ビジネスインサイツ58
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澤田 道隆
Michitaka Sawada
1955 年 1981 年 2006 年 2012 年
大阪府生まれ 大阪大学大学院工学研究科修了 花王株式会社入社 研究開発部門副統括 執行役員 代表取締役社長執行役員 現任
器用な花王としては、破壊的価値提案だけでなく、地道な 積み重ねによる価値提案も重視しています。
そして「人には誰でも無限の可能性がある」と心の底か ら信じているか、 どうかです。最大の資産は、 やはり「人」 なのですから、会社の成長は「人」にすべてがかかってい るといっても過言ではありません。その際、人材の育成が 重要となります。人材育成では、 「人を育てる」というよ り「人は育つ」というスタンスが重要であると考えていま す。その人に合った、良い舞台良い場を用意することで す。メンバーは、その舞台の中で、必ず自らの力で育とう と努力します。たとえうまく育たなかったとしても、少し メンテナンスをして違う舞台を用意してあげることも重要 です。粘り強く少しずつレベルアップできるように、場を 変えてあげるのです。このように、簡単に結論を出さずに 人の可能性を信じ続けること、これができてこそ経営者だ と私は考えています。 日本の会社がここまでがんばれたのは、だめでももう一 度やらせてみるといった、失敗を許容する考え方が根底に あったからではないでしょうか。また、日本にはひとりで 成果を上げたとしても最後はみんなでやったよね、と言い 合える共感力の高さ、分かち合いの精神というすばらしい 文化もあります。この日本的な良さを見つめ、資産として 経営に生かしていくことが、大切ではないでしょうか。 私も、このようなことを肝に銘じ、先輩たちが残してく れた有形無形の資産を最大限活用しながら、次の世代のた めの新たな資産を残したいと考えています。そうして、私 たちがさらに 100 年 200 年と成長していく中で、花王ら しく本質にこだわり愚直に本質を突き詰めていきたいと 思っています。
日本らしさを育みながら 挑戦し続ける
鈴木:澤田社長から次世代を担うトップ、経営幹部へ向け たメッセージをお願いします。 澤田:花王らしさのひとつに、 「失敗を恐れず挑戦する」 ことがあります。それが増収増益をもたらすイノベーショ ンの源泉になっています。たとえば、提案が上がってきた 際、私たち役員がその判断に迷うときには、 「GO」を出す ことに決めています。迷うということは可能性があるとい うことですから、その可能性に賭けたいと考えています。 すなわち、 「やらないリスク」より「やるリスク」を取る わけです。メンバーが精一杯の挑戦をして、それでも失敗 することがあれば、われわれが責任をとればよいのです。 そして、そのときたとえ失敗したとしても、また挑戦を続 けることを認めてあげればよいのです。そうすれば、さら にチャレンジをすることへのモチベーションが上がり、可 能性にかける勇気がわいてくるのです。 だからトップは、社員のためにも失敗を恐れないことで す。失敗を恐れてリスク回避ばかりしていては、会社の成 長は望めません。思い切ったリスクテイクをしていく勇気 が必要です。
科
学の目で物事の本質を追求するという思想が花王の風土として息づいている ことを、澤田社長のお話を通して実感しました。また、 「凡を極めて非凡に
至る」という花王の不器用さこそが、物事の本質を追求する花王の行動哲学ではない かと思いました。そして最大の資産は「人」であり、人の可能性を信じ続けて、成果 を皆で分かち合うという、 日本的経営のすばらしさに自信を持たせていただきました。
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