ビジネスインサイツ54
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「第 15 回開発・技術マネジメント革新大会」より
将来像
(以下PL)育成施策が2007年からからスタートした。こ れは実践型のオン・ザ・プロジェクトトレーニング(On the Project Training)として、受講生たちが日常業務の中 で実際に取り組んでいるプロジェクトテーマそのものに フォーカスして行っている。 当初はPLが技術者、SE、営業などのメンバーをいかに 巻き込んでいけるかを課題として、プロジェクト全体を うまく推進できる「骨太の人財育成」を目指していた。 しかし、最近は「ゴールを正しく見定めて、そこに行き 着くためのストーリーを自分なりに考えているかが重要 だと思っています」と語る森氏。「現在の施策そのもの も大事ですが、将来の技術人財像を考えた時に、ただプ ロジェクトを推進する腕力的な力だけでなく、目標や目 的をどう実現するか、そこに行きつくまでのストーリー 全体を考える力を付けなくてはならないと思いました。 その中で、色々な問題が見えてくる。そこに適切な処置 を考え、順番を間違えずに適したタイミングを見て打っ て行く。これは、医療と同じだと思うんですね。お医者 さんは心臓に聴診器を当てて変だと思っても、すぐに薬 を投与しません。血圧測定、血液検査を始め、各種の検 査を経て原因を探り、因果関係をトータルでしっかり捉 えて適切な手を打ちますよね。そういった鳥瞰的な視点 と、打ち手のストーリーというトータルで考えて実行す る力が必要だと思うのです」。 一方、渡部はPL育成施策の8年間の支援の中でその内容 も変化しているという。「当初はHOW中心で、どう目標 達成するか、お客様の要求をどう実現するかといったと ころに重点を置いた支援をしていました。ビジネス環境 の変化とともに、HOWだけでは目標が達成出来なくなっ て、WHATやWHYが増えています。顧客の要求をどう 実現するか、これからは新たな付加価値を創っていくこ とが求められますので、それに合わせてPL育成の内容も 変化してきています」(渡部) ストーリーづくりとは、複数ある施策をトータルで見 て俯瞰し、施策と施策の間をつなげてこそできる。そう 考えた森氏は「つなげる」を人財育成における重要な キーワードと位置づけている。そして、将来あるべき技 術人財像をつくりだすため、「PL育成施策」、「新規事 業立案研修」、「コーチング活動」、「設計体質改革活 動」の4つを施策の柱として推進してきた。それが、 2014年度上期に意外なところから成果となって表れた。
将来の技術人財像
・将来技術と既存技術を ・保有技術と他社技術を ・設計技術と生産技術を ・機能と機能を 重点課題 ダイレクト 人財育成施策 ベース
・社内と外注先を ・上層部と担当者を ・目標と手段を ・ありたい姿と現実を
つなげる人
つなげる人
新規事業 立案
プロジェクト リーダ育成
コーチング 活動
設計体質 改革
人財開発機能
全社の小集団活動の事務局も務める森氏だが、製造部門 の牙城と思われたこの活動において、設計部門が製造部 門を上回る成果を挙げたことだ。1年前、製造部門の部 会に組み込まれていた設計部門を切り離す試みに懸念す る声はあったものの、単独の部会を作った森氏は、「多 品種・非量産の開発・設計部門が、職場単位、グループ 単位で集まるのも大変なのに、本当によく頑張ってもら いました。感謝しています」と心から喜んでいた。
スキルと経験の次に必要なもの それは適切な着眼点を持つ能力
顧客から求められていることの変化にあわせて、HOW からWHAT、WHYへとPL育成施策の内容も変化する中、 「スキルや経験に加えて、適切な着眼点を持って判断し、 実行する能力が必要になってきた」という森氏。「社内に は無い新たな着眼点については、やはり外部の力を借りな いとできないところですね。そういうときには、渡部さん の外からの視点、考え方で意見をもらえると、自分達には ない視点をもらえますし、視野が広がります」(森氏) これに対して渡部は、「新しい着眼点というのは、たとえ ば何か開発テーマを決めるときに、経営戦略、技術トレン ド、他社動向などから考えることが多いのですが、『他社ト レンドに打ち勝つものを造ろうよ』ではなくて、『そもそも 世の中にないものを創っちゃおうよ。そうしたら競争なんて 起きないよね』みたいな、そういう一言が言えるかどうかで すよね。そこが我々第三者が関わるポイントですし、実践型
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