ビジネスインサイツ60
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のです。 そのため、 どんどん重複し た仕事が増え、忙 しくなっていまし た」と分析する。 はじき出され た業務削減率は、 部門別で約 3 割。
中根英治氏
人間が説明しようとしても、なかなかそうはいきません」 とそのときの様子を振り返る。 しかし、それを一緒に実行しようという気運に変えてい くためには、独自の施策が必要だった。同社にはすでに部 門内に改善組織が存在し、自分たちだけで改善活動をやり 遂げるという意識がとても強い。そこで、まずはもともと の部門内の改善組織を生かし、部門内完結できるものにつ いての業務改善から始めた。そして「こうすれば業務が変 わる」という実感を持ってから、よりハードルの高い横串 での部門間連携強化に入っていけるよう段階的な施策を とっていった。 現在は横串の実行展開段階に入り、 「品質保証の機能強 化」と「グローバル営業の強化」の 2 テーマに取り組ん でいる。 「品質保証」は業務上すべての部門に関わり、 「営 業」は自己完結型の活動が多いため、横串の必要度と調整 範囲に差はあるものの、徐々に横のつながりは強くなって きている。 永井は「横串での改革を進めるうえでは、とくに全体が 俯瞰できて納得感があることが大切です。たとえば、品質 情報やスペック系情報などをカテゴリー単位で共有できる 仕組みをつくれば、他部門で何をしているかが見えて、重 複業務は減ります。 このような環境づくりが納得感を生み、 着実な改革につながるのです」と語る。
こ れ に つ い て、
2013 年から改革業務に携わってきた業務革新部第 2 業務 革新グループ課長の中根英治氏は「1 年間、改革推進の目 線で各部門の状況を見てきたので、やはりそうか、3 割も 削減できるのか、と感じました。次は実践だ、と身が引き 締まる思いでした」と語る。 本プロジェクトを支援した JMAC シニア・コンサルタ ント 永井敏雄は、当初の状況について「まず、一番の特 徴は部門ミッションが不明瞭で共有化されていないことで した。そして、 これは他社にない珍しいケースなのですが、 コニカミノルタさんにはもともと各部門に改善を専門に行 う組織があり、 部門最適の仕組みがありました。ですから、 部門ミッションを明確にした後は、この自浄作用的な組織 を生かしてコニカミノルタさんらしい改革をしていこうと 考えました」と語る。
「理解」と「実行」の間 その温度差をどう埋めるか
「現状の見える化」で課題を明らかにした後は、いよい よ改革に向けた施策の実践に入った。 改革を進めるうえで、 実はここが一番の難所でもある。改革活動は現業に加えて 行うため、面倒だという気持ちが先に立つことが多い。た とえ調査結果や説明に「なるほど」とうなずいたとしても 「すぐに取り掛かろう」とはなりにくいのだ。この理解と 実行の間の温度差を埋めていくのが難しい。 現場の納得を得るには、現場に足を運ぶのが一番だ。事 務局メンバーと JMAC が一緒になって各部門へ行き、説 明をした。伊藤氏は「各部門に行ったときには、まず永井 さんに説明していただきました。メーカーの者にとって能 率協会のネームバリューは大きく、皆が能率協会のコンサ ルタントの話なら聞いてみよう、となるからです。内部の
リバウンドを繰り返し 「人」も「会社」も成長する
そして、改革を推進するうえでは、個々人のマインドが 大きく関わってくる。伊藤氏が率いる業務革新部の事務局 メンバーは現在 20 人。ここでの経験は、きっと人を成長 させ、会社を変える力にもなっていくはずだと言い「メン バーには『ここは君のキャリアステップの場だぞ』 『次の ステップへ進むために、ここで精一杯覚えて、会社や自分 がいた部門を横から見てくれ』と常に伝えるようにしてい ます」と期待を込めて熱く語る。 しかし一方で、現場に戻ったメンバーから「一人で戻っ ても何もできない」という悩みをよく聞くという。事務局 にいるときに 「そうだったのか !」 と多くの気付きがあっ ても、現場では「1 対多」となり、 「縦」の常識の中で横 串の改革を推進するのはなかなか難しいのだ。
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