ビジネスインサイツ54
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販売担当者の 「直行直帰」を推進
鈴木:なるほど、米国での販売体制はそのように強化し ていったのですね。国内では「販売のリコー」と言われ ていますが、どのような改革をされたのでしょうか。 近藤:日本は米国に先がけて販売の改革に取組んでいま した。当時も強い販売力を維持していたのですが、利益 が思うように増加しないという状態が体質化していまし た。2008年7月には国内に40社以上あった販売会社を7社 に統合、さらに2010年7月にその7社を「リコージャパン 株式会社」のひとつに統合しました。統合による効果は 大きいものの、内部管理の仕組みや業務プロセスが複雑 になるといった弊害もありました。 経営の統合のみならず様々な業務プロセスにも手を入れ なくてはならないと改革に動き出しました。例えば、「売 れる販売担当者ほどお客様のところに行けない」という矛 盾した実態が見えてきたのです。それは、業績管理や受発 注をはじめとした業務が多く、管理のための内部コストと 時間が発生するということです。販売の基本機能は、お客 様を訪問し困りごとをお聴きしてその解決策を提案するこ とですから、「利益を生まない仕事はやめなさい」と販売 部門の会議などにおいて繰り返し指示しました。そこに集 まった販売担当者からは拍手が起こりました。販売の現場 ではそれほど困っていたのだと思います。 また、2011年の東日本大震災後の電力不足による節電 活動をきっかけに「販売担当者は直行直帰しなさい」と メッセージを出しました。効率化を図ることもあります が、電力が不足しているなかで働き方を変えることは、 新たな顧客ニーズへの気付きにもなります。お客様視点 での販売活動の強化を目指しました。 こうした改革により、国内の販売も活力を増し、リ コージャパンの収益性はかなり改善してきました。 鈴木:これからも世の中はどんどん変化して、仕事のや り方も変わってくると思いますが、新規事業に対する近 藤会長の思いや今後の方向性をお聞かせください。 近藤:今手掛けているものの一つは、カメラ技術を応用 した事業です。その中でも、FA(ファクトリーオート メーション)と車載に力を入れています。例えば自動車 業界では、ドライバーに対する知覚・行動支援を行う機 能が標準装備となりつつありますが、私たちもこうした モジュールを開発し、一部自動車メーカーにおいて採用 がはじまっています。リコーグループの技術を活かし、 異分野の技術とも融合しながら開発を進めていますが、 事業を拡大するチャンスだと思っています。 このほかにも、画像機器開発で培った技術を使って 様々な展開をはじめています。例えば、光学、画像処 理、センシング技術を応用して、農業やセキュリティ分 野での事業機会を探索しています。 また、現在では、ユニファイド・コミュニケーション・ システム(UCS)というテレビ会議システムを使って多拠 鈴木:国内外の販売強化のほかにも、人事の改革も行った と伺っています。具体的にはどのような改革をされたので しょうか。 点と連携して仕事ができるようになってきています。これ は自分たちで実際に使用しながら商品開発を進めていま す。私たちが有効性を体験しないと、その良さをお客様に 近藤:人事システムに手を入れました。従来の上司から部 下への期初に設定した目標の達成度合いやその取り組み方 に関するフィードバックに加えて、2012年からは、部門全体 で調整した最終的な評価ランクも伝える仕組みを作りまし た。この仕組みにより、上司と部下とのコミュニケーショ ンの中で、今までになかった気づきや、もっと成長しなけ ればならないというマインドが生まれたと思います。 改革では軋轢も生まれましたが、「働いた人に報い る、がんばった人により一層報いる」というシステムに することで、個人と組織の能力はもっと伸びると思って います。まだ改革は過渡期ですが、社内の研修では、こ れをチャンスだと思って欲しいし、こんな仕事をした い、とどんどん手を挙げなさいと伝えています。 グローバルでの競争においては、一人ひとりの能力を さらに高めなければなりません。そのためにも必要な改 革だと思います。
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「がんばった人により報いる」 人事制度に改革
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