ビジネスインサイツ60
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「絶えざる開発の心」 で 未知なることに 挑み続ける
〜ワンストップ・ソリューションで世界トップブランドを目指す〜
グローリー株式会社 代表取締役社長
尾上 広和
コニカミノルタ株式会社 「縦割り組織」に「横串」を通して、 全体最適を目指す! 株式会社ニチレイ CS と ES の両輪で 「働きがいのある職場」をつくる ポーラ化成工業株式会社 「成果が出ている」実感を 得られる改革活動が現場を変えた!
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毎回、革新、成長を続けている企業のトップに 経営哲学や視点についてお話しを伺います。 インタビュアー:JMAC
代表取締役社長 鈴木 亨
「絶えざる開発の心」で 未知なることに挑み続ける
グローリー株式会社
〜ワンストップ・ソリューションで世界トップブランドを目指す〜
「新しいものをつくり出したい」 その思いは DNA として脈々と
鈴木:グローリーは 1918 年に創業し、あと 2 年余りで 100 周年を迎えられます。最初にグローリーが 100 年間 大切にしてきたものや DNA についてお聞かせください。 尾上:当社はもともと、電球製造装置の修理会社として 従業員 7 名でスタートしました。当初は修理仕事だけで、 経営が厳しかったため、次第に自社製品を持ちたいという 思いが強くなり、さまざまな製品の開発に挑戦する日々が 続きました。 そのような中、大きな転機が訪れました。当時の大蔵省 造幣局から「アメリカ製の硬貨計数機は大きすぎて使いづ らく、メンテナンスもしにくいから、国産のモノをつくっ て欲しい」と開発依頼を受けたのです。われわれにとって まったく未知の製品でしたが「これに挑戦すれば、自社製 品開発の新しい道が開けるのではないか」と即座に引き 受け、数ヵ月の試行錯誤の末、1950 年に国産初の硬貨計 数機を完成させました。これが通貨処理機事業へ参入する きっかけとなり、 グローリーは新たな道を歩み始めました。
その後、1953 年には民間銀行向けの硬貨計算機を開発 し、大好評を得て多くの銀行に導入されました。以降は通 貨処理機事業を柱に成長し、技術革新を続けながら自動販 売機やコインロッカー、硬貨包装機など、多くの国産初の 製品を世に送り出してきました。 この創業以来持ち続けてきた「絶えず世にない新しいも の、人の役に立つものをつくっていく」という思いは「求 める心とみんなの力」という企業理念となり、今もなお企 業風土・DNA として脈々と受け継がれています。
姫路-東京の夜道をトラックで 保守サービスの重要性を実感
鈴木:尾上社長は 1970 年の入社以来「新しいものをつ くり出す」 という企業風土の中で、 さまざまな業務に携わっ てこられたと思いますが、何かとご苦労も多かったのでは ないでしょうか。 尾上:いろんな経験をしてきましたね。中でも思い出深い のは、営業を担当していたときのことです。従来の商流に 乗らない新規市場で新製品を扱ったときのことですが、当
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設立:1944 年 11 月(創業:1918 年 3 月) 資本金:12,892,947,600 円 従業員数:3,262 名(2015 年 3 月 31 日現在) 主な事業内容:通貨処理機、情報処理機および通貨端末機器、 自動販売機、自動サービス機器などの開発・ 製造・販売・メンテナンス
グローリー株式会社は 1918 年(大正 7 年)に創業し、 2018 年に創業 100 周年を迎える。 「絶えざる開発の心」を 創業当時から大切に受け継ぎ、時代の要請に応える画期的な 製品を次々と世に送り出してきた。2011 年に代表取締役社 長に就任した尾上広和氏は 2012 年、英国・タラリス社を買 収し、グローバル展開に一気に加速をかけた。今回、新たな イノベーションを仕掛けた尾上氏に、100 年続くグローリー の DNA の強み、そしてグローバル展開を図るうえでの苦労 や喜び、今後の展望についてお聞きした。
尾上 広和
代表取締役社長
時は姫路からのダイレクト営業・ダイレクト保守でした。 製品は良かったのですが売るのがたいへんで、しかも製品 が故障するたびにわれわれが夜中に姫路から東京までト ラックを走らせ、修理に向かっていました。やはり、それ なりの体制を整えてからでないと物事はうまくまわってい かないな、と感じたものです。 そこから思ったのは、われわれが培ってきた販売・保守 体制の中での一番の強みは保守サービスにある、というこ とです。顧客満足度は、品質・価格も重要ですが、故障し たときにいかに早く対応するかで決まります。安心して使 えることが一番大切なのです。 そしてその後は、企画・開発・生産・販売・保守サービ スまでグループ一貫体制の構築に努めました。今ではこれ が、われわれの大きな強みとなっています。グループ内で すべてを行うため意思決定が速いのはもちろんのこと、メ ンテナンスをすることでお客様の使い勝手を知ることがで き、次の開発に生かせます。この好循環が、さらなる顧客 満足度の向上につながるのです。 われわれは「グローリーを世界のトップブランドに」と いうグループビジョンを持っていますが、顧客満足度ナン バーワンになれば世界のトップブランドになれると思って います。
世界トップブランドを目指す グローバルマネジメントの流儀
鈴木:かねてより積極的なグローバル展開を続けてきたグ ローリーですが、2012 年に貨幣処理機大手・英国タラ リス社を買収し、一気に加速をかけました。買収のねらい や、尾上社長のお考えになるグローバルマネジメントにつ いてお聞かせください。 尾上:私はこの買収で、タラリスが欧米で持つ「販売・保 守サービス網」を活用し、海外事業の成長に弾みをつけた いと考えていました。 タラリスは海外で一番の競合企業で、銀行窓口用入出金 機で世界シェア 4 割を占め、世界 22 ヵ国に直販・直メン テナンス網がありました。子会社化してからは、タラリス が他社製品を納品していたところには自社製品を入れ、製 品開発では技術交流を図りながら、それぞれの強い分野を 伸ばしてきました。現地ニーズを見極め、顧客基盤の強化 を進めた結果、 現在はお互いにシナジー効果が出ています。 しかし、グローバルでの統合というのはやはり難しいも ので、最初の 1 年間はなかなか融合できず苦労しました。
Hirokazu Onoe
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タラリスはイギリスの会社ですから、われわれとは企業風 土や文化がまったく違います。日本人は中長期でものを考 える傾向が強いのですが、向こうは短期で考えますし、根 本の思想が違うのです。 東洋と西洋の思想の違いも大きく影響しました。たとえ ば、日本人は会社に対する思い入れがあることが多いので すが、イギリスでは会社への思い入れはあまりなく、自分 のキャリアアップのためならすぐ他社に移ってしまいま す。一方的にやり方を押し付ければ優秀な人は去ってしま うのです。理解し合いながら、いかにモチベーションを上 げて仕事をしてもらうか、というところで苦心しました。 今はかなり融合しつつあり、次の段階に入っています。 現在、当社グループは世界25ヵ国に現地法人を置き、 100 ヵ国以上の国々で事業を展開しています。世界各国 のグループ社員が一丸となるために、共通の社員行動規準 「グローリースピリット」をつくりました。8 ヵ国語に訳 して全社員約 9000 名に配布し、企業理念「求める心とみ んなの力」のもと「“One GLORY” を合言葉にみんなで がんばろう」と働きかけています。
す。現場サイドの困っていることをいち早く吸い上げ、対 処していくことは非常に重要です。 また、支店を回ったときには、銀行や量販店など地域の お客様のところに必ず顔を出して対話します。地域によっ て考え方が違いますから、直接現場に行って地域の情報を 知ることはとても大切です。その情報を開発やサービス向 上につなげることができますし、機関投資家と話をすると きにも的確な受け答えができます。現場の実態を知ってい ると、何ごとにも自信を持って対処できるようになるので す。これは海外も同じで、アメリカやヨーロッパ、アジア には年 1 回ずつ行って現場の声を聞くようにしています。 三現主義はとても大事です。
貨幣からセキュリティーへ 培った技術で社会の安全に貢献する
鈴木 : 企業理念 「 『求める心とみんなの力』 を結集してセキュ ア(安心・確実)な社会の発展に貢献する」についてです が、貨幣という事業領域で特化してきた中で、安心・確実 な社会というと、さらに事業領域が広がっていくイメージ があります。100 周年に向かって、この企業理念のもと での事業の拡大についてお聞かせください。 尾上:私が好きでよく使う言葉に「本業を離れるな。本業 を続けるな」というものがあります。これは三菱総研元会 長・牧野昇氏の著書の一節で、事業を行ううえでの本質を よくついている言葉だと思っています。 自分の事業とはまったく関係のないことに「これはいい な」 とポンと手を出しても成功しないことが多いものです。 かといって、われわれの場合、最初の硬貨計数機だけに固 執していたら今はなかったでしょう。そこから技術革新を 続けてコア技術である「認識・識別技術」と「メカトロ技 術」を培い、硬貨包装機、スーパーのレジ釣銭機など、貨 幣に関するところにはほとんど参入してきました。 そして、この技術を活用して新たな事業領域への参入も 進めています。たとえば、選挙投票用紙の開票は従来手作 業で行われていましたが、漢字・仮名交じりの手書き文字 を正確に判別する「認識・識別技術」と投票用紙を高速で 分類・計数する「メカトロ技術」を駆使することで 1 分 間に 660 枚の処理が可能となり、開票作業の高速化・省
サービス向上 それは現場を知ることから
鈴木:グローバルに販売拠点がある中で、これからも新し いものをつくり出していくために、社長として現場や社外 の方の声を聞くときに工夫していることがあればお聞かせ ください。 尾上:われわれはメーカーですから、とにかく「三現主 義」—現場・現物・現実(現認)—を徹底しています。一 部を聞いただけで判断すると間違うことがありますから、 国内の支店 10 ヵ所には年 2 回ずつ行って直接話を聞くよ うにしています。 現場では、昼は現地の幹部とミーティングをして、夜は 若い社員も一緒にお酒を酌み交わしながら、ざっくばらん にいろんな話をします。そうすれば、現場でどんな問題が 起きていて何に困っているのかを、つぶさに早急に知るこ とができます。事務所に座っていても、現場の良いことは 入ってきますが悪いことはなかなか入ってきません。悪い ことほど早く知り、事が大きくなる前に対処すべきなので
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尾上 広和
Hirokazu Onoe
1948 年 1970 年 2000 年 2004 年 2010 年 2011 年
姫路市生まれ グローリー入社 自販機・遊技システム事業部長 常務取締役 取締役執行役員副社長 代表取締役社長(現任)
人化を実現しました。 さらに今、力を入れているのは、紙幣の画像処理やそこ から派生した生体認証、顔認証技術です。この顔認証は、 マンションに住む高齢者の見守りサービスにも活用できる など、まさに安心・確実のセキュリティーの領域に入りま す。そしてわれわれは、このセキュリティー領域からまた 何か新しい芽が出るのではないか、社会に役立つ新しいも のをつくり出せるのではないか、そういった発想で挑戦を 続けています。
かかる場合もありますから、長い目で見て辛抱強く継続し ていくことが大切です。 これはビジネスの場面だけでなく、 人材育成でも同じです。 企業を支えていくのは人ですから、 人をどう育てていくかが企業にとって一番大事です。 日本の場合、減点主義になりがちですが、加点主義でモ チベーションをうまく上げることが大切です。失敗や間違 いは誰にでもあります。一度失敗すればそれが教訓になっ て、次は失敗しないように努力しますから、失敗のない人 間より失敗をする人間のほうがむしろ育っていくのです。 ビジネスも人材育成も、継続してこそ 1 つの大きな力に なっていくのではないかと思っています。 最後に、チャンスを生かす「決断」ができること。チャ ンスが巡ってきたときにどう決断するか、長年の経験に裏 付けされた勘が非常に重要です。客観的な数値はもちろん のこと、最後は勘で勝負する、そういった実力を身につけ るのです。当社で言えば、タラリスの買収で約 800 億円 という巨額を投じるべきか逡巡しましたが、円高の追い風 を生かせるこのチャンスは二度とないだろうと買収に踏み 切りました。その後、芽は順調に育ち、あと数年で成果を 収穫できるところまできています。この決断は正解だった といえるでしょう。またとないチャンスに巡りあったとき にどう判断するかが、次の展開を決め、会社の未来をも変 えていくのです。 いろんなところに、いろんなチャンスがあります。それ を察知するアンテナを常に張り巡らし、タイミングを逃さ ずチャンスをものにする。次世代のリーダーには、その経 験値・決断力をぜひ身につけてほしいと思います。
チャンスを生かす「決断力」が 会社の未来を切り拓く
鈴木:最後に、尾上社長から次世代を担うトップ、経営幹 部の方へ向けたメッセージをお願いします。 尾上:私は経営者にとって大切なのは「企業風土をつくる こと」 「継続力」 「決断力」の 3 つだと考えています。 まず、会社の根幹となる「企業風土」をしっかりとつく ることが大切です。当社は「絶えず新しいものを開発製造 すること」を企業風土としています。そうした確固たるも のが 1 つでもあれば、強い企業体質が維持できると考え ています。 そして、 何ごとにも「継続」していく忍耐力を持つこと。 たとえすぐに芽が出なかったとしても、諦めればそこで終 わりです。短期で成果が出るものもあれば、5 年 10 年と
および自社の課題を抽出しています。このフットワークがグローリーの DNA と結び つき新たな製品1事業を生み出していると感じました。また、チャンスを生かす決断 力もまさにこの現場感覚からくるものであると確信しました。
グ
ローリーの DNA は新しいものを絶え間なくつくり出すチャレンジ精神にあ ると思います。尾上社長は自ら現場に足を運び、現場の実態を把握し、顧客
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〜個々の木ではなく、まず森を見る ―今ある「部門最適」から「全体最適」への改革〜
ビジネス成果に向けて JMAC が支援した 企業事例をご紹介します。
「縦割り組織」に 「横串」を通して、 全体最適を目指す !
コニカミノルタ株式会社
コニカミノルタ株式会社は、情報機器において世界トップクラスの シェアを誇るが、実は各部門の専門性が高いゆえの悩みを抱えてい た。縦割り組織による「利益なき繁忙」が常態化していたのだ。情 報機器事業における新規事業へのリソース創出が急務となり、長年 の「利益なき繁忙」の旅にピリオドを打つことを決意する。そして 2012 年、縦割り組織に横串を刺すという大きなチャレンジに踏み 出し、2014 年から「型」の導入による「全体最適」改革に乗り出 した。この改革における葛藤や期待、今後の展望をお聞きした。
業務革新部 部長
伊藤 孝司
Takaji Itou
世界トップクラスの企業が 抱える意外な悩み
コニカミノルタ株式会社(以下、コニカミノルタ)は日 本の光学機器メーカーとして 1、2 番目の歴史を持つコニ カ株式会社(1873 年創業)とミノルタ株式会社(1928 年創業)が経営統合し、2003 年に誕生した。 「コニカ」 「ミノルタ」といえば、カメラやフィルム、複 写機で一時代を築いた存在として有名だが、統合した現在 はその光学技術の DNA をさらに進化させ、カラー複合機 等の情報機器分野において世界トップクラスのシェアを誇
る。その中で、 新規事業への拡大を視野に、 積極的なリソー ス創出のための業務効率化を推進してきた同社。2012 年 には情報機器事業内に改革推進組織※を発足し、最初の 2 年間は営業利益を上げることに特化して改革を推進した。 発足当初、 「開発や生産、販売の各部門は、それぞれ試 験研究費の最適化、原価低減、販管費低減など、みな本当 にがんばっていました。 しかし、忙しい割には最終的な 営業利益につながらない。一生懸命なのにどうして、とい う感覚がありました」と語るのは、当初より改革推進に携 わってきた業務革新部 部長の伊藤孝司氏だ。
※現在はコーポレートの業務革新部
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伊藤氏によれば、 「利益なき繁忙」の最大の原因は、縦 割り組織ゆえの非効率性だった。 「開発・生産・販売の壁 をもっと取り払い、全社的な改革をすることで業務量と営 業利益がリンクする体質にしていかなければならないと考 えていました」と、組織横断で専任的に活動するチームが 必要だったと語る伊藤氏。 発足から 2 年間、力技で改革を乗り切ってきたが、そ の定着化、さらなる利益貢献のためにコニカミノルタは、 新たな道を探し始めた。
と、これが同社にとっての次なるチャレンジだったと伊藤 氏は語る。 コンサルティングファームの選定にあたり、まずは 100 社から 4 社に絞り込み、提案を受けた。その中から JMAC を選んだ理由について伊藤氏は「重視したのは、 きちんとした『型』を持っていること、そして一緒に汗を かきながら納得するまでやってくれることです。その両方 を兼ね備えていて、さらにメーカー経験が豊富なところが 決め手になりました」と語る。 改革のキーワードは「型の導入による業務プロセス視点 での全体最適」 。2014 年、 コニカミノルタは JMAC をパー トナーにさらなる改革に乗り出した。
力技からの脱却 ! 最適化 メソッドで組織を変える!
それまで、経験則に基づく力技で改革を乗り切ってきた という同社。 もっと確実な方法で改革を進めたい、 そう思っ た同社は、コンサルティングファームを活用しようと決断 する。 「われわれはメーカーとしてこれまで何十年もプロセス 改革をし、さらに 2 年間の改革活動でそれなりの成果を 上げてきました。しかし、さらなる営業利益への貢献/全 体最適の推進には、限界を感じていました。ですから、こ れまでのような力技ではなく、完成された『型』を使って 改革を進めようと考えました。それに、自分たちでわかっ ているつもりでも本当はどうなのか、第三者の目線で指摘 してほしかったのです。抜本的な見直しをするなら今しか ないと思い、外部からの支援を要請することにしました」
JMAC の 「型」 の例 (抜粋)
その仕事、本当に必要? 「利益なき繁忙」をなくす
プロジェクトを始動して最初に着手したのは「現状の見 える化」だ。業務量調査を行い、徹底的にムダ・ムラをあ ぶり出していく。すると、部門間での重複業務が山のよう にあることがわかった。 「利益なき繁忙」―お互いの状況を知らずに、よかれと 思ってしたことが実は重複していた、ということがよく あった。たとえば、開発、生産、品質保証がそれぞれ独自 に行った市場調査など、一本化できるものも多い。これに ついて伊藤氏は「どの部門で何をしているのかわからず、 欲しいものがあればとりあえず自分たちでつくってしまう
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のです。 そのため、 どんどん重複し た仕事が増え、忙 しくなっていまし た」と分析する。 はじき出され た業務削減率は、 部門別で約 3 割。
中根英治氏
人間が説明しようとしても、なかなかそうはいきません」 とそのときの様子を振り返る。 しかし、それを一緒に実行しようという気運に変えてい くためには、独自の施策が必要だった。同社にはすでに部 門内に改善組織が存在し、自分たちだけで改善活動をやり 遂げるという意識がとても強い。そこで、まずはもともと の部門内の改善組織を生かし、部門内完結できるものにつ いての業務改善から始めた。そして「こうすれば業務が変 わる」という実感を持ってから、よりハードルの高い横串 での部門間連携強化に入っていけるよう段階的な施策を とっていった。 現在は横串の実行展開段階に入り、 「品質保証の機能強 化」と「グローバル営業の強化」の 2 テーマに取り組ん でいる。 「品質保証」は業務上すべての部門に関わり、 「営 業」は自己完結型の活動が多いため、横串の必要度と調整 範囲に差はあるものの、徐々に横のつながりは強くなって きている。 永井は「横串での改革を進めるうえでは、とくに全体が 俯瞰できて納得感があることが大切です。たとえば、品質 情報やスペック系情報などをカテゴリー単位で共有できる 仕組みをつくれば、他部門で何をしているかが見えて、重 複業務は減ります。 このような環境づくりが納得感を生み、 着実な改革につながるのです」と語る。
こ れ に つ い て、
2013 年から改革業務に携わってきた業務革新部第 2 業務 革新グループ課長の中根英治氏は「1 年間、改革推進の目 線で各部門の状況を見てきたので、やはりそうか、3 割も 削減できるのか、と感じました。次は実践だ、と身が引き 締まる思いでした」と語る。 本プロジェクトを支援した JMAC シニア・コンサルタ ント 永井敏雄は、当初の状況について「まず、一番の特 徴は部門ミッションが不明瞭で共有化されていないことで した。そして、 これは他社にない珍しいケースなのですが、 コニカミノルタさんにはもともと各部門に改善を専門に行 う組織があり、 部門最適の仕組みがありました。ですから、 部門ミッションを明確にした後は、この自浄作用的な組織 を生かしてコニカミノルタさんらしい改革をしていこうと 考えました」と語る。
「理解」と「実行」の間 その温度差をどう埋めるか
「現状の見える化」で課題を明らかにした後は、いよい よ改革に向けた施策の実践に入った。 改革を進めるうえで、 実はここが一番の難所でもある。改革活動は現業に加えて 行うため、面倒だという気持ちが先に立つことが多い。た とえ調査結果や説明に「なるほど」とうなずいたとしても 「すぐに取り掛かろう」とはなりにくいのだ。この理解と 実行の間の温度差を埋めていくのが難しい。 現場の納得を得るには、現場に足を運ぶのが一番だ。事 務局メンバーと JMAC が一緒になって各部門へ行き、説 明をした。伊藤氏は「各部門に行ったときには、まず永井 さんに説明していただきました。メーカーの者にとって能 率協会のネームバリューは大きく、皆が能率協会のコンサ ルタントの話なら聞いてみよう、となるからです。内部の
リバウンドを繰り返し 「人」も「会社」も成長する
そして、改革を推進するうえでは、個々人のマインドが 大きく関わってくる。伊藤氏が率いる業務革新部の事務局 メンバーは現在 20 人。ここでの経験は、きっと人を成長 させ、会社を変える力にもなっていくはずだと言い「メン バーには『ここは君のキャリアステップの場だぞ』 『次の ステップへ進むために、ここで精一杯覚えて、会社や自分 がいた部門を横から見てくれ』と常に伝えるようにしてい ます」と期待を込めて熱く語る。 しかし一方で、現場に戻ったメンバーから「一人で戻っ ても何もできない」という悩みをよく聞くという。事務局 にいるときに 「そうだったのか !」 と多くの気付きがあっ ても、現場では「1 対多」となり、 「縦」の常識の中で横 串の改革を推進するのはなかなか難しいのだ。
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横串の活動をするときには、従来の「縦の強さ」に「横 の強さ」を加えていかなければ、いつの間にか縦が強すぎ る組織にまた戻ってしまう。そうなると、本当のグローバ ルを目指していく中での業務プロセス改善や営業利益にも つながっていかない。 永井は「今は、かつての『箱モノを売る』時代から『グ ローバルでのソリューション提供』が求められる時代とな り、開発・生産・販売の密接な連携がますます重要になっ てきています。横串の調整機能を強化していくためには、 まず部門を構成する一人ひとりが横串を意識すること、そ して、常に組織連携がうまくいっているのかをモニタリン グし、随時修正・改善していくことが大切です」と語る。 リバウンドを繰り返しながら、徐々にでも横の強さを加 えていくことが、結局、目標達成への早道なのだ。
なコンサルティン グをしてくれまし た。 ですから 『ああ、 経験があってわ かって言ってくれ ているんだな』と 実感できている感 じが現場にはあり ま し た。ま た、経
伊藤孝司氏
営陣からは『確かにそうだ。頭を殴られたような思いだっ た』などと言われることも多く、やっぱり指摘されたこと がズバッと本質をついていて、目からうろこの部分があっ たんだろうなと思いました」と話す。 今回使ったプロジェクトを進めていくための「型」や、 日程の進捗管理のツールは、どの部門でも共通して使える ため「今後もさまざまな場面で活用していきたい」と伊藤 氏と中根氏は声を揃える。 そして伊藤氏は「全体最適を永続させるために、横串改 革活動を一過性で終わらせるのではなく、長い時間軸、視 点を持って進めていきたいと思っています。同時に、個人 のキャリアを生かして会社の力に変えていけるような組織 にしていきたいですね」と今後の展望を語る。 縦組織に横風を送り込む。そのとき、扉が大きく開かれ るほど、風はよく通り抜ける。コニカミノルタの個性あふ れる各部門の扉は、 今、 少しずつ全開に近づいてきている。 次々と光学技術の歴史を塗り替えてきた同社の次なる大き な一手が楽しみだ。
「人のチカラ × 組織力」で 全体最適を永続させる
これまでの活動を振り返り、伊藤氏は JMAC について 「期待どおり、持ってきてくれた『型』がすごく良かった ですし、一緒に現場に入って汗をかいてくれました。それ から、とくにお願いしたのは他社事例です。これを出して もらうと、 われわれが言うより随分と効き目がありました」 と評価している。 中根氏は「JMAC は現場の非常に細かいところまでよ く知っていて、教科書どおりのことだけではない、柔軟
です
とがポイント
状態にするこ
成果を見える
担 当 コ ンサルタントからの一言
「型」の活用でスピーディな改革立案を!
プロセス改革を推進するうえでの 「型」 は、 あるべき姿を立案するためのフレー ムワーク(改革視点やリファレンスモデル)であり、ビジネスモデル特性や 製品・サービス商品特性などに合わせ、適正に使用していくことが重要とな ピーディに立案可能となりますが、改革案のレベルが高くなり過ぎないよう に、現状の実力レベルから適正な落としどころを設定することも重要となり る状態にすることが、改革を永続的に推進するポイントとなります。 ります。 「型」を適用することで、確実に成果を得ることができる改革案をス
永井 敏雄
シニア・コンサルタント
ます。改革活動で疲弊してしまわないように、適度なサイクルで成果を見え
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人と組織(チーム)の力を最大化することを目的に JMAC が 支援した企業事例をご紹介します。
CS と ES の両輪で 「働きがいのある職場」をつくる
〜現場の本音に向き合い続けた 10 年間 そして今、次なるムーブメントへ〜
「現場の不安を払拭せよ!」 すべてはここから始まった
「おいしい瞬間を届けたい」というスローガンを掲げ、 日本の食卓を支え続けて 70 年。株式会社ニチレイは 1945 年に設立して以来、 「長期保存」 「品質保持」 「食材 の再現性」 といった特性を持つ “ 冷力 ” をコア技術として、 事業を進化させてきた。 そして 2005 年、ニチレイは、ニチレイフーズ(加工食 品) 、ニチレイロジグループ(低温物流) 、ニチレイフレッ シュ(水産・畜産) 、ニチレイバイオサイエンス(バイオ サイエンス)の事業を担う 4 つの事業会社からなる持株 会社体制へ移行した。 このとき、 ニチレイロジグループ(以下、 ロジグループ) は、地域の競合他社との熾烈な競争に勝つため、持株会社 化移行と同時に地域分 社化した。しかし、分 社は現場の雰囲気を大 きく変えた。 「市場や競争環境の 変化に伴う業績の低迷 もあり、分社の際には 村山匡秀氏 賃金を一時的にせよ下 げざるを得なかったの
です。そのため、現場の社員には不安が高まり、士気も低 下していました」と語るのは、当時のロジグループで人事 を担当し、改革推進の立役者となった現ニチレイ人事総務 部長の狩野豊氏だ。 当時まさにその現場である冷蔵倉庫部門に所属していた 現ニチレイ人事総務部人事企画グループマネジャーの村山 匡秀氏は、そのときの様子を「皆、これからどうなるんだ ろうと不安を抱えていて『こうなった以上、とにかくやる しかない』 という言葉ばかりが聞こえていました」 と語る。 村山氏はその 2 年後の 2007 年に人事部に配属され、狩 野氏と共に改革を担ってきた。 この不安感を払拭すべく、トップが動いた。当時のロジ グループ社長・村井利彰氏(現ニチレイ会長)が「仕事や 職場に不満を抱えている従業員がお客様を満足させること はできない」と考え、 CS(顧客満足)と ES(従業員満足) を両輪とした「働きがいのある職場づくり」を強く打ち出 したのだ。 この方針を受け、狩野氏は「ロジグループの人事担当者 として、非常に大きなミッションだと感じた」と当時の思 いを語る。そして、改革を成功させるためのパートナーに JMAC を選んだ。 JMAC を選んだ理由について「以前からグループ会社 のニチレイフーズが JMAC の CS 支援を受けていたので、 きっかけはありました。他の 5 社からも提案を受けてみ たのですが、こちらがやりたいことを話して一番親身で柔
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株式会社ニチレイ
冷凍食品や食品物流でお馴染みの株式会社ニチレイ。中核 の事業である物流部門を担うニチレイロジグループは 2005 を行った。現場には不安が広がったが、トップの強いリー 年、ニチレイの持株会社化に伴い誕生し、併せて地域分社化 ダーシップのもと現場の力を盛り返すための「働きがいのあ
る職場づくり」が始まった。活動を始めてから 10 年目を迎 現場の本音に向き合い続けてきた人事担当のお二人に、この 10 年の苦悩や喜び、そして今後の展望をお聞きした。
えた今、 ニチレイグループ全体へとこの活動が広がっている。
Yutaka Karino
狩野 豊
人事総務部長
軟な対応をしてくれたのが JMAC でした。やっぱりここ しかない、と確信しました」と語る。 こうして 2005 年、 ロジグループは JMAC をパートナー に改革に乗り出した。
の場合も同じだった。狩野氏は調査結果を見たとき「改革 には相当の覚悟がいるな、と改めて腹をくくりました」と 語る。 この調査結果の最初の印象について、ニチレイフーズの CS 支援に引き続きロジグループの支援を担当した JMAC シニア・コンサルタントの江渡康裕はこう語る。 「まず、想像していたより満足度は低く、根深く幅広い 不満があると感じました。こういった改革は、経営者の本 気度が現場にどれだけ伝わるかが大切なのですが、村井社 長がすべての自由記述欄に目を通されているとお聞きし、 きっとこの調査は改革に生かされ、本気度が伝わっていく だろうと思いました。そして、この調査結果を真摯に受け とめ、改革を実務レベルで担っていく狩野さんたちのお手 伝いを一生懸命しなくてはいけないと強く感じました」
現場の不満が浮き彫りに! ES 調査に何が書かれたか
CS・ES の両輪で改革を進めるため、まず顧客である食 品メーカーや商社を対象に CS 調査(顧客満足度調査)を 行い、その半年後に社員やパート・アルバイト、派遣社員 など全従業員を対象とした ES 調査(従業員満足度調査) を行った。 ES 調査では、現場からの不満が殺到した。調査票の自 由記述欄には「同じ仕事なのに、なぜ派遣社員のままなの か」 「なぜ給料がグループ他社より低いのか」 「分社化の意 図がわからない」 といった不満であふれ、 その数は膨大だっ た。それに加えて、 「この取組みにより、会社から “ 従業 員に満足を提供してもらえる ” のだ」と誤解している人も 多かった。 ロジグループは全国に 100 の事業所があり、従業員の 就業形態もパートや派遣社員などさまざまだ。中には 24 時間体制のため、常に人同士が「すれ違い」になる職場も 多い。 そのため、 メッセージが伝わりにくく 「従業員の満足」
フィードバックが難しい 現場の声にどう応えるか
こうして不満と誤解の中スタートした改革だったが、一 番難航したのが調査後の「フィードバック」だった。調査 結果を全社掲示板に掲示しても読んでもらえないのだ。調 査結果を職場単位で集計すると、少人数の職場では自分の 書いたことが周りにわかってしまうため、大きな単位で集 計せざるをえなかったが、そうすると自分の回答がどこに
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あるのかわからなくな り、読まなくなる。 こうしたジレンマを 抱えたまま、数年間紆 余曲折した。 「ES 調 査 を す る と 言ったらオーッと皆期 狩野豊氏 待して、フィードバッ クしないと期待を裏切
貢献の実感、あいさつ」ができたときだとわかった。 そして、これらを職場コミュニケーションガイド 『STEP !』に集約して現場に配布し「働きがい」を支え るコミュニケーションとはどういうものなのかの浸透を 図った。そこには社員のメッセージや取組み事例も豊富に 載せた。 「みんなが考える働きがいはこれです、と発表で きたので、ある意味『STEP !』は活動の集大成と言えま す」と感慨深げに語る狩野氏。 こうして、ロジグループ流の働きがい調査は、取組みの スタンダードづくりへとつながっていった。
られたと感じる。そういうサイクルも江渡さんに教えても らいましたが、やはりフィードバックが一番難しかったで すね」と狩野氏。 そして、この状況を打破すべく「 『働きがいのある会社』 の理論面などを江渡さんに教えてもらいながら、そもそも 何をしたいのかという基本に戻り、経営者の責任やその中 での社員との関わりなどの整理も一緒にしてもらったので す」と別の角度から改革を捉え直したと狩野氏は語る。そ して、これを ES 調査の内容に反映し、それまで使ってい た JMAC 版 ES 調査を少しずつロジグループ版に進化さ せていった。
続けてよかった! 現場が明るく元気に
一つひとつの活動を地道に行い、まさに STEP してき たロジグループ。現場の反応はどう変わっていったのだろ うか。村山氏は「最初は現場のやらされ感が強かったので すが、調査とフィードバックを繰り返し行い、自分たちで 考えるように変えていくと、皆が徐々に前向きに取り組む ようになり、現場の雰囲気も明るくなりました」とその変 化をうれしそうに語る。 同時に、ここまで来るのに苦労もあった。最初の 5 年 間はとくに「継続の苦しみ」を味わったという狩野氏は 「フィードバックがうまくいっていなかったときは『どう せ回答してもムダなんだから、毎年同じこと聞くなよ』と いう現場の思いがヒシヒシと伝わってきて、調査は隔年に しようかと考えたりもしました。そういうときに江渡さん から、続けることの意義や新しい発想を教えてもらうなど して、ここまで続けることができました」と話す。 村山氏は江渡とよく議論を交わしたと言い 「江渡さんは、 良い悪いを正直に言ってくれるので、ときには議論するこ ともありました。しかしそれは、当社を思ってくれるから こそだと思うので、とても感謝しています。そして江渡さ んは、CS・ES 含めさまざまな企業を見ているので、われ われの発想が及ばない角度からこういうのがある、と提示 してくれるので、とても勉強になりました」と振り返る。 これについて江渡は「トップの思いも同じだと思うので すが、大事なのは結局現場なのです。この取組みは現場の 人たちがカギなので、そこをどう理解していくのかなど、 第三者的 ・ 客観的な意見も申しあげてきました。その中で、
「満足」は提供されるものじゃない 一緒につくり上げていくものだ
調査内容を進化させていく中で、2010 年、ついに「こ れだ!」というフィードバック方法にたどり着いた。思い 切って調査結果の集計単位を大きな会社別部門別から最小 単位のセンター別に変えたのだ。 その理由について江渡は「職場に焦点を当てて、10 人 単位なら 10 人単位で集計することにしたのです。その 10 人の職場の仲間と一緒に働きがいをつくるんだ、と方 向転換して、公開方法もオープンなものにしました」と語 る。併せて ES 調査の名称も 「従業員満足度調査」 から 「働 きがい調査」に転換した。ここには「従業員満足を提供さ れる側ではなく、みんなでつくる!」というメッセージを 込めた。 さらに、現場の人たちはどのようなときに「働きがい」 を実感するのか、事業所の所長をはじめ、役職・非役職 に関わらずさまざまな立場の 100 人にインタビューした。 その結果から 「働きがい」 を実感できるのは 「相互の尊重、
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皆さんがご自身で考え抜いたからこそ現場にも浸透し、現 場でも考えるようになったのだと思います」と語る。
謳うのですが、ここまで真剣に取り組む会社はなかなかあ りません。それはやはりトップの強い信念と発信力、それ を受けとめた皆さんの取組みがあったからだと思います。 ES に着目したのも、物流は箱やトラックじゃなくて人な のだという強いメッセージで、今もぶれていない。そこは ぜひ続けていっていただきたいと思います。また、 『働き がい』だけにフォーカスすると内向きの思考になりやすい ので、CS と ES の両輪を忘れず、CS が ES を生み出すサ イクルも意識した活動ができれば、今後もさらに進化し続 けられるのではないでしょうか」と見ている。 今後、JMAC に期待することについて村山氏は「これ からも、自分では気づかないことを率直に伝えて欲しいで すし、引き続き私たちを引っ張りながら、鍛えていって欲 しいですね」と語る。 狩野氏は「今後、ロジグループでの活動をさらに進化さ せてニチレイグループ全体への取組みに広げていく中で、 これからも新しいアイディアをどんどん出して、われわれ の一員として一緒に活動していってもらえたらうれしいで すね」と今後の展望と期待を語る。 スローガン「おいしい瞬間を届けたい」の実現には、現 場の力が必要だ。そこに着目し、CS・ES の両輪で「働き がいのある職場づくり」を目指してきたロジグループ。そ して今、その取組みはニチレイ全体に広がりつつある。さ らに進化したニチレイの、 「おいしい瞬間」が食卓に届く のが楽しみだ。
培ってきた土台をもとに ムーブメントを広げていく
そして 2014 年、この活動がさらなる展開を迎えた。狩 野氏がニチレイの人事担当に異動し、ロジグループでの活 動をニチレイグループ全体へと広げていくことになったの だ。狩野氏は「現場の人たちが気持ちよく働き、社会に貢 献できる『働きがいのある職場』は、ニチレイグループ共 通の目標です。事業会社ごとの考え方や個性を尊重し、納 得感のある形でグループ全体に推進展開していきたいと 思っています」とニチレイでの活動に意欲を示す。 ロジグループでの活動が確かな土台となり、今につな がっていると語る狩野氏。10 年にわたる活動を振り返り、 JMAC 江渡についてこう語る。 「江渡さんは、私たちの声に真摯に耳を傾け、とことん 一緒に考えて柔軟に対応してくれました。だからもう、江 渡さんとは運命共同体のようなものです」 村山氏は「私たちが型にないような話をしても、必ず真 正面から受けとめて、的確な提案をしてもらえたのはすご くありがたかったですね。 ニチレイに私が転籍してからも、 江渡さんにまた支えてもらっています。江渡さんがいてく れて本当によかった」としみじみ語る。 江渡は「どの会社も経営理念では従業員の満足や CS を 担 当 コ ンサルタントからの一言
「自社流」を 見つけるための 前向きな 試行錯誤を!
シニア・コンサルタント
「働きがい」への転換と取組み継続が成功の鍵
「与えられる満足」から「共につくる働きがい」へ取組みの舵を切ったこと が非常に重要であったと考えます。どのような組織・職場にも不満はあり、 その解消のために職場環境や労働条件などを改善することは経営の役割で しょう。しかしより良い職場にしていくためには、 「働きがい」を「自分 ニチレイにおいては、地道な実態把握により方向性を転換できたこと、そ 成果が出始めているのだと認識しています。
江渡 康裕
事」としてとらえ、一人ひとりが自分の言動を変えていく必要があります。 してトップの強い覚悟に裏打ちされた継続的な発信や取組みがこれを支え、
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経営基盤の強化に向けたさまざまな取組みについて、 JMAC が支援した事例をご紹介します。
〜高い目標値の達成を目指した品質マネジメントの体制づくり〜
「成果が出ている」 実感を 得られる改革活動が現場を変えた!
研究から生産まで一貫した体制で 新しい価値を創造し続ける
ポーラ化成工業株式会社(以下、ポーラ化成工業)は 1929 年の創業以来、化粧品・健康食品の研究から生産ま で一貫したものづくりを行っている。常に「お客さまの期 待の一歩先」の製品を生み出すために、基盤研究、開発研 究、品質評価研究、包装材料研究、実用化、生産工程を保 有し、グループ内の各ブランド企業で行われているマーケ ティング・商品企画・販売と連携したバリューチェーンの 仕組みがあることが同社の最大の強みだ。 研究部門では、エイジングケア・ホワイトニングケア領 域に注力しており、その研究開発力は国際化粧品技術者会 連盟(IFSCC)での最優秀賞受賞に見られるように世界で も高く評価されている。 生産部門では、お客さまによい商品をお届けしようと 品質、安全・安心を従業員全員が心掛けており、総合化 粧品工場として、3,000 種を超える商品を年間 8,000 万 個以上も生産、安定した供給を続けている。徹底した品質 管理に努め、1998 年には品質マネジメントの国際規格・ ISO9001 の認証を取得、さらに化粧品 GMP を遵守した生 産体制を整えている。また、2000 年には環境マネジメン トシステムの国際規格・ISO14001 の認証を取得している。 ポーラ化成工業は、確かな技術力に裏づけされる「新し い価値」を届けるために、品質保証についても絶えず「ワ ンランク上」を目指している。
現場を歩き回って感じた 検品に頼らない品質保証体制
ポーラ化成工業に課された、品質に関わるもっともハー ドルの高い目標は「トリプルゼロ」 。お客さまにご迷惑を かけるリコールのゼロ、お客さまに届く前の販売網からの 引上げゼロ、そして「工場からトラックが外に出たらそこ は市場」という観点に立った出荷後流通網からの引上げゼ ロ――この3つのゼロの達成・維持を目標に生産活動を 行っている。とくに 3 番目のゼロは、工場にとってはもっ とも厳しいハードルだ。 こうした中、西方和博氏(現 営業・購買担当取締役) は 2011 年の 1 月から生産担当役員として、生産を管掌 することになった。もともと開発畑の人間で生産は初めて だったため、最初の 2、3 ヵ月はとにかく現場を歩いて生 産の実態を自分の目で見て確かめることに努めた。 「ものづくりの会社なので、まず『品質』です。それで、 とにかく現場に足を運びました。実際に行ってみると、ト リプルゼロを支える土台としては、かなり不安を感じまし たね」 (西方氏) 工場では、外にクレームになるものを出してはいけない という意識が先走り、つくって箱に入れた後に箱を開けて さらに検品をして出荷するという多重検査体制が常態化し
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ポーラ化成工業株式会社
世界中に「笑顔」と「感動」をもたらす技術集団を理念とするポーラ化成工業株 式会社は、ポーラ・オルビスグループの商品(化粧品)の研究、生産を担ってい る唯一の企業であり、高品質かつ安全・安心のものづくりを目標に日々活動して いる。その開発力・技術力は国内外から高い評価を得ている。品質についても高 い目標値が要求される中、さらなる向上に向けて JMAC と取り組んだ改革活動 について、同社の西方和博氏(営業・購買担当取締役) 、小林一成氏(品質保証 部課長) 、板井宏子氏(包装課リーダー)にお聞きした。 ていたのだ。多重検査で守る品質よりも、 「つくり」の段 階で安心できるようにしておく必要があると感じた西方氏 は、 「何か根本的な問題があると感じました。対お客さま に関しては、確かに品質保証部が受けるものですが、工場 の現場ではそれが具体的な仕事に落ちていないのです。ヘ ンなものがあれば、手前で取り除けばいい、という感じで した」と当初の不安を振り返る。
営業・購買担当取締役 西方和博氏
剰検査」ゆえに逆に前工程が緩みがちになっていること も、大きな課題として浮かび上がっていた。さらに班単位 で構成されている現場では、班ごとに言葉の定義が違うと いう状況にあることから、統一した解釈ができるように定 義をし直す必要性もあった。1 つのキーワードで集められ るデータに共通性がなかったり、解釈がバラバラだったり すると、データに信頼性がなくなるからだ。 さまざまな問題はあるものの、松田は細かな診断項目の 結果からというより全体に共通する文化や思想から「やり 方次第で確実に結果が出る!」と確信したという。 「製品に対するプライドと愛情の強さが半端ではないと 感じました。トップから現場までがそうなのです。根底に は『いいものをつくる!』という信念があるからこそ、少 し時間がかかっても検査依存型から脱却して製造工程で品 質をつくり込めるようになるはずだと考えました」 (松田)
客観的な品質診断で 漠然とした問題点が明確化
生産担当の役員になって半年間、西方氏は漠然と「根っ こを叩かないと…」と常々思いあぐねていた矢先、グ ループ企業のポーラ・オルビスホールディングス経由で JMAC を知ることになる。 「自分が認識した問題点は、短期の力技で解決できるも のではなく、何らかの仕組みが必要だと考えていました。 これまでのやり方や現場の風土みたいなものも含めて、第 三者の目でみてもらいたいと相談したところ、JMAC を 紹介されたのです」 (西方氏) こうして JMAC のシニア・コンサルタント松田将寿が 中心となって、品質保証の現状を詳細に診断することに なった。トリプルゼロという非常に高い目標値に向けて奮 闘している現場では、 確かにさまざまな問題が起きていた。 西方氏が指摘していたとおり、 何回も検査を実施する 「過
課題ははっきりした! 解決に 向けた実践のフェーズへ
「結果は出せる!」 という JMAC の思いが伝わったのか、 診断結果のレポートを読んだ西方氏は「さすがによくまと まっていて、うまく明文化できなかったり、チャート化で きなかったりしたことがすぐに出てきて、やっぱりそうか と納得できるものだったので、すぐにでも実践のフェーズ に移りたい」と思ったという。
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てもらうことに、じっくりと時間をかけました」 (松田)
真因を突き止めるこだわりを! 継続して得られる活動の手応え
小林一成氏(品質保証部課長) 板井宏子氏(包装課リーダー) JMAC の支援が決まると本プロジェクトの事務局が設 置され、小林一成氏(品質保証部課長) 、板井宏子氏(包 装課リーダー)が参加することになった。 当時の状況を小林氏は「不具合自体が多く、再発もして いました。発生しても検査でカバーするという状態だった ので、真因の部分を問題解決しなければ…」と捉えていた ものの 「これまでさまざまな取組みを実施してきましたが、 思うような成果を得られなかったのです。しかし、的を射 た指摘を得て変えていくことで良くなるはずだと思いまし た」と語る。 板井氏は「一番下流の包装工程の検査で流出を抑えてい たのですが、実は不具合の発生は日常化していて、重大な 問題だとは思っていなかったのです。しかし下流で流出を 抑えてもコストがかかるだけと診断で指摘され、上流での 対策の必要性を認識しました」と診断結果の内容にすぐに 納得できたという。 診断で解決すべき問題点は明らかになった。後は行動に 移すのみである。現場の状況からして「問題の根は深い」 と見ていた西方氏は、成果が出るまでに 4 年はかかるだ ろうと思っていたが、倍のスピードで進めて 2 年で決着 をつけることを最初に宣言したのである。 これに対して JMAC は「2 年の猶予を与えていただき ましたが、根っこは体質的な問題が大きいので、状況を見 ながらどのタイミングで何をやるかを常に意識していまし た。即効性はないですが、 最初にやったのは、 『正しいデー タ』を取ること、つまり正しいデータを基にするというこ とでした」 (松田)と、 まずは正確なデータ取りと統計デー タの正しい取り扱いをねばり強く支援した。データの取扱 いが雑になると、重点を絞れなくなり、問題の真因が見え にくくなるからだ。 「現場のリーダーに報告書への記載の仕方、言葉の定義 や使い方を教育したころから、少しずつ良くなってきまし た。さらにそれを読むマネジャー層には報告書を読むだけ でなく、実際に現場に行って何を見るべきか? を理解し 本プロジェクトが始動した当初、現場では「また何か始 まったな。 そのうちなくなるだろう」 という受け止め方だっ たが、継続して成果を出せるようになったのは、JMAC の仕掛けや工夫だけではなく、やはり事務局の存在が大き い。 JMAC のコンサルタント・師田和子は「活動がうまく いったのは、私たちからの提案に対して小林さんも板井さ んも、現場目線で『ここは受け入れる』 『ここは変えたほ うがいい』ということを、はっきりと主張してくださった から」と評価している。こうしたチームビルディングが最 初の半年ほどで行われ、それと並行して事務局側でも活動 による成果の手応えを実感できるようになっていった。 板井氏は「不具合の実際事例を使った勉強会で、不具合 の発生プロセス、時系列で考えることなどで、真因と対策 にアプローチするやり方を知りました。それまでそうした 考え方をしたことがなかったので、すごく勉強になりまし た。今までは流出させる原因を追っていましたが、そうで はなく発生する原因を突き止める必要があったのです」と 自身の考え方が変わったことが、活動の実感として得られ たという。もちろん、こうした考え方は今では各現場にも 広がっている。 小林氏も「データを観察して少しずつですが定量的に良 い数値が見えるようになると、成果を実感できるようにな ります。数値で成果が見えてくるようになると、やはり周 りも変わってきたので、活動の手応えを感じることができ ましたね」と語る。 西方氏は部長会に上がってくる議題に変化を感じたとい う。 「今後大きくなりそうな潜在的な問題が、早期に生産 部長会で取り上げられるようになったのです。今では、書 類に真因の突き止め、再発防止へのキーワードがきちんと 記載されるようになっています」と真因へのこだわりを持 つように皆が変わってきたことを強調する。
本当に成果を実感できた 工場の改善発表会
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このように「変わってきた」という手応えがないと、ど んな活動でも停滞してしまう。西方氏自身は、本プロジェ クトの「手応え」に対して常に敏感になっていたという。 「現場が変わっていく実感がないと、絶対に失敗すると 思っていました。日々、どう進化しているか常に検証した がっていたと思います。事務局との「適度な距離」を保ち ながら、上がってくる情報には常に敏感でした。ずっとア ンテナを張り続けていた感じです(笑) 」 (西方氏) 事実、定例の報告会は月に 1 回ということになっては いたが、 事務局や JMAC で 「これは今相談しないとマズイ」 ということで相談がもちかけられると、西方氏はなるべく 時間を割いて話を聞いていたという。 JMAC にとっては、支援と現場がかみ合った状態にし つつ、さらにそのレベルを上げていくことがカギだった。 松田は「活動支援のギアの上げ方とアクセルの踏み方に は、気を遣いました。しかし、西方さんは『ここは今は成 果が出ていないけど、これでいい』などと皆の前でピシっ とおっしゃるので、現場も納得するのです。それに小林さ んも板井さんもタスクフォースとしてすばらしい活躍ぶり でした。チーム力の発揮が大きなポイントになりました」 と振り返る。 そして現在、西方氏は真の意味で効果が発現していると 実感できるのは、工場の改善発表会だという。若い従業員 たちが科学的なデータに基づいて「こうしたらこのような 成果が出た」という発表が目白押しに登場するのである。 「2011 年当時と比べ、すべてにおいて良い数値が出て いて、 トリプルゼロの継続でもかなりの成果を上げました。 発表会をのぞいてみると、 現場ががんばっているからこそ、 良い数値が出ていることを本当に実感できます」 (西方氏) 2011 年に設定した目標については、確かに一定の成果 を得ることができた。しかし、すべてのものづくり企業が そうであるように、ポーラ化成工業を取り巻く市場環境も 急激に変化している。内部的には 2014 年に工場を統合し たため、現在は海外も含めた外注の品質問題、原価問題に 取り組んでいる。西方氏自身は、とくに設計段階での不具 合の早期発見において、上流設計を同社が実施し、途中か ら何段階にもなる外注に依存している場合、実生産のどの 程度手前で「打ち手」を出せるかが、非常に難しいという ことを認識している。 「これからの市場環境で、品質保証の投入コストと得ら れる成果の適正値など、まだまだ解答が見えていないこと もあります。内部的には『マイスター』などのキーマンが 育ってきたので、維持・継続という面では大丈夫だと思い ます。ただ、これからの顧客オリエンテッドできちんと分 けた取組み、サプライチェーンやバリューチェーンの問題 も含めて、次の改革フェーズのキーワードをあげて取り組 んでおります」 (西方氏) 現場が変わったという実感、成果を出す自信、維持・継 続していく仕組みは、次の改革フェーズでも大いに生かさ れるだろう。厳しい市場環境下でも、同社の卓越した開発 力・技術力・ものづくりの現場力は、新しい「お客さまの 感動」を生み続けるに違いない。
市場環境の変化に対応する 次の打ち手に挑戦していく
体 質 改 善 は、 人・ 現 場・ 組 織 を 育 て ていく経営者の信 念があってこそ!
担 当 コ ンサルタントからの一言
自律的運用がスムーズにできる体質づく りを !
品質問題は体質問題でもあり、 その「体質を変えたい」という声を耳にします。 それには、意識・考え方など体質改善だけでは足りず、目的達成のためのアプ 変えることが必要です。結果、現場で「おかしさ、リスク」を察知、伝達、組 ローチ(科学的問題解決、組織的な動きを規定するシステム改善)とセットで 織で考え対処する自律的運用がスムーズにできるような体質づくりが可能にな ります。このためには経営者が自分の信念に基づき、一定の成長(熟成)期間 をとって一貫した考え ・ 姿勢で人 ・ 現場 ・ 組織を育てていくことが必要です。 ポー ラ化成工業ではそれがうまくできたのだと考えます。
松田 将寿
シニア・コンサルタント
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若手のころから一人ひとりの「意」を「活 JMAC では、 かす」ことを大切にしています。 闘する このコーナーでは「iik 塾」と称して、日々奮 若手コンサルタントの「意」をご紹介します。
(い いく)塾 i ik
科学的アプローチでコミュニケーションに改善を!
スティクス領域、現在所属する本社間接 領域など他領域にわたり経験を積んでま 私は新卒入社以降、R&D 領域やロジ です。一方で、マネジメントの肝は業務 特性別に異なっています。下流工程にな はマネジメントコンサルタントの名のと おり、共通していることはマネジメント ローチを確立させるため、コミュニケー ションや脳科学、意識の分野に対して科 学的に再現性のある仕掛けを研究してい
まず、部門や領域別に共通しているも のとそうでないものがあります。私たち
ビジネスプロセス デザインセンター
したいと考えています。
いりました。多くの分野に関わったから こそ、私自身の見解や強さをより打ち出
田中 祥代
れています。
より「人」にフォーカスされます。個人 の思想や考え方やチーム内の意思疎通に より課題を鮮明にしていくことが求めら
れているわけです。しかし、上流工程に なるほど成果に対するネックというのは
るほど数値指標が容易になり、数値変化 に対して施策を打つことが迅速に求めら
最近では、とくに「人」に対するアプ
そうした多くの領域に携わるからこ そ、現状認識の幅を広げ、かつアプロー チの知見を高めるよう努めています。
ションの領域にこそ、改善余地があるの ではと考えています。
駄な時間を過ごすことになるのではない でしょうか? そういったコミュニケー
れます。しかし、コミュニケーションの 認識に齟齬があれば、手戻りが発生し無
とき、コミュニケーションが発生し多く の情報をお互いに処理することが求めら
に分けられます。2 人以上が同時に行う
ます。仕事を大きく分類すると、2 人以 上が同時に行う仕事と 1 人で行う仕事
「技術の共有」の魅力を お客様に伝えていきたい
「もっと広く見れば、チャンスがあるんじゃないか」工学系 当初、 の大学院で研究していたときに私が感じていたことです。 所属していた研究室のアプローチには限界があると感じ、別の テーマを探索しようとゼロから別アプローチをはじめ、修士 2
技術戦略センター
梶間 幹弘
強みとなる技術です。ところがこの技術というものは、当事者 である技術者にとっては身近過ぎるため、気づきにくいきらい
があります。私自身、過去、研究開発に携わっていましたが、 どこに技術があり、ましてどんな広がりがあるかなど考えたこ ともありませんでした。そこで、技術者同士が議論を通じ、お 互いの技術の広がりやその魅力に気づける、ひいてはその技術
年の夏、ついにそのアプローチが成功したことは大きな成功体 同じく研究開発に携わる中、 験でした。その後化学会社に就職、 共にチャ 「技術者の視野を広げ、 上記の成功経験が忘れられず、 ンスを見出す、そんな仕事ができたら」と考え、JMAC に入 社しました。
を生かした新商品・事業化のチャンスが見出せるようになる、 そんな技術の共有の仕方とはどういうものなのか、日々のコン サルティング経験の中で研鑽していきたいと考えています。 日本企業の技術者は優秀だと思います。その技術者が持つ技
現在は技術戦略センターで新商品・事業企画や技術戦略の策 定支援に携わっており、当初の想いを実現、少しはお客様にも
貢献できるようになってきたかな、と感じているところです。 とくに私が興味を持っているのは「技術の共有」です。差別化 できる新商品・事業企画の起点の 1 つとなりうるのが自社の
術の魅力に気づき、発信できるようになることは、近年取組み が拡大する M & A や企業間連携などの場面で企業の価値を高
めることにもつながると考えています。そのような場面で自分 なりの役割が果たせるようにしていきたいですね。
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- nformation
編集部からの耳より情報
JMAC の「企業内教育」サイトが新しくなりました。
JMAC コンサルタントを講師として派遣する「企業内教育」 。最新の研 修メニューをホームページで紹介しています。研修メニューは 250 以 上、検索機能も付いて、社内研修を検討中の皆様にとって利便性の高 いサイトにしています。
特徴
1 2
豊富な知識と経験を持つコンサルタント (講師)が、課題解決に直結するテーマを わかりやすく講義します。
特徴
3
お客さま個別のニーズに合わせて、研 修プログラムを柔軟にカスタマイズし て提供します。
特徴
分野別・階層別の人材育成に効果がある JMAC ならではの研修プログラムを豊富 に用意しています。
研修カテゴリー
経営戦略・事業戦略/マーケティング・CS・営業/研究・開発/生 産・サプライチェーン/オペレーション・情報システム/組織・人材/ TPM / IE /ビジネススキル研修/階層別教育/業界別/その他研修
URL http://www.jmac.co.jp/training
日本能率協会コンサルティング(JMAC)のコンサルタントが、コンサルティング現場で 得た経験や知見、問題解決の視点などを、コラムとして毎月 1 回更新しています。 ぜひご覧ください!
URL
http://www.jmac.co.jp/column
塚松 一也 笠井 洋
ものづくりのブレイクスルーで未来を拓け! 研究開発現場マネジメントの羅針盤 ロジスティクスの新潮流 MOT を核にした事業化展開 顧客中心マーケティングへの原点回帰
石田 秀夫 横山 隆史 守田 義昭 栗山 裕司
小澤 勇夫 細矢 泰弘 江渡 康裕
プロフィット・デザイン 設備を大切にする技術と技能 人事制度改革の論点
しなやかな組織・人・チームづくり 今から「働き方」の話をしよう 今こそ環境経営の推進を
田中 良憲 山田 朗
やると決めても長続きしたためしがない小生が、尾上社長がインタビューの最後に話された「継続力」に内心忸 怩たらざるを得ないのは当然至極。とはいえ、継続するからこそ独自の「らしさ」 (価値)が保蔵、熟成されて 風土をかたちづくり、その風土があればこそ、思い切った「決断」ができるのではないか、などと解釈しつつ、 今一度「自分は何を継続すべきか?」をじっくり考える機会を得ることができたインタビューでした。
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- Special Information
「JMAC エグゼクティ ブクラブ」が発足
この度、弊社は「JMAC エグゼクティブクラブ」を開催いたしました。本会は、ビジネスインサイツの読者や JMAC トップセミナーご参加の皆様から「幅広く経営の議論をしてみたい」 「異業種とのディスカッションの場を通 じて新たな視点を得たい」との要望をいただき、企画いたしました。
今年度は、加藤記念バイオサイエンス振興財団理事長・松田譲様(写真)を 座長に、有志の方 18 社(名)の皆様とスタートしました。 松田様は、協和発酵キリン株式会社の元社長であり、現在は国の諮問委員も 務められています。幅広いご経験をお持ちであることから座長をお願いいたし ました。
本年 10 月 28 日(水)に東京駅 に隣接しているフォーシーズンホ テルにて初会合を開催いたしまし た。松田様の基調講演後、参加メ ンバーの経営を取り巻く課題認識 や解決への視点などについて活発 な意見交換が行われ、異業種の皆 様の一体感も芽生えた会合でした。
場所を変えた懇親会では、より交流も深まり次回以 降の要望やアイデアも飛び出しました。
今年度の JMAC エグゼクティブクラブは全 4回にわたって開催されます。誌面等でもご 案内いたしますので、ぜひチェックしてみて ください!
Business Insights Vol.60 2015年 12月 発行
編集長:大石 誠 編集:柴田 憲文
TEL:03-5219-8058 URL:http://www.jmac.co.jp/ FAX:03-5219-8069 Mail:bi_jmac@jmac.co.jp
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