ビジネスインサイツ58
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「良い製品仕様、良い製造システム、良い設備があっても、 それを機能させて生産するのは 人 です。池田模範堂の 工場の方々は、自社の製品に誇りと愛着を持っているがゆ えに、次のステップを踏み出せず、停滞している状況でし たが、工場で働く人が自分や仲間の成長を感じ、やりがい を持って仕事ができる環境をつくれば、さらなる飛躍が期 待できると確信しました」と語る。
きました」と巽氏は語る。 この変化のキーポイントとなったのが、スタート時に 行った「目標の見える化」である。各自の目標を付せん紙 に書き込み、模造紙に貼っていくことで、お互いの目標を 知ることができた。すると、お互いにどうフォローすれば うまくいくのかを考えて実行するようになり、他メンバー の目標を知り奮起してさらに高い所を目指すメンバーも現 れた。今井は「目指す方向性を共有することは、一緒に仕 事するうえで重要なこと。会社の目標だけでは、なかなか 自分の役割に落とし込み行動することは難しい。自分や仲
「人の和」をつなぎ コミュニケーションを復活
プロジェクト始動にあたっては、リーダー職以上の社員 に再度アンケートを行い、生産体制の実態と課題を把握し た。その後、 ディスカッションを重ねて「変身への挑戦」 をベースに以下の 6 テーマを策定した。 1. 安全推進、 2. 生産性向上、 3. 生産状況の見える化、 4. 他 社との交流、5. 人材育成、6. 人の和――である。 この中で、活動の中核をなしたのが「6. 人の和」だ。目 標値・達成率を見い出しやすいテーマが並ぶ中、目に見え ない 「人の和」 はいささか異質にも感じる。なぜこれをテー マに選び、中核としたのだろうか――その理由について吉 田氏は、 「人の和」はすべてのテーマを有機的につなぐ重 要なテーマであると説明し、 「生産性向上なども非常に重 要なテーマではありますが、結局は人と人とのつながりが ないとうまくいかないと感じていました。そのため、まず はコミュニケーションを活性化して相互理解を深めていく ことが大切だと考えましたので、皆で話し合い、これを中 核にして活動することに決めました」と語る。 活動当初は「現業が忙しいのにさらに業務を増やすの か?」という声もあがった。しかし、活動が進むにつれて メンバー同士の協力関係が生まれ、ひとつの方向に動き始 めた。 「半年が経ったこ ろ、メンバーたちが『こ の活動をしていけば自分 たちの不満も解消され て、いい方向に進むので はないか』という意識を 持ち始めてからは、積極
▲ 嶋田 哲雄 氏
間の目標を共有することで身近な存在になり、精神的距離 感がグッと縮まった。本プロジェクトでは、さらにその目 標の背景(なぜそのような思いに至ったか)をメンバー間 で共有したことで、より親近感が高まった」と見える化の 効用を説く。
自分事として行動できれば 人は育ち、風土が変わる
メンバーの変化について、 「2. 生産性向上」を担当した 巽氏は、皆で協力して何かを成し遂げようとするとき、思 いもよらない相乗効果を得られると実感したという。 「私 たちは、最新設備の能力を 100%引き出し、良品を安定的 に生産していくことを目指しました。そのために重視した のは設備の保全です。自分たちの設備は自分たちで守って いこう、もっと高い所を目指そう、という気概が生まれた のもこのときでした。また、リーダーが自ら積極的に生産 指標や出来高、保全トラブル件数などのデータを活用し、 生産性向上につなげていこうと動き出しました」と語る。 そして「3. 生産状況の見える化」を担当した嶋田氏は、 「見える化」がメンバーの意識と行動を変えていったと語 る。 「活動するにあたり『見える化』がコミュニケーショ ン活性化のきっかけになるようにしました。たとえば、ト ラブル発生時には関係各所に連絡するだけでよいにも関わ らず、横のつながりがないため、どこに連絡したらよいの か理解していない人が多数いました。そこで、トラブル発 生時の連絡網を明示、つまり『見える化』しました。こう した道筋をつけると皆が動きやすくなります。自分たちで 動くようになったことでコミュニケーションが活性化さ
的な取組みに変わってい
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