ビジネスインサイツ61
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いう想いがここには込められています。 同時に、社員のみなさんには自分の仕事に誇りと喜びを 感じてほしいと思っていますので「自分の今まで得た経験 で薬をつくって、その薬がこんなにも世の中の役に立って いる、これは幸せなことであり、大きな喜びなんだよ」と 伝えてきました。社員のみなさんが退職するときに「いい 会社人生だった、すばらしい会社に勤めた」と思えるよう な会社にすることを心がけてきました。 また、夢は見ているだけではなく、つかみとる努力をし なければなりません。夢の実現のためには自由に意見を言 えることが大事で、そのための具体的な 3 つのアクショ ンを言い続けてきました。 1 つ目は「自ら考えて行動せよ」――これは何か課題が あってなかなか達成できないときには、できない理由では なく、どうやったらできるのかを自分で考えなさい、とい う意味です。2 つ目は 「ひとりで悩むな、 ひとりで闘うな」 、 3 つ目は「学問・異動・協業のススメ」です。 「学問のス スメ」は社会勉強しなさい、 「異動のススメ」は人事異動 で仕事の幅と人脈を広げなさい、そして変化に強くなりな さい、 「協業のススメ」は社内外と積極的に協業しなさい、 そのためには強みを持ちなさい、という意味で、どれも私 の経験から生まれています。 私たちは「すべては患者さんのために」という共通の想 いを持って、新薬の開発を続けています。しかし、研究開 発をして世の中に新薬が出るまでに 15 年以上はかかりま すので、これから先のメディカルニーズはどうなるのか、 世の中はどう変わり、科学技術はどの程度進歩しているの か、その潮流を捉えながら研究を進めていく必要がありま す。そのときに役立つのが、この 3 つのアクションです。
に対する新薬については、どのようにアプローチしていく かが課題となっています。新薬の創製については、研究の 種は外から持ってきて、自分たちは開発研究に特化してい くことも可能ですし、反対に自分たちが見つけた新薬の種 を他社と共同開発するなど、今後はこのようなオープン シェアードビジネスが確実に増加します。 海外展開を進めていくうえで、自社単独で研究開発を進 めていくことが必ずしも望ましい姿とは限りません。新薬 の価値を最大化するためには、どこまで自社でやって、ど こから先を他社に任せるのかを考えることが重要です。 こうした流れの中では、今後は外部との連携やコミュニ ケーションがますます重要になります。競合他社ともお互 いの持っている経営資源を有効活用し合ったりすることも 必要になってくるでしょう。 また、今までの薬はそのほとんどが病気を治すためのも のでしたが、これからは健康の維持、未病状態(症状がな い病気予備軍)の改善、病気の予防、病気の予後までのす べてを含めて、健康寿命を延ばすトータル・ヘルスケアが 求められてきます。たとえば、健康なときにはスポーツク ラブ、 予後には専門施設の管理などが必要とされますから、 薬だけでなく、異業種との協業やコラボレーションも必要 になってきます。ですから、新たな時代のトータル・ヘル スケアを実現するためには、製薬業界も他の業界も今まで の業界の範疇から一歩二歩踏み出すことが大切で、それに より新しい枠組みによる新しいビジネスや事業、産業が生 まれてくるはずだと思っています。 そういう意味でも、 トー タル・ヘルスケアは今後伸びていく分野ですし、製薬企業 が貢献できる領域も広がっていくと期待しています。
国際創薬企業としての使命 人の一生を創薬で支える
鈴木:新薬の開発は 10 年、15 年先のニーズを考えなが ら進めることが必要だというお話がありました。国際創薬 企業としてグローバルに展開する際の取組み、展望につい てお聞かせください。
「くすりの町」大阪道修町から 世界に情報を発信する
鈴木:田辺三菱製薬は今年で創業 338 年を迎える、たい へん歴史のある会社です。 東京に本社を置く会社が多い中、 大阪・道修町に本社を置き、なおかつこの地に史料館を建 てたことへの想いをお聞かせください。 土屋:道修町は日本の医薬品産業発祥の地で、田辺製薬は
土屋:すでに世の中に出ている薬によって、一部の疾患の 治療満足度が上がってきているのですが、治療法が確立し ていない病気、いわゆるアンメット・メディカル・ニーズ
日本最古の製薬企業としてこの地で創業しました。ここか ら世界に向けて薬を創製してきた 338 年の歴史は重いと 考え、この地に本社を置いています。
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