします。詳細は巻末のinformationをご覧下さい。
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Tadahito Yamamoto
山本 忠人
1945 年 1968 年 1968 年 1994 年 1996 年 2002 年 2007 年
神奈川県生まれ 山梨大学工学部卒業 富士ゼロックス株式会社入社 取締役 VIP 事業部長に就任 常務取締役に就任 代表取締役専務執行役員に就任 代表取締役社長に就任
に評価する仕組みを導入しました。言うまでもなく ES (Employee Satisfaction)は経営の基盤です。従業員が生 き生きと働ける企業づくりができて初めて、顧客満足につ ながると考えています。
ん。当社も例えば中国では、現地のお客様の声を徹底して 集め、 企画開発したデジタル複合機 「DocuCentre S シリー ズ」が大変好調で、マーケットシェアを格段に伸ばしてい ます。 大切なのはその国の文化や商習慣、 地域ニーズにマッ チした現地マーケティング、つまり「グローカル」ではな いでしょうか。
「直販体制」の強みを生かし 「グローカル」に海外展開
鈴木 : 今、 御社では海外でも現地ニーズに合わせた「グロー カル化」 に積極的に取組まれ、 シェアを伸ばしていらっしゃ います。具体的な内容についてお聞かせください。 山本:当社の特徴は直販体制があるということ。具体的に 言いますと、直接保守サービス、直接販売を持つメーカー であることが一つの強みだと考えています。例えば今、経 済が右肩上がりで勢いのあるベトナムなどでは、日本企業 もさることながら、韓国、台湾、中国等外資系企業の進出 が急増しています。 単純なコピーとは違い、ソリューションやアウトソーシン グサービスといった、より高い価値を求める顧客のニーズに 応えるためには、ベトナムの現行営業だけでは賄えない面も あります。そういうハイブリッドな部分については、日本人 営業のグローバル教育も含め、多くの若手を海外に出してソ リューション、グローバル営業に取組んでいるところです。 グローバル化と一言にいっても、欧米向け機械の一部の 機能を削ぎ落とし安く作っても売れるわけではありませ
イノベーションと社員力向上 こそマネジメントの鍵
鈴木:最後に、山本社長からこれからの日本の経営者、次 世代を担う経営幹部に向けたメッセージをお願いします。 山本:やはり基本はイノベーションです。常日頃から改善 を図り自社の変革に取組んでいないと、たとえ条件的に良 い時期があったとしても、取り巻く環境が大きく転換すれ ばいずれダメになってしまうでしょう。私はいつも「課題 発見能力を持て」と社員に言っていますが、それは会社と いう器だけでは何もできないと考えるからです。お客様と の接点を持つのは社員であり、 社員の集合体が組織であり、 会社ですから。要は「人」なんです。 大局観を持って時代の潮流をみながら、社員力を磨き、 いかに能力を引き出すか。それが我々マネジメントの重要 な役割であると思います。その上に絶え間ない革新、イノ ベーションを積み重ねてこそ、真のエクセレントカンパ ニーへ繋がるのだと思います。
鈴木亨の
対談を終えて
顧
ひとこと
客にソリューションを提供するためには、自社の課題解決を推進しその能力 を高めていくという「言行一致」の考え方、これは山本社長の経営方針実現
に向けた強い想いやブレのない一貫性の現れだと思いました。会社の舵取りを担う TOP たるもの向かうべき方向性の提示と、自らそこに至るまでの具体的なアクショ ンを牽引する意思の重要性を改めて認識させていただきました。
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起死回生をかけ新技術、 環境性能への飽くなき挑戦がはじまった
ビジネス成果に向けて JMAC が支援した 企業事例をご紹介します。
「滋賀製作所」の ものづくり力が集結! 「うるさら7」 開発ストーリー
ダイキン工業株式会社
「省エネ大賞」 「日本ものづくり大賞」を受賞したルームエ アコン「うるさら 7(セブン) 」は、2012 年 11 月に発売を 開始し、 順調にシェアを伸ばしている。しかし、 そのスター トは決して平たんなものではなかった。部門の壁を越え、 新たな技術、環境性能への飽くなき挑戦を推進したダイキ ン工業滋賀製作所。その取組みの軌跡を紹介する。
滋賀製作所 空調生産本部 商品開発グループ 主任技師
岡本 高宏
Takahiro Okamoto
起死回生をかけ 滋賀製作所は立ち上がった
ダイキン工業株式会社の歴史は 1924 年大阪の地に合 資会社大阪金属工業所を設立し、飛行機用ラジエーター チューブ等の生産を始めたところから始まる。1958 年に 日本初のロータリーコンプレッサーを搭載した家庭用ルー ムエアコンを発売。その技術を強みに成長を続けてきた。 滋賀製作所はその中でルームエアコンの生産拠点の中心を 担ってきた。 1999 年にはルームエアコン 「うるるとさらら」 を発売。外気中の水分をエアコン内に取込むという世界初
の「無給水加湿」技術で瞬く間にヒットとなり、2003 年 度ルームエアコン国内シェア NO.1 にまで上り詰めた。 しかし、ルームエアコンを取り巻く環境はその後も刻々 と変化する。 地球温暖化等を背景に、 省エネへの関心は年々 高まり、自動お掃除機能やコンパクト化が主流になる中、 2005 年、ダイキンは他社製品にシェア NO.1 を明け渡す こととなる。さらに 2008 年、同社は中国「格力電器」と 業務提携し、それまで滋賀製作所で製造していた低価格帯 の主力商品製造を委託した。 「うるさら 7」プロジェクト推進に中心的な役割を果た した滋賀製作所 空調生産本部商品開発グループ 主任技師 岡本高宏氏は「格力電器はマスボリュームを持ち合わせ、
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コスト力を持っています。一方我々はインバーター技術と いう強みがあります。それを融合させて市場を拡大させる 路線を選ぶのは企業として当然あるべき方向です。一方、 滋賀製作所で作っていたものを持っていったために、滋賀 で製造する台数は純粋に減りました。我々としては付加価 値の高い商品を出して台数を伸ばさないと、滋賀製作所の 存続自体危ぶまれるという強い危機感がありました」と当 時を振り返る。 このままでは、中・高機能商品まで中国へ移管される可 能性がある、滋賀製作所でものづくりを続けるためにはど うすればいいのか。事業所全体が一丸となって魅力的な商 品をつくる活動をはじめようという機運が持ち上がった。 それはトップの方針とも合致していた。 こうして 2010 年 4 月、滋賀製作所の起死回生をかけた プロジェクトが立ち上がった。それが「うるさら7」プロ ジェクトだ。
2010 年早々にプロジェクトがキックオフしてから、しば らく自身で取組み始めた岡本氏だったが、どうもうまく進 まない。そこで同年 9 月、JMAC がプロジェクトに本格 的に合流したのである。
組織の壁を越え、 各持場は意志を出し始めた
これまで様々なコンサルタントと付き合いがあったとい う岡本氏だが、どこかネガティブな印象を持っていたのも 事実だと言う。 「目標を達成するには手を動かさなくては ならない。しかし業務を抱えながらコンサルタントからの 宿題をこなすという負担から、現場はとても疲弊してしま うんです」 (岡本氏) しかし、JMAC は今までとは大きく違っていたという。 課題を引き出すため、どんどん現場に入っていく。初めは 不安や抵抗感を抱く現場だったが、JMAC が実際に現場か らあぶりだす課題が納得のいくものだった。その現場目線 がメンバーに最も響いたのではないかと岡本氏は振り返る。 セミナーをきっかけに、今回のプロジェクトは 4 つの テーマが並行して推進された。原価企画はシニア・コン サルタントの加賀美行彦が担当、調達、サプライヤーは チーフ・コンサルタント 中山隆、生産ものづくりはシニ ア ・ コンサルタント 桜井祥裕、商品企画、コンセプトメー キングはチーフ・コンサルタント 近藤晋がチームを組み、 部門間の連携にも接着剤の役割を果たした。 ここでは「商品企画」の取組みにフォーカスしてご紹介 する。プロジェクト当初を振り返りチーフ・コンサルタン トの近藤晋はこう話す。 「商品企画の場合、現場の課題も わかっていて、企画としてやりたいことも明確にありまし た。あとは、どう周りを巻き込み納得させられるか。例え ば営業部門等、タッグを組まなければならない部門を早期 に巻き込んで意見を引き出していく。第三者が必要な人に 対して場をつくり、一つひとつの議論を丁寧にしながら形 にしていくわけです。それが我々の役目でした」 今まで陥りがちだったのは、プロジェクトリーダー対そ の他という構図。プロジェクトありきで進めると、それぞ れが背負っている自部門の主張や利害関係から対立し、物 別れに終わってしまうケースも多かったのだ。 「今回は“課題”や“目標”を先に示し、 そこからスター
お客様が求める 真の価値とは
「我々が勝つためにやらなければならないのは、今まで の“常識”を見直すことでした。前提となるコスト力。環 境先進的な省エネ性や付加価値の高さ。こういった我々が 出してきた高付加価値商品というものは、本当にお客様に 望まれる商品を出せているかと。そこをもう一度見直す必 要がありました」と岡本氏は語る。 日本のもの作りで、シェア奪還と収益を実現することを 目的に据えた今回のプロジェクト。これまで技術力を強み にしてきた同社では、 「技術力 NO. 1」だったり、 「世界一」 というキーワードは常に意識してきた。だが「お客様の求 める価値と本当に一致しているか、ユーザー目線に立った 商品開発ができているか、という課題認識がありました」 と岡本氏は話す。そういう状況をブレークしたいと、パー トナーとして JMAC に声がかかったのだ。 「きっかけはコンサルタントの中山さんが講師の原価低 減セミナーへうちのメンバーが参加したことでした。 過去、 搭載機能が総花的になりがちで、目標原価の達成が難しい ことが続いていたため、これは今まさに我が社で一番悩ん でいることだと、相談にのっていただいたのが始まりでし た」 (岡本氏)
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じゃないかなと。空調の存在を感じさせないのに、非常に 快適な空間が保たれている。それを住宅で実現することを 考えたらどうだろうと。そこで住宅とホテルの空調は何が 違うのか実際に見に行こうという話になったんです」 サーキュレーション気流は今回のプロジェクトのキーで あり、 「快適の素」に違いない。だが、 一つネックがあった。 それは機能上、従来のエアコンに比べて厚みが出るという
チーフ・コンサルタント 近藤 晋
トさせました。そして侃々諤々の議論を重ねるうちにメン バーは能動的に動きだし、 『目標達成のためにこれがした い!』と各持場が意志を出し始めたんです」 (岡本氏) こうして粘り強く働きかけることで、部署の垣根を越え た信頼、協力関係が芽生え、プロジェクトは同じベクトル で動き出したのである。
点だ。コンパクトなデザインが主流になる中、逆行するデ ザインで果たして、その機能の価値をお客様に受け入れて もらえるのか。 実際に家電量販店の店頭や住宅に取り付け、 顧客の反応を確かめた。 「初めて見た人は、最初我々が抱いたのと同じように厚い というイメージを持たれました。しかし、機能性など総合的 に判断すると次第に魅力を感じてくれるんですね。営業最前 線の担当者や我々開発者も同じでした。ただ、最終的にこの デザインだから買わないと意見をいうのは他でもないお客様 なので、 実際にお客様に見て頂いて、 その反応で決めようじゃ ないかと。 」 (岡本氏)その商品の良さが伝われば、厚み寸法 自体は重要ではない。丁寧に説明すれば、機能の良さが伝わ るはずだ。こうして集まったメンバー皆が持っていた一抹の 不安は“売れる”という確信へと変わっていった。
厚み寸法自体は重要でなく、 その形状が提供する商品価値が 伝わるデザインが重要!
また、並行して取組んだのがユーザー視点だ。 「うるさ ら7」 プロジェクトの中のコンセプトのキーでもある 「サー キュレーション気流」について、岡本氏はあるエピソード を語った。 「ある日、女性のマーケターが突然計測器を渡すんです。 本当に気持ちいい環境はどういうものか、高級ホテルに泊 まって体感してきてくださいと」この体験は岡本氏に新 たな気づきを与えたという。 「気持ちいい環境」とは住宅 の性能も、体感する人自体も変わる中、今までの自分た ちの概念と変わってきているのではないか。 「やはり現場 ですよね。モノづくりで現場と言えば、まずはラインが思 い浮かびますが、それ以外にも現場があるということを JMAC に教えてもらいました。つまり、解決したい課題 の“現場”はどこかという話ですよね」 商品を購入するか、付加価値が高いかを決定するのは顧 客自身。だから、 「お客様の現場」 に行く必要があるわけだ。 近藤は振り返る。 「コンセプトワーキングの中で、サー キュレーション気流で実現しようとしているものは何なの か随分話し合いました。結局行き着いたのは『空気質にこ だわりたい』という点。では一番空調が効いていて、快適 なところはどこかというと、高級ホテルのロビーや、部屋
3 年越しの知恵が結集! ついに「うるさら7」発売
2012 年 11 月 1 日、ついに「うるさら7」の発売日が決 定する。そして、10 月 11 日からの生産開始を目前に控え た 9 月初旬、100 台のパイロット生産が実施された。テス トラインが動いたその日、工場内にアナウンスが流れた。 通常パラパラと数人が集まってくるのだが、この日は製作 所内の人がぞくぞくと集まり人垣が出来た。それぞれの現 場が出した知恵が結集された製品を一目見よう、自分達の 出した仕様がどこに活かされているのかと沸き立った。生 産ラインを前に、当時の工場長の岡田氏はメンバーにねぎ らいの言葉とメッセージを語った。その目には光るものが あったという。岡本氏自身もいつもながら、もらい泣きし てしまったのであった。 さらにこの日、急遽「 『うるさら7』1 号機を囲み、関 係者で皆で記念撮影をしようという話になったんです。そ うしたら、予想以上の人が押し掛けてきて。役員会で来て いた役員さんにも入って頂いて、全員で写真を撮ったんで
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す。撮影は、室内機のラインの横だったのですが、 室外機は別のラインから現場のリーダーが持ってき てくれて、また、女性社員が頼んでない久寿玉まで 用意してくれて。これはなかなか撮れない写真、私 の一生の宝物です」と岡本氏は感慨深く振り返る。 そこには堂々と腕組みし、ものづくりのプロとし て、誇りや達成感に満ち溢れたメンバー達が映し出 されていた。
ものづくりの神髄は 近江商人の教え 『三方よし』にあり
「うるさら7」はその後、新冷媒の採用で業界トップの 省エネ性を達成したこと等が高く評価され、 「省エネ大賞」 を、また、地球温暖化と日本のものづくり競争力強化に貢 献する次世代エアコンの開発が評価され、 「日本ものづく り大賞」を受賞し技術力の高さを内外に知らしめた。受賞 について、岡本氏はこう分析する。 「評価ポイントは近江商人の教えにある『三方よし』と いう言葉がぴったりだと思うんです。まずは 『売り手よし』 --- これはモノづくりの視点。そして『買い手よし』--- こ れは省エネやサーキュレーション気流といった付加価値。 最後に『世間よし』--- これは今回、ものづくり大賞受賞 で一番教えられたことですが、サプライヤーと共に勝ち続 ける構造や、グローバルを見据え、デファクトスタンダー
室内機生産ラインの横で『うるさら7』1号機を囲み 記念撮影をする滋賀製作所の皆さん
ドにするという視点です」 また、今回のプロジェクトを通し、 「マザー工場」のあり かたについても岡本氏は話す。 「マザー工場は新しい技術を 生み出す場所。ですが、新しい技術さえ生み出せばそれで いいのではなく、やはり利益を出してこそ、なんです」 2010 年 4 月からスタートした「うるさら7」プロジェク トは、3 年という月日の中で組織の在り方そのものを変え た。 「解決できていなかった課題をブレークした瞬間をみん なで共有した時が一番力になる」と岡本氏は語ったが、そ の力の結集こそが「うるさら7」誕生に他ならないだろう。 今後も新たな技術開発や付加価値の提供で「うるさら7」 に続く世界を揺るがす新製品を、同社のマザー工場である 「滋賀製作所」から生み出してくれることを期待している。
担 当 コ ンサルタントからの一言
原価企画担当 シニア・コンサルタント
今回ダイキン工業様のプロジェクトを担当した 「4人のコンサルタントからの一言」です。
生産ものづくり担当 シニア・コンサルタント
加賀美 行彦
桜井 祥裕
ダイキン工業様は、こだわりを強く持って取組ま れるお会社と感じました。目標や、技術、現場、 そして滋賀製作所へのそれぞれのこだわりの結実が、よい部門間 連携を生み、全方位的な多くの受賞に値する活動になりました。 調達、サプライヤー担当 チーフ・コンサルタント
開発の技術へのチャレンジ心と製造・生技 の“ありたい姿”追求の想いが一致した時、 大きな力が生まれプロジェクトのいくつもの壁を超えるブ レークスルーとなりました。 商品企画、コンセプトメーキング担当 チーフ・コンサルタント
中山 隆
近藤 晋
開発、生産技術、調達のプロジェクトメンバー が早期に目標と課題を共有化し、サプライヤー の現場に足を運んで協業活動を推進できたことがポイントにな りました。
最高の価値を届けたいというダイキン工業様 の妥協なき姿勢と強い想いに客観的な視点を 与える“お客様の現場”を加えた活動展開が成功のポイン トであったと思います。
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Human
&
人と組織(チーム)の力を最大化することを目的に JMAC が 支援した企業事例をご紹介します。
Organization
『称賛と提案』活動で 人・組織の意識と行動を変革!
~職場の活性化が業務品質向上へ~
方向性を共有するには 「ビジョン」しかない
2007 年 4 月に社名変更を経て発足したほくでんサービ ス株式会社は、北海道電力株式会社(以下北電)が供給す る電気に関わるお客さま接点業務を担う北電のグループ企 業である。グループ全体で広大な北海道のインフラ供給に より、道民の生活を下支えしている。同年 10 月、北電本 体の料金部門が同社へ集約される形で、新たに料金事業部 が発足した。 それまで同社の検針と料金請求関係業務は個人事業主と の委託方式であったが、料金事業部発足と同時に彼らを従 業員(パートナー社員)とした。その背景について、取締 役社長 石井孝久氏はこう話す。 「会社組織にした主たる目 的は、効率化と業務品質向上が狙いでした。北海道は過疎 化も進んでおり、 郡部での検針業務は人材の確保も難しく、 チームや組織単位で補っていく必要があったのです。ある 種、時代の流れでもありました」 「 『幻 (ビジョン) がなければ、 民はほしいままにふるまう』 --- 旧約聖書の箴言の中にあるこの言葉は、料金事業部中 長期ビジョン「STart.」の冒頭でも引用されている。この 言葉に込めた意味を、取締役 お客さまサービス事業部長
鈴木裕文氏はこう話す。 「向かうべき方向が明確に示され ていなければ、個々人はそれぞれが良いと思う方向に目を 向け、目指すべき目的も組織もバラバラになってしまいま す。 だから方向性を共有するためにビジョンが必要でした」 新組織を構成するのは年齢や性別、キャリアもバラバラな パートナー社員、 正社員、 そして北電からの出向社員である。 「これまで個人で完結していた業務でしたが、 今後はどうやっ て仲間と仕事をしていくのか。チーム、会社全体の仕事と認 識し、立場の垣根を越えて共有化していかねばなりません。 意識改革をする上でまず必要だったのがビジョンだったんで す」 (石井社長) この料金部門のビジョン策定は 2010 年下期からスタート し、 JMAC が加わった。約 1 年掛けメンバーの思いのこもっ たビジョンが出来上がった。 しかし、それを推進するのは、さまざまな出身の社員た ちだ。 「ビジョン」という言葉自体何を意味するのかとい うレベルからのスタートだった。 「ビジョンをわかりやす く説明するために、 例えば登山を例に話をしたりしました。 山頂が見えていても、道の途中でいろいろなことが起きた り、天候が変わったりもしますね。そういうことに対処し つつ、山から目を離さないのがビジョンを持つということ なんです」 (鈴木氏) 料金部門のビジョンは、 中期的な 「ありたい姿」 として 「私
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ほくでんサービス株式会社
北海道電力のグループ企業であるほくでんサービス株式会 社は、2007 年 10 月料金事業部(現在はお客さまサービス 事業部料金部。以下同じ)を新設し、それまで業務を委託 していた個人事業主を社員として招き入れた。新たな部門の 方向性を一つにするため中長期ビジョンを掲げ、その浸透 に向け新たに ST 活動に取組み始めた。この活動を通し、ど のように職場が活性化していったのかをご紹介する。
取締役 取締役社長 お客さまサービス事業部長
石井 孝久
Takahisa Ishii
鈴木 裕文
Hirofumi Suzuki
たちは、電気を通じて人と人とのつながりを育む会社です」 と据えた。現状とのギャップを埋めるため、事業展開、基盤 整備と合わせた対策の一つとして、また「ありたい姿」に向 かう土台として「6 つの価値観・行動宣言」が盛り込まれた。 これには、従業員1人ひとりの考えと行動がこの活動を支え る原動力になるというメッセージがこめられていた。 事務局は、中長期ビジョンが本格スタートするまでの数 ケ月間、全事業所へ説明とワークショップに時間を費やし た。料金部門全 16 事業所にビジョン推進リーダーを置き、 約1年半の歳月をかけ、2011 年 12 月、ついに料金事業部 中長期ビジョンがスタートしたのである。
いものは良いと言える風土」つまり「ポジ出し」へと。さ らに、もし意見が違えば否定するのではなく提案をする風 土に変えていきたいと事務局も JMAC も考えた。 「私はビジョンを浸透させる手段として、小集団活動を 活発化させようという段階から事務局に仲間入りしたので すが、最初は小集団活動というと、今まで何度か経験はし ていますが、どこか上手くいかない感覚がありこの活動に 独自の名前を付けたいと思いました。では我々が大切にし
大切なのは「称賛と提案」 − −自主活動でポジ出し!
2012 年、ビジョンづくりを支援した JMAC は、それを 浸透させるための次なる実行フェーズも引き続き支援し た。事務局の中で中心的な役割を果たしたメンバーの一人 が料金部料金計画課 岡本香織氏だ。実行フェーズを担当 しているのはチーフ・コンサルタント笠井洋である。 電力業界はその業容ゆえ、間違いのない正確さが特段重 視される。そのため失敗しない確実さが第一で、いわゆる ダメ出しから入ってしまう傾向があった。 そうではなく 「良 ▲ワークショップでは課題に対し、付箋に書き出し たメンバーの意見を模造紙に貼り付け整理する
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「ST 活動」を浸透させるため、中心となって活 動を推進した事務局メンバーの皆さん (左から) 鈴木氏、葭内氏、船木氏、佐藤氏、岡本氏
よしうち
たいものは何なのか?それは 『称賛と提案』 ではないかと。 しかも中長期ビジョンのサブタイトルが『~成長(S)を 確かな (T) ものに~』 なんですね。 『称賛 (S) と提案 (T) 』 の頭文字をアルファベットにした時、なんと ST と合致す るじゃないかって!それはもう盛り上がって『ST 活動』 というネーミングに決まったんです」 (岡本氏) ではここで具体的に「ST 活動」について触れておこう。 まず 5、6 人が 1 チームとなり、 「6 つの価値観・行動宣言」 を念頭に置いたチーム目標を設定する。さらに個人目標を 服の胸や袖に着けて、社内やお客さまへの宣言として日々 実行に移している。 「最初は ST 活動、自主的な活動と言っても、何をやれ ばよいかわからないという声が多かったんです。難しく考 えるんじゃなく、日々自分やチームができること、例えば 『いつも笑顔でいます』 『必ず挨拶をします』など簡単なも のから始めましょうと。それを「スモールスタート・ス モールゴール」 という “キーワード” で示しました。また、 ここの事業所ではこんな素晴らしい取組みをしているよと か、いい事例を出し合えばいいんだとお話しました。それ は面白い、それだったらできるかもしれないと皆が思うよ うになり、今では現場の推進リーダー自ら情報を送ってく れるようになりました」 (岡本氏) そうして生まれたのが ST 活動の取組みを記事にしたト ピックス通信「Short Talk」 (このタイトルも「S」と「T」 にこだわっている) 。発案したのは岡本氏。良い事例を形 にして伝えずにはいられなかったという。現在 42 号まで 発行され、今では掲載されることが社員のモチベーション アップにつながるなど、積極的な ST 活動のバックアップ
に一役かっている。
会議の在り方を一変させた 「ファシリテーション」
また、ST 活動を推進していく上で導入したのが「ファ シリテーション」の姿勢とスキルだ。まずは各事業所の推 進リーダー全員に向けた研修が行われ、その後順次その下 のチームリーダー層を対象に継続して行われている。ワー クショップ形式のこの研修は、職場で実施される ST チー ムミーティング (30 ~ 60 分) で、 リーダーがどのようにチー ムメンバー自身が自分の感情も含めて自由に分かち合うこ とに貢献できるのかを目的とした実践研修である。 「これまで会議といえば、誰かが発言して、それに対し て意見を出すというパターン。だいたい発言する人は決 まっていたんです。それが、ワークショップで付箋を使い 必ずそれぞれが発言し、 意見を出すわけです。批判はせず、 最後に発言者へ拍手。 動きがあり面白いなと思いましたね」 と話すのは、料金部 料金計画課長 佐藤宏昭氏だ。 「最初は『拍手するの?』というとまどいの雰囲気だっ たのが、今では誰かが発言すると自然と拍手が沸き起こ るんです」と JMAC の笠井も話す。また、お客さまサー ビス事業部 料金部長 葭内(よしうち)保志氏も「ワー クショップは宣言なんです。例えば課長会議でもワーク ショップを取入れていますが、課長全員が私はこうするん だと皆の前で宣言するわけですから、宣言するだけの覚悟 も生まれます」と本ワークショップを高く評価している。
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ファシリテーション導入で料金部門の会議は一変した。 今ではワークショップの時間を取入れない会議はないくら いファシリテーションは浸透し、実務レベルにも生かされ ているのだ。
にあてると氷や曇りがとれる」 というアイデアを書き込んだ。 それはいい、やってみようとデータベースを通じてノウハウ が共有され、現場で役立てられているというのだ。 「火事を未然に防いだ」 「事故に遭遇した際交通整理を かって出た」 「困っている高齢者を手助けした」など、現 場での素晴らしい行動は枚挙にいとまがない。しかし、こ れまでそれはやって当然のこととどこか思いがちで、皆で 分かち合い褒め称えることはなかった。 「検針や料金を扱う業務はどうしてもお叱りを受けがちで す。一方でいいことも実はたくさんやっているんですね。ク レームは顕在化しても、現場での素晴らしい行動は表面化し ないわけです。だからそういうことを共有して仲間うちで認 知し、 称賛しようと。自分たちのアイデンティティなるもの、 つまり自分たちの仕事が世の中に貢献しているんだよという ことをもっと受け止めてほしいと思うんです」 (鈴木氏) ST 事例データベースにはフェイスブックのように「いい ね」を押せる機能がある。社員の側からもパートナー社員の 姿が以前よりよく見えるようになったことで、社内外で模範 的に行動しているパートナー社員を表彰する制度を創設し た。その名も「3 スター表彰」 。これは、パートナー社員の 目標であり、モチベーションアップにもつながっている。
現場アイデアの結集 「ST 事例データベース」で ノウハウ共有
こうして徐々にアイデアや意見を出し合う風土が醸成さ れる中、その効果の現れとして ST 事例データベースが登 場する。これは社員の知恵やアイデア、いろんな出来事を 事例として投稿し、データベース上で見える化し、共有し ているものだ。 「最初、そもそも投稿してくれるのかという不安があっ たのですが、今では 1700 件にも上る投稿があります。お 客さまや同僚とのやり取りなど心温まる話もあったり、 我々が目指している価値観の共有が徐々に上手く回りだし たなと手ごたえを感じているところです」と話すのは料金 部料金計画課長代理 船木博隆氏。 例えば、ST 活動の個人テーマを「誤検針をなくす」と設 定した人がいる。北海道という土地柄、検針メーターはむき 出しではなく、落雪等による破損を防ぐため通常計器ボック スに囲まれている。それが冬になると計器ボックスのガラス 窓が凍結してメーターがはっきり見えないケースがあるとい うのだ。そういう地域的な特性が誤検針を引き起こす要因に もなっていた。そんな時、ある人が「携帯カイロをボックス
結果として現れた! 業務品質向上
ビジョンづくりからスタートし、ST 活動を通して様々
保育行政への支援に対し、 足寄町長よりいただいた感謝状
▼
▼ ST チーム目標活動シート
▲ 「今の自分たちにできることで地域に貢献します」 というチーム目標のもと、足寄保育園へタオルを 寄付する帯広支店足寄 A チーム検針パートナー社 員の皆さん
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な知恵やノウハウが共有化される中、結果的 に成果となって現れてきたのが業務品質向上 だ。先にエピソードを上げた「誤検針」にし ても、 「カイロで温める」といったノウハウを 共有することで、誤検針の低減に繋がってい るという。 また、労災事故も劇的に件数が減っている。 「冬になる前に、安全衛生活動をみんなで共有 しました。凍結路面を『ペンギン歩き』で歩 いたらいいとか坂道は『カニ歩き』がいい等 さまざまな実体験や工夫が出てきたんです。 その影響もあるかもしれませんが単純な転倒 事故は少なくなりました」 (岡本氏) ST 活動は事故や誤検針を減らすという職場改善のため にやっている訳ではない。ただ、活動を継続する中で「心 と態度の一致の習慣」が身に付き、結果的に業務品質向上 につながっているのだと鈴木氏は強調する。 最後にパートナーである JMAC について鈴木氏はこう 語る。 「あくまでも『素材』は我々の中にあり、それを筋 立てで整理してくれたのが JMAC。主役は我々であり、 自分達でビジョンを作り上げたと感じられるようにサポー トしてくれた点がよかったですね。また、 『こうあるべき』 という押し付けではなく、 『今はこういう状態なんですね』 という現状把握から始まるんです。そこのアプローチが現 場の納得感に繋がったと思います」 ロジカルな部分も重要だが、実際に行動に移す時に大切 になるのはエモーショナルな部分だ。JMAC の支援はそ の両方を備えていると評価する。 パートナー社員は地元に根差す地域住民たちだ。彼らが生 き生き働くことは結果的に地域貢献につながり、ひいては 電力会社の使命にもつながることだろう。 「社長になった時、 私が社内報に書いたのは『仕事は明るく楽しく元気よく』と いうことでした。ST 活動はそのひとつだと思いますが、み んな一緒に仕事をやっていく、やっていることが楽しみに なってくれれば最高ですね」と石井社長は話す。 北の大地で奮闘する同社。これまで ST 活動を通し培われ た組織力と団結力で、 更なる高い山の頂を目指し続けている。
心理的エンパワー(力を引き出す)の要素
自分達はできる
自己効力感
自己決定感
心理的エンパワー
影響感
よい影響を与えている
自らが選択し、決めている
有意味感
やっていることに意義、意味がある
担 当 コ ン サ ル タ ントからの一言
“率直”な提案が人・
を醸成する!
チームの意識や行動
仲間への期待を持った
人 ・ チームの “土台” があってこそ 『エンパワー』 状態がつくられる
多くの企業では“人・チーム”が力を最大限に発揮し、よい組織文化をつくり、経 営成果を獲得することを目指し日々努力されています。しかし、 “人・チーム”が力 を発揮できている状態=「エンパワー」状態を実現するために必要な“土台”がな い状況で努力を続けている企業が多数見受けられます。継続的に“人・チーム”の 力が発揮される土台として、 『称賛と提案』があります。 『称賛』とは金銭的および 非金銭的な報酬が含まれ、仲間に存在を認められること自体が報酬になりえます。 加えて大切なのが相手への期待から生まれる率直な『提案』です。ほくでんサービ ス様では、この両輪を職場でまわして“人・チーム”で協力しあう意識を高め、行 動を促進することに繋がったのだと思います。
チーフ・コンサルタント
笠井 洋
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Asianization
アジアを中心に「戦略」 「マーケティング」 「人材養成」の 3 視点から JMAC が支援した企業事例をご紹介します。
~オーナーシップで活動を推進、さらに高い目標へチャレンジ~
「全社戦略展開プロジェクト」で 企業変革、体質を強化
Indian Ocean Tuna (IOT)
2012 年 7 月セーシェル共和国を代表する大手製造業 IOT 社で「全社戦 略展開プロジェクト」が始動した。コスト削減や業務効率向上、企業変 革等を視野にスタートした本プロジェクトは、JMAC 支援のもと全社で どのように取組まれていったのか。始動から1年余り経過したこれまで の状況と今後の展開についてご紹介する。
President
Joram Madnack
を中心に発展してきた国である。
課題は「効率的なオペレーション」
パリに本社を置く Marine World BRANDS グループ (以下 MWB グループ)は、ヨーロッパを代表するシーフー ドメーカーである。英国、フランス、イタリア、アイルラン ド、オランダを主な市場としている。MWB グループはツナ を中心とした缶詰や、 高付加価値製品を中心に扱っているが、 サーモン、サバ、イワシ、シーフードペーストなど幅広い製 品を生産・販売している。売上高は約 900 億円、5000 人の 従業員を有するヨーロッパでも有数の企業である。 MW Brands はヨーロッパとアフリカに 4 つの生産拠点を 持っており、インド洋に浮かぶ美しい島国セイシェルにある Indian Ocean Tuna (以下 IOT) 社はその内の一つである。 セーシェル共和国は、アフリカ大陸から 1,300km ほど離 れたインド洋の 115 の島々からなる国家で、観光と漁業
そのセーシェル共和国において IOT は、ヨーロッパの 大手スーパーには必ず置いてある高級・普及版ツナ缶の製 造や、プライベートブランド(PB)の製造なども手掛け ている。 そんな IOT であるが、グローバルベースの監査法 人 の 会 計 士 か ら IOT に 転 じ た 代 表 取 締 役 社 長 Joram Madnack 氏は、日頃から同社のオペレーションをもっと 効率的にしたいと考えていた。 このような状況下、MW Brands の親会社である Thai Union Frozen(以下 TUF)社のマネジメントがある日 IOT を訪れた折、JMAC に支援依頼することを薦められ た。実はタイに本拠地を置く TUF では JMAC の支援に より、2010 年から約 3 年間「全社戦略展開プロジェクト」 を展開しているところだった。
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ついに始動! IOT の 「全社戦略展開プロジェクト」
紹介から程なく、2012 年 7 月 JMAC のチーフ・コン サルタントの石田恒之と泉本保彦がセーシェルの IOT を 訪れた。最初に、全経営メンバーを集めて JMAC が「全 社戦略展開プロジェクト」の概要説明を行い、その後、 Madnack 氏が、IOT の戦略、経営指標、会議体や意思 決定方法などの現状と主要課題に関する説明を行った。 さらに、各機能部門長からも個別に、現状と課題のヒア リングが行われ、IOT の「全社戦略展開プロジェクト (Company‑wide Strategy Deployment) 」が始動する。 Madnack 氏は当時を振り返り「目標を立てて徹底的に 実行するという内容の提案を受け、これは行けると確信し ました。彼らは、常に組織全体に気を配り、船から魚を下 ろす作業、冷凍庫、魚の選別、調理、加工、パッケージン グ等すべての工程もしっかりと把握してくれました。その 後コンサルティングで滞在する度、必ず現場に足を運び、 現場の様子を把握し確認してくれていました」と語る。 また、今回のプロジェクトに関してこう評価する。 「JMAC のコンサルティングスタイルで私が特に評価しているのは、全社 がコミットするところから始まるという点です。当然ながら私が 社長として会社の経営目標にコミットします。その目標を、生 産部門、技術部門、品質部門、コマーシャル部門といった各機 能部門の長に展開していきます。さらに、現場管理者、一般社 員全員にまで目標を展開し、全社員が目標を理解した上で活動 を開始する点には非常に信頼感が生まれました」と。 泉本は「 『全社戦略展開プロジェクト』は、昔日本でも盛 んに行われた『方針管理』と、コンセプトにおいて共通し ている点があると思います。IOT メンバーの方々は、全社 一丸となって目標に向かって努力を積み重ねてくれました。 『方針管理』の日本語の書籍が最後に出版されたのは 1990 年代ですが、それ以降は日本よりも、むしろ欧米諸国に於
いて真剣に取組まれていると思います」と語る。
オーナーシップは こうして生まれた
プロジェクトは始動から 1 年余り経ち、当初は困難だと 思われていた目標達成が見えてきたという。 「 『全社戦略展 開プロジェクト』は、今では我々の血となり、自分達の体 を巡っていると様々な場面で実感しています。目標達成だ けでなく、何よりも社員全員が成長し、この改善の気持ち を持ち続けてくれると信じています」 とMadnack氏は語る。 この改善活動が現場に浸透した仕掛けのひとつは、コン サルタントが現場のチームミーティングに入りファシリ テーションを行ったことだ。さらに、ファシリテーション の仕方をメンバーに教えていった。これによりミーティン グの質が劇的に変わったという。 泉本は 「例えば、 本プロジェ クトでキャプテンと呼ばれる部門長がメンバーを集めて議 論する Weekly Meeting に我々も参加するのですが、ただ 座って侃侃諤諤の議論をするだけで終わってしまいそうに なることもありました。 そんなとき、 私が前に立ち、 メンバー が発言する度にホワイトボードに発言内容を箇条書きにし ていきます。そして、皆がそのペースに慣れた頃、その役 割をキャプテンに渡していくのです」とその方法を語る。 ある日 Madnack 氏は泉本に次のように語ったという。 「こ のプロジェクトがどうして上手く行っていると思いますか? 私はオーナーシップだと思っています。このプロジェクトを 通じて、社員一人一人が、これは誰かがやるべきことだ、で はなく、これは私がやるべきことだと、皆が思うようになっ たからなんです。 」 さらに Madnack 氏は続ける。 「JMAC からは管理のツールを提供してもらいましたが、カスタマイ ズして進捗管理システムを開発しました。これは、ジェネラ ル(軍司令官)と呼ばれる二人のプロジェクトマネジャーに 加え、財務部長にも協力してもらい、自力で開発したもので す。当初、このプロジェクトマネジャーは、コ ンサルタントが開発してくれるものと思ってい ましたが、業務を良く分かっているメンバーが、 自分たちで開発するのが最良であるというアド バイスで、自社で開発をしました。結果的には、 自社開発したことで、このプロジェクトに対す るオーナーシップが社内に生まれるきっかけに
▲「全社戦略展開プロジェクト」推進メンバーとコンサルタント (中央左から石田、泉本)
なりました」と。
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また、オーナーシップが社内に生まれるもう一つのきっ かけとして「JMAC は、常に現場に足を運んで、管理職 だけではなく、職長やオペレーターにも気軽に声を掛けて くれていました。そして、 現場のチームミーティングでも、 常に彼らと同じ目線で議論を引っ張ってくれたのです。そ れは、このプロジェクトが私や管理者のためだけのもので なく、社員全員のためのものであることを身を持って伝え てくれたのだと思います」とも言う。
「全社戦略展開プロジェクト」
Strategy
目標設定と ブレーンストーミング
Tool
Operation
評価指標 (コクピット)
Finance
見える化
進化はこれから! さらなるバージョンアップとグループへの展開!
JMAC の 12 回目の訪問で、今回のプロジェクトが一区切 りついたとき、 プロジェクトマネジャーがこう言った「JMAC は、私たちがお腹を空かせていたとき、魚をくれる代わりに 魚の釣り方を教えてくれた。このことで私たちは一生暮らし ていくことができる」と。また、 他のプロジェクトマネジャー は「このプロジェクトが始まった時、我々の会社は各部門が バラバラで、 考えていることも共有できていなかった。 しかし、 1 年余り経った今、我々は本当の意味で 1 つになった」と伝 えたという。泉本は、 「当初は、丸一日では行き着けないセイ シェルに月に 1 度 1 週間訪問するという大変なプロジェクト ですが、 この言葉を聞いて本当に報われた瞬間でした」 と語る。 そして「このプロジェクトは、タイの TUF で実績を作った 石田の、生産・会計の専門性に、私の戦略策定・執行の専門性 とファシリテーションスキル、そして若手の分析力が総合力と なって実を結んだものです」と。 「全社戦略展開プロジェクト」は、売上高増加、コスト
削減、品質向上、リードタイム短縮、企業文化変革等あ らゆる目標の設定と展開を推進するが、IOT では初年度、 加工費削減だけに焦点を当てたことになる。加工費削減の 予算レベルに上積みしたチャレンジングな目標を掲げ、そ れをやり遂げることが確実になるところまで来た IOT だ が、この 1 年は現状の問題解決に取組んできただけだと課 題意識は高い。今後は、現在の「問題」だけではなく、さ らに高度な目標を掲げ、中・長期的な「課題」に取り組ん でいく目標を立てているという。 Madnack 氏は「1 年かけてこの活動を我社の血肉にし てきましたが、さらにこの体質を強化していくために、 JMAC の力も借りながら、まだ手を付けていない、品質、 リードタイム、在庫、企業文化の変革などさまざまな課題 に取り組んで行きたいと思っています」と語る。 セイシェルでのプロジェクトの成功を受け、同じプロ ジェクトが今年 3 月からガーナのグループ会社でも始ま り、泉本も石田も 30 時間以上かけて一月置きに現地に赴 く。さらにバージョンアップした IOT の「全社戦略展開 プロジェクト」と他のグループ会社への展開が楽しみだ。
﹁左脳﹂と﹁右脳﹂ の両輪を駆使し た取組みが確実 な 実 行・ 成 果 へ とつながる!
担 当 コ ン サルタントからの一言
「戦略」と「オーナーシップ」
私が戦略コンサルタントになった 18 年前、戦略をオーナーシップと結び付 けようという人は少数でした。戦略という領域は、長く「左脳」が支配して いた領域だと思います。つまり、データ、ファクト(事実) 、論理、これら が戦略の領域でいつも繰り返し強調されてきました。しかし、ここ数年、感 情、 イメージ、 モチベーションと言った「右脳」領域に触れること無しには、
戦略執行は不可能だと思っています。 IOT の Madnack 社長が、 「このプロジェクトが成功してい るのは、 オーナーシップがあるからだ」と語った時、 私の思いが通じたと確信しました。オーナーシッ プとは、人の為でなく自分のためにやるんだという強い意志の表れと言えるからです。右脳と左脳 の結合(マリアージュ)があってこそ、戦略は確実に執行されるのだと私は考えます。
チーフ・コンサルタント
泉本 保彦
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ことを大切 JMAC では、一人ひとりの「意」を「育てる」 す。 いま んで にしています。これを「iik 塾」とよ タントの「意」 このコーナーでは日々奮闘する若手コンサル を様々な視点でご紹介します。
(い いく)塾 i ik
多様性の受け入れ方
私は人材マネジメントを専門領域と していますが、近年は特に「ダイバー 」 シティ・マネジメント(以下、DM ) に関心があり、自身の重点研究テーマ としています。 私がそうした考えを持つに至ったの 「多様性 の国」イ ンドのあ る IT 企 は、 業の事例を知ったのがきっかけでした。 インドでは今も現実として身分差別が なくなってはいません。しかしそのよ うな中において、ある IT 企業では「一 切の身分差別を行わない」という方針 を掲げ、実力重視で採用や配置・処遇 を行い、職場でも社員同士が身分を意 識することなく協力・協働していると いうことでした。 企業の内部では社会と明らかに異な る価値観(身分ではなく実力、対立で はなく協調、断絶ではなく統合…など) が重視され、そこで働くすべての人に 影響を与えているはずです。そして同 様の方針を掲げる企業が増えることで 徐々にその価値観が社会に広がってい く…そのように考えた時に、企業経営 のコンサルタントとしてDMに取組む 意義が一層明確になりました。 自分の仕事や取組もうとするテーマ
人づくり推進センター
大久保 秀明
と「他者・社会とのつながり」が見え た時に“ 意”は生まれるのではないか と日々実感しています。そのためには “自身の関心を外に開いておくこと”が 必要であると考えます。 仕事以外の場でも視野を広げる出会 「自分 いや気づきがたくさんあります。 だけの狭い世界に閉じこもらないよう に」行動範囲を広げ、自分の“意”を 育てていきたいと思います。
深と新 鳥瞰的視点を養う
SCM 革新センター
加藤 修之
私のコンサルタント信条の1つとして、 「クライアントか らのオファーは、可能な限り受ける」というポリシーがあり ます。もちろん、JMAC は総合ファームのため、あらゆる していく方法を取っています。 弱みを補強するためには、コンサルティング知見を集めた
伸ばしていくイメージです。具体的には、クライアントと調 査テーマに近しい領域でのディスカッションの場を公式・非 公式に持ち、自身の知見の強み弱みを肌で感じ、弱みを補強
その信条を守るために、営業・物流…といったコア領域を 軸に、あくなき領域拡大を目指しています。コンサルティン グ実務で得た知見を基盤として、周辺領域にじわじわと手を
経営課題の解決に取組みますが、私の信条はそういった意味 ではありません。個人としてのスキル・知見の限界の壁を自 ら作ってしまうことが私自身許せないということです。
よ!」と冗談が言えるような、広い知識と深い知見を持った コンサルタントを目指しています。
し、横串を通して乱読する方法をとります。本から得られる 知識は表層的ですが、横串を通すことで、共通する原理原則 が読み取れるため、効率的なエントリー方法と考えます。 「お望みは何でもできますから、僕と契約してください
社内データベースを読み漁り、時には、忙しい先輩を捕まえ て教えてもらっています。特に、ある領域を新規拡大する場 合は、大型ビジネス書店で関連書籍のある棚を一棚全て購入
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- J MACイベント開催報告
日本能率協会コンサルティング (JMAC) 関西オフィスは、 本年開設 10 周年を迎えることになりました。そこで日頃
関西オフィス 開設 10 周年 記念講演会・交流会
らびに交流会を開催いたしました。当日は関西企業を中心
の感謝の気持ちとして 10 月 29 日(火)に記念講演会な
第5回 KI エキスポ 2013
21 12
に 120 名を超える皆様にご参加いただきました。
講 演 会 は︑ J M Aホ ー ル ディングス代表取締役社長 秋山守由の開会挨拶からス タートし︑関西の老舗企業で ある森下仁丹株式会社代表取 締役社長 ﹁創 業 1 2 0 年 進化し続け る老舗企業の改革﹂と題した 基調講演をいただきました︒ 最後にJ MAC代表取締役 社長 鈴木亨と常務取締役 渡辺高志より︑経営革新の視 点について関西企業の事例な どを交えながらご紹介いたし ました︒ その後の交流会では参加者 の積極的なネットワークづく りの場になり会場は大変な熱 気に包まれていました︒ J MAC関西オフィスは関 西圏の企業の皆様の経営革新 を ご 支 援 し て ま い り ま す︒ 今 後とも︑よろしくお願いいた します︒ ︻本件に関するお問い合わせ︼
株式会社日本能率協会コンサルティング
今 回 で 第 5 回 を 迎 え る ﹁ K Iエ キ ス ポ ﹂ は ︑ 2 0 1 3 年 月
日︵火︶名 古 屋 を 皮 切 り に︑ 月
月
日︵金︶神 戸︑
日︵木︶東 京 で 開 催 し︑ 2 0 0名 を 超 え る 皆 さ ま に ご
参加いただきました︒
駒村純一様より
事例発表企業の方々から は︑ ﹁日 常 業 務 を ス ッ キ リ さ
ンいただき ﹁ワイガヤ﹂ の体験
も し て い た だ き ま し た︒ 講演
せ︑次に向けた動きへの余裕
後の懇親会では参加者の皆さ
を生み出す﹂活動を推進する
ま同士︑引き続き ﹁ワイガヤ﹂
ご苦労や︑活動の歯車が回り
で積極的に意見交換をされて
始めたきっかけ︑組織がどう
いらっしゃいました︒
変化したかなど具体的なエピ
ソードを交えお話しいただき
ました︒ また︑ 基調講演では経
︿特別講演︑事例発表企業﹀
営トップの視点から﹁自ら考
名古屋会場
え行動する組織﹂ への変革や︑
ヤマハ発動機株式会社︑ 株式会社メイテツコム
人 材 育 成 へ の 思 い︑ボ ト ム
特別講演
アップ活動へのトップの関わ ました︒
株式会社メイテツコム 取締役社長 日比 喜博氏
り方などをお話しをいただき
神戸会場
それぞれのお立場からの具 体的な講演内容に︑参加者の
ヤマハ発動機株式会社︑ 積水化成品工業株式会社︑ 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ関西
特別講演
方々からは多くの質問も出
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ関西 代表取締役社長 藤井 浩司氏
て︑自社の取組みのヒントに きました︒
東京会場
なったという声を多数いただ
経営コンサルティングカンパニー 関西オフィス
TEL 06‑6346‑7055 FAX 06‑6346‑7056
発表の合間には︑テーブル 毎 に 講 演 に 対 す る 質 問︑自 社
ヤマハ発動機株式会社︑ NTTデータ及びグループによる パネルディスカッション︑ オリエンタル酵母工業株式会社︑ クオリカ株式会社
特別講演
の現状などをディスカッショ
TIS株式会社 特別顧問 藤宮 宏章氏
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- nformation
編集部からの耳より情報
JMACトップセミナーのご案内
〜経営革新を推進する先人から学ぶ〜
2月14日 開催
(金) 2014 年
「JMAC トップセミナー」は、 JMACと経営トップ層を繋ぐ本誌にご登場いただいた経営トップの方々を講師にお 招きし、実際に改革を断行していく苦難や成功体験をお話いただく経営トップ向けセミナーです。 今回は、本紙の TOP MESSAGE にご登場いただいた、 富士ゼロックス株式会社 代表取締役社長 山本忠人氏をお 迎えし、 「 『言行一致』でお客様の新たな価値創造・課題解 決へ」と題し、お話しいただきます。 山本氏のお話しを、直接お聞きするチャンスです。ぜひご 参加下さい。
15:00 〜 18:30
東京プリンスホテル
定 員:50 名(お申し込み順) 対 象:経営トップ層、部門長の方々 参加料:10,500 円(税込) ※参加者交流費を含む
http://www.jmac.co.jp/service/event/
あなたの選びが未来をつくる変革を志す人のカンファレンス
KAIKA Conference
グ ル ー プ 企 業 の 日 本 能 率 協 会(JMA)で は、 1982 年より昨年まで 32 回「HRD JAPAN(能 力開発総合大会) 」 を開催してまいりました。 そして、 今回より HRD(人事・人材開発)領域にとどまら ない「KAIKA カンファレンス」として新たなスター トを切りました。今回の「KAIKA カンファレンス」 では、JMAC のコンサルタントが、無料講演の講 師と、セッションのモデレーターを努めます。是非 ご参加ください。
会 期 会 場
無料講演
■2 月 21 日(金)
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人材・組織開発コンサルティング事業本部長 伊藤 晃 「人と組織が目覚める JMAC.D.C(ダイヤモンド・サイクル) 」
モデレーターとセッション内容
■2 月 19 日(水) 「人・組織を活性化させる人材育成」
W8
人材・組織開発コンサルティング事業本部 チーフ・コンサルタント 村上 剛 「ビジネスに貢献する HR の役割」
■2 月 20 日(木) 「グローバル化時代に求められる経営と組織のあり方」
219
月
(水)
日
東京コンファレンスセンター・有明
21
(金)
日
T7 T8
人材・組織開発コンサルティング事業本部 KI センター センター長 中村 素子 「プロジェクトを成功させるのに必須のオーガナイズ機能・人材」 経営企画室 室長 シニア・コンサルタント 小笠原 一洋 「競争力のある企業の本社力を問う」
Business Insights は 2003 年 9 月に創刊し、今号で 50 号という節目を迎えることができました。 これもひとえに快く インタビューをお引き受け下さいました経営トップの皆様や、事例企業の方々のご協力があってのことと改めて感謝申 し上げます。 そして、 読者の皆様には時に厳しく、 時に温かいご意見をいただきお礼申し上げます。 これからも皆様の経営 革新や価値創造に向け、 さらにお役に立てる紙面を目指し変化し続けてまいります。
Business Insights
Vol.50
2013年 12月 発行
編集長:大石 誠
編集:石田 恵、井上 美和子
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