ビジネスインサイツ54
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有効なマネジメントツールになりうる。そう実感した森 氏は、広州工場に TPM の導入を決意する。 その後、2011 年に JMAC コンサルタントとなった岩切 は、同年、森氏から指名を受ける形でパナソニック広州 工場の支援することになる。こうして、 森氏と岩切がタッ グを組み、パナソニック流 TPM 活動がスタートした。
事例を他に展開しながら故障ゼロを目指したところ、 2013 年後半からゼロが続いている。個人個人の成長をは かることが、結果として会社の成長につながったのだ。 「個人の成長なくして、会社の成長なし」森氏の信念は、 まさに具現化された。
キーワードは「個人の成長」 これがなければ始まらない
パナソニック広州工場で「P−GPM」と名付けられ たこの活動は 「全従業員の TPM への理解を深めるために、 まずは5S (整理、整頓、清掃、清潔、躾)から入ろうと いうことで、4 段階のフェーズ展開を導入しました。取り 組みやすい活動から段階的に進めることで、現場も少し ずつ変わり、人の気持ちも変わっていきました。そして 何よりも工場がとてもきれいになりました」と森氏。 「工 場見学をしたお客様から『とてもきれいになっています ね』 『5Sが素晴らしいですね』と褒めていただけるよう にもなりました。そうした喜びを全員で共有することで、 活動全体が良い方向にスパイラルアップして行きました」 と活動の手応えを語る。 さらに、現場目線、ワーカー目線を大切にし、中国人 の個人主義を活かす方法も考えた。 この TPM 活動は「個人の成長の場」でもあるという ことを意識づけるため、彼らが行っている改善事例を発 表できる場を設けたのだ。そして、その改善努力を高く 評価し、やる気を引き出した。これを重ねていくと、彼 らの行った改善の成果が目に見えてくるようになり、ま すます現場は変わっていった。 「みな緊張しながらも、生 き生きと一生懸命に話すのです。自分が成長し、それに 伴い会社も成長する。これは、現場のワーカーさんにそ れまでにない強力なモチベーションをもたらしました」 と岩切は語る。従業員アンケートでも、82%もの従業員 が5S ・TPM が自分のスキルに役立っていると回答して いる。実際に、活動開始後は定着率も改善した。 TPM 活動は会社の経営数値としても成果を見せた。 2010 年から 2013 年の 3 年間で、設備総合効率は 60%台 半ばから 78%にまであがり、生産販売数はおよそ 1.4 倍 となった。月 30 件あった設備トラブルは、モデル設備の
成功のために、 トップは背中を見せ続ける
今でこそ従業員は TPM 活動を理解し、高いモチベー ションのもと活動をしているが、当初、現場の反応は冷 ややかだった。森氏は当時をこう振り返る。 「トップダウ ンでやるしかないですから、やはりやらされ感というの はあったのだと思います。私は活動への思いを伝え続け、 全従業員を集めたキックオフ大会では、私と全管理監督 者による決意表明も行いました。また、 コミュニケーショ ンを密にして、うまく進んでいない部署があれば、メン バーを集めて彼らの悩みや課題を聞く、といったところ にも力を入れました」 。コンサルタントの岩切と一緒にメ ンバーから話を聞き、議論を重ね、解決方法を見つける。 こうしたトライアンドエラーを繰り返しながら、TPM 活 動はパナソニック流に修練されていった。 森氏が TPM 活動を実践するにあたり、何よりも大切 にしていたことがある。それは「自分が参画する、これ はもう一番大事だと思っていました。もっとも、お客様 あっての工場ですから、まずお客様への対応は最優先に しなければなりません。その次に、毎月2日間予定され ている岩切コンサルタントの指導会には必ず参画する、 ということを徹底していました。みんなの成長に非常に
▲森氏に続いて管理監督者も全員が決意表明
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