ビジネスインサイツ60
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タラリスはイギリスの会社ですから、われわれとは企業風 土や文化がまったく違います。日本人は中長期でものを考 える傾向が強いのですが、向こうは短期で考えますし、根 本の思想が違うのです。 東洋と西洋の思想の違いも大きく影響しました。たとえ ば、日本人は会社に対する思い入れがあることが多いので すが、イギリスでは会社への思い入れはあまりなく、自分 のキャリアアップのためならすぐ他社に移ってしまいま す。一方的にやり方を押し付ければ優秀な人は去ってしま うのです。理解し合いながら、いかにモチベーションを上 げて仕事をしてもらうか、というところで苦心しました。 今はかなり融合しつつあり、次の段階に入っています。 現在、当社グループは世界25ヵ国に現地法人を置き、 100 ヵ国以上の国々で事業を展開しています。世界各国 のグループ社員が一丸となるために、共通の社員行動規準 「グローリースピリット」をつくりました。8 ヵ国語に訳 して全社員約 9000 名に配布し、企業理念「求める心とみ んなの力」のもと「“One GLORY” を合言葉にみんなで がんばろう」と働きかけています。
す。現場サイドの困っていることをいち早く吸い上げ、対 処していくことは非常に重要です。 また、支店を回ったときには、銀行や量販店など地域の お客様のところに必ず顔を出して対話します。地域によっ て考え方が違いますから、直接現場に行って地域の情報を 知ることはとても大切です。その情報を開発やサービス向 上につなげることができますし、機関投資家と話をすると きにも的確な受け答えができます。現場の実態を知ってい ると、何ごとにも自信を持って対処できるようになるので す。これは海外も同じで、アメリカやヨーロッパ、アジア には年 1 回ずつ行って現場の声を聞くようにしています。 三現主義はとても大事です。
貨幣からセキュリティーへ 培った技術で社会の安全に貢献する
鈴木 : 企業理念 「 『求める心とみんなの力』 を結集してセキュ ア(安心・確実)な社会の発展に貢献する」についてです が、貨幣という事業領域で特化してきた中で、安心・確実 な社会というと、さらに事業領域が広がっていくイメージ があります。100 周年に向かって、この企業理念のもと での事業の拡大についてお聞かせください。 尾上:私が好きでよく使う言葉に「本業を離れるな。本業 を続けるな」というものがあります。これは三菱総研元会 長・牧野昇氏の著書の一節で、事業を行ううえでの本質を よくついている言葉だと思っています。 自分の事業とはまったく関係のないことに「これはいい な」 とポンと手を出しても成功しないことが多いものです。 かといって、われわれの場合、最初の硬貨計数機だけに固 執していたら今はなかったでしょう。そこから技術革新を 続けてコア技術である「認識・識別技術」と「メカトロ技 術」を培い、硬貨包装機、スーパーのレジ釣銭機など、貨 幣に関するところにはほとんど参入してきました。 そして、この技術を活用して新たな事業領域への参入も 進めています。たとえば、選挙投票用紙の開票は従来手作 業で行われていましたが、漢字・仮名交じりの手書き文字 を正確に判別する「認識・識別技術」と投票用紙を高速で 分類・計数する「メカトロ技術」を駆使することで 1 分 間に 660 枚の処理が可能となり、開票作業の高速化・省
サービス向上 それは現場を知ることから
鈴木:グローバルに販売拠点がある中で、これからも新し いものをつくり出していくために、社長として現場や社外 の方の声を聞くときに工夫していることがあればお聞かせ ください。 尾上:われわれはメーカーですから、とにかく「三現主 義」—現場・現物・現実(現認)—を徹底しています。一 部を聞いただけで判断すると間違うことがありますから、 国内の支店 10 ヵ所には年 2 回ずつ行って直接話を聞くよ うにしています。 現場では、昼は現地の幹部とミーティングをして、夜は 若い社員も一緒にお酒を酌み交わしながら、ざっくばらん にいろんな話をします。そうすれば、現場でどんな問題が 起きていて何に困っているのかを、つぶさに早急に知るこ とができます。事務所に座っていても、現場の良いことは 入ってきますが悪いことはなかなか入ってきません。悪い ことほど早く知り、事が大きくなる前に対処すべきなので
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