ビジネスインサイツ62
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人と組織(チーム)の力を最大化することを目的に JMAC が 支援した企業事例をご紹介します。
「経営がわかる技術者」の育成で、 スピーディーな新薬開発を目指す
〜創薬パラダイムシフトをチャンスに変える人材育成術〜
創薬のパラダイムシフト到来 バイオで革新的な新薬開発を目指す
アステラス製薬(以下、アステラス)は、2005 年に山 之内製薬(1923 年創業)と藤沢薬品工業(1894 年創業) の合併により誕生した。 「世界にまだないくすりのために」 ――この言葉を胸に、アステラスは一貫してアンメットメ ディカルニーズ(いまだ治療満足度が低い疾患領域)に対 する新薬開発で世界の人々の健康に貢献することにこだ わってきた。一般用医薬品や後発医薬品は手掛けず、新 薬ビジネスに集中し、医療用医薬品の売上は国内第 2 位、 世界 50 ヵ国以上で自社販売している日本発のグローバル 企業である。 合併後も着実に業績を伸ばしているアステラスだが、 「創 薬トレンドが低分子医薬品主体のマスプロ医薬品からバイ オ医薬品主体の個別化医療向け医薬品に大きくシフトした ことに伴い、アステラスの事業環境も大きく変わった」と 話すのは松田充功氏 (上席執行役員 技術本部長) だ。 「低 分子医薬品は各社の研究開発が進んだ結果、現在は未知の 部分がなくなりつつあります。低分子医薬品では改良を重 ね、グローバル化を進めてビジネスとして成長させてきま したが、さらに革新的な新薬開発を目指すため、バイオ医 薬品など新しいモダリティ(モダリティ:低分子化合物、 天然物、抗体などの基盤技術)へと創薬の方向性を大きく
シフトしました」と話す。バイオ医薬品は、抗がん剤や自 己免疫疾患の治療薬などとして利用され、アンメットメ ディカルニーズに対する新薬開発も期待できるため、世界 的なトレンドとなっている。 アステラスは今、バイオ医薬品をはじめとするニューモ ダリティ領域を軸に、新たなビジネスの確立に向けた挑戦 を続けている。
今だからこそ技術者に必要な 「もうひとつの力」
松田氏が統括する技術本部は、アステラスが高品質な新 製品をスピーディーに開発・販売・供給していくための要 の役割(原薬・製剤の技術開発、治験薬・製品の生産・調 達、製商品の供給管理)を担っているが、創薬の方向性の シフトに伴い、大きな環境変化を迎えた。 2013 年に行われた「研究体制の改革」では、新薬創出 力強化のため、“ 創薬の入口 ”(創薬標的を探し出し、ア プローチする窓口)が多様化された。すると、これまで経 験したことのないニューモダリティが技術本部に次々と舞 い込むようになり、それを新しいビジネスにつなげていく 必要性に迫られた。 そのような環境の中で、松田氏は「新たな戦略企画を進 めようと考えたとき、技術本部にはそれができる人が少な いことに気づいた」という。 「私が若手だったころは、と
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