ビジネスインサイツ58
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当時、同社は黒と赤のランドセルを 11 月に間に合うよ うに大量につくりだめするという体制をとっていたが、こ の変化により必要なものを適時に生産・供給することが求 められるようになった。しかし、従来のやり方を変えられ ないまま在庫を抱えることが増え、次第に行き詰まりを感 じ始めていた。
「前職でのものづくりといえばボタン操作や、オペレー ターのひとり作業。しかし、ランドセルづくりの現場では 切る、縫うなどの工程一つひとつに人手が必要なので、と にかく人が大勢いるなということを感じました。また、工 場内には材料などが積み上げられていて、雑然とした印象 が強かったですね」と語る。 そこで、 泉氏は工場内の環境を整備するために 5S (整理 ・ 整頓・清掃・清潔 ・ 躾)活動を始めた。 「5S 活動により少 しずつですが成果が出ていきました。しかし、肝心の多品 種少量生産へ体制を変えていくという部分になると、長年 染みついた生産体制や現場の意識を変えるのは難しく、時 には意見が衝突することもありました。そもそも、古いも のづくりの全体像をつかめていなかったため、何をどうし ていけばよいのかと暗中模索の状態でした」と当時の苦労 をにじませる。 この状況を打破しようと 2013 年、JMAC をパートナー に選び、さらなる体制の改革に乗り出した。
困った! 製造現場との 温度差
2011 年 2 月に 4 代目代表取締役社長に就任した泉貴章 氏は、この状況を「ランドセルは、この数年で品質の高さ や機能性だけでなく、カラーやデザインまで重視されるよ うになりました。 お客様の多様なニーズに応えるためには、 求められるタイミングで商品を提供することが大切です。 在庫を抱えずに過不足なく提供していくためには、計画的 な多品種少量生産の体制にしていく必要がありましたが、 旧態依然の体制を変えられずにいたため、これからの新時 代のランドセルづくりに本当に対応できるのかと非常に強 い危機感を覚えました」と振り返る。 セイバンでは、機械による工程と手仕事による工程を共 存させる生産ラインを確立しているが、 生地の裁断、 縫製、 ステッチ、最後の仕上げにいたるまで、すべての工程に熟 練した職人による手仕事と厳しいチェックが入る。職人の 数は数十人にのぼり、扱うパーツは 200 を超える。 泉氏が同社に入社したのは 2010 年 10 月。この新たな 局面への課題を抱えているときだった。前職では大手企業 で商品開発や工場の品質管理に携わっていた泉氏が同社へ の入社時に感じたのが、ものづくりの現場の違いだった。
手順を見える化して職人技 と新体制の融合を目指す
JMAC を選んだ理由について泉氏は「私にとって日本 能率協会グループは、前職でさまざまなセミナーを受講し たり、当社の人事の教育で日本能率協会マネジメントセン ター(JMAM)にお世話になったりしたこともあり、も ともと馴染みがありました。もちろん、依頼の際には他社 と比較検討しましたが、以前から日本能率協会のレベルの 高さを知っていて信頼を寄せていたこと、工場診断の提案 が的確だったことから JMAC にお願いすることに決めま
ランドセルの製造プロセス※
※株式会社セイバンの公式ホームページの情報をもとに作成
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