ビジネスインサイツ62
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マインドセットを外せ 新ビジネスはスピード勝負だ
“ 創薬の入口 ” を多様化してからこれまでの経験則では 対応しきれない状況が発生し、その影響が川下の技術部門 にも出始めた。これについて松田氏は、 「低分子で磨き上 げられた仕組みや成功体験に基づくマインドセットが、新 しい挑戦に対してはブレーキになっている」 と感じている。 新ビジネスの立ち上げにおいては、いかに早く新しいも のをつくるかが勝負だ。そのため、松田氏は技術本部のメ ンバーに「新しいことにチャレンジするためには、まず発 想を変えろ、むしろ何を止めるかを考えろ」という話をよ くするという。 「今の最大限効率化された仕組みの中では 余裕がないため、発想を大きく変えない限りキャパシティ は出てきません。ですから無駄をなくし、外に出せるもの は外部委託して、まずはやることを減らしなさい、と言っ ています」と述べる。 今後について松田氏は「必要だと決めた技術に関しては 組織横断的なタスクフォースチームをつくり、必要性が明 確になれば、新たな技術プラットフォームを構築していき ます。このチームのメンバーに対しては既存の仕組みから くる制約を外してあげて、責任はこちらが負うからリスク を恐れず挑戦しなさい、スピード勝負だ、球を打たなけれ ばホームランも出ない、と積極果敢に挑戦できる場を用意 したいと思っています。また、メンバーをどんどん入れ替 えることにより、 本部全体に波及させていきたい」と語る。
強みは「結合力」 ニューモダリティでチャンスをつかむ
そして今、技術本部には「外部機関で対応できないこと を、技術本部でなんとかしてほしい。早急にやってもらえ なければ、本当に前へ進めない」という差し迫った依頼が 増えてきている。 これについて松田氏は、 「MOT 実践研修を始めたころ はこのウェーブへの認識が薄かったのですが、あのときに 研修を始めてよかったと思っています。研修を受けた人は この変化に気づきやすいと思いますし、先を考えたときに 『もっとフレキシブルにならなければだめだろう』と心の 底から納得しやすいと思います」と述べ、 「定型的に手堅 くやってきた低分子と違い、ニューモダリティには新たな 発想が必要です。未知の技術だからと臆することなく、こ れを大きなチャンスと捉えてどんどん挑戦していってほし いですね」と技術本部メンバーへの期待を語る。 さらに、 「技術本部だからこそできることがある」と松 田氏は続ける。 「技術本部には、 『統合力』という強みがあ ります。安全かつ安定的に供給できる新薬は、膨大な要素 を全部統合してはじめてでき上がります。これは低分子医 薬品、バイオ医薬品ともに本質的には変わりません。技術 本部は全社の中でもとくに、製薬のライフサイクルすべて のフェーズですべての機能と付き合っている部門ですか ら、全体が見えやすく、統合力を発揮しやすい。その強み を活かして、戦略企画や経営への目線を持ち、事業環境変 化にスピーディーに対応できる人財 を多く育成したいと思います」と今 後の展望を語った。
MOT 実践研修で何を得たか?—受講者の声①
「周りを巻き込む力」で組織を牽引する
研修では、自分にスピード感が足りなかったことに気付き、もっと外部環境 を知り、積極的な提案をしていかなくてはいけないと痛感しました。 こうした「危機感」を持つようになってからは、部署の目標や本部直轄のプ ロジェクトの意図を今まで以上に理解できるよ うになりました。また、自部門のあるべき姿を より明確にイメージできるようになりました。 課長から「経営職的な視点を持ってくれている ね」と言っていただけたのも、研修の成果だと 感じています。 今後は、 「周りを巻き込む力」を身につけ、 「こ
種岡 剛太 氏 (ATEC 高萩技術センター 品質管理部商用品担当主任)
チャレンジはきっと 実を結ぶ
技術本部メンバーに寄せる期待に ついて、技術本部 技術企画部 人事統 括グループ課長の小林幹央氏は「ア ステラスが今後も事業を継続し、患 者さんに貢献していくためには技術 の視点を持つ人も経営にいないとい けないはずです。コーポレートで人 材開発できればいいのですが、専門
のようにやっていくべきだ」と一歩先の提案を し、それをメンバーに浸透できるようになりた いと思っています。
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