ビジネスインサイツ54
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リーダーに必要なのは ﹁揺るがぬ信念﹂ だ
〜リコーの未来を変えた﹁構造改革﹂〜
TOP MESSAGE
株式会社リコー 代表取締役 会長執行役員
近藤 史朗
06 BUSINESS ON VALUE
ダイナパック株式会社
「包む」の未来を創る
10 Human&Organization
株式会社日立国際電気
現場目線で「人」を育てる
14 Asianization
パナソニック株式会社
アジアから世界へ−勝ち残る工場をつくり出す
18 iik 塾 20 顔
- 第1回 新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ前監督
ギャオス内藤氏
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毎回、革新、成長を続けている企業のトップに 経営哲学や視点についてお話しを伺います。 インタビュアー:JMAC 代表取締役社長 鈴木 亨
〜リコーの未来を変えた「構造改革」〜
リーダーに必要なのは 「揺るがぬ信念」だ
株式会社リコー
内向きの仕事をやめて、 外に行きなさい
鈴木:近藤会長はもともと技術者で、御社がアナログ複 写機をデジタル複合機へと転換させたときの技術・製品 革新の牽引者としてリーダーシップを発揮されてきまし た。技術者である近藤会長が経営のトップに就任された ときの心境の変化や決意をお聞かせください。 近藤:企業は、利益を上げるためにいろいろな指標を設 定し、管理しがちですが管理は最低限にすべきだ、とい うことが技術者時代の率直な印象でした。 私自身、ひとりの技術者として、そしてその後にデジ タル商品開発の総責任者としていくつかの事業部を統括 してきた中で身を以て感じていたのは、組織は大きくす ればするほど、動かなくなり、効率が悪くなるというこ とです。社内管理のための仕事ばかりが増え、顧客価値 を生み出す仕事ができなくなってしまっているというこ とですね。効率よく組織を運営するためには、管理では なくて随所にリーダーを配置して任せることが大切であ ると学びました。 この経験から、社長就任前より管理のために膨大なエ ネルギーが使われ、利益を生まない内向きの仕事ばかり
していることを、なんとかやめさせなければいけないと 強く感じていました。実際に私が社長に就任したときの 第一のメッセージ「内向きの仕事をやめて、外に行きな さい」には、このような思いが込められているのです。 企業はトップの考え方、やり方ひとつでどんどん内を向 いてしまうのか、外向きにパワーを出していくのか大き く変わります。まずはトップからのメッセージの発信が 非常に大事だと思います。
世界的な景気後退をきっかけに 仕掛け直した構造改革
鈴木:まさに内向き指向の社内を外向きに変えていくと いう思いを持って社長就任以降様々な活動をされたと思 いますが、就任当時の御社の状況はどのようなものだっ たのでしょうか。 近藤:2007年度は過去最高となる1,800億円を超える営業 利益を生み出し、かなり好調でした。しかし、実状は為 替に助けられていた部分も大きかったのです。グループ の収益を支える新規事業がなかなか育たない状況で、国 内外での業績の先行きにも不安があり、内向きの施策で 効率をあげようという体質になってしまっていました。
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創 立:1936年 2月6日 資 本 金:1,353億円 (2014年3月31日現在) 従業員数:108,195名 (2014年3月31日現在) 主な事業内容: M FP(マルチファンクションプリンター)、複写機、 プリンター、プロダクションプリンター、サーマルメディア、 光学機器、半導体、電装ユニット、デジタルカメラ等
株式会社リコーは 1936 年、理研感光紙株式会社として 設立。複合機、IT サービス、カメラなどを中心に世界 200 ケ国以上で地域に密着した事業活動を展開してい る。2007 年4月、株式会社リコーの社長に就任した近 藤史朗氏は、その直後からグローバルな構造改革に着手 する。また一方で、長年培ってきた画像事業を核に新た な展開を推進している。その改革のご苦労や新規事業開 発の考え方をお伺いした。
代表取締役 会長執行役員
近藤 史朗
利益水準を維持、向上させていくためには、「今を稼 ぐ販売と未来に稼ぐためのマーケティングの立て直し」 が喫緊の課題でした。実は社長就任当初から販売をはじ め、開発、生産、本社部門と多岐にわたる構造改革プロ ジェクトを複数走らせましたが、一見すると従来の水準 に比べればかなりの利益が出ている状況ですから、現場 はなかなか動かなかったですね。 そこに2008年のリーマン・ブラザーズ社の破綻に端を 発する世界金融危機が起こり、その後業績が大きく悪化 しました。これは大変なことでしたが、この危機意識を 改革のパワーへと変換するのは今しかないとも思いまし た。ここから、一人ひとりの意識や推進体制を変えて大 構造改革を再スタートさせたのです。
しました。米国ではそれまでにも1995年のセービン社を 皮切りに、レニエ社、さらには世界中に事業を展開して いたIBM社のデジタル印刷事業も買収しました。 買収を繰り返して複数の会社を1つにまとめたため、買 収後のマネジメントには大変苦労しましたね。当時の米 州極の販売統括会社には多くの組織階層が存在していた ため、マネジメントが健全に機能しませんでした。 買収した海外企業のマネジメントや、ITシステムや業 務プロセスを統合して効率をあげていくことを考えたと き、やはり現地のことは現地の人間にしっかり任せなけ ればならないと感じました。そこで、当時カナダの販売 会社の社長を米州極の販売統括会社のCEOに抜擢しまし た。先に述べた多階層も随分とスリム化され、マネジメ ントはスピーディーに機能するようになっています。 アイコン社に関しては、買収後の統合に多くの労力を 費やしましたが、リコーグループへの融合によってシナ ジーが増大し、現在では安定した収益をあげています。 一番大切なことは収益力を保てるかということです。い つまでも同じ土俵で同じ戦い方をしていては厳しい価格 競争に巻き込まれてしまいます。 こうした買収を通じて、とても多くのことを学びまし た。
Shiro Kondo
グローバルで構造改革 経験を多くの学びに
鈴木:2008年に体制を変えて構造改革を再スタートされ たということですが、具体的にはどのような改革をされ たのでしょうか。 近藤:グローバルでは販売体制を強化するため、2008年8 月に世界最大の事務機器販売会社、米アイコン社を買収
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販売担当者の 「直行直帰」を推進
鈴木:なるほど、米国での販売体制はそのように強化し ていったのですね。国内では「販売のリコー」と言われ ていますが、どのような改革をされたのでしょうか。 近藤:日本は米国に先がけて販売の改革に取組んでいま した。当時も強い販売力を維持していたのですが、利益 が思うように増加しないという状態が体質化していまし た。2008年7月には国内に40社以上あった販売会社を7社 に統合、さらに2010年7月にその7社を「リコージャパン 株式会社」のひとつに統合しました。統合による効果は 大きいものの、内部管理の仕組みや業務プロセスが複雑 になるといった弊害もありました。 経営の統合のみならず様々な業務プロセスにも手を入れ なくてはならないと改革に動き出しました。例えば、「売 れる販売担当者ほどお客様のところに行けない」という矛 盾した実態が見えてきたのです。それは、業績管理や受発 注をはじめとした業務が多く、管理のための内部コストと 時間が発生するということです。販売の基本機能は、お客 様を訪問し困りごとをお聴きしてその解決策を提案するこ とですから、「利益を生まない仕事はやめなさい」と販売 部門の会議などにおいて繰り返し指示しました。そこに集 まった販売担当者からは拍手が起こりました。販売の現場 ではそれほど困っていたのだと思います。 また、2011年の東日本大震災後の電力不足による節電 活動をきっかけに「販売担当者は直行直帰しなさい」と メッセージを出しました。効率化を図ることもあります が、電力が不足しているなかで働き方を変えることは、 新たな顧客ニーズへの気付きにもなります。お客様視点 での販売活動の強化を目指しました。 こうした改革により、国内の販売も活力を増し、リ コージャパンの収益性はかなり改善してきました。 鈴木:これからも世の中はどんどん変化して、仕事のや り方も変わってくると思いますが、新規事業に対する近 藤会長の思いや今後の方向性をお聞かせください。 近藤:今手掛けているものの一つは、カメラ技術を応用 した事業です。その中でも、FA(ファクトリーオート メーション)と車載に力を入れています。例えば自動車 業界では、ドライバーに対する知覚・行動支援を行う機 能が標準装備となりつつありますが、私たちもこうした モジュールを開発し、一部自動車メーカーにおいて採用 がはじまっています。リコーグループの技術を活かし、 異分野の技術とも融合しながら開発を進めていますが、 事業を拡大するチャンスだと思っています。 このほかにも、画像機器開発で培った技術を使って 様々な展開をはじめています。例えば、光学、画像処 理、センシング技術を応用して、農業やセキュリティ分 野での事業機会を探索しています。 また、現在では、ユニファイド・コミュニケーション・ システム(UCS)というテレビ会議システムを使って多拠 鈴木:国内外の販売強化のほかにも、人事の改革も行った と伺っています。具体的にはどのような改革をされたので しょうか。 点と連携して仕事ができるようになってきています。これ は自分たちで実際に使用しながら商品開発を進めていま す。私たちが有効性を体験しないと、その良さをお客様に 近藤:人事システムに手を入れました。従来の上司から部 下への期初に設定した目標の達成度合いやその取り組み方 に関するフィードバックに加えて、2012年からは、部門全体 で調整した最終的な評価ランクも伝える仕組みを作りまし た。この仕組みにより、上司と部下とのコミュニケーショ ンの中で、今までになかった気づきや、もっと成長しなけ ればならないというマインドが生まれたと思います。 改革では軋轢も生まれましたが、「働いた人に報い る、がんばった人により一層報いる」というシステムに することで、個人と組織の能力はもっと伸びると思って います。まだ改革は過渡期ですが、社内の研修では、こ れをチャンスだと思って欲しいし、こんな仕事をした い、とどんどん手を挙げなさいと伝えています。 グローバルでの競争においては、一人ひとりの能力を さらに高めなければなりません。そのためにも必要な改 革だと思います。
コア事業の周辺領域で、 新時代の テクノロジーにチャレンジ!
「がんばった人により報いる」 人事制度に改革
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近藤 史朗
Shiro Kondo
1949年 1973年 2002年 2003年 2005年 2007年 2014年
新潟県生まれ 新潟大学 工学部卒業 株式会社リコー入社 上席執行役員に就任 常務取締役に就任 取締役 専務執行役員に就任 代表取締役 社長執行役員 CEOに就任 代表取締役 会長執行役員に就任 は、数年、数10年先の未来のために研究をしているのです から、常に「未来起点で仕事をしなさい、君たちが未来の 価値を決めるんだよ」と言っています。私は、経営に一番 大事なのは、この10年先、数10年先の未来を見据えた長期 視点を持って判断することだと思っています。
伝えられないですからね。企業は、社会の役に立ち、その 存在を認められなければ価値がないことは、言うまでもあ りません。そういった価値を創り出していくために、「自 分たちのコア事業や技術の周辺領域にどんどんチャレンジ していく」ということを基本的な戦略にしています。 また、お客様や社会の役に立つ価値を創造しつづけるた めには人と人とが、直接コミュニケーションを取ることで 起きる化学反応も非常に大切です。そのためのツールやデ バイスも創っていきたいと思っています。世の中は「モ ノ」から「コト」へと、サービスの利用といった価値へ消 費が移行していると言われていますが、「モノ」「コト」 両方を理解してこそ新たな創造ができるのだと思います。 だから、リコーはさらに「モノ」を強化し、「モノ」「コ ト」両方を極めていく努力をしています。
リーダーの条件、 それは「揺るがぬ信念」
鈴木:最後に、近藤会長から次世代を担うトップ、経営 幹部の方へ向けたメッセージをお願いします。 近藤:いつでも「等身大の自分」でいようとすることが 大切ですね。そうでないと、誰も自分に対して本当の意 見を言ってくれないし、胸襟も開いてくれません。そし て、何よりも経営者は「揺るがぬ信念」を持つことで す。構造改革は、まさにこの信念がなければ実現できま せんでした。信念を持つことで、みんな安心して一緒に 仕事をしようという気持ちになってくれますから。 また、「我慢強さ」も必要です。例え話になります が、私は趣味で野菜を育てていますが、最初は小さな2 枚の葉が顔を出します。これを雑草に勝てるまで大切に 守ってあげればあとは自分でぐんぐん育って行きます。 事業も人材育成も同じだと思います。最初にきちんと リードしてあげれば、あとは自分で伸びていくもので す。事業も人も育つには時間が必要です。 次世代のリーダーには、「揺るがぬ信念」と「我慢強 さ」、そして「未来起点」を持って自分の信じた道を突 き進んで欲しいですね。
ものづくりも経営も 「未来起点」が大切
鈴木:これまでずっと改革を続ける中で、様々なご苦労 があったと思いますが、近藤会長を牽引してきたもの、 一番根底にあるものとは何でしょうか。 近藤:それは仲間ですね。仲間に支えられてきました。社 内にも、OB/OGにも、家族にも「がんばれ」と言って 私を支えてくれる人がいて、その存在は大きいですね。 最近、みんなに「仕事を楽しめ」とよく話しますが、こ れは私の今の率直な心境でもあるのです。そして、技術者 には「顧客起点、競争優位、ルール変更をスローガンにも のづくりをしなさい」とも話します。商品開発をする人
鈴木亨の
対談を終えて
経
ひとこと
営者は孤独であると言われます。 しかし、 ひとりでは何もできません。 リコー の構造改革を牽引できたのは仲間の支えがあったからだと会長から伺いま
した。経営者はブレないリーダーシップを持つことが基本であると思います。それ と合わせて、人を惹きつける力、支えてくれる仲間を持てる人柄、これもまた経営 者にとって重要な要素であると改めて確信しました。
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〜競争力の源泉は現場力にある〜
「包む」の未来を創る
ビジネス成果に向けて JMACが支援した 企業事例をご紹介します。
ダイナパック株式会社
ダイナパック株式会社では、ものづくりの基本 である設備を知り、現場力を上げることこそ が、自社が強くなることに繋がるとの考えか ら、経営トップと現場が一体になった「設備効 率化活動」に取り組んでいる。この活動のきっ かけ、経営トップの思い、そして現場がどう変 わってきたのかをお伺いした。
取締役 執行役員 生産本部長
大山 英男
Hideo Oyama
生産管理グループ 担当課長
宮地 均
Hitoshi Miyachi
「包む」ことは同じ、 でもこんなに違っていた
ダイナパック株式会社(以下ダイナパック)は、大日 本紙業株式会社と日本ハイパック株式会社が 2005 年 1 月 に合併し、社名をダイナパックと改めて新たなスタート を切った。大日本紙業は 1962 年 8 月に設立、主に加工食 品の包装資材を提供してきた。また、日本ハイパックは、 1950 年 12 月に設立、電機・機械など工業製品の包装材と 緩衝材を提供していた。両社は同じ「包む」技術で戦っ ていた競合でもあるが、扱う業種が異なり、新たな市場、
技術を共にするメリットを生かした合併となった。 現在では、家電、自動車関連部品、加工食品、青果物、 OA 機器、IT など用途の幅広い顧客に、段ボール、印刷 紙器、軟包装材および紙製緩衝材などの包装資材の製造・ 販売を行っている。海外にも 7 事業所を持ち、世界中に 広がる生産と消費を結ぶ物流に携わる企業グループであ る。 製品の作り方や、設備に大きな違いはないものの、 「風 土や様々な仕組み、製造現場の教育には多少違いがあり ましたが、逆にそれは新たな気づきとなりました」とい うのは、 取締役 執行役員 生産本部長 大山 英男氏だ。 また、 製品の特性として「工業指定製品の梱包は、輸送状況な
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ど梱包に応じ種々のスペックを充たさなくてはならない オーダーメード型で採用までの難易度が高いのですが、 食品は大量生産ですので、納品後の品質、高速ラインの 中でも耐えられる品質が求められます。顧客からの要求 や納品後の求められる品質は全く違うものでした」と語 るのは、生産本部 生産管理部 生産管理グループ 担当課 長 宮地 均氏だ。 2人は現在、同社における「設備効率化活動」の推進 役として各事業所を率いている。 合併後から既に意識改革を目的とした改善活動を進め てきた同社だったが、宮地氏は、 「設備そのものを知らな い状況で、机上の技法をいくら学んで適用しても、本当 の原因は出てこないのです。改善活動のあり方自体をワ ンランク上げて行かないと、本物の活動にならないと感 じました」と語る。 今までの活動も重要だが、実際に設備のトラブルが発
習うより慣れろ!
土岐事業所での出来事が 活動の原点に
ダイナパックにおける 「設備効率化活動」 のきっかけは、 小嶋社長が土岐事業所にて導入している設備のメンテナ ンス講習に立ち会ったことがきっかけだった。この設備 は外部のメーカーより購入しているものだが、外部の設 備担当者を迎えて、オペレーターが実機で指導を受ける というものだ。この講習を見学した小嶋社長は、自社の 施設生産部門のメンバーのスキル不足に課題を持った。 設備でものづくりをする企業にも関わらず、このような 技能レベルで良いのか、 「三現主義」を大切にする小嶋社 長の素朴な疑問だった。 また、齊藤副社長も若かりし頃、TPM 賞受賞に向けた 活動で実際にメンバーとして現場に入った経験がある。 1990 年、日本ハイパック時代のことであり、本活動に向 けた原体験となっている。こうして小嶋社長、齊藤副社 長の活動に対する意見が一致したのである。 このことについて、大山氏も同様の考えを持っていた。 「私がまだ若く現場にいた頃は、スパナや金槌を持って自 分達で機械を分解したものです。この繰り返しによって 設備の機構などを自然と理解して行きました。今は設備 そのものが高度化し、さまざまなセンサー類などが搭載 されることもあって、自分達の手では分解する機会すら ないのです。一方で、顧客の製品に対する品質要求は高 まっており、良いものづくりのためにも、設備を知るこ とはとても重要なことだと思いました」 という。 こうして、 一からものづくりの基礎を強化するため、自主保全がで きるようなスキルと意識の改革を目指した活動がスター トしたのだった。
生した時はその現象を自らの目で確認し、なぜそれが発 生したかの原因を追究して、そのメカニズムを理解する ことが大切である。まさに、三現主義の取組みである。 そこで同社は、より実践的な活動に向けて 2012 年末JM ACに声をかけたのだった。 相談を受けたJMAC チーフ・コンサルタントの芝田 邦夫は、ダイナパックの工場を見学しオペレーターの設 備に対する関心が薄いと感じた。 「たとえば、 設備の清掃・ 点検・給油チェックシートには『異常なし』となってい ますが、実際の設備をみると、紙粉やインクの飛散や堆 積があったり、部品の摩耗、曲りやチェーンの緩みなど が見受けられました。 どれも小さな事象ですが 「異常なし」 と判断する状態ではないと思いました。現場の実力とは このようなところに現れるのです」 (芝田) 。こうして、 同社の国内に8工場のうち、まずは4工場をモデル工場 として、現場のオペレーターの意識を変えること、保全 レベルを上げることを狙いとした活動に取組んだ。モデ ル工場の取組みやノウハウを全工場に推進することを視 野に入れたマスタープランを作成し本格的な支援がス タートした。
▲チーフ・コンサルタント 芝田 邦夫
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課題解決のためにどうすればよいか、どのような手順で 進めるべきかについては、皆さんで考えてもらうように しています。答えを出すのは簡単ですが、それでは自主 性には繋がりません。自分達で答えを出すのは苦しく、 難しいことですが、それが血肉になるのです」コンサル タントによる指導は月2回行われるが、1回目の指導か ら2回目の指導までの期間が、まさに職場が自主的に考 える大切な時間だという。 大山氏は「生産量が多く忙しい職場では、活動への時 間が取れないという声も良く聞きます。ただ、最近はそ
コンサルタントの芝田が指導、 現場の基本は「整理・整頓」から
のような中でも、5 分 10 分となんとか時間を作り活動を している声も聞かれます。忙しいからやめるようであれ ば体質強化には繋がりません。そういう意味で JMAC の コンサルタントの指導は、職場の状況に応じて上手に接 していただいていると思います」という。
自主自律型な取組みで現場の 「意識」と「スキル」に変化
2013 年 2 月からスタートした「設備効率化活動」は、 今年2年目を迎え全8工場に展開しているが、大山氏、 宮地氏共に現場の変化を感じている。大山氏は「今まで インクを使う工程はどこの工場に行ってもインクの飛散 が課題でした。これまでの対策はいずれも飛散防止のカ バーをする改善内容でした。それがある工場で、発生源 に遡って装置そのものを変えた工場が出てきたのです。 供給量、排出量を計測して、自分達で材料を購入し、ノ ズルを切って、 穴を空けて、 そんな改善が出てきたのです。 とても感心しましたし、意識や姿勢が変わってきたなと 実感した出来事でした」と語る。 また宮地氏は「今まではオペレーターはものを作る人、 施設課は修理をする人でした。この活動を通じて、オペ レーターには自分達の設備は自分達で直すという意識が 出てきました。今では設備のメンテナンススキルについ て貪欲に吸収しようとしています。施設課のメンバーは、 予防保全や改良、専門保全といったワンランク上の取り 組みを目指しています。高度化する設備のメンテナンス に対応していきたいという意識に変わってきています」 とその変化を語る。 このような変化について、シニア・コンサルタントの 寺田 厚は、 「指導で大切にしていることは、何を見るべ きか?何を考えるべきか?を考えてもらうことです。大 きな方向性やコンサルタントとしての知見は伝えますが、
現場力を上げるポイント
① 基本的活動を3現(現場、現物、現実)主義で実践する ② 改善活動を継続していく。 「継続は力なり」 ③ 事後対応から予防的活動へと移行させる
経営トップと現場の 二人三脚
本活動は、3ケ月に1回、活動内容を評価する診断を 開催し活動の工夫点や成果を発表する場を設けている。 その場には、 他事業所の部長クラスだけでなく、 小嶋社長、 齊藤副社長など経営トップも積極的に参加している。宮 地氏は「現場にとっても経営トップと直接コミュニケー ションが取れることは、メンバーの動機づけに繋がって いると思います」という。 「これまでは職場単位での業務 の壁、 意識の壁があったと思いますが、 この活動を通じて、 グループ間のコミュニケーションが増えて部門の枠を超 えた活動も見られます」と大山氏。 今回の「設備効率化活動」は普段の仕事を通しては見 えてこなかった、アイデアを持った人材、技能やスキル を持った人材が率先して活動を引っ張り、後押している 一面も見られるという。そういう人材の存在にも気づか された活動にもなっている。
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同社は、現在も顧客に差別化した提案を行っているが、 今後、更に新たな提案力の強化を目指していく。そのた めにも、設備マン、保全マン、オペレーター、現場の底 上げがあってこそ、さまざまな提案が可能になるのだ。 宮地氏は「今は基礎を固めている段階です。これからは、 ボトムアップでどんどん意見が出てくるような現場に なってもらいたいですね」と次を見据える。 大山氏は「一人ひとりが考えて、皆で汗をかき知恵を 出す。昔の現場はこうではなかったでしょうか。まだま だ個人が力をつけて行かなければなりませんが、現場の 意識はかなり変わってきています。良い方向に行ってい ると確信しています」と手ごたえを感じている。 コンサルタントの芝田は「各事業所の所長や製造部長 からは、ベテラン社員の保全スキルの伝承や、若手社員 への設備に関する教育などが一時期手薄になり、その状 態で現在まできているという声が多く聞かれました。こ れは、ダイナパックさんだけの課題ではなく、他の日本 企業でも見られる課題だと思います。将来の製造を見据 えて、オペレーターのスキルを向上させるために、じっ くりと継続的に腰を据えた活動を行う必要がある事業所 も多いのではないでしょうか」という。 同社は、中国とベトナムにも工場があるが、本活動の ノウハウを海外工場へ自分達で展開できるようになるこ とも視野に入れている。 きらりと光る中堅企業を目指し、製造現場一丸となって ものづくりの基礎を創る同社。 「包む」技術をベースに経営 トップと現場が一体となったダイナパックの活動は続く。 担 当 コ ン サルタントからの一言
設備の保全を自分達の手で行うオペレーターの方々
今回のテーマのポイント
1.オペレーターは、自主保全活動を通して、 基礎的なスキルを身に付けます。 2.管理職の率先垂範が重要です。 まず、管理職で自主保全のモデル活動を実施します。 3.専門保全部門は予備品の2 S (整理 ・ 整頓) 及び不具合対応 から実施し徐々に予防保全体制の構築へ移行します。
﹁なぜそうしなくては
アップを図りましょう︒
一緒に考えながらレベル
ならないか?﹂ をみんなで︑
全員参加で、現場力の向上を
ダイナパックでは、 設備効率化活動を、 全員参加の活動として進めています。 最近は、各社とも製造現場が以前と比べてかなりスリム化されてきており、 なかなか新しい改善活動に取り組む余裕もなく、これまでの状態を何とか 維持したいというところでしょう。ところが、単に維持であっても、それ をしっかりとした改善活動を経験していないメンバーに伝えていくことは 難しいです。 「なぜそうしなくてはならないか?」についての理解の深さが 異なるからです。以前に基準書は作ったが意味が良く理解されていないた め、 「誤って実行している。 」あるいは「義務的にチェックだけしている。 」 などという状況が見受けられることも多いです。活動を通して、考えても らうことで、理解を深めていくことが必要だと考えます。
シニア・コンサルタント
寺田 厚
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人と組織(チーム)の力を最大化することを目的にJMACが 支援した企業事例をご紹介します。
現場目線で「人」を育てる
〜「種まきと水やり」実践だからこそ人が育つ!〜
現場経験があって こそ感じた衝撃
株式会社日立国際電気は、2000年(平成12年)に、日立 グループの無線通信関連事業を手がけてきた企業3社(国 際電気、日立電子、八木アンテナ)が合併して誕生した。 以来、日立グループの一員として、3社の持てる力を伸 ばすとともに、そのシナジー効果を高めることで、通信、 放送、映像、半導体製造分野で新たな価値を創出し、安全 で豊かな社会づくりに貢献してきた。2014年3月期の業績 は、連結で売上高1,673億6,500万円、営業利益169億7,600 万円と、売上高営業利益率10%超を確保した。 同社において、合併前から現在に至るまで人財育成を 牽引してきたのが人事総務本部 人財戦略部 主管 森 邦夫 氏だ。もともと国際電気出身の森氏は、合併当時を「3 つの会社がそれぞれ扱っている製品、教育の中身、社風 や組織風土が全く違いました。例えば国際電気は縦構造 がはっきりとした会社、日立電子はフランクな社風があ り、八木アンテナはブランドをベースにした会社。そん なイメージがありましたね。合併とはこういう全く違う 風土を融合させなくてはならないものなのだと実感した 瞬間でもありました」と振り返る。 人財育成のエキスパートとして活躍し続けている森氏
であるが、意外なことに、入社当時の配属先は畑違いの 情報システム部門のプログラマーやSEを担当していた。 その後営業職を経て、経理で原価計算などの経験をした 後、自らの希望で1998年に当時の国際電気研修所で人財 育成に携わるようになる。2002年からは日立国際電気の 人事総務本部に統合となるが、 現場の困りごととその 解決策は、現場との会話を通じてしか分からない との 強い思いがある。
現場目線だからこそ 見えてきた課題
現場目線に近づいて人財開発に携わる森氏であるが、 人財育成に興味を持ったきっかけは、工場内の自衛消防 隊の指導者を経験したことだという。「元々会社の研修 にはあまり関心がなかった社員なのですが、自衛消防隊 の指導者を経験して、人を育てることの大切さを学びま した。また、仕事を通して現場との接点が多かったため 『本社の机に座っていては現場が何を必要としているの かが分からない』という思いから、工場に席を置かせて もらいました」という。 この仕事を数年続けた中で見えてきた実態がある。そ れは、人財育成が断続的になってしまっていたことだ。
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株式会社日立国際電気
座学だけの研修では、変化が見えない人財開発施策でよいの かという問題意識を持った人事総務本部 人財戦略部 主管 森 邦夫氏は、2007 年から実践的な OJT「オン・ザ・プロジェ クトトレーニング(On the Project Training) 」の導入を決意 した。変わりゆくビジネス環境の中で、どのようにして「人」 を育ててきたのか。その現在までの取り組みについてお話を お伺いした。
人事総務本部 人財戦略部 主管
森 邦夫
Kunio Mori
「工場も収益が問われます。人財育成への予算も景気や 業績に左右されやすいのです。更に、管理職が多忙に なってOJTが停滞したこと、また、新しい方法論を用い た仕事の変革等により、人財育成の進め方に危機感を感 じました」と森氏。 「業績に左右されず続けていくこと、更に時代の変化 に適した人財育成施策が重要だ」と考えていた森氏は、 経営層に働きかけた。「経営幹部も景気に左右されてし まう人財育成に危機感を感じていました。一定の金額を 投資しなければいけないということにも理解を得られ て、8年前から教育の予算投資配分の仕組みを作りまし た。一定額を必ずプールし、予算を確保するのです。こ れで業績に関係なく人財育成を続けていくことが可能に なりました」それは「長いスパンで育成を考えないと、 人は育たない」という森氏の思い、そして常に現場に寄 り添う視点からなされたものだった。
の視点から一般的な知識や思考・気づきを与えるもので す。それに加えて、ビジネス環境の高度化、スピード化に 即した研修や育成が必要だと思いました。」と語る。 ビジネスが、単品のハードからソフト機能を重視したシ ステムに変わっていくにつれ、「技術が次々と変わり、ビ ジネスが変わって、自分たちの経験値が及ばないところに きている。もっと世の中の潮流も見て、現場を見て現場で はできないような人財育成施策を展開することが大切」と 思った森氏は、先を見据えた取り組みを模索した。 そのパートナーとして支援をしたのがJMACのチー フ・コンサルタント渡部 訓久だった。実はJMACの支援 は2002年に遡る。「FF研修」と名付けられた、技術開 発・商品開発における源流段階の検討力と、そのための 組織的な技術課題解決力強化を目指した研修から始ま り、設計・生産の改革活動、職場活性化(KI)活動や階 層研修などを並行して支援をしており、現場の実態を熟 知していた。森氏と渡部が組んで現場と実務に即した人 財育成が動き始めた。
ビジネスが変わり、かつてのOJTだけ では変化に対応できなくなってきた
そして従来のOJT(On the Job Training)だけでは人財 育成に足りないと頭を悩まし続けた。 OFF‑JTについて森氏は、「本社が行うOFF‑JTは、全社
HOWからWHATへ ストーリーを つなげて
ゆく
実務に即した人財育成として、プロジェクトリーダー
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「第 15 回開発・技術マネジメント革新大会」より
将来像
(以下PL)育成施策が2007年からからスタートした。こ れは実践型のオン・ザ・プロジェクトトレーニング(On the Project Training)として、受講生たちが日常業務の中 で実際に取り組んでいるプロジェクトテーマそのものに フォーカスして行っている。 当初はPLが技術者、SE、営業などのメンバーをいかに 巻き込んでいけるかを課題として、プロジェクト全体を うまく推進できる「骨太の人財育成」を目指していた。 しかし、最近は「ゴールを正しく見定めて、そこに行き 着くためのストーリーを自分なりに考えているかが重要 だと思っています」と語る森氏。「現在の施策そのもの も大事ですが、将来の技術人財像を考えた時に、ただプ ロジェクトを推進する腕力的な力だけでなく、目標や目 的をどう実現するか、そこに行きつくまでのストーリー 全体を考える力を付けなくてはならないと思いました。 その中で、色々な問題が見えてくる。そこに適切な処置 を考え、順番を間違えずに適したタイミングを見て打っ て行く。これは、医療と同じだと思うんですね。お医者 さんは心臓に聴診器を当てて変だと思っても、すぐに薬 を投与しません。血圧測定、血液検査を始め、各種の検 査を経て原因を探り、因果関係をトータルでしっかり捉 えて適切な手を打ちますよね。そういった鳥瞰的な視点 と、打ち手のストーリーというトータルで考えて実行す る力が必要だと思うのです」。 一方、渡部はPL育成施策の8年間の支援の中でその内容 も変化しているという。「当初はHOW中心で、どう目標 達成するか、お客様の要求をどう実現するかといったと ころに重点を置いた支援をしていました。ビジネス環境 の変化とともに、HOWだけでは目標が達成出来なくなっ て、WHATやWHYが増えています。顧客の要求をどう 実現するか、これからは新たな付加価値を創っていくこ とが求められますので、それに合わせてPL育成の内容も 変化してきています」(渡部) ストーリーづくりとは、複数ある施策をトータルで見 て俯瞰し、施策と施策の間をつなげてこそできる。そう 考えた森氏は「つなげる」を人財育成における重要な キーワードと位置づけている。そして、将来あるべき技 術人財像をつくりだすため、「PL育成施策」、「新規事 業立案研修」、「コーチング活動」、「設計体質改革活 動」の4つを施策の柱として推進してきた。それが、 2014年度上期に意外なところから成果となって表れた。
将来の技術人財像
・将来技術と既存技術を ・保有技術と他社技術を ・設計技術と生産技術を ・機能と機能を 重点課題 ダイレクト 人財育成施策 ベース
・社内と外注先を ・上層部と担当者を ・目標と手段を ・ありたい姿と現実を
つなげる人
つなげる人
新規事業 立案
プロジェクト リーダ育成
コーチング 活動
設計体質 改革
人財開発機能
全社の小集団活動の事務局も務める森氏だが、製造部門 の牙城と思われたこの活動において、設計部門が製造部 門を上回る成果を挙げたことだ。1年前、製造部門の部 会に組み込まれていた設計部門を切り離す試みに懸念す る声はあったものの、単独の部会を作った森氏は、「多 品種・非量産の開発・設計部門が、職場単位、グループ 単位で集まるのも大変なのに、本当によく頑張ってもら いました。感謝しています」と心から喜んでいた。
スキルと経験の次に必要なもの それは適切な着眼点を持つ能力
顧客から求められていることの変化にあわせて、HOW からWHAT、WHYへとPL育成施策の内容も変化する中、 「スキルや経験に加えて、適切な着眼点を持って判断し、 実行する能力が必要になってきた」という森氏。「社内に は無い新たな着眼点については、やはり外部の力を借りな いとできないところですね。そういうときには、渡部さん の外からの視点、考え方で意見をもらえると、自分達には ない視点をもらえますし、視野が広がります」(森氏) これに対して渡部は、「新しい着眼点というのは、たとえ ば何か開発テーマを決めるときに、経営戦略、技術トレン ド、他社動向などから考えることが多いのですが、『他社ト レンドに打ち勝つものを造ろうよ』ではなくて、『そもそも 世の中にないものを創っちゃおうよ。そうしたら競争なんて 起きないよね』みたいな、そういう一言が言えるかどうかで すよね。そこが我々第三者が関わるポイントですし、実践型
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育成の特徴になるのではないでしょうか」と語る。 JMACの支援は、他社とは違うという森氏は「JMACは、 さまざまな規模の会社の事例を持っていて、戦略系、人事 系といったパーツではなくトータルでの支援をしてくださ る。非常に縦横無尽な動き方をしてくれるのです。それが 本当のソリューションなんだと思いますね。現場の社員か らも、『コンサルタントの皆さんには話しやすくて相談も しやすい』と好評です。受講生のやる気にもつながってい ますし、これもとても大事なポイントだと思います」と。
を、次の世代の人に伝えていく場をつくっていきたいです ね。こうやっていろいろ思いを話し合っていけるのも、森 さんが本当に他社ではないくらいに事務局としてプロジェ クトに付き合ってくださるからです」と語る。 森氏は「やはり我々は現場と渡部さんの翻訳者でもあ ると思っています。プロジェクトの推進では環境の変化 への対応も必要ですが、会社としてのベースとなってい るところはきちんと持っていなくてはいけない。JMAC のコンサルティングスタイルは、そういったすり合わせ をして、バランス良く対応してくれる。評論家でないと ころがいいですね」とも語る。
「種まきと水やり」 手を抜いたら枯れてしまう
PL育成施策を通した参加者の変化について森氏は「1年 くらい経つと、受講生の上司から『彼はものの見方が変 わったよね』と言われるんですね。さまざまな知見を吸収 して、視野が広がり、新たな視点が加わった結果だと思い ます」という。 さらに、そうした受講生たちには今後、「自分で考えて 判断できる人財」になってほしいと期待を込める。数多く の顧客とその案件を抱える現状では、上司の指示を待つだ けでなく、自ら考えて判断できる人財が求められるから だ。そして渡部は、「そういうことを高度にできている人 財も中にはいます。そういう方は他の担当者にトランス ファーするという意識も持っています。こういう方たちを モデルにして、どうしたらそうなれたのかというところ
新しい付加価値を創りだすステージへと進んでいく人 財育成だが、他方で森氏はこうも述べる。「『OFF‑JTは 種まき、OJTや実践型研修は水やり』というのが根底に ある考え方です。種まきよりも水やりは時間も掛かるし 大変です。でもここの手を抜いてしまうと人財開発機能 としては役割を十分に発揮できないと思うんです」重要 な経営資源の「人」を自分が責任を持って鍛え上げるん だという思いが込められている。 そして、その森氏の次なるキーワードは「人間力」だ という。「製品開発においては技術力とマネジメント力 が大事ですが、根底には人間力が必要だと思います。人 間力はマネジメント力の一部と言ってもいい。これは次 のキーワードになると思っています」と。 時代の潮流をとらえ、進化を遂げてきた日立国際電気 の人財育成。新たなステージを迎え、今後の進化がます ます楽しみだ。
人財開発スタッフは︑ もっとラインに 入り込みましょう!
担 当 コ ン サルタントからの一言
人財開発機能強化の基本:当事者感覚
経営資源の一つである人財を育んでいく人財開発部門の重要な ミッションとは、人財育成ビジョンを描き、業務上の成果につな げることだと思います。階層毎に求められる人財像を明確にし、 教育プランを実施することはよく見られますが、実際の業務成果 につなげることは多くの企業で悩まれていることと思います。こ こで重要なのは、育成推進者が実践の現場にどれだけ立ち会って いるか?ではないでしょうか?現場を見ることで、本質的な育成 上の課題に気付き、次年度以降のレベルアップにもつながり、人 財開発機能強化に直結すると思います。
チーフ・コンサルタント
渡部 訓久
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アジアを中心に「戦略」「マーケティング」「人材育成」の 3視点からJMACが支援した企業事例をご紹介します。
〜TPMが持つ 柔軟性 が活動成功の鍵だった!〜
アジアから世界へ −勝ち残る工場をつくり出す
パナソニック株式会社 電子材料事業部
パナソニック株式会社 電子材料事業部ではすでに中国の 3 工場で全社一丸となった TPM 活動を成功させている。 しかし、 中国という風土の違いゆえ、 TPM 活動を導入・実践 し、 成功に導くまでの道のりは決して平坦なものではなかっ た。 当時、 中国広州工場の総経理として、 2010 年の導入から 先頭に立って活動を指揮した森 弘行氏に、 中国で TPM 活動 を成功させるポイントと今後世界へ展開する際のヒントを お伺いした。
生産技術センター 所長
森 弘行
Hiroyuki Mori
加速するパナソニックのグローバル化
パナソニック株式会社(以下パナソニック)は、経営 の神様と言われた松下幸之助氏が 1918 年に創業した松下 電気器具製作所に始まり、2008 年長く親しまれた松下電 器産業株式会社からパナソニックに社名を変更、2018 年 には 100 周年を迎える歴史ある企業である。 「くらし」の 向上と 社会の発展に貢献することを基本理念とする、誰 もが知る世界的な総合電機メーカーである。近年では特 にアジアを拠点とした工場運営にも力を入れており、こ
のうち電子材料事業部では、パナソニックグループにお いて唯一材料事業を展開しており、国内外に多くの拠点 を持ち、回路基板材料、機能フィルム、半導体封止材な どの開発・製造・販売・サービスを幅広く担っている。 その国内外の多くの工場の立ち上げから運営、改善に 携わり、豊富な経験を持つのは、電子材料事業部 生産 技術センター 所長の森 弘行氏である。森氏は 2009 年 10 月から多層基板材料を製造する中国広州工場の総経理と して赴任し同工場での TPM 活動に熱意を持って取り組 ん だ 経 験 が あ る。TPM 活 動 と は Total Productive Maintenance の略で製造企業が持続的に利益を確保でき
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る体質づくりをねらいとして、人材育成や作業改善・設 備改善を継続的に実施していく体制と仕組みをつくるた めの全員参加の生産保全である。 森氏には、この広州工場で忘れられない経験がある。
のために』という考えが行動の基本にしっかり根付いて いました。しかし、中国ではべースが全く違うというこ とを実感しました」 という。森氏の模索の日々が始まった。
工場ストライキに衝撃
赴任した 2009 年当初はリーマンショックからちょうど 1年経ったころで、受注も順調に上向き、いよいよこれ からフル稼動に向けて動き始める、そんな時期だった。 森氏は「当時工場の人員は 350 名で、フル稼動に向けて 400 名〜 450 名に増員しようと採用を開始しました。人事 担当者が地方へ赴き、20 名、30 名と採用するのですが、 2010 年の春節あけ、田舎に帰った従業員がそのまま戻っ てこないということを経験しました。うわさには聞いて いましたが自分の工場で起こることにショックを受けま した」 そして、 2010 年 6 月 28 日忘れられない出来事が起こる、 ストライキが発生したのだ。5 月ごろから他社ではストラ イキが発生していたが、森氏は「うちの工場は普段から コミュニケーションが取れていましたし、 レクリエーショ ンなどの行事も組合と協力して行っているので、波及し ないと思っていました」と。しかし、ストライキは広州 工場にも波及してしまう。 この出来事で森氏は、コミュニケーションが出来てい る つもり だったことに気づいた。 「私とマネジャー層 との間では意思の疎通がうまくいっていましたが、マネ ジャー層と現場との間ではコミュニケーションのギャッ プが発生していることに気付きました」 (森氏) 。マネ ジャー層は工場の創業当初から 10 年近いキャリアのメン バーが多く、1970 年代生まれの中国がまだ家族主義的な 時代に育った世代だ。一方現場のメンバーは、1990 年代 生まれで個人主義が強い中で育ってきた。そこにはジェ ネレーションギャップも存在していたのだった。 森氏は「ストライキ再発防止のため、この工場を良く していくためにも、全員で取り組む一体感のある活動が 必要だと思いました」という。 「日本の工場ではベテラン 社員も多く、1 言えば 10 を理解してくれます。そして松 下幸之助の経営理念は常々教育されていますので、 『社会
ひとつの出会いが、 中国でのTPM活動を決意させた
森氏は 20 年ほど前、郡山工場にて TPM 活動に参画し た経験があった。当時生産技術グループ課長だった森氏 は「開発管理部会 部会長としてメンバーと一体となって TPM 活動を推進しました。マスタープランでは、3 年後 に優秀賞を獲得することを掲げましたが、見事に受賞す ることができて、メンバーの自信にも繋がりました」と いう。活動は第2段階へと進み、自走の自主保全活動に 繋がって、 今でも TPM 活動は続いており、 郡山工場のベー スになっているという。 この経験から、森氏には全員活動の推進に TPM が適 していることはわかっていた。しかし、中国の現時点で の実力を考えると、すぐに広州の工場で TPM 活動を実 施することは難しいと考えていた。でも何か全員参加の 活動が必要だ。ヒントを得るため森氏は、パナソニック の他の中国工場や他社の工場の見学を繰り返した。この ようななか、JMAC が主催した中国工場の視察が森氏の 大きなヒントとなった。 その視察先が山内精密電子の深セン工場である。森氏 はすぐに中国人の幹部と共に、山内精密電子で TPM 活 動を主導している副総経理 岩切 廣海を訪ねた。岩切はそ の後、JMAC で TPM コンサルタントとして活動するこ とになる。岩切は当時の山内精密電子の活動をこう振り 返る。 「深センの山内精密電子でもストライキがあって定 着率に課題がありました。なんとか若いワーカーさんの 定着率を上げようと思い、中国の事情に合わせた TPM 活動の試行錯誤を重ねました。特に現場のワーカーさん を巻き込むためには、目線は常に現場に合わせることが 大事です。現場が困っていることは何かをベースにした TPM 活動でないと長続きしません。中国のワーカーさん は知らないことを吸収しようという意欲は日本よりも強 いものがあり、この成長欲が鍵だと思いました」 工場見学を終え、その国や置かれている環境、現場の 悩みをベースにしながら TPM を柔軟にアレンジすれば、
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有効なマネジメントツールになりうる。そう実感した森 氏は、広州工場に TPM の導入を決意する。 その後、2011 年に JMAC コンサルタントとなった岩切 は、同年、森氏から指名を受ける形でパナソニック広州 工場の支援することになる。こうして、 森氏と岩切がタッ グを組み、パナソニック流 TPM 活動がスタートした。
事例を他に展開しながら故障ゼロを目指したところ、 2013 年後半からゼロが続いている。個人個人の成長をは かることが、結果として会社の成長につながったのだ。 「個人の成長なくして、会社の成長なし」森氏の信念は、 まさに具現化された。
キーワードは「個人の成長」 これがなければ始まらない
パナソニック広州工場で「P−GPM」と名付けられ たこの活動は 「全従業員の TPM への理解を深めるために、 まずは5S (整理、整頓、清掃、清潔、躾)から入ろうと いうことで、4 段階のフェーズ展開を導入しました。取り 組みやすい活動から段階的に進めることで、現場も少し ずつ変わり、人の気持ちも変わっていきました。そして 何よりも工場がとてもきれいになりました」と森氏。 「工 場見学をしたお客様から『とてもきれいになっています ね』 『5Sが素晴らしいですね』と褒めていただけるよう にもなりました。そうした喜びを全員で共有することで、 活動全体が良い方向にスパイラルアップして行きました」 と活動の手応えを語る。 さらに、現場目線、ワーカー目線を大切にし、中国人 の個人主義を活かす方法も考えた。 この TPM 活動は「個人の成長の場」でもあるという ことを意識づけるため、彼らが行っている改善事例を発 表できる場を設けたのだ。そして、その改善努力を高く 評価し、やる気を引き出した。これを重ねていくと、彼 らの行った改善の成果が目に見えてくるようになり、ま すます現場は変わっていった。 「みな緊張しながらも、生 き生きと一生懸命に話すのです。自分が成長し、それに 伴い会社も成長する。これは、現場のワーカーさんにそ れまでにない強力なモチベーションをもたらしました」 と岩切は語る。従業員アンケートでも、82%もの従業員 が5S ・TPM が自分のスキルに役立っていると回答して いる。実際に、活動開始後は定着率も改善した。 TPM 活動は会社の経営数値としても成果を見せた。 2010 年から 2013 年の 3 年間で、設備総合効率は 60%台 半ばから 78%にまであがり、生産販売数はおよそ 1.4 倍 となった。月 30 件あった設備トラブルは、モデル設備の
成功のために、 トップは背中を見せ続ける
今でこそ従業員は TPM 活動を理解し、高いモチベー ションのもと活動をしているが、当初、現場の反応は冷 ややかだった。森氏は当時をこう振り返る。 「トップダウ ンでやるしかないですから、やはりやらされ感というの はあったのだと思います。私は活動への思いを伝え続け、 全従業員を集めたキックオフ大会では、私と全管理監督 者による決意表明も行いました。また、 コミュニケーショ ンを密にして、うまく進んでいない部署があれば、メン バーを集めて彼らの悩みや課題を聞く、といったところ にも力を入れました」 。コンサルタントの岩切と一緒にメ ンバーから話を聞き、議論を重ね、解決方法を見つける。 こうしたトライアンドエラーを繰り返しながら、TPM 活 動はパナソニック流に修練されていった。 森氏が TPM 活動を実践するにあたり、何よりも大切 にしていたことがある。それは「自分が参画する、これ はもう一番大事だと思っていました。もっとも、お客様 あっての工場ですから、まずお客様への対応は最優先に しなければなりません。その次に、毎月2日間予定され ている岩切コンサルタントの指導会には必ず参画する、 ということを徹底していました。みんなの成長に非常に
▲森氏に続いて管理監督者も全員が決意表明
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熱意を持っている、このことを言葉よりもむしろ行動で 感じてほしい、という強い思いがありました」と森氏は 語る。 TPM 活動は、トップがどう引っ張っていくかによって その成果が決まる。信念と熱意を持って従業員に背中を 見せ続ける。この強い思いこそが従業員の心を動かすの だ。忙しい中、 森氏はこれをやり遂げた。 「後任の総経理も、 このやり方を理解して引き継いでくれました。トップが 思いを繋いでいるからこそ、TPM 活動が継続しているの だと思います」とトップの関わりの重要性を語る。
▲TPM 活動宣言の半年後、全従業員が揃ってキックオフ大会を開催
ルだと思います。要は適用方法が成功の鍵になると思い ます」と森氏。
アジアから全世界へ〜勝ち残る 工場づくりを目指して
森氏は「中国はビジネス環境自体が伸びているという 追い風もありますが、我々の武器といえる高機能の商品、 お客様に認めていただけるような高品質な商品をつくり 続ける力が広州工場にはあると思います。そのベースを 支えているのが TPM 活動ではないかと思います」と分 析する。 そして 2014 年初めには広州工場とは兄弟工場になる蘇 州工場と上海工場にも TPM 活動を導入した。森氏は 「TPM 活動の様々な手法をその工場に合わせて適用する 柔軟な視点が重要ではないでしょうか。TPM は万能ツー
さらに、うまく推進できないケースとしては「グロー バルも含めて全工場一律に同じやり方、同じペースで進 めていくというアプローチである」とも語る。たとえば、 TPM 活動を受け入れるベースが元々あるところとないと ころでは進め方が異なる。国や置かれている環境、そし て現場の悩みによっても違ってくる。万能ツールゆえに 実情に応じたアレンジが必要となる。日本やアジアで TPM 活動を行うときには、特にこの視点が重要だと森氏 は指摘する。 「個人の成長なくして、会社の成長なし」中国における パナソニック流 TPM 活動で培われたノウハウは世界へ と広がっていく。
成功の秘訣
接する事が
階層別の目線で
担 当 コ ン サルタントからの一言
現地の歴史を知り、風土を理解する
海外では、 日本と同じやり方を押し付けてはうまく行きません。現地に合っ た改善活動が必要なのです。 その為には現地の歴史、風土を学び理解する事はとても大事な事です。 中国では個人主義が強いと言いますが、それは戦いの歴史に明け暮れた民 族の防衛策でもあるのです。彼らは自分の成長につながる事にはとても熱 心に取り組みます。パナソニック広州工場の歩みを見るとそれを印象付け る事がたくさんありました。TPM 活動で、設備が変わっていくのを見て人 が変わる。そんな彼らの姿を見ると、成長欲は万国共通なのだとつくづく 思います。
TPMコンサルタント
岩切 廣海
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「意」を JMAC では、若手のころから一人ひとりの 「活かす」ことを大切にしています。 闘する このコーナー では「iik 塾」と称して、日々奮 。 ます 介し 若手コンサルタントの「意」をご紹
企業小説を通じて、 社会ニーズを把握する
すれば『人』が「イキイキと働 き、仕 事の成果を上げることができる か」。 そのためにもコンサルタントと しての 深める つが、 いる私が大切にしていることは 人材マネジメント領域を専門 として 、どう
奥野 陽
HRM革新センター
も、企業を取り巻く様々な課題 の全体 像を理解する上で有効だと考え ていま す。 現在は、人材マネジメント領 域の中 でも、特に人事制度構築支援の コンサ ルティング支援が多いのですが 、お客 て、こ 企業小説の活用は意味があると 考えて
会ニー ズを 題材 とし て取 り上 げて いる こと
のあるものです。その時々の社
験する上で企業小説を読むこと
会社の仕組みやマネジメントを
企業での勤務経験がない私にと
企業小説を読むことです。学卒
ことに注力しています。その一
幅を広げ、組織や人への理解を
います。
出身で
って、
疑似体
は意味
こうした様々な背景を理解する
いった企業内課題があると思い
戦力 化等 の「 人材 を活 かし きる
の活用など、社会ニーズや若手
ます。この背景にはシニア世代
れからの制度構築の方向性のキ ーワー ドは「長く、安心して働き続け ること ができる会社」ではないかと考 えてい や女性 」と 社員の
様とのディスカッションを通じ
ます。
にも、
武器となっています。
解するためにも企業小説は私の
があります。こうしたことを素
く姿勢です。そこには様々な人
的やねらいが浸透するまで支援
ている各職場まで足を運び、制
むことを掲げています。実際に
条とし ては 、制 度設 計・ 導入 支援 だけ でな く、その後の定着までお客様と 共に歩 運用し 度の目
そして、コンサルティング信
してい
間模様
早く理
大きな
プロダクション デザイン革新センター
神山 洋輔
す。プロのコンサルタント 私は生産領域のコンサルタントで プトチャート」を作成して になるため、毎日欠かさず「コンセ 客様とディスカッションす います。日々、多くの生産領域のお せん。具体的には専門書を る上で、「知恵」の貯金は欠かせま 知恵に変えるために「コン 読み、その日に学んだ知識や情報を 。ベースが専門書なので内 セプトチャート」を作成しています のお客様は個別課題になり 容は一般論が中心になります。実際 知識をしっかりと理解して ますが、課題を整理する上でも基礎 がないと課題の「本質」が いることは重要です。この基礎知識 導き出せません。 つかめず、お客様の固有解が正しく 主義に基づいて捉えた事 一般論をベースとしながら、三現 土を踏まえて、最適な解 実、さらに、お客様の特性や企業風 これを『テーラーメイド を導くことが何より重要です。私は
コンセプトチャート作成で 知恵の貯金を増やす
型提案』と呼んでいます。 チャート」を作成し続け 振り返るってみると「コンセプト 題の本質についてディスカッ て3年目くらいから、お客様と課 成7年後の今日では、神山 ションできるようになりました。作 。このような取り組みを 流の型が出来てきた実感があります の先輩コンサルタントの 始めたのもコンサルティング場面で ボードに課題を整理し本 姿があったからこそです。ホワイト ョンしている姿に憧れ、 質的な議論をお客様とディスカッシ 覚を した こと がき っか けで プロ フェ ッシ ョナ ルと して の自 作成することは苦しみの す。毎日「コンセプトチャート」を 客様にコンサルティングを 連続です。しかし、その苦しみがお と信じて自己研鑽を続け 通じて最高の付加価値を提供できる ています。
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- nformation
編集部からの耳より情報
JMACトップセミナーのご案内
〜経営革新を推進する先人から学ぶ〜
1月 27 日 開催
(火) 2015 年
「JMAC トップセミナー」は、 JMACと経営トップ層を繋ぐ本誌にご登場いただいた経営トップの方々を講師にお 招きし、実際に改革を断行していく苦難や成功体験をお話いただく経営トップ向けセミナーです。 今回は、本紙の TOP MESSAGE にご登場いただいた、 株式会社リコー 代表取締役 会長執行役員 近藤 史朗 氏 をお迎えし、 『リーダーに必要なのは「揺るがぬ信念」だ』 と題し、お話しいただきます。 本誌ではご紹介しきれなかった近藤氏のお話を、直接お聞 きできるチャンスです。ぜひご参加下さい。
15:00 〜 18:30
ステーションコンファレンス東京
定 員:50 名(お申し込み順) 対 象:経営トップ層、部門長の方々 参加料:10,800 円(税込) ※参加者交流費を含む
http://www.jmac.co.jp/service/event/
自主的 に 解決 する 知恵 を 基本 から ていねい に 解説
新刊
(A5 320 頁) (A5 256 頁)
賃金・賞与制度の教科書
−これからの賃金政策を創造するための羅針盤−
人材育成の教科書
−悩みを抱えるすべての管理者のために−
(A5 304 頁)
(A5 288 頁)
人件費・要員管理の教科書
−環境変化への対応に悩むすべての実務家のために−
人事評価の教科書
−悩みを抱えるすべての評価者のために−
経営者には人間力が必要だと近藤会長は仰いました。近藤会長ご自身、時に人を束ね動かしていく強い力、 胸襟を開き人の意見を聞く “耳” を持つ柔軟さ、そして改革を進めてきた熱いエネルギーをお持ちの方だと 感じました。一方で、趣味の時間をつくる天才と自らを評され、野菜作りのお話をされている時の楽しげな 笑顔がとても印象的でした。
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- 人間集団である組織を動かし成果を出す。それはスポーツの世界にも通じます。毎年、「入団」と「退 団」で常に新陳代謝を繰り返すプロ野球。その中で監督は「チームビルディング」を、選手は「最高の パフォーマンス」を要求されます。お互いに与えられた条件で戦う姿は私たちマネジメント活動にも参 考になると思います。今回の「顔」はプロ野球の選手を経て、BCリーグの監督を務 めたギャオス内藤さんにフォーカスしました。
インタビュー:JMAC大石 誠
新潟アルビレックス・ ベースボール・クラブ前監督
(内藤 尚行:ないとう なおゆき)
ギャ オ ス内藤氏
第 1 回
1968 年 7 月 24 日愛知県生まれ。豊川高等学校から 1986 年ドラフト 3 位 でヤクルトスワローズに入団。1995 年に千葉ロッテマリーンズに移籍、 1996 年シーズン途中に地元の中日に移籍。1997 年現役を引退。2013 年ベースボールチャレンジリーグ(以下 BC リーグ)新潟アルビレッ クス BC の監督に就任し、リーグ記録となるシーズン 52 勝を達成。 2014 年は上信越地区後期優勝を果たすも 2 年契約の契約満了を 以て、今シーズン限りでの退任を発表した。登録名はギャオス 内藤。解説者活動も継続している。
基本を積み重ねるからこそ 強くなれる
環境と雰囲気づくりが 監督の役割
大石 : 2013年からBCリーグ新潟アルビレッ クス BC の監督に就任されましたが、監督 として大切にされていることをお聞かせい ただけますか。 内藤:新潟アルビレックス BC もリーグ優 勝という大きな目標に向かって戦ってきま した。今年は監督として 2 年目ですが、一 戦一戦を大切に全力で戦うことに集中して きました。基本を愚直に積み重ねることが 今のチームに大事なことだと考えていま す。また、BC リーグは地元の企業と、新 潟アルビレックス B C ではファンの方々を サポーターと呼んでいますが、このサポー ターに支えられていますので、応援してく ださる方々に恥じない野球も大切にしてい ます。 大石:チームを運営していくうえでのこだ わりについてお聞かせいただけますか。 内藤:私にとって監督は新たなチャレンジ ですが、チームをまとめること、選手個人 が力を発揮できる環境と雰囲気づくりを心 掛けています。それには選手の技術、個の 力を高めることがベースになり、選手のマ インドを高めることも重要な要素だと監督 になって改めて実感しています。 この技術とマインドの両輪を高めること で個人が成長し、いいチームづくりができ るのです。技術は個人で磨き、その力をグ ラウンドで表現するための環境を作るこ と、気持ちよくグラウンドに上がる雰囲気 を作ることが監督の役割です。そしてマイ ンドの基本は 楽しんで 野球ができるか どうかだと思います。これは2年間で出来 上がったギャオス内藤流です。 我々を見ているサポーターの方々がまた 足を運びたくなるような、そんなチームを 作ることが監督の役割であり、地域や BC リーグの活性化にも繋がると思います。 内藤:実は今年、昨年の主力ピッチャーと、 バッターの柱が抜けました。が、その抜けた 穴を埋めようと今年度のレギュラーメンバー がいいパフォーマンスを発揮してくれまし た。 良く言われることですが、 ホームランバッ ターが 9 人いても勝てません。今年のチーム はそれぞれが適材適所で力を発揮してくれ て、チームが一つになった時のパワーはとて も強いものがありました。一戦一戦を大切に 戦うという考えが選手に少しずつ伝わり、さ らに、 勝つことによってチームが強くなって、 まとまりができた結果だと思います。 野球はエラーの出るスポーツですから、エ ラーをした後に諦めては駄目で、その後のプ レーが大事です。野手がエラーしたらピッ チャーがいいピッチングをしてカバーすれば いいのです。泥臭くても、形が悪くてもアウ トはアウト、そういった基本を積み重ねてい くことでお互いを補い合えるチームになって いったと思います。そして、我々の野球に対 するこういう姿勢も含めてサポーターが応援 してくれていると思っています。
勝つことでチームは 強くなれる
大石:今年の成績を見ると、個人成績上位 は少ないですが、チームの勝率は高いです ね。どのような内藤流のチーム作りをされ たのでしょうか。
大石 誠の
チームを構成する上で大切なのは、 「うまい9人」ではなく「しなやかでうまい9人」で はないかとインタビューを通じて感じました。グラウンドで全員が泥臭くてもアウト一つ
ここが
Point
を取りにいける姿勢。これがギャオス内藤流チームビルティングの基本スタンスだと理解 しました。そのために「技術」だけでなく「マインド」にも気配りしているギャオス内藤 監督の姿はこれまで露出していた監督のキャラクターとは異なる印象を受けました。
Business Insights Vol.54 2014年 12月 発行
編集長:大石 誠 編集:石田 恵
TEL:03‑3434‑0982 URL:http://www.jmac.co.jp/ FAX:03‑3434‑2963 Mail:info̲jmac@jmac.co.jp
〒105‑0011 東京都港区芝公園三丁目 1 番 22 号 日本能率協会ビル 1 階
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