ビジネスインサイツ50
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じゃないかなと。空調の存在を感じさせないのに、非常に 快適な空間が保たれている。それを住宅で実現することを 考えたらどうだろうと。そこで住宅とホテルの空調は何が 違うのか実際に見に行こうという話になったんです」 サーキュレーション気流は今回のプロジェクトのキーで あり、 「快適の素」に違いない。だが、 一つネックがあった。 それは機能上、従来のエアコンに比べて厚みが出るという
チーフ・コンサルタント 近藤 晋
トさせました。そして侃々諤々の議論を重ねるうちにメン バーは能動的に動きだし、 『目標達成のためにこれがした い!』と各持場が意志を出し始めたんです」 (岡本氏) こうして粘り強く働きかけることで、部署の垣根を越え た信頼、協力関係が芽生え、プロジェクトは同じベクトル で動き出したのである。
点だ。コンパクトなデザインが主流になる中、逆行するデ ザインで果たして、その機能の価値をお客様に受け入れて もらえるのか。 実際に家電量販店の店頭や住宅に取り付け、 顧客の反応を確かめた。 「初めて見た人は、最初我々が抱いたのと同じように厚い というイメージを持たれました。しかし、機能性など総合的 に判断すると次第に魅力を感じてくれるんですね。営業最前 線の担当者や我々開発者も同じでした。ただ、最終的にこの デザインだから買わないと意見をいうのは他でもないお客様 なので、 実際にお客様に見て頂いて、 その反応で決めようじゃ ないかと。 」 (岡本氏)その商品の良さが伝われば、厚み寸法 自体は重要ではない。丁寧に説明すれば、機能の良さが伝わ るはずだ。こうして集まったメンバー皆が持っていた一抹の 不安は“売れる”という確信へと変わっていった。
厚み寸法自体は重要でなく、 その形状が提供する商品価値が 伝わるデザインが重要!
また、並行して取組んだのがユーザー視点だ。 「うるさ ら7」 プロジェクトの中のコンセプトのキーでもある 「サー キュレーション気流」について、岡本氏はあるエピソード を語った。 「ある日、女性のマーケターが突然計測器を渡すんです。 本当に気持ちいい環境はどういうものか、高級ホテルに泊 まって体感してきてくださいと」この体験は岡本氏に新 たな気づきを与えたという。 「気持ちいい環境」とは住宅 の性能も、体感する人自体も変わる中、今までの自分た ちの概念と変わってきているのではないか。 「やはり現場 ですよね。モノづくりで現場と言えば、まずはラインが思 い浮かびますが、それ以外にも現場があるということを JMAC に教えてもらいました。つまり、解決したい課題 の“現場”はどこかという話ですよね」 商品を購入するか、付加価値が高いかを決定するのは顧 客自身。だから、 「お客様の現場」 に行く必要があるわけだ。 近藤は振り返る。 「コンセプトワーキングの中で、サー キュレーション気流で実現しようとしているものは何なの か随分話し合いました。結局行き着いたのは『空気質にこ だわりたい』という点。では一番空調が効いていて、快適 なところはどこかというと、高級ホテルのロビーや、部屋
3 年越しの知恵が結集! ついに「うるさら7」発売
2012 年 11 月 1 日、ついに「うるさら7」の発売日が決 定する。そして、10 月 11 日からの生産開始を目前に控え た 9 月初旬、100 台のパイロット生産が実施された。テス トラインが動いたその日、工場内にアナウンスが流れた。 通常パラパラと数人が集まってくるのだが、この日は製作 所内の人がぞくぞくと集まり人垣が出来た。それぞれの現 場が出した知恵が結集された製品を一目見よう、自分達の 出した仕様がどこに活かされているのかと沸き立った。生 産ラインを前に、当時の工場長の岡田氏はメンバーにねぎ らいの言葉とメッセージを語った。その目には光るものが あったという。岡本氏自身もいつもながら、もらい泣きし てしまったのであった。 さらにこの日、急遽「 『うるさら7』1 号機を囲み、関 係者で皆で記念撮影をしようという話になったんです。そ うしたら、予想以上の人が押し掛けてきて。役員会で来て いた役員さんにも入って頂いて、全員で写真を撮ったんで
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