ビジネスインサイツ62
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Special Article ——————————————————————————————————— 特別寄稿
IoT は現場改善に 何をもたらすのか
~有効活用のカギは「人の知恵」~
松本賢治 kenji matsumoto
JMAC IT 経営推進室 室長 シニア・コンサルタント
IoT(Internet of Things)でものづくりは どのように変わっていくのだろうか……。
IoT で何ができるのか
IoT(Internet of Things)が身近になりつつある。も のがインターネットにつながることで、今までできな かったことができるようになる。もちろん、ものが直接 インターネットにつながるわけではない。ものにバー コードなどの識別タグや、状況を感知するセンサー、発 信機などを取り付け、インターネットを通してものに関 する情報が伝わるのである。すなわち、ものの状態を認 識したり、対応すべき動作を遠隔操作したり、必要とな る処理を自動的に行うことができるようになる。 たとえば、 ・屋根に取り付けられた照度センサーを通じて、周辺の 明るさの情報がインターネットにつながり、窓の電動 ブラインドが自動的に動作する ・玄関ドアの開閉動作や現在の状態が、登録された家主 のスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイ スに伝わり、遠隔でドアの開閉確認や施錠が行える ・会社のエントランスや部屋の入り口にあるセンサーが 社員証に入っている発信機からの信号を受信し、出退 勤の管理や各部屋への出入りの記録管理を行う ・会議室に入るとその打合わせで必要な資料が参加者の タブレットや PC で自動的に見ることができる などである。 これらは次世代の快適性や利便性を目指す、スマート ハウスやスマートオフィスと呼ばれる IoT 技術の活用 例である。 また、ものからの情報はインターネットを通じて大量 にデータベースに蓄積され(これがビッグデータと呼ば
れるものである) 、それらを分析することによって、今 まで認識されていなかったことがわかるようになる。
ものづくりで IoT はどう活用されるのか
ものづくりの世界では、IoT はどのように活用されよ うとしているのだろうか。そのねらいを大別すると、① 課題解決、②最適化、③価値創造——の 3 つの領域が 考えられる(図) 。 ①「課題解決」領域 工場の設備や人やワーク(材料・部品・製品)がイン ターネットにつながることで、それぞれがいつの時点で どんな動きをしていたのか、どんな状態だったのかがわ かるようになる。 現場で改善を行う際には、今までは「現状の状態を知 るため」 「ロスを見つけて改善するため」といった目的 を果たすために、必要に応じてデータを収集していた。 ものの状態が情報化される IoT を活用すれば、データ 収集が高速化、広域化、常時化、一元化されることにな る。これにより、いつでもどこでも誰でも必要なデータ を見たり、その分析を行ったりすることができるように なる。 また、過去のデータや類似の設備や作業のデータを大 量に持っているため、現状の状態やその変化を読み取っ たデータと比較分析することで異常発生を検知するなど の予知・予防も可能となる。 現場の問題解決への取組み方が、今までの「何か問題 が発生してからデータの分析を行う」 改善から 「常にデー タが取られていてその変化の兆しを読み取る」改善に変
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